第2章 NGOの取り組み


1◆ シャプラニール=市民による海外協力の会

◇シャプラニールは、1972年設立以来、バングラデッシュへの草の根協力活動に取り組んでいます。「ショミティ」と呼ばれる農民が自発的に作る生活向上のための相互援助グループへの支援が基本です。ショミティでは、貯金をしてそのお金を貸し出したり、識字教育を開いたりしています。

◇概要(1992年10月現在):

設立 1972年9月
名称 シャプラニール=市民による海外協力の会
活動の目的 市民の自発的参加と責任にもとづき、「南」の国々の民衆の生活向上のために海外協力の諸活動を行い、もって草の根の立場から南北問題解決の道を探ることを目的とする。
活動の柱
  1. 「南」の国々における、民衆による自発的・自立的な開発活動の実施および支援
  2. 民衆の自発的な生産活動に対しての輸入・販売を通じた協力
  3. 民衆の暮らしと文化の相互理解・交流や南北問題の解決に向けた調査・学習・開発教育などを通して、日本社会に草の根協力の基盤を形成する活動

◇識字教室概要:

目的 生活に身近な話題を通して文字を覚えていくこと。また、そのための自信をつけていくこと
対象 ショミティの成人
人数 20人
期間 6カ月
回数 週6回
時間 2時間(女性:午後、男性:夜)
教科書 現地シャプラ作成のもの
課目 1.読み書き 2.機能的識字 3.計算
教師 研修を受けた村人
場所 ショミティ内の小屋

◇下にあげるエッセイはポイラ村のシャージャハンさん(32才)が初めて書いたもので、シャージャハンさんもシャプラニールの支援で、字を獲得した一人です。

 私は貧しいです。私には土地がありません。ほかの人の土地で仕事をしています。私の家庭はあまりうまくいっていません。お金が足りなくなったため、援助を乞いにいったものです。援助を受けるとよくなりましたが、一度しかくれませんでした。子どもたちは何も食べないでいました。目の前で何も食べないで、泣いたものです。とっても悲しい思いをしました。そのときの村の貧しい人々は、皆同じでした。

 そんなとき、シャプラニールのワーカーがやって来て、どのようにしてお金が不足するのか話してくれました。どうすればそこから遠ざかることができるのかを、話しました。この話で私たちは、ショミティ活動を始めたのです。

 ショミティ活動をする以前は、まったく貯金がありませんでした。今ではたくさんの貯金ができました。お金が足りなくなっても、何も食べずにいることはなくなりました。なぜなら、ショミティの貯金から借りて、また返すことができるのです。ショミティの貯金で野菜を栽培してたくさんのお金を得ました。ショミティをもしやらなかったら、私たちは絶対的な不足からぬけ出せなかったでしょう。

 私は貧しくて、読み書きのチャンスがありませんでした。ショミティをやって読み書きを学びました。いま、手紙を書くことができます。本を読めます。親戚の知らせを受け取ることができます。ショミティをして、私は多くの利益を得ました。かんがいポンプのプログラムも成功でした。たくさんの利益を得ました。(「シャプラニール第一回エッセイコンテスト」1990年5月24日実施。)

2◆ネパール教育協力会

◇概要:

理念 和をもってみんなで生きる。教育は人を作り、村をつくり、世界をつくる。
本部 京都市
活動地域 ネパール各地
活動内容 小学校建設、学校設備、奨学金支給、教員研修会指導、識字学級運営、簡易水道建設、等へのいずれも協力(資金なら半額まで) →中心となるのは住人
識字教室の教師 地元の教師、商店主、農夫など

◇成人教室

 成人は自分の生活に直結することの方が興味を持てるので、文字の読み書きを学ぶ識字教室というより、安全な水の確保、子供の病気の手当、金儲けになる技術といった自分の生活をいろいろな意味で豊かにすることを学ぶ成人教室と言った方が適切な状況となっています。学習に関心を持つ中で社会の状況にも目が行くようになり、グループで学習することにより対話が生れます。こうして連帯が出来、現状を変えるための力となっていくのです。地元の教師の熱意にJECSが協力して始まった識字教室が周辺地域にも広がっていったという例もあります。

3◆海外教育協力隊(JEV)

◇概要:

設立 1988年5月
名称 海外教育協力隊(JEV)
信条 人種、宗教、政治、思想などにおいて国際性豊かな柔軟な立場を維持し<基本的人権>を尊ぶこと
目的 教育分野における国際協力。なかでも識字を基本的人権の確保の基礎に位置づけ、識字学級の開講を核にした「総合農村開発」に重点を置いている。
活動地域 ネパール ススパ村 など

◇識字学級の概要:

対象 未就学児童、女児、学校中退者など40歳前後まで
人数 25名〜50名 女性中心
期間 乾期の6ヶ月間
時間 始業前の早期、夜(午後7〜9時)
教科書 政府作成のテキスト※ネパール政府は非公式の教育にも力を入れている
教師 最低でも10年間の教育を受け、ハイスクールを卒業した者(S.L.C.;School Leaving Certificate取得者)で2週間〜1ヶ月の研修を受けた者
場所 ヤギ小屋、空き地など村内のどこでも
授業形態 絵を見せて、文字・計算を学ぶ。生活に結びいた言葉を使って討論・発表

◇1994年現在、ススパ村は総人口3342人、平均識字率56%、少数民族であるタミ人の割合は55.2%(1844人)、タミ人識字率52.2%の村です。ネパールには70もの言語が存在し、タミ語もそのうちの一つですが、タミ語は滅びつつあり、タミ人が使用しているのは、ネパール語の標記文字(デヴァナガリ文字)です。政府も90年代の民主化以降は初等教育における母語の使用を認めていますが、少数民族自身に母語教育を行うだけの資力はなく、また、独自の文字を持たないことも多いため、結局はデヴァナガリ文字が教えられることになります。

◇少数民族とともに、弱い立場に置かれているのが女性です。ネパールでは両親の葬儀を行うことができるのは長男なので、男性は優遇されます。一方、女性は葬儀の食事の準備をする役目があり、一定の地位は認められていますが、娘はいずれは持参金付きで嫁ぐ存在なので、親としてはあまり教育を受けさせたがらないそうです。そのため、JEVがススパ村に入った当初、女性の識字率はわずか0.5%にすぎませんでした。それが現在では、歴史的社会的に抑圧されてきた非識字の女性たちが識字学級に参加した結果、‘95年には39%になりました。

◇こうした識字学級での成果はどのような形で現れているのでしょうか。識字とは、単に字を読み書きできることにとどまらないことは前述のとおりです。識字学級の参加者は、識字を通して、自分の生活に密着した諸問題を意識化し、そして開発へ向けての意識変革を成し遂げるのです。具体的には、JEVと協力する現地のNGOであるSEDC(ススパ教育開発委員会)の指導のもとに、貧困女性たちを中心に協力の輪が広がり、公民館の開設、図書館の建設(これは、識字学級のアフターケアーとしてとても重要です)、生協の発足、険しい山道の整備、被災者・障害者・孤児などへの支援等々が行われました。こうして、識字は他人任せの閉鎖性を打ち破り、協力的な村の開発をもたらしています。

 なお、識字率は56%に達し、これ以上の識字学級参加者が見込めない飽和状態担ったので、今後は技術訓練教室の開講に重点が移されています。

第1章 識字って何だろう?へ 第3章 識字の暴力へ

 

 

1996年11月祭研究発表 「識字教育からみえるもの」へ