2.外国人と行政〜京都市国際化推進室


 私たちは、自分たちが住む京都市において、外国人労働者に対して行政はどのように対応しているのか、ということを知りたいと思い、京都市役所内の国際化推進室を訪ねました。

1.国際化推進室とは?

 京都市役所の中の一室にあり、95年4月に国際交流室から改名しました。姉妹都市(パリ・ボストンなど9都市)との国際交流と並んで、京都市に住んでいる外国人に対する施策を検討も担当しています。

2.一問一答

<情報提供>

---京都市内での生活などの情報は国際化推進室ではどのように提供していますか?
・京都市国際交流協会で作っている「生活ガイド」(注1)や、交流情報誌「AKUSHU」などを、国際化推進室を訪ねてきた外国人に配布しています。これは、例えば日本語を話すことができない外国人が直接国際化推進室に通されたときに渡しています。京都市外国人人口の8割が在日韓国朝鮮人で1割が中国人、あとの1割がその他ということで、京都市国際交流協会では経費などの問題から「生活ガイド」は3ヶ国語(英語、ハングル、中国語)で作っています。他の交流情報誌は英語で作っています。

注1: 生活ガイド:京都市についてのプロフィールの説明から始まって、日本で生活するための必要事項、例えば病気になった時はどうするか、バスに乗るときは、ということなどが説明されています。二ヶ国語(例えば日本語とハングル)でかかれており、京都市在住の外国人に渡されます。

<外国人に関しての職員研修>

---外国人の応対に関して、語学の研修はしていますか?
・窓口の人に対しては語学(英語)研修をしています。語学研修の他にも、人権についての研修、事務の研修なども経常的に新規採用や昇進の時のカリキュラムとして行われています。また、外国人に来てもらって一つのテーマについて話してもらう個別的な研修もあります。

<通訳体制>

---窓口に来た外国人に対する通訳はどうしているのですか?
・窓口ごとに専属の通訳はおいていません。英語なら内部で対応し、その他の言語は国際交流協会で登録しているボランティア(のべ84人(95年現在))でまかなうこともできます。基本的に、京都市在住の外国人の8割を占める韓国・朝鮮人の人は日常生活に不自由しない程度には日本語を話せることが多く、また日本語を話せない場合も、ほとんどの外国人は日本人や日本語や英語を話すことができる外国人の仲間と一緒にくるので、言葉がわからなくて困るという例は、あまりありません。

<医療についての行政対応>

---不法滞在の人で健康保険がきかないために医療費が払えず、病院が焦げ付いた場合、それに対する補償は行っていますか?
・そのような補償は行っておらず、予算化もしていません。また、そういう声が医療現場から国際化推進室に出されたことは今のところありません。

---滋賀県などでNGOと協力して外国人からの医療相談を受けるという例がありますが、京都市は医療相談をNGOと協力して行うことはありますか?

・NGOと協力して外国人からの医療相談を受ける事は、今のところ考えていないし具体的な予定もありません。

---行旅病人法は適用していますか?

・区役所で適用していますが、国際化推進室として具体的に外国人に対してどのように適用されているのかは把握していません。

<不法滞在の外国人の摘発>

---不法滞在外国人を市役所は摘発していますか?
・摘発したという話は国際化推進室としては聞いたことがありません。

---公務員には通報義務があるはずですが、不法滞在の人が窓口に来た時に通報はしていますか?
・京都市として方針があるわけではありませんが、国際化推進室としては通報しているという話は聞いたことはありません。

注2: 公務員は、不法滞在者及び不法労働者を発見した時は出入国管理局に通報する義務があります。

<外国人登録法>

---外国人登録法(注3)について、京都市としてどう考えていますか?
・在日韓国朝鮮人のみでなく、すべての国の外国人に対する指紋押捺制度廃止、登録事項簡素化、指紋記録抹消などを、政令指定都市共同で国に対して要求しています。

注3:外国人登録:日本に90日以上滞在する場合は、必ず外国人登録をしなければなりません。区役所で登録します。外出の際は必ず外国人登録証を持たなくてはいけません。92年に永住者と特別永住者(在日韓国朝鮮人、台湾出身者)に対しては新規登録等の申請をする際の指紋押捺制度が廃止されました

3.まとめ

 市役所の人は京都市では外国人の労働問題は受け入れ企業が少ないと思われ、基本的に顕在化していないことを強調していました。しかし、労働者の人もよく街で見掛けるし、パブやスナックで働く女性もいるでしょう。本当は市役所の目にとまるような社会には出てこれない外国人がたくさんいるのでは、という考えも単なる推測にすぎないということは分かっています。本当はどうなのか、ということを知りたいと思いました。

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1996年11月祭研究発表 「わたしたちのまちの外国人労働者」へ