京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」

3 工学的光合成

第2章 工業用水(文責:高垣)



 工学的光合成と聞くと「動物ロボット:アイボができたのだから、今度は癒し系植物ロボットか!?」と興奮される方もいるでしょうが、ここで紹介する技術は正確には「半導体光触媒技術」と呼ばれるものです。半導体とは、太陽電池や電子機器でよく使われているもので、光を受けると正電荷と負電荷に分かれる、つまり電流を流す性質のある物質です。この両端に触媒となる金属をつけて水の中に沈めます。そして、半導体に向かって光を当てると、半導体は電気を流し始めて水を分解(*1)します。分解された水は酸素と水素に分かれます。これを上手く回収すれば、水素エネルギーとして使えるわけです。


 ところで、この冊子のほかのページに目を通された方は疑問に思われるかもしれません。「将来世界的な水不足が起るかもしれないのに、貴重な飲み水を使ってエネルギーを作るの?なんか不毛じゃない?」と。確かに、人の生活に欠かすことのできない飲料水をエネルギーに使ってしまうのは、よほど水の余っている時でしょうね。しかし、光触媒技術は現在研究中ですが、濁った水を浄化することもできるのです。実は光触媒として用いられているのは二酸化チタンという物質で、抗菌・浄化作用(*2)のある物質です(これは抗菌トイレに代表される抗菌グッズに使われています)。光を受けた二酸化チタンは有機物を分解して二酸化炭素と水にしてしまうことができるのです。また、炭酸塩が入っているほうが(つまりイオン水の方が)純水よりも反応率がよいという結果が出ており、これはエネルギー不足や清潔な水の不足している地域でより効力を発揮する特徴を備えていると言えます。

図7を入れる


より詳しく知りたい人のために

*1) 水の分解は以下のような化学式で表されます。
              凾f=56.7kcal/mol
ここでは、水のほうが安定した物質であるので、エネルギーを供給する必要があります。実際350mlの水に紫外線を400Wの強さで照射すると一時間に600μmol分解されます。すると、水分解で使われているエネルギーは
     
また、紫外線を照射したエネルギーは、
     
なので、効率は0.1%です(未確認ですが、紫外線照射面積は50〜100 だと思われます)。


 同様に、屋外での実験では、78のガラス窓に太陽光を当てて、内側の水の分解を行ったところ、結果は一時間に水1あたり420mlの水素を発生させられたようです。これは、だいたい分解速度が であるので、太陽光でも効率はあまり変わりません。
平均的な太陽光には約3%の紫外線が含まれているため、今後は紫外線等の強力なエネルギーを有効に使い、かつ可視光線もエネルギーに変換できるような光触媒の誕生が期待されます。



*2) 抗菌作用は実際はもう少し複雑です。二酸化チタン上でエネルギーをもらった水分子が
            
という反応で、 ラジカルとなります。 ラジカルは有機物中の化学結合よりも大きなエネルギーをもっているため、有機物を分解します。このようにして、抗菌作用は働きます。





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