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図書館を充実して情報格差をなくそう!
IT憲章(「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」)への図書館問題研究会アピール

 2000年九州沖縄サミットにおいて、「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」が採択されました。情報社会の発展にとって図書館は欠かすことのできない存在です。

 この憲章の精神を実現するためには、公共図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館、その他あらゆる種類の図書館の充実と、そのための内容ゆたかな政策が、今、まさに必要です。

 図書館問題研究会は、地域社会の人々、自治体、政府、教育関係者、マスコミ及び出版界、情報通信産業、その他関係するあらゆる人々に、グローバルな情報社会を実現するにあたっての図書館の重要性を訴えるとともに、図書館関係者に対して、情報社会の真の発展に向けて、私たちの目指すべきものを提起します。

図書館は情報社会の要

 「情報社会のあるべき姿は、人々が自らの潜在能力を発揮し自らの希望を実現する可能性を高めるような社会」(憲章2)です。図書館は、人々を幸せにし、人間にやさしい「情報社会」の実現を目指します。図書館は真の情報社会実現のため、人々の情報・資料要求に徹底して応え、電子メディアも印刷メディアも等しく提供します。資料の貸出し、資料の予約制度、レファレンス・サービスやさまざまな情報サービスを充実し、人々の自己実現を支援します。

 「民主主義の強化、統治における透明性及び説明責任の向上、人権の促進、文化的多様性の増進並びに国際的な平和及び安定の促進」(憲章2)のために、図書館は、図書・雑誌等の出版物、ビデオ・CD等の視聴覚資料、CD−ROM、インターネット・サイト、データベース等の電子的資料、その他の情報媒体による資料をあらゆる人々へ提供します。視覚や聴覚などさまざまな障害のために情報の入手が困難な人々のために変換された資料(点訳・音訳された資料等)を同等に提供します。このような人々のための資料変換にあたって著作権処理を不要とするよう、法律及び関係制度の改正を要望します。

 自治体や政府及び関係組織の情報を計画段階から提供し、自治と民主主義の発展に寄与します。さまざまな文化、さまざまな思想、さまざまな言葉の資料を提供し、また、戦争の悲惨さや平和の尊さを伝える資料を提供し、人間の尊厳を伝えます。

今、必要なこと

 「すべての人がいかなるところにおいてもグローバルな情報社会の利益に参加可能とされ、何人もこの利益から排除されてはならないという参加の原則」(憲章3)の保障のために、すべての地域社会、すべての学校において図書館が設置され、十分なサービスが専門職により提供されることを要望します。電子メディアによる情報も印刷メディアによる情報も等しく提供されることが必要です。

 参加の原則の実現のためには、図書館の無料公開の原則が貫かれ、インターネット・サイトやデータベース等の電子的資料に人々が無料でアクセスできる機会が確保されることが必要です。図書館において公費負担でサービスを提供することと、それを実現する政策を要望します。

 図書館は、子ども、青少年、高齢者、図書館利用に障害のある人々、在住外国人などのさまざまな文化背景を持つ人々へのサービスに取り組みます。さまざまな関係者の支援と、自治体及び政府の政策が必要です。

 「教育、生涯学習及び訓練を通じて、すべての市民に対し、IT関連の読み書き能力及び技能を育む機会を提供」し、「学校、教室及び図書館をオンライン化し、教員をIT及びマルチメディア情報源に関して習熟させることにより、この意欲的な目標に向けて引き続き取り組んでいく。」(憲章11)ことの実現のために、図書館に専門職を配置し、また、その継続的教育を行なうことを要望します。

 さらに、電話会社、プロバイダ、データベース製作及び提供者等においては、図書館の教育機関としての性格と公共性に照らして、思い切った割引・減免措置等をもうけることを要望します。

危惧すること

 一方で、情報社会の進展を急ぐあまり、図書館で、従来の媒体である図書等が軽視されることを危惧します。図書等の紙による媒体も、現在も極めて有効な情報源であり、知識・情報の普及手段です。図書館の資料費が目立って削減されています。図書館資料費の増額を強く要望します。また、人々の知る自由や学習権とプライバシーを保障することが情報社会の必須条件です。自治体や政府等の情報公開を進めることが必要です。一方で、安易にICカード等の導入により個人情報の一元化を進めることに、強い懸念を表明します。

2000年9月18日

図書館問題研究会全国委員会

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