海外情報

(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年11〜12月号より

欧州携帯電話研究計画の内側で
低レベル電磁波の人体影響巡って論争!

〜まさに非熱作用の有無をめぐる論争〜

ブリュッセルの会議で火花
 現在「欧州携帯電話研究計画」が進行中だが、低レベル放射線(電磁波)の人体への影響の有無を巡る論争が中心的に闘われている。 10月29日にベルギ−の首都ブリュッセルで開かれた「EMF(電磁波)と携帯電話技術と健康に関するワ−クショップ」でその対立が鮮明になった。

<写真>フランツ・アデルコファ-教授

 ミュンヘンの「行動環境基金」のフランツ・アデルコファ−(Franz Adlkofer)教授はEC(欧州委員会)「生体外(in vitro)実験に関するREFLEX計画」の共同研究者だが、「放射線(電磁波)の人体への影響はもはや否定できない」と主張したが、一方フランスのベルナ−ド・ヴェイレ(Bernard Veyret)やフィンランドのユッカ・ユ−ティライネン(Yukka Juutilainen)は、「人体への影響が有意にあるという証拠は信用できない」と別の見解を主張した。
 ヴェイレはボルド−大学、ユ−ティライネンはクオピオ大学の人だが、それぞれ携帯会社がからんでいる計画の「PERFORM−B」と「CEMFEC」の責任者だ。

具体的に遺伝子を巡っての論争で
 例えば遺伝子変化の意見の違いを見てみよう。
 ヴェイレは「(携帯電話電磁波で)DNA損傷が起こりそうもない」とし、ユ−ティライネンも「ダイレクトな遺伝子毒性効果を(電磁波が)もつとは思えない」と主張した。
 これに対しアデルコファ−は、ベルリン・フレ−(Free)大学のルドルフ・タウバ− (Rudolf Tauber)教授の研究を引用し「HL−60細胞での一重・二重DNA損傷が1.8ギガヘルツ放射線でSAR(熱吸収比)1.3W/sを24時間照射したところ生じた」とした。またヘルシンキにあるSTUKのダリウス・レスジンスキ−(Dariusz Leszczynski)の研究を引用し「マイクロ波によって遺伝子発現(gene expression)が起こる」ことを説明した。さらにアデルコファ−はドイツ・遺伝子植物農業研究所のアナ・ヴォ−ブス(Anna Wobus)が「放射線効果は対象生物の遺伝子構造によって決まる」とした実験内容も紹介した。アナ・ヴォ−ブスによると、野性型細胞では効果は出ていないが細胞から一定の遺伝子を欠くと明確な効果が見られる、という。
 アデルコファ−は「(電磁波の)遺伝子への効果(影響)に関するデ−タ的背景は決定的だ。このままでは何百万人もの人々が遺伝子にダメ−ジを受ける」と結論づけた。


会報第14号インデックスページに戻る