海外情報

(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年11〜12月号より

盲点!盗難防止装置のセンサーは子どもへのリスクが高い

〜ユタ大のガンジーが研究論文で指摘〜

◆背が低いので安全ゲートで頭部直撃
 米ユタ大学のオム・ガンジー(Om Gandhi)博士は『医学生物・物理学(Physics in Medicine Biology)』2001年11月号で、「盗難防止システムの安全ゲートを通る際、大人は電磁波センサーを腰の位置で受けるが、小さい子どもは背が低いため頭部の位置で強い磁場に曝されるためそれだけ健康リスクが高くなる」と論文で警告している。
 盗難防止システムには30キロヘルツ、150マイクロテスラ(1.5ガウス)の電磁波が使用される。そのため、5歳の子の脳に98.9mA/uの最大誘導電流が流れ、10歳だと64.6mA/uが流れる。この数値はいずれもICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の基準値60mA/uを超える。大人の場合は同じゲートで脳に17.6mA/uが流れる。

◆大抵の盗難防止システムがオーバー?
 ガンジーは実際の盗難防止システムは磁場密度は計測できず典型的モデルのパラメーターを仮定した計算値である、と研究論文で述べている。
 盗難防止システムはメーカーの独占的利益の維持のために開発されている。そのためガンジーは「ほとんどの盗難防止装置はICNIRPの磁場基準を超えている可能性がある」と書いている。
 ガンジーの論文はロンドンの「物理学研究所」が2001年10月に「盗難防止システムの磁場強度を制限するよう」要求していたこともあって英国の新聞で注目を浴びた。
 フロリダ州ボカ・ラトンに本社をもつセンソーマティック社は、58Kヘルツの音響磁場システムのよる盗難防止装置のメーカーだが「当社製品はICNIRPを含む世界中の基準に適っている」と語った。
 ニュージャージー州ソロフェアに本社のあるチェックポイント・システム社の研究開発上級副長のジョン・デイビスは「当社の製品は主に8.2メガヘルツを使用するが、ガンジーが使用したモデル装置に比べてはるかに低レベルの出力の装置である。」と釈明した上で、「盗難防止装置のセンサー信号は店内の他の電気器具との両立性(誤作動させない)のため低くする必要がある」と語った。
 以前にも、盗難防止システムが心臓ペースメーカーに電磁干渉する可能性があるとの心配が出されていた。

◆子どもは大人の2倍ケータイ電磁波吸収
 ガンジーは盗難防止システム問題とは別に「携帯電話から出る電磁波は大人より子どもの方が2倍頭部で吸収される」との話題でも英国で知れ渡っている。
 英『サンデー・タイムズ』11月18日付は「携帯電話の電磁波は子どもたちにリスク高く出る」と大見出し記事を掲げた。ガンジーが今年ミネソタ州のセント・ポールで開催された生物電磁学会(BEM)会議で、「子どもの頭は大人に比べて組織1g当たりのSAR(熱吸収比)が50%高い」とコンピュータ・シミュレーションを使って発表した論文を記事で取り上げたのだ。「頭蓋骨が大人より薄い」ことが原因としている。
 「16歳未満の子どもの携帯電話の使用抑制」を勧告したスチュワート報告(2000年5月)以来この問題は英国内で最もセンシティブな問題である。


会報第14号インデックスページに戻る