[投稿]病院の赤字経営による地方財政破綻をもたらしたのは、国による大融資計画!?
国の責任を、住民や公務員、地方自治体に押しつけるのは許せない!
〜NHKクローズアップ現代「病院が町を追いつめる」を観て
 2月12日放送のNHKクローズアップ現代『病院が町を追いつめる』についての投稿がありました。 現在1億円を超える不良債務を抱える公立病院は全国に70以上あり、36もの自治体を財政破綻寸前に追いやっているといいます。ところが、病院赤字による財政破綻を招いた原因は、なんとバブル崩壊後の1992年、国が提案してきた大融資計画にあるというのです。国は公共事業を生み出すために、不必要な病院改築などを提案し、全国の自治体に巨額の財政投融資をもちかけ金をばらまきました。そのとき国は、「病院をきれいにすれば患者も増えて収益増につながる」などとバラ色の未来を描き出し、借金を押しつけました。ところが患者は思うように集まらず相次ぐ医療改革などで病院経営は悪化、今に至っているというのです。国は今それらの自治体に公認会計士を派遣し、徹底した住民サービスの縮小・廃止を指南します。
 政府は、「財政赤字の原因は巨額の社会保障費」、「消費税増は避けられない」などと宣伝していますが、番組は、1990年代はじめからの国家財政垂れ流し、借金の地方への押しつけ、公共事業暴走が財政赤字の大きな原因となっていることの一端を見せてくれます。
 国の責任を、住民や公務員、地方自治体に押しつけ、自衛隊の海外派兵や米軍再編に巨費を投じるのは絶対に許せません。

2008年2月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




NHKクローズアップ現代「病院が町を追いつめる」を観て

 2/12に放送された上記の番組を観ました。以下に感想を記します。

 昨年成立した自治体財政健全化法により、来年4月から特別会計や第三セクターも連結して自治体の財政がチェックされることになった。赤字の割合が標準財政規模の40パーセントを超えた自治体は、国から「財政破綻」と判定される。2005年度のデータから試算すると、現在1億円を超える不良債務を抱える公立病院は全国に70以上あり、36の自治体が破綻に追い込まれる可能性があると言う。

 財政規模47億円の北海道赤平市は、病院会計に32億円もの累積赤字を抱える。市は病院の存続を前提に、下水道料金20%値上げ、軽自動車税10%引き上げなど、住民1人あたり1万円の負担増を打ち出した。市の全職員には今年4月からの給与30%カットが通告された。さらに国保料滞納者の差し押さえや町の共同浴場の廃止、消防車の売却など生活関連部門の切り捨てを加速している。
 ところが、我慢に我慢を重ねてきた住民から思わぬ反発が出てきた。一部の市民が「約百人の入院患者よりも市民全体の利益を優先しろ」と、病院の赤字部門切り捨てを要求。病院存続か市民の負担増かという二者択一を迫られたあげく、入院患者と一般市民が対立する事態に追い込まれたのだ。「行き場のない入院患者を放り出すことはできない」。市長の顔には苦悩が浮かぶ。

 病院会計を巨額の赤字に追い込む発端となったのは、バブル崩壊後の「地方活性化」策として奨励された病院の改築、そのための国からの融資だ。各地の病院は競って過剰投資に走ったが、見込み通りには患者は増えなかった。そこに追い討ちをかけたのが、臨床研修医制度の改定による、都市部への医師の集中である。医師を引き揚げられた地方の病院は、ますます患者が減り、悪循環に陥った。

 もちろん、診療報酬削減など医療費削減策の影響も大きい。入院期間が長期になるにしたがって診療報酬は削減され、90日を超えると支出を下回るようになる。こうした患者が増えれば増えるほど、赤字が増えるようになっているのである。赤平市で、長期入院患者の追い出しを住民が要求するまでになった背景には、この仕組みがある。

 自治体の財政危機を招いた、こうした経緯にもかかわらず、国は、自治体と住民の「自己責任」による赤字削減を要求する。 そのための国の「支援策」なるものは、公認会計士を送り込み、経営改善策を提案させることである。そこから出される方針は、「事務職員の契約社員化」、「給食の外注」などの、民間的経営手法の導入だ。労働条件の切り下げによってコストを削減する一方、患者の負担増や医療の質の低下も避けられない。
 国によるもう一つの「対策」は、地域の中核病院への医師の集中である。医師を引き抜かれた周辺の病院は機能を縮小され、より一層の経営悪化と周辺住民の医療水準の低下を招き、医療格差拡大につながる。

 以上がこの番組の内容だった。
 自治体の、きわめて深刻な財政危機を理由に、病院に限らず様々な住民サービスの切り捨てが進んでいる。それに対する不満の矛先をそらすため、反公務員キャンペーンが執拗に続けられている。その陰で、自治体労働者の労働条件は年々悪化し、非正規雇用者も増え続けている。財政危機の犠牲をどこに負わせるかを巡って、労働者と住民が対立させられる構図となっている。大阪府新知事の橋下も、そうした姿勢が鮮明だ。

 しかし、自治体の財政危機をもたらした最大の要因の一つは、国による、ヒモ付き補助金による公共投資拡大と、手のひらを返したような地方切り捨て策である。その責任を問題にしない限り、労働者への攻撃にしても住民サービスの切り捨てにしても、自治体の現場での闘いだけで、それを押しとどめることはできない。最も責任を負うべき国が、現場での対立の枠外にあるかのように振る舞っている事態は、許すことができない。根源に遡っての批判が必要だ。

 そもそも病院、特に公的病院の役割からして、採算が合う合わないにかかわらず、必要な医療は行わなければならないのは当然だ。そのために必要な財政支出を国や自治体が行うのは義務である(この番組にはそのような視点は全く欠けていたが)。

 地方切り捨て策は、国の財政危機の地方への押しつけでもある。しかし、財政危機を言い立てながら、来年度予算案では4兆8千億円もの軍事費を計上している。米軍再編に関わる日本側の負担は、3兆円とも言われている。これらの数字を見ると、赤平市病院会計の32億円という累積赤字が、微々たるものに思えてくる。いかに巨額が軍事というムダのために費やされているかということだ。そうしたムダ金をやめ、真に必要なところに使えば、自治体病院の問題も大きく改善され、多くの人が安心して医療にかかることができるだろう。
(大阪 ウナイ)