(11/23講演会 イラク現地は訴える:米占領の暴虐の真実)
メディアから隠された”大量虐殺”を告発
−−ファルージャとアブグレイブ、大量殺戮と拷問・虐殺の実態を生々しい証言で語る−−

80人が参加 現地報告に熱心に聞き入る
 11月23日、大阪市のヒューマインドにおいて講演会「イラク現地は訴える:米占領の暴虐の真実−−イラク占領監視センター元所長エマン・ハーマスさんを迎えて−−」を開催した。エマン・ハーマスさんは「イラク占領監視センター」の元所長で、同センターはイラク人と世界の反戦平和グループによって米英軍の戦争と占領を監視するために2003年7月に作られた組織である。センターは発足以来バグダッド現地から無差別の虐殺と破壊、不当な逮捕、拷問と虐待など、米英軍による軍事占領の過酷な実態を世界中に告発し続けてきた。
 集会には80名もの市民が参加し、イラクの実態について語るエマン・ハーマスさんの話に聞き入った。会場にはファルージャの虐殺の写真が多数貼られ、抗議行動などでかかげる「米軍はファルージャの大虐殺をやめよ」との横断幕も掲げられた。
 最初の署名事務局からのあいさつでは、現在イラクではアラウィ政権による事実上の軍事独裁体制が敷かれており、ファルージャの大虐殺などの無法行為が拡大する一方で、現地の被害を告発する活動がますます困難になっている状況が強調された。
 エマンさんの講演は、イラク占領支配下で起こっている全体像を短い時間で、リアルな実例を上げながら明らかにするというもので、(1)10万人を遙かに上回る膨大な死者数、(2)今まさに行われているファルージャの大虐殺の実態、(3)アブグレイブをはじめとした捕虜・収容者への拷問・陵辱・虐待・虐殺等々について、丹念に聞き取りをした証言に基づいて生々しく語った。

ランセット10万人は過小評価
 エマンさんはまず、先日英医学誌ランセットに掲載されたイラク戦争の死者10万人という数をあげ、この研究の意義を認めながらも、これは低く見積もりすぎており、実際にはこの何倍にものぼることを指摘した。@多くの犠牲者が出たところ、すなわちナジャフもサマラもアインもモスルも、死の三角地帯が入っていない、A開戦後3月20日から4月9日までの死者数も入っておらず、ファルージャやラマディなどの激戦地での数字を含めれば、相当の数になるはずだという。
※ランセットのサマリーについては署名事務局の紹介を参照。 最低10万人の衝撃:学術調査が初めて明らかにした米侵略・占領軍による“イラク人大量虐殺”。ファルージャの犠牲者が異常に突出

劣化ウラン兵器や非人道兵器が使われている
 10万人が過小である根拠としてもう一つ、エマンさんは米の非人道兵器の使用を指摘した。第一次湾岸戦争の時に400トンの劣化ウラン弾が使用され、7倍のガンが発生した。今回は1100トンから2200トンが使われた。これを比較すると、戦闘と米の非人道兵器の使用による犠牲者はもっと大きなものになるだろう、と。
 非人道兵器については、エマンさんは、医師の話として、どう治療したらいいかわからない「不可解なやけど」の症状の存在を指摘し、「米軍は新しいタイプの兵器を試してみると言っていたが、この兵器が使われたのではないか、禁止されている兵器だ」と語った。

激戦地(ホットスポット)を加味すべき
 さらにエマンさんがランセットの報告にプラスして、“ホットスポット”の犠牲者数を加味しなければならないと指摘した。実例としてあげたのが、破壊し尽くされた激戦地近郊のある村で、軍の病院があった所。米軍の猛爆によって、病院にいた250人の女性と子どもが犠牲になり、これらのほとんどの人々の手足が切断され、どれが誰のものかもわからない。医師は病院の職員と共に庭に手足を埋めたのだ。これもランセットの10万人には含まれていない。

最大の被害を与える空爆の被害−−広島とオーバーラップ
 エマンさんは続ける。イラク市民はいろいろな形で殺されたがその中で最もひどい犠牲を生みだしたのは空爆である。ジュネーブ条約でも都市への爆撃は禁止されている。エマンさんは、前日広島に言った印象を次のように語った。航空写真を見るとイラクの爆撃は50年前の広島とオーバーラップする。人類にとってファルージャが起こったことは汚点だ。広島の犠牲が20万人、イラクの犠牲が10万人。しかしこれは数字に過ぎない。一人一人の人生、生活がある。ここでエマンさんは彼女個人の事情にも言及した。彼女は「わたしは一人のイラク人女性で母親だ」と言い、14歳から60歳の家族5人を殺されている、夫の家族も亡くしている、米軍が行っていることは無差別殺戮だと批判した。そして日本人は広島を経験しているのでわかってもらえるだろう、と語気を強めた。

ファルージャの大虐殺 中央病院、代理の診療所、緊急避難所のモスク−−次々と攻撃・占拠した米軍
 イラク戦争と占領支配の犠牲者数の次にエマンさんが語ったのが今まさに前代未聞の大虐殺が行われているファルージャの状況である。エマンさんは「先週ファルージャで行われたのは大量殺戮だ」と激しく非難した。ファルージャの街を戦車、ハンビーなどで全包囲し米軍は30万人の都市の市民に「ファルージャを去れ」と警告した。20万人が避難したが、10万人が残った。それは、頼る人がいない、経済的事情からお金がないなどさまざまな理由がある。
 米軍はそれから本格的な攻撃を始めた。まず米軍はファルージャの唯一の病院、中央病院を占領した。なぜ占領したのか。米軍の主張「武装勢力を逮捕するため」はウソだ。なぜなら昨年12月にすでに病院の手入れをしており、武装勢力は一人もいなくなっていたことを米軍は知っているから。真の狙いは、負傷者の数、死傷者の情報が漏れないようにするためである。中央病院を占拠されたファルージャの人々はこれに対して普通の建物を代理の診療所として緊急につくった。しかし米軍は、この診療所にも8発のミサイルを撃ち込み医師から患者全員を殺戮した。さらにファルージャ市民はモスクに入って、一人の看護士をたて、モスクを緊急の避難所とした。しかし米軍はそれさえも爆撃して破壊してしまった。
 病院を失ったファルージャの人々は、全く医療がなくなった。看護はない、食糧もない。道ばたで人々が死んでいく、死体が散乱しものすごい死臭、悪臭がし、市民やジャーナリストらは耐えられない、がれきの中で家族たちがまだ残されている、等々の地獄絵が生み出されたのである。

「援助団体が入った」とのメディアのウソ 援助物資を道に置かせ、取りに来た者を射殺する米軍
 ファルージャには赤新月社も入れない。しかし5日後にようやく入れたと、CNNやFOX、NBCなど米の御用メディアは大々的に報道した。「医療関係者が入って助けた」と。しかしエマンさんによるとこれは真っ赤なウソだ。
 米軍は救援物資を道に置いて立ち去れといっている。どうして道にあるものを取りに行くことができるのか。米軍は動く者はすべて射殺している。医薬品、食糧を取りに行けないのだ。4月の時も同じだった。救急車も含め動く者すべてが撃たれた。水、電気、あらゆる通信手段が断ち切られた。通信できるのは従軍記者のみだ。赤新月社は入れたが何の医療行為も出来ない。

周到に準備した大虐殺 それは見せしめのためだ
 戦闘の激しいときもファルージャの人々と米軍・アラウィ政権との交渉は続いていたという。ファルージャの人々は大攻撃を何とかして防ぎたかった。しかし、アラウィが「ファルージャから出ていけ」と最後通告を出したのだ。ファルージャへの攻撃はブッシュ再選と同時に起こったが、米軍はこれをずっと準備をしてきた。イギリス軍の配置転換もしてきた。エマンさんは、事実を調べれば調べるほど周到に準備してきたことがわかると語った。見せしめにするために計画は練られたのだ。

数え切れない無差別射撃(ランダム・シューティング)
 エマンさんは、NBCが報道し、国際法違反として大問題になっている射殺シーンについても言及した。映像の映った死体にはハエがたかっている。子どもの死体もある。そして、モスクの中で射殺された人は武装勢力でもないし兵士でもない。一般市民だ。その負傷した人を射殺したのだ。メディアは大々的に宣伝し、米軍は兵士を処罰すると言っている。しかし、こんなものは氷山の一角である。米軍による無差別な狙撃(ランダム・シューティング)は数え切れないほどある。殺戮に関わったすべての兵士を処罰すべきだ。

アブグレイブ−−襲撃・拘束と拷問・虐殺
 講演の後半では、「イラク占領監視センター」が丹念に証言をとり続けたアブグレイブとその他の収容所での虐待・拷問・陵辱・虐殺の実態について語った。エマンさんは、その数について何カ所の収容所があるかわからない、イラクのなかの情報の欠如が一番の問題だ、大きい収容所だけで19カ所もあり、無数の米軍基地が収容所になっていると語り、米軍の占領にとってそれが日常化し、不可分一体となっていることを強調した。
 エマンさんが言及したのはまず、拘束するための襲撃のすさまじさである。襲撃はたいてい真夜中の12時以降におこなわれる。まずドアを爆破する。突然大声で叫びながら突入する。そして暴力と侮辱行為を徹底して行う。家族の前で男を殴り、女を怖がらせ寝室で拘束するなどをして辱めるのだ。家宅捜索で男性が見つからない場合は女性を逮捕して連行していく。ある家庭では妻と3人の娘が連行された。
 逮捕され拘束され、収容所に着いた途端に拷問が始まる。イラク人の文化から肌を露出することはあり得ないが、裸同然で何日も放置される。建物は隙間だらけだ。水も食糧も与えられない。何千人もが入っている。アブグレイブはメディア戦略だ。侮辱的な映像を流したがあれは一部に過ぎない。隠されたところでいろいろなことが起こっている。

日本の市民へのメッセージ−−自衛隊ではなく、再建を担える人材を!
 集会では最後に「“餓死の危機”から5万市民を救え! 米軍によるファルージャの大虐殺を糾弾し、封鎖解除と即時撤退を求める決議」と「小泉首相のファルージャ虐殺支持発言糾弾!自衛隊派兵延長反対! 即時撤退! 集会決議」の2つの決議を参加者全員で確認した。
 エマンさんは集会参加者へのお礼として最後に発言した。わたしもイラクの一市民だ、その立場から言いたい、日本政府は「非戦闘地域」だといっているが、サマワは本当に外国の軍隊などいらない地域だ、日本は軍隊を送るのではなく、再建を担える人材を派遣してほしい、そして日本は米に追随するのではなく、国としての自己主張ができる、人格ならぬ「国格」というべきものを持ってほしいと訴えた。

2004年11月25日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



(集会決議1)
“餓死の危機”から5万市民を救え!
米軍によるファルージャの大虐殺を糾弾し、封鎖解除と即時撤退を求める決議


(集会決議2)
小泉首相のファルージャ虐殺支持発言糾弾!
自衛隊派兵延長反対! 即時撤退! 集会決議



(関連 「イラク戦争被害の記録」)
今も続く “ファルージャの大虐殺”−−飢餓、無差別射撃、避難民



[参加者の感想−−会場アンケートより]

◎ 普段ネット経由で得ているニュースなども、現場の生の声で聞かせていただくことで、リアリティが全く違っていて、非常に勉強になりました。人の命をもてあそぶ行為の数々、なんとか止めたいです。 (20歳代 男性)

◎ 想像を絶するイラクの状況が分かりました。完全に、女性や老人や、一般市民が殺される状況は、無差別であり、どんな作戦のもとにも許されないと思います。子供や妊娠した女の人を撃つなんて、どんな作戦なのか問いただしたい。しかし、米軍、アメリカ、小泉首相は、まったく人の意見を聞こうとしていません。
 エマンさんは、広島で、見たことと、バクダットやファルージャが重なると言われてました。同じように被害や状況を比べることはできませんが、人間に対する侮辱、現代でも、この破壊と殺戮が行われいる、野蛮さを感じずにいられません。残された時間はあまりないと思います。これ以上、犠牲者を出したくないと強く思います。 (20歳代 女性)

◎ 改めて米軍の犯罪の重大さを感じ、アメリカや、日本に住む市民の行動が必要であることを認識しました。情報の規制がなされている今日、現場で活動されているエマンさんのような方の講演は非常に重要なものであると思います。ありがとうございました。占領軍を派遣している国の市民として、何ができるか、これからも考えていきたいと思います。 (20歳代 男性)

◎ ナチズムの虐殺を思い起こさせる講演でした。米軍はイラク人を人間と思っていない。日本ではこういうことは報道されないので、日本人の殺害のことばかりクローズアップされるので、「イラク人は怖い」と思ってしまう人が私の周りにあまりにも多いです。 (40歳代 女性)

◎ 具体的な悲惨な事例を聞いて、米占領をすぐ止めさせ、いっしょになってやってる小泉による自衛隊の派兵をすぐやめさせなければと思いました。そのためにも、事実をできるだけ多くの人に知らせなければと思いました。 (40歳代 女性)

◎ ファルージャの実情がどの様か気にかけておりましたので大変貴重なお話をうかがえたと思います。さらにファルージャに限らずイラクで何がなされてきたのかの具体的数々の事実をうかがえたと思います。(40歳代 男性)

◎ 反イラク戦争の大きな運動が起こると思う。日本のメディアはもっとイラクの動きについて報道してほしい。特に自衛隊のことなど、とじこもって何もしていないらしいが。 (50歳代 男性)

◎ アメリカが、イラクやファルージャで行っているのは、メディアが報道している「武装勢力の壊滅」は真っ赤な嘘で、イラク人皆殺し作戦です。イラク人を殺し、負傷者も助けず、殺すのです。早く止めさせなければ、イラクは壊滅状態になり、復興も困難となるでしょう。 この様な政策を続けるブッシュが再選されるアメリカは何という国でしょう。アメリカ人以外がどんな風に取り扱われても良いという民族主義に唖然となります。そしてこの米の唯一の同調者小泉の政策を阻止しなければ。その為の行動を、周りの人々に訴えて行かねばなりません。早く。
アメリカのイラクでの残虐な行為の真実を、日本の国内のメディアが伝えないことにも強い憤りを感じます。 (50歳代 女性)

◎ ”米軍兵士のみせしめ攻撃”が続くイラクの現実を赤裸らに語っていただきありがとうございました。占領軍がまだ攻撃を続けているのはまったくおかしい。普通の人たちが殺されている。1世紀前の植民地奴隷に対するような人民弾圧、無差別襲撃は、まるでゲーム感覚で、殺しているのではないかと思えるほどだ。日本がかって三光作戦で中国に、朝鮮にアジアの人々に行ったことが、かって”自由・博愛”をいっていた米によってまたも繰り返されている。米帝国主義は醜悪な姿をあらわにしてきている。日本の人々にこのことを知らせ、小泉がいかに”虎の衣を借る狐”かを暴き、自衛隊を撤退させたい。
(50歳代 女性)

◎ ファルージャはもとより、昨年3月20日からの米軍の虐殺の実態、無差別の爆撃と動くものへのしつこい襲撃の実態がとても具体的にわかりました。襲撃と略奪のひどさもこれほどかと驚きました。
 米軍とそれに荷担する小泉政権がとても憎く、また情けないです。 (50歳代女性)