政府・名護市長による辺野古新基地建設合意糾弾!
−−米軍のグローバル再編への日本の加担をやめさせよう−−


(1)県民、地元住民の声を踏みにじる辺野古新基地建設合意。
 4月7日に額賀防衛長官と島袋名護市長が辺野古沿岸案の修正での米海兵隊新基地建設に合意しました。私たちは住民を騒音と危険の犠牲にするこの合意を絶対許すことがでません。地元の声を無視し、米とすでに勝手に推し進めた米軍再編をごり押しするために、また日米「最終合意」に間に合わせるために強引に名護市長を「一本釣り」したのです。私たちは沖縄県民、地元住民を危険にさらすことに反対です。日米軍事同盟強化を目指す辺野古新基地建設に断固反対します。

 政府は、修正案が海側に角度を変えた二本目の滑走路(離陸用)を増設することで、名護市側の「集落の上空は飛ばない」という要求を受け入れとた、と宣伝しています。しかし、沿岸案自体が従来の沖合案よりもはるかに居住地に近い飛行コースを取るものです。海上数百メートル沖を離発着する案から、集落のすぐ近くを日常的に多数の航空機が飛び回る案への変更のどこが地元の要求を入れたというのでしょう。日常の耐え難い騒音だけでなく、墜落の危険に地元の人々をさらすものです。沖合案でも地元の反対が強く10年間全く着工できなかったのです。沖合案の完全な挫折に対する答えは県内移設の断念しかなかったはずです。それをいわば「家の真上は通らないが庭先をかすめる」ような案で地元の要求に応えたとは本末転倒も甚だしいと言わざるをえません。

 V字滑走路で住民の危険と被害が軽減されるという保証はどこにもありません。政府は集落にかかる方向の滑走路は使わず、離陸と着陸の方向を使い分けると言います。しかし、米軍は常に戦時を想定して訓練を繰り返します。現に夜中でも構わず、周辺住民の迷惑などお構いなしに危険な訓練を繰り返しています。2本の滑走路を使い分けるなどと言う面倒をするはずがありません。何よりも二つの滑走路の使い分けでは最も重要な訓練である「タッチ・アンド・ゴー」ができません。さらにいったん着陸して、わざわざ大きく滑走路を移動して別の滑走路から飛び立つなど米軍がするわけがありません。政府の修正案は、所詮島袋市長をつり上げるための「絵に描いた餅」に他ならないのです。逆に実際にありそうなのは、米軍が2本の滑走路を同時に、全面的に使って、住宅地などお構いなしに密度の濃い訓練を繰り返すことです。それは基地機能を強化するとともに、騒音被害と事故の危険を高めずにはおかないでしょう。


(2)これは「移設」じゃない! 巨大な「新基地」建設だ。
 政府修正案は滑走路を2本にしたことによって、本来の沿岸案より大きく拡大します。滑走路の本数を2倍にすれば、滑走路をつくる工事費用も2倍になります。埋め立ての面積が増えれば、環境保護を求める人たちや周辺漁民が心配する環境破壊の規模が一層大きくなります。新聞などで公表された図を見ても好漁場である大浦湾の埋め立て面積が大幅に増え(これが土建業者へのバラマキになるのかも知れませんが)、漁業への打撃が避けられません。また辺野古側の浅瀬の埋め立て面積も増え、ジュゴンのエサである貴重な藻場が広範囲に破壊され取り返しのつかない被害が起こります。

 政府は未だに「普天間移設」と言っていますが、辺野古新基地ができれば、その活動量は普天間をはるかに超える可能性が高いのです。その意味で被害は一層深刻です。現在普天間には海兵隊のヘリ部隊とC130などの固定翼機がいます。しかし普天間は海兵隊の基地から離れ、兵士が基地から直ちにヘリに乗り込んで訓練という形をとれません。また、人口密集地にある普天間では実弾の積み込みができないため、実弾を使う訓練はいったん嘉手納におりて弾薬を積み込み、演習後また嘉手納で積み降ろすというパターンになっています。今、辺野古に作られる海兵隊の新基地はこれらの制限がほとんどありません。ヘリ(あるいは将来は、事故を何度も起こしている曰く付きの“オスプレイ”)は隣接するキャンプシュワブから直接乗り込んで演習を行えます。弾薬も隣接する辺野古弾薬庫から直接積み込めます。港湾施設が隣接して作られれば、燃料やさまざまな物資も基地の中に備蓄し、いつでも使える状態になるのです。これまでの制約を一切取り払らえば、活動性が飛躍的に高まるだけでなく、実弾を積んで飛び回ることになり、危険性が格段に高まることも明らかです。実態は「普天間移設」等ではなく格段に強力な新基地建設に他ならないのです。


(3)札束攻勢で「合意」を強制。 原発交付金をまねた「米軍再編対策交付金」まで新設。
 政府が住民の被害のより大きい沿岸案にあくまでも固執したのは住民の反対運動を排除できる可能性が大きいからです。住民の安全より反対運動つぶしが重要とは驚くばかりです。米軍のためなら何でもする、絶対に辺野古に米軍のために基地を作る、これが小泉政権にとっての至上命題なのです。昨年秋に、小泉政権は陸上案なら反対運動を排除して基地を作れると米軍を説得して沿岸案で合意させました。しかし、地元を無視して作った日米合意に辺野古をはじめ日本各地の地元は強い反対を表明し、地元合意は取り付けられませんでした。
 3月末が米軍再編に関する日米合意の期限になっていましたが、辺野古の地元合意ができないのを見て、米軍は日本政府の言葉を信用せずトップレベルの会議を延期しました。まさに辺野古で具体的な現地合意ができるかどうかが日米安保体制強化=米軍基地再編のキーポイントとなり、小泉政権にとって危機的な状況が生じたのです。これができなければ日米軍事一体化の計画が動揺したり頓挫しかねない。今後、米政府の軍事外交政策に全面的に追随・従属し、米軍と自衛隊が全面的に一体化することで対中国、対朝鮮民主主義人民共和国、対アジアでの強硬外交を行う、アメリカの軍事覇権の一端を担うというシナリオを描いていた小泉政権の思惑さえも揺るがしていたのです。

 「カネが有れば何でもできる」−−まるでホリエモンです。島袋市長は今年の選挙で沿岸案反対、沖合案支持を公約に当選したばかりです。条件付き受け入れ賛成はとはいえ、事故の危険と爆音の激しい沿岸案には絶対反対の姿勢だったはずです。それは地元住民に共通の切実な思いでした。小泉政権はそれをカネで買い取ったのです。小泉政権は沖合案の受け入れ以降、これまでの10年ですでに100億円を「北部振興」につぎ込みました。それでも小泉政権が勝手に進めた沿岸案は地元から総スカンを食ったのです。さらなる振興と埋め立て工事の利権をちらつかせ、さらに原発交付金をまねた「米軍再編対策交付金」(!!)をこれまでの基地対策費や調整交付金に上乗せする。これらをエサに市長をつり上げ地元住民を裏切らせたとしか言いようがありません。


(4)グアムと辺野古−−米軍のグローバルな再編と辺野古の新しい位置づけ。根本的に強化される在沖米軍基地。
 辺野古への海兵隊基地建設は米軍のグローバルな再編とそれへの自衛隊の一体化を進める日米両政府の計画の最重要な一部です。私たちは辺野古基地建設が住民の犠牲を増やすからというだけではなく、米軍の侵略性・攻撃性を高め、それへの日本の加担を強めるから反対なのです。日本政府は「沖縄の負担軽減」といいますが、大げさに宣伝されている「海兵隊8000人のグアム移転」が行われたとしても、米軍の侵略的な活動性と日本の加担が強まることで、沖縄の住民の被害は減らず逆に増えるのです。

 沖縄海兵隊司令部を米軍はグアムに移転させようとしています。それは沖縄に部隊を集中させるよりも、よりグローバルな「対テロ戦争」での世界展開、アジア全域での活動の強化、さらには中国包囲・牽制体制の強化にグアムが好都合であるからに他なりません。戦略上・地政学上、中国、台湾、朝鮮半島に面する沖縄や「本土」の在日米軍基地と異なり、グアムは中国、フィリピン、インドネシアなどアジア・太平洋の広範囲な地域に対してほぼ等距離にあります。グアムは、米軍のアジア・太平洋での軍事力増強の戦略計画の中心として急ピッチで増強が行われているのです。原潜の配備、戦略爆撃機のローテーション配備、グローバルホーク無人偵察機の配備、海兵隊の訓練基地の増強等々。米軍は海兵隊司令部をグアムに移転することで、海兵隊全体の活動をより効率化することを考えています。その費用を日本側に負担させ、日本の費用で基地増強をしようと目論んでいるのです。

 同時に、米軍再編の下で海兵隊の活動はより激しく、実戦的になり強化されていきます。沖縄の海兵隊基地は、対中、対朝鮮半島をにらんだ最前線基地として今後活動が更に活発化するでしょう。確かに海兵隊司令部が現在置かれている幾つかの基地は返還されるかも知れません。しかし、辺野古に作られる新基地は「普天間移設」という範囲を超えて極めて大規模で強力な基地コンプレックスを形成します。2本の滑走路を持つ航空基地、海兵隊のヘリコプター部隊のオスプレイへの全面更新と飛躍的な能力拡大、それに搭乗する海兵隊部隊の直結と大規模な弾薬庫、燃料基地、航空基地に隣接する大規模な港湾建設。これらはこれまで沖縄の海兵隊が手にしたことのない基地能力の飛躍的増強をもたらします。

 米軍再編の目指すものは、現在の米軍をよりグローバルな軍事介入、兵力の投射に対して効率化する事であり、同時に世界中に自由に展開できる基地網の確保と同盟軍戦力の米軍への協力・一体化に他なりません。小泉政権は、世界中への侵略体制強化を目的とする米軍再編に遅れまいと躍起になっているのです。そのために日本の基地の米軍に対するより全面的な提供や自衛隊の米軍との一体化を進めようとしているのです。私たちはブッシュ政権のイラクをはじめとする侵略戦争、グローバルな侵略体制強化を目指す「長期戦争」戦略に反対です。日米両政府にとって、辺野古の海兵隊新基地建設こそこの戦略の最重要の柱なのです。


(5)闘いはこれから−−沿岸案修正で新しい矛盾、新たな危険と爆音被害。増税・切り捨ての中で巨額の基地再編費用負担を強いられる。
 政府と名護市長の合意の衝撃は確かに大きいですが、しかしまだ辺野古基地建設は決まったわけではありません。稲嶺沖縄県知事は「名護市の主体的な判断として一定の理解を示しつつ」今のところ反対の姿勢を維持しています。「15年返還」「軍民共同」の沖合案を政府が勝手に放棄したことを簡単には追認できません。「もうこれ以上の基地はたくさんだ」という沖縄県民全体の声があるからです。たとえこれから計画が進んでも、県知事の許可を要する埋め立てを行える保証はまだないのです。
 さらに重要な問題は、地元住民の抵抗闘争が終わったわけでも、妥協したわけでもないことです。もともと名護市長と県知事が受け入れを表明した沖合案を10年以上にわたって環境調査さえ許さなかったのは、地元の住民の反対でした。600日以上にわたって、陸上で、そして海上で命がけの阻止闘争を闘ったおじい、おばあをはじめ現地の人々の文字通り粘り強い、頭が下がるような闘いが、着工を許さなかったのです。政府は今回の案でキャンプシュワブ側の陸上から建設が行えるので基地建設ができると考えています。しかし、沿岸案になることで逆に危険と爆音が飛躍的に増す地元の人々の怒りは高まり、反対者も増えずにはおかないでしょう。政府の思惑通りに建設ができるという保証はどこにもないのです。私たちはこれらの地元住民の抵抗を支援し、あくまでも「本土」と力を合わせて辺野古基地建設阻止を勝ち取っていかねばなりません。

 それだけではありません。小泉は膨大なカネを米軍にくれてやろうとしているのです。大増税、消費税増税を既定路線として突っ走り、教育・医療・福祉など生活関連、民政関連予算がどんどん削減されているのに、なぜブッシュ政権と米軍のために巨額の費用を負担しなければならないのか。全く説明が付きません。
 米軍再編に関する日米協議全体についても結果はまだ不確定です。海兵隊司令部移転に関する1兆円もの巨額の移転費用を巡り、7500億円を持てと要求する米側と5000億円以内にとどめようとする日本政府側で費用負担を巡ってまだ結論が出ていません。しかし、米軍に自国に帰ってもらうために費用を負担するのは全く理屈が合いません。まして、グアム移転は中国に近すぎる沖縄から司令部を後方に下げ、柔軟性・抗じん性を高め、より広範囲にアジア全域を睨もうとするものです。そして、対ゲリラ訓練など「対テロ戦争」の一大訓練拠点を新たに作ろうとするものです。このような新しい軍事介入体制の再編に日本がなぜ莫大な国民の税金を使う必要があるのでしょうか。

 日本国内の他の地域での米軍再編に対しても、地元の反対は収まっていません。岩国、横田、座間、鹿屋等々。現在の計画はもともと政府が地元との相談もなしに勝手に決めたものです。それが反対を大きくしています。それに米の「長期戦争」政策の強化の下で、地元の被害が大きくなることは目に見えているのです。岩国の住民投票に明らかなように、もうこれ以上はごめんだという地元の声は、一部の業者を札束で買い取る利益誘導では押さえることができなくなっているのです。
 辺野古への基地建設に反対し、現地で闘う人々との連帯を強めましょう。岩国、横田、座間、鹿屋など、全国の反基地・反戦平和運動と力を合わせて、日米両政府の基地再編強行に反対する声を上げていきましょう。


2006年4月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




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