新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその2
2005年度軍事予算案:「1%減」はごまかし、実際は1.7%増。
−−消費税率大幅引き上げを含む大増税で軍拡予算構造温存を狙う−−
◎海外派兵型装備・兵力・訓練に傾斜配分。
◎対北朝鮮、対中国封じ込め用のMDに重点割り当て。
◎増税反対と軍事費大幅削減を結び付けて要求しよう。


【1】 はじめに−−軍事費膨張の中長期展望の中で来年度予算を評価することが重要。大増税により軍拡予算構造の維持拡大を狙う。

(1) 「聖域に切り込む」「1%削減」のごまかし。数々の「隠された軍事費」を加えれば1.7%アップ。実際には軍事費増を暴露すべき。
 政府は12月24日午前の閣議で政府予算案を決定しました。一般会計の総額は82兆1829億円、本年度当初比0.1%増です。そのうち「防衛」予算と称される軍事予算の総額は4兆8,564億円。対前年度比1%の減がうたい文句です。確かに狭義の「軍事費」は、3年連続で対前年度比で減となっています。しかしこれには幾つものごまかしがあります。社会保障費を除く一般歳出の中では対前年度比で最も下げ率が小さいですし、額にしてわずか466億円に過ぎません。文教・科学技術振興費は7.2%の大幅減、社会保障費も高齢化に伴う自然増分が毎年1兆円あるのに、今回は5,800億円増と半額に圧縮されました。
※平成17年度防衛関係予算 http://www.mof.go.jp/seifuan17/yosan015-5.pdf
※平成17年度一般歳出概算 http://www.mof.go.jp/seifuan17/yosan003.pdf

 しかしもっと大きなごまかしは、数々の「隠された軍事費」が最初から除外されていることです。ここでは今分かっている範囲で2点だけ指摘しておきたいと思います。(本来軍事費に含まれるもので、前年度までも含まれていない軍人恩給費、海上保安庁費、ODA費を含めた比較はここではあえて問題にしないこととします)
−−まず第一に、内閣官房予算に含まれている、本来軍事予算に含まれるべき情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費624億円を加えるべきです。
※内閣官房町予算 http://www.cas.go.jp/jp/houdou/041227yosanan.html
−−第二に、米軍再編調整関連費1,000億円(1年平均200億円)が別枠計上となっていることです。これは次期「中期防」に規定されている来年度から今後5年間の軍事費の総額を「おおむね24兆2,400億円程度」と定めているのと別枠で「将来における予見しがたい事象への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献など、特に必要があると認める場合」の調整費として、5年間で最大1,000億円を支出できるとしたものです。
※「米軍再編に1000億円 調整費確保で政府本腰 中期防」(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041217-00000007-san-pol
※防衛施設庁管轄下の沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の関連経費263億円は、この1,000億円とは別である。これも前年度比1%減だが、今まさに基地の県内移設のボーリング調査をめぐり政府・防衛施設庁と反対運動のつばぜり合いの真っ直中にある名護の新基地建設関連費用として環境影響評価費など27億円が計上されている。「防衛施設庁:沖縄特別行動委の関連経費、約263億円要求」(毎日新聞) http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20041218k0000m010017000c.html

 以上2点だけで合計824億円増、4兆9,854億円となり、削減ではなく逆に1.7%増になるのです。この事実だけからしても、軍事予算は単に「聖域」であるだけではなく更に増額されているです。
※実は欧米基準での軍事費には軍人恩給費が入る。日本では防衛庁管轄ではなく総務庁管轄に入っており来年度予算は1兆69億円である。これを加えると6兆円を越える膨大な額となる。また、本来は更にこれに海上保安庁予算1,687億円、ODA予算7862億円(うち外務省管轄分は4881億円)を加えなければならない。元々日本の軍事費はあれこれのごまかしを使って実態よりも小さく見せているのである。
※ODA(政府開発援助)予算 http://www.mof.go.jp/seifuan17/yosan015-6.pdf

 今回の削減劇は、財政危機が爆発寸前になり、公共事業やこの軍事費を含む政策的経費=「一般歳出」が本年度比0.7%減となる中で、もともと膨大な軍事費の大きさが政治問題にならないようにするために、単に数字の上だけで一般歳出減よりも削減幅をわずかばかり大きく見せた政治的演出なのです。この演出をより効果的にするために、わざわざ後述する陸上自衛隊自衛官の人員を巡る財務省と防衛庁との「対立」という茶番劇までが演じられたのです。いつも軍拡と戦争を煽っている読売新聞や産経新聞までもが「聖域に切り込む」などとこの劇を大いに持ち上げたことにも、うさんくささが出ています。その他の新聞やメディアも、こと軍事予算に関して言えば、今回は全く無批判であったことで、政府防衛庁は「成功」したとほくそ笑んでいることでしょう。
 このような見え透いた目くらましに騙されてはなりません。むしろ政府のウソ・デタラメとは逆に実際には軍事予算は、他の経費とは違い増額されていることを暴露しなければならないのです。


(2) 来年度軍事予算を評価する2つのポイント。
 次に、来年度軍事予算を評価する2つのポイントを指摘しておきたいと思います。
−−まず第一に、そもそも4兆8千億円という軍事費の絶対額そのもの、その膨大な額が問題なのです。過去一貫して削減されないまま、膨張に膨張を重ねてきた到達点がこの金額です。冷戦時代から続く“軍拡予算構造の温存”を死守するのが政府支配層の狙い目です。
 政府支配層は、おそらく2段階にわたり軍拡予算の確保を狙っています。@将来実施する消費税の7%、10%、あるいは15%などの大増税と人民収奪をやることで、公共事業や財界へのくれてやりと共に軍拡予算を再び拡大する。(政府税調はすでに2007年度からの消費税率引き上げを提言) Aそのつなぎとして差し当たり来年度からは定率減税の半減・廃止に踏み出す。その間は、現在の軍拡予算の構造を温存する。本格拡大は消費税増税を待つ、というものです。消費税率を大幅に引き上げれば、1.7%増くらいでは済まないでしょう。だから来年度予算だけを見たのでは、政府支配層の目論見は見抜けないのです。

※07年度に消費税上げを 財務相、参院委で表明(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041028-00000064-kyodo-bus_all
※消費税率21%か歳出3割減必要 国の財政10年後試算(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041109-00000005-san-pol

−−第二に、政府が12月9日に閣議決定した日本の軍事戦略の大転換=新「防衛大綱」「中期防」と今回の軍事予算案はワンセット、先取りであり具体化であるということです。絶対額ではなくその軍事予算の内容、量ではなくその質です。予算の中に盛り込まれた自衛隊の「近代化」−−スクラップ・アンド・ビルド、質的転換を見抜かねばなりません。
 兵力はむしろ維持され、自衛隊が実際に「戦える軍隊」として質的に強化されつつあり、MDなる膨大な費用を投じて軍拡をやろうとしているのです。依然軍事予算は「聖域」なのです。新「防衛大綱」と「中期防」を歴史的に見通した場合、来年度軍事予算はどんな位置付けにあるか。そういう中長期的な展望の中で、その最初の出発点として今回の予算案を評価する必要があります。
※「新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその1−−血まみれのブッシュの侵略戦争と軍事覇権に全面奉仕する愚挙」(署名事務局) 



【2】 自衛隊を“侵略軍化”し、海外派兵と侵略的・攻撃的性格を前面に出す軍事戦略=新「防衛大綱」「中期防」の予算化に着手。

(1) 軍拡予算に持ってこいの論理−−「対テロ戦争」。
 防衛庁は来年度の「防衛力整備と概算要求」を行うにあたって、その「基本方針」の「1」に「弾道ミサイルによる攻撃への対応、ゲリラ・特殊部隊による攻撃への対応、不審船への対応、核・生物・化学兵器への対応、大規模・特殊災害への対応など新たな脅威や多様な事態に的確に対応し得る能力の充実・強化を図る」を挙げていました。
 これに対し「防衛関係予算」の編成にあたった主計官は、「防衛関係予算のポイント」の冒頭で「テロや弾道ミサイル等の新たな脅威や多様な事態への対応が求められる新しい安全保障環境の下、新たな防衛大綱及び中期防を踏まえ、重要課題に重点化を図りつつ」と、防衛庁の要求をオウム返しにし、編成にあたる決意を示しています。要するに防衛庁の打ち出した新戦略=新「防衛大綱」「中期防」を予算で裏付けることをまず約束しているのです。
※防衛庁の「平成17年度防衛関係費概算要求」段階の数字は4兆9,335億円。
http://www.jda.go.jp/j/library/archives/yosan/2005/gaiyou.pdf

 防衛庁と財務省が一致して確認した「テロや弾道ミサイル等の新たな脅威や多様な事態への対応」とは、一口で言うならばブッシュの先制攻撃戦争、「対テロ戦争」=無制限な侵略戦争を米と同盟して遂行するということです。しかし「対テロ戦争」ほど曖昧な概念はありません。「テロリスト」という敵の規定そのものが曖昧であり、いつ目的が達成されるか分からない“永続戦争”ということなのです。つまり“永続戦争”体制を目標に設定したということは、達成目標のない恐ろしい軍拡のエスカレーションに踏み出すということなのです。軍事費を膨張させるこれほど便利な論理はありません。


(2) 対北朝鮮、対中国と対峙する巨額のMD予算。
 まず対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との軍事対決、台頭著しい中国との軍事対決の目玉としてのミサイル防衛(MD)です。「弾道ミサイル防衛(BMD)に係る諸施策の推進」については、「イージス護衛艦、地対空誘導弾ペトリオットなど現有装備の最大限の活用」という注釈をつけて契約ベースで1,198億円を計上しました。昨年の1、068億円に続く着実な上昇です。
一方防衛庁は「概算要求」で同じく「イージス艦、ペトリオット、バッジシステムなど、現有装備を最大限活用して効率的に進める」との方針で、「BMDシステムの整備」に1,432億円、「将来のBMDシステムに関する研究等」に10億円、計1,442億円を要求していました。確かに今年度に限っては満額の回答は得ていません。しかし、このシステム構築が単年度の負担に終わるものでなく、07年度までに少なくとも総額5000億円を要求するところの、今後も確実に負担を強いるとんでもないものであることは、昨年8月の概算要求の際、防衛庁自らが宣言している通りです。

 対北朝鮮、対中国を念頭に置いた「海上治安対策強化」も軍事力の重要な一部です。海上保安庁予算は1,687億6,200万円を計上しています。「尖閣諸島周辺海域における主権及び排他的経済水域等における我が国の海洋権益を保全するための監視警戒体制を強化する。また、テロ、不審船等に的確に対応するための監視能力、対処能力及び情報収集・分析能力を強化する」として、海上巡視船の整備6隻分だけで海上保安庁予算全体の60%を越える1,034億円が割り当てられているのです。
※「平成17年度海上保安庁関係予算決定概要」参照。 http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/h16/k20041224/17yosan.pdf


(3) 自衛隊の“侵略軍”化、海外での武力行使のための統合運用体制確立、人材確保、戦闘訓練に重点割り当て。
 さらに「重点課題」として挙げられた「ゲリラや特殊部隊への侵入への対応」には契約ベースで765億円(昨年729億円)が保証されています。防衛庁は概算要求ではこの課題については「特に沿岸監視能力の充実・強化、重要施設等の防護能力の強化、捕獲・撃破のための対人戦闘能力等の向上を重視」するとして、381億円を要求しています。政府予算案のいう「島嶼部に対する侵略への対応」に充てられた1,092億円も仮にこの課題に相当すると考えると、これについて1,857億円が計上されていることとなり、要求をはるかに上回る予算が保証されたことになります。ここでは市街戦などの教育訓練費が100億円以上増額され、「侵入したゲリラや特殊部隊の捕獲・撃破」のための「夜間戦闘能力の強化」と称して新規に「新近距離照準用暗視装置の充足」が加えられています。ますます実戦に近づく予算が組み込まれています。

 「テロ戦争」遂行のために、防衛庁は自衛隊の運用を「統合運用」とするとしています。そのため「概算要求」では、新規に「自衛隊の運用に関する長官の補佐機関」として「統合幕僚監部(仮称)」の新設、また「情報本部の長官直轄組織への改編及び統合情報部(仮称)の新設」を求めていましたが、これらは政府予算ですんなり認められています。
 また、陸上自衛隊の基幹部隊を「基盤的防衛力整備」的、「抑止的」なものから、「対テロ戦争」向き、攻撃的なものに再編するための見直しも予算上認められました。具体的には第3・第6師団の改編、第14旅団の新編という形で認められています。この第14師団は四国の第2混成団を格上げするものですが、離島防衛を強化するものとされています。仮に南西諸島侵攻があった場合、そこに投入されて約9000人で奪還作戦を敢行するというのです。
 引き続き海外派兵は重視され、イラクで使っている装輪装甲車や軽装甲機動車の調達が増やされます。またインド洋などで活動する艦艇の衛星通信の広域化など通信整備に495億円増の1,218億円を計上しています。

 陸上自衛隊の人員については、「防衛大綱」「中期防」の作成過程で、防衛庁と財務省が「国際平和協力活動や災害派遣など陸自の任務は増えており人的資源が必要」ということで一致し、結局14万8千人というほぼ防衛庁の要求する線で落ち着いたのは周知の事実です。あれこれの改編や見直しで、結局予算面では自衛官定数は前年度に比べ1,598人の削減、即応自衛官が626人の削減となりました。防衛庁は概算要求の中で、17年度(05年度)末の即応自衛官を除く自衛官等の定数減は1,388人と予測しており、この数字から見るならば、来年度自衛官定数は十分現状維持を果たしたことになります。

 また「核・生物・化学兵器による攻撃への対応」については、76億円(概算要求で96億円)、「武装工作船への対応」には41億円(概算要求41億円で満額)、「大規模・特殊災害への対応」には718億円(概算要求939億円)を充てています。核・生物・化学兵器偵察車(NBC偵察車)の開発が概算要求通り、新規に導入されました。


(4) 自衛隊の「近代化」−−スクラップ・アンド・ビルドの予算。「思いやり予算」もほぼ現状維持。
 政府の側の説明のように確かに全体としては、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を行うために、既存の整備を「抑制」するという傾向は表れ、物件費契約ベースは2兆7,135億円(対前年度比285億円、1%減)となっています。主要装備品(正面装備)だけを見れば、契約ベースで今年度比10.8%減の7,141億円に大幅カットされました。戦車、火砲、多連装ロケットなど、対ソ戦用の冷戦型重装備を削減し、代わりにBMDに振り替えるためです。BMDは長期にわたり膨大な経費を食い尽くす「金食い虫」です。不要になった既存の装備をスクラップにする以外に方法がなかったのです。決して軍事費全体の枠を削減しているわけではありません。次期哨戒機や次期輸送機などの研究開発費は前年並みを確保しています。いわば自衛隊の「近代化」−−スクラップ・アンド・ビルドの予算なのです。

 また米軍再編との関わりで注目される、いわゆる「在日米軍駐留経費負担」(思いやり予算)も、わずか63億円が削られただけで、ほぼ現状維持の2,378億円を米軍にくれてやりです。
 来年度予算は「中期防」の初年度にあたります。何より政府は、戦車など冷戦型の装備品の激減で軍需産業が打撃を受けることのないよう特段の配慮をしています。そのことが総額等においては一見代わり映えのない予算案を提示しているのです。そういった意味で相変わらず軍事予算は「聖域」なのです。



【3】 「対テロ対策」という名で警察力強化を含む国内治安弾圧体制強化を予算化。

(1) 政府支配層の古典的対応−−海外侵略と国内弾圧を同時推進。
 国内外における「対テロ戦争」の遂行と、国内における「対テロ対策」と称する治安弾圧体制の強化は不可分一体のものです。政府は今月10日に「テロの未然防止に関する行動計画」を発表しましたが、これを踏まえ早速237億円もの予算が付けられています。あわせて入国管理職員を174人、税関職員も195人増やす予算措置も取られました。

まずテロや国際的な組織犯罪の関係者を出入国直前の「水際」で取り締まる体制を強化するとしています。この柱はバイオメトリクス(生体認証)を使った審査体制を開発することであり、2億6,000万円の予算が付けられています。顔など生体情報を記憶したICチップ入り旅券の導入に11億円が計上されています。米からの圧力もあり始められたというこの体制は、それだけでも民主主義と人権擁護の観点から断じて許されるものではありません。今は外国人が対象ですが、次は在日外国人、在日韓国・朝鮮人、そして日本国民に広げられるのは不可避です。まさにこれと同様の事態が、もっと露骨な形で今、米国の「パトリオット法」の下で実施されているのです。

 また、テロ活動の未然防止という名目で、ハイジャック対策と称し、私服警察官が旅客機に搭乗する「スカイマーシャル」制度を来年度から本格的に導入するとしています。予算額は7,700万円。防弾チョッキなど必要な武器を持った警察官が米国便を中心に日本国籍の航空機に搭乗するとしています。

 ハイジャックなど緊急事態の場合の「対応力強化」を盛り込んでいます。5億5,000万円を計上し、警視庁はじめ7都道府県警に配置された「SAT」の拡充を図るとしています。また、核・生物・化学兵器による「NBCテロ」への対処強化に向け防護服など必要な資機材を充実するとしています。


(2) 警察官の大幅増員と警察国家化の推進。
 国家公務員の総数が減少するなか、都道府県警の警察官を3,500人増員するとしています。警察庁はさらに地方の治安強化のために2005年度から3年間で都道府県警の警察官を1万人増やす計画を立てています。3,500人増はその初年度分です。刑法犯の検挙率が2割台に低迷する治安の回復が名目ですが、政府全体としての「対テロ」「対テロ戦争」の遂行という流れからいえば、「市民警察」というより公安警察の側面が一層強化されることは目に見えています。増員に伴い装備調達など国費負担分として3億7,400万円が計上されました。 
 政府は地方警察官のほか、「外国人犯罪の防波堤」と称して先述のように入国管理や税関の職員を年々増やしています。さらに司法関係では「裁判を迅速に進めるため」、裁判官と裁判書記官を計140人増員するとしています。
※警察官3年で1万人増員へ 繁華街、重大テロ対策で(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041220-00000215-kyodo-soci

 これらは全体として自衛隊による「対テロ戦争」遂行と一体となって国内の治安弾圧体制の強化につながっているのです。最近相次ぐ反戦運動や市民運動への狙い打ち攻撃、ビラ配りの市民の逮捕、デモ行進参加者の不当逮捕など、基本的人権を剥奪する動きも、こうした全般的な反動化の流れの一環です。
※「検察は誤りを認め控訴を断念せよ!−−反戦ビラ配布逮捕は憲法21条違反。東京地裁が反戦ビラ裁判で無罪判決」(署名事務局)



【4】 今こそ軍事費の大幅削減を。増税で軍拡予算を賄うやり方に反対する。自衛隊撤退、「防衛大綱」閣議決定撤回と併せて要求しよう。

(1) 侵略国家への第一歩を認めるのか否か−−来年度軍事予算が迫る日本の国家のあり方、方向性。
 以上概観したように、来年度軍事予算政府案は「防衛大綱」「中期防」閣議決定を受けて、その侵略的・攻撃的な新戦略を予算面で保証・実現していこうというものです。そしてその戦略とは、米軍と一体となって「対テロ戦争」の名の下に自衛隊を世界中に海外派兵しよう、対北朝鮮だけではなく中国とも軍事対決をやろう、もちろん全て米軍という親分の巨大な軍事力を笠に着て、米国の言うがままに、子分・手下として世界中に威張ろうという、本当に恥ずかしい卑屈で卑劣な戦略なのです。私たちはそうしたこと一切に反対です。

 「対テロ戦争」という言葉そのものがうさんくさいものです。それは、あの9・11の衝撃を逆手に取ったブッシュ政権の策謀だと言っていいでしょう。本来警察力の対象である「テロ」を軍事力で抑え込もうとすること自体が不可能なことであり誤っているのです。現に国際法をことごとく無視したブッシュのアフガン、イラクへの侵略、イラン・シリアや中東・イスラム世界全体への軍事的脅迫は、逆に反米感情、反米武装抵抗を拡大しているのです。ブッシュもそのことを十分知り抜いた上で「対テロ戦争」を強行し続けているのです。際限のない「戦争」、永久戦争が、実はブッシュとネオコンの狙いなのです。
 すなわち「対テロ戦争」を戦略に据えるということは、日本と自衛隊を、終わりのない達成目標のない未来永劫の戦争に引きずり込むことを意味するのであり、その限度のない膨大な費用を未来永劫確実に負担し続けなければならないのです。大衆増税、消費税増税、人民収奪で民衆から搾り上げるだけ搾り上げて。小泉や防衛庁や自衛隊、それにつながる右翼論断や右翼勢力、復古勢力、財界や軍需産業にとっては歓迎すべきことかも知れませんが、人民大衆にとっては踏んだり蹴ったりです。来年度軍事予算案は、私たち人民ににこうした日本の予算のあり方そのものを問う深刻な選択を迫っているのです。


(2) 極限まできた財政危機の下では、増税と人民負担なしに軍拡は困難。人民の生活と軍拡は相反する。大衆増税反対と軍拡予算反対を結び付けて要求しよう!
 「今回の予算案では歳出と歳入の差を埋める新規国債発行額は34兆3,900億円で、このうち28兆2,100億円が赤字国債です。歳入に占める国債の割合を示す国債依存度は41.8%と、過去最高だった04年度(44.6%)は下回ったものの依然高水準です。赤字国債による借金は原則として今の世代が使い切り、後の世代に借金だけをつけ回すものであることは言うまでもありません。また、国・地方の長期債務残高は計774兆円。04年度末に比べて34兆円増え、国民一人あたりでは606万円もの借金を抱えていることになるのです。

 来年度予算に盛り込まれた人民負担は、定率減税の半減(1兆6000億円)をはじめ総額2兆円に上ります。すでに小泉政権が発足してから実行に移されたり、決まっている増税と人民負担は7兆円、合わせるとすでに9兆円の負担なのです。しかも大増税路線はまだ始まったばかり、負担増の本番はこれからです。
 政府税調の目論見では再来年度には完全に廃止される予定です。さらに来年は公的年金保険料の更なる引き上げや住宅ローン減税の縮小、個人住民税の配偶者特別控除の一部廃止などもこれまでに決まっており、勤労者の手取りは目に見えて減っていきます。この他、来年からは65歳以上の高齢者の所得税の一律50万円を控除する老年者控除が廃止され、個人住民税は均等割の対象を段階的に拡大させるなど、全世代に負担を課すメニューが並んでいます。来年中に自動車の自賠責保険料は2年分で約4,000円増加、国立大学授業料の標準額は1万5,000円引き上げられます。その上07年以降は大幅な、2桁と言われる消費税率引き上げが検討されています。負担が増える反面国税庁の調査では1998年から2003年の平均給与は連続減少しています。
※所得、消費に増税路線 与党税制改正大綱を決定(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041215-00000247-kyodo-pol
※家計、矢継ぎ早に直撃 全世代に負担ズシリ 17年度予算政府案(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041224-00000027-san-pol

 今こそ軍事費を大幅に削減すべき時です。人民大衆に大増税と大衆収奪を押し付けて軍拡予算を確保するのではなく、大型公共事業と共に軍事費をも大胆に削減し、人民への負担押し付けをやめるべきです。そのためには、新「防衛大綱」「中期防」の閣議決定の撤回が不可欠です。その意味で、軍事費削減の闘いと増税反対の闘い、新「防衛大綱」撤回の闘いの3つは一つのものなのです。
 現在日本は自民党政府による長期にわたるばらまき政治、乱脈政治、独占資本=財界への大盤振る舞いの結果、深刻な財政破綻の危機にあります。一時的な景気回復で税収が増えましたが、これも一時的なものに過ぎません。すでに景気回復のピークアウト、景気減速は、あれだけ超楽観論を振りまいてきた政府与党でさえ認めざるを得ない局面に入ってきました。来年度に景気後退に陥ってもおかしくはない状況です。本来なら、整備新幹線、関西新空港など、財界だけを潤す巨大プロジェクトなど、ばっさり切るべきなのです。ところが政権を動かす日本経団連を初めとする財界の強引な要求で無傷で全額が通ったのです。一方の独占祖本=財界へは大盤振る舞いと軍拡構造の温存、他方の人民には大増税と負担増−−こうした政府与党の予算編成の明確な「階級性」が来年度予算全体の最大の特徴です。

 現在のような破綻寸前の財政危機の下では、大増税、大幅な人民負担なしには軍拡構造を維持できません。人民の生活と軍拡、人民の利益と軍国主義は相反するものなのです。確実に増える国全体としての借金。勤労人民の収入は増えないのに負担ばかりがのしかかる大衆収奪構造。このままの小泉政治、このままの軍事外交政策、軍拡構造を続けていけば、人民の生活は苦しくなるばかりでしょう。戦争政策ではなく、どこかで根本的に平和政策に再転換しないと、とんでもないことになるのは目に見えています。
 来年度通常国会では、こうした軍拡構造と増税、人民負担の予算案を徹底的に暴露し批判しなければなりません。そのためには「防衛大綱」「中期防」の中味を暴露し、それらの閣議決定撤回を併せて求めることが必要です。またイラクへの自衛隊派兵延長は何より憲法違反、イラク特措法にさえ反する海外派兵の既成事実化としてこれ以上認めるわけにはいきません。自衛隊がイラク人民を殺し殺されるという事態が生じる前に、即座の撤退を求めるべき段階に達してます。私たちは、自衛隊撤退とあわせて軍事費大幅削減を要求します。−−日本の軍国主義復活を阻止する道の一つは、間違いなく軍事予算の拡大と膨張の息の根を止めることなのです。

2004年12月29日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその1
−−血まみれのブッシュの侵略戦争と軍事覇権に全面奉仕する愚挙