[イラク特措法を廃案に!自衛隊派兵に反対する 7.20大阪集会 報告]
「恒久法」と日本軍国主義の新しい危険−−−−−−−−
国際平和協力懇談会の「提言」について
−−「自衛隊」のグローバルな侵略軍への変貌、ローカルな軍国主義からグローバルな軍国主義への拡大−−

(1)はじめに−−有事法制と並ぶ包括的な危険性:海外総動員法。
・最近小泉首相や福田官房長官から、また自民党国防部会など国防族からしきりに主張され始めた対米協力の包括的「恒久法」−−テロ対策特措法、有事法制、イラク特措法など、個別の軍国主義法、侵略法に闘いを集中し目を奪われている間に、政府与党がとんでもない包括的な侵略法の整備を着々と準備していることが判明した。

・これが次期通常国会の最大の目玉になる危険性が出てきた「恒久法」、つまりとんでもない“グローバル海外派兵法”である。私たちは今一度ここで立ち止まり、急変貌する日本軍国主義、そのグローバル化、新しい台頭の全貌を把握する必要が出てきた。

・しかし実はこの「恒久法」はイラク戦争の開戦が迫る中で、密かに首相官邸の間で準備されてきたものなのである。突如出たのではない。昨年末のある「提言」が発端になった。法整備はこれからだが、骨格はすでにこの「提言」に盛り込まれている。

・性格付けから言えば、有事法制が国内総動員法であるとすれば、この「恒久法」は包括的な海外派兵法、海外総動員法である。「自衛隊」を「侵略軍」として全面的に再編成し、米の指揮命令に従い世界各地へ派兵し展開させる法律である。政府与党はこの両者を車の両輪として、東アジアのローカルな軍国主義からグローバルな軍国主義へ変貌させようと狙っているのである。

(2)発端は昨年末の「国際協力懇談会」の「提言」。政治の表舞台に出るまでの周到な準備と既成事実化。
・政府は7月10日、自衛隊の海外派兵を無制限にやれる「恒久法」を制定する方針を決めた。福田官房長官は、半年程度かけて「大綱」をつくる、来年の通常国会へ法案を提出する、今国会閉会後に準備室を作って本格検討に入る等々の見通しを示した。

・これより先6月12日、自民党の内閣・国防・外交三部会の合同会議がイラク特措法の了承の条件として挙げた決議に「国際的基準に合致した武器使用権限の規定を設けることを含む恒久的な法制の早期整備に努めることを法案の附則に明記する」と盛り込まれた。

・5月23日の日米首脳会談で小泉首相は、「安全保障面での日米協力を更に強化するため、グローバル(地球規模)な課題への取り組みを含め、両政府間の協議を更に進める」と発言。共同会見でブッシュ大統領は「日本と米国には地球規模の同盟、共通の関心と自由という大義への共通の信念にもとづくパートナーシップがある」と「地球規模の日米同盟」を宣言した。

・川口外相は月刊誌「論座」(朝日新聞社)3月号(2月5日発売)に「変化する安全保障環境と日本外交」と題する論文を寄稿し、自衛隊の海外派兵のための法律整備が必要だと提起した。この論文で国際協力懇談会の「提言」を持ち出した。また論文で用いられている「用語」は、「提言」にあるものばかりである。

・政府・防衛庁は今年1月26日、国連平和維持活動(PKO)の自衛隊法上の位置づけについて、国土防衛などと同列の「本来任務」に格上げする方向で検討に入った。まさに「提言」が主張する主要なものが海外派兵の「本務」への格上げなのである。等々。

そしてこれら一連の周到な準備と世論への根回しの元になったのが、昨年12月18日に明らかにされた官房長官の私的諮問機関、「国際協力懇談会」(座長・明石康元国連事務次長)が小泉首相に提出した「提言」である。同諮問機関は昨年5月28日に設置され、6月12日以降、6回の会合を開いた。メンバーは16人で、西元徹也・元自衛隊統合幕僚会議議長、新田勇・元大阪府警察本部長らが含まれている。

・この「提言」は、憲法第9条を真っ向から否定するものであるばかりではなく、集団自衛権行使云々もじゃまくさいとばかりに一足飛びに、海外に陸海空の自衛隊を米軍と一体化した侵略軍として武力行使も辞さない構えで無理矢理送り込む冒険主義的拡張主義を特徴とする極めて危険なものである。

(3)「提言」の骨格と特徴。帝国主義・植民地主義の論理。
・全般的特徴:全体に流れる基調がまさに帝国主義的で植民地主義的な論理。
 「提言」には、いわゆる破綻国家(failed states)という言い回しがある。ブッシュ政権がアフガニスタンに使った造語である。貧困と飢餓、内戦と紛争で国家体制が崩壊状態になっていることを指すらしい。「提言」には、こんな二流三流国家に武力を背景に踏み込み、国家再建をしてやるという傲慢な発想が全体を通じて流れている。帝国主義、植民地主義、そして内政干渉と民族自決権蹂躙を公然と掲げるものとなっている。

 欲張りにもこの「提言」は、紛争予防(予防外交)→平和執行→平和維持→平和構築→復興開発支援という全ての段階にわたって介入することを想定している。そして特に「平和構築」の部分が重要であるとして、占領と植民地国家、傀儡国家の構築を念頭に置いている。「平和を回復するためには、たんに侵略者を制圧しただけではすまない。つまり平和執行だけではその後の安定が確保されない。また、平和維持を行ったといっても、たんに当事者を引き離し、武装解除したとしても、そもそも当事者がはっきりしない流動的状況では、誰と誰の間の平和を維持すればすむかどうかもはっきりしない。そのような状況で、平和を定着させるためには、当事者の主体性を維持しつつ、相当程度、当該社会に入り込んで社会変革を行わなければならない。いわば「国づくり」にまで踏み込んだ平和構築が必要とされているのである。」と。

 しかし独立主権国家を一方的に壊滅させて、破壊するだけ破壊して、一体どう「平和構築」するというのであろうか。石油・天然ガス資源を略奪したいが故に、正当な理由もなくアフガニスタンやイラクに侵略した米英の占領軍が如何に立ち往生しているか、「平和構築」どころか、如何にすさんだ殺戮と破壊の毎日であるか。その失敗は、まさに私たちが今眼前で見ている通りである。

 以下に、若干の特徴を見ておこう。
@「提言」は米英のイラク侵略への加担を想定したものである。スタート時はアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)のような国連決議を踏まえた多国籍軍への参加を狙い目としていた。しかしイラク攻撃がもはや避けられない段階で大急ぎで出された。

A「提言」は、国連PKOを古くさいと否定し、米軍のグローバルな侵略行動、グローバルな軍事介入への加担と一体化を最大の目玉に打ち出した。これまでの日本の活動は「伝統的な国連PKOの枠組みに大きく拘束されている」。今は「平和執行」が必要な時代なのに、「平和維持」でさえ厳しい条件が整った場合にしか参加していないと批判。

B「提言」は、米が独立主権国家そのものを軍事力で壊滅させたアフガニスタンやイラクのような侵略戦争への参戦と占領への加担を想定している。相手国政府を壊滅させるのだから相手国の同意が得られるはずがない。「いわゆるPKO参加5原則に関し、紛争当事者が消滅し、停戦合意や受け入れ同意がそもそも意味を有さない場合は、これらの要件がみたされなくとも、例えば、国家安全保障理事会の決議をもって参加を可能とする」。
 ところで「提言」発表の段階ではイラク侵略でも安保理決議が通るだろうと楽観視していたはず。だから「安保理決議」を条件にしているが、今回のイラク特措法ですでにこの条件は無視された。次の「大綱」策定と法整備の段階では必ずこの条件は外されるだろう。要するに米の言うがまま、政府与党のやりたいときに海外派兵できるよう、事実上「無条件」にするだろう。

C武器使用基準を完全に取っ払い、「国際基準」なる口実で武力行使を公然と盛り込んでいる。「国際平和協力業務において、国際基準を踏まえ、警護任務及び任務遂行を実力をもって妨げる試みに対する武器使用を可能とする」。

D「提言」は、活動内容については特定の禁止業務以外は何でもできるよう、事実上軍事行動のフリーハンドを主張している。これまでのお馴染みの「後方支援」もおそらくなし崩し的に無視されるだろう。「国際平和協力法第3条に規定する国際平和協力業務を、現行の限定列挙(ポジ・リスト)から、必要不可欠な禁止事項の列挙(ネガ・リスト)へ変更する」。

E「提言」は「専守防衛」をなし崩し的に破棄し、文字通り「自衛隊」を「侵略軍」に変質させようとする。「自衛隊法を改正し、国際平和協力を自衛隊の本務として位置付けるとともに、適時適切な派遣を確保するために自衛隊の中に即応性の高い部隊を準備する」。 現に「提言」を受けて今年に入って、自衛隊法で「付随的任務」とされている国連平和維持活動(PKO)業務を、国土防衛や治安維持などと同列の「本来任務」とする方向で、防衛庁が同法改正の検討に入った。
 この「提言」がそのまま実現されれば、自衛隊の性格と構造は一変する。PKO業務を主に担う陸上自衛隊の部隊・装備は、今は本土防衛向けに配置されており、グローバル海外派兵に即応できる態勢にはなっていない。海外派兵を「本来任務」に引き上げるとは、装備や人員配置、部隊の編成方法や人材教育を根本的に転換する危険なものになるだろう。そしてすでに米軍と一体化して海外派兵されている海自・空自の装備や編成も、これに併せて変質させられるだろう。例えば海外派兵用装備として航続距離の長い大型輸送機などが想定される。また現在は、PKOの派遣決定ごとに編成している部隊も、常時派遣を想定した態勢に変えられていくだろう。等々。

F「提言」はこのほか、現地治安維持に警察部隊を派遣することも目論んでおり、更にはODAを武力で崩壊させた後に「傀儡政権」作りに利用するいわば「非常時ODA」を主張している。「文民専門家や文民警察官の積極的な派遣や国際平和協力のための警察官隊の設置」、「紛争予防から復興開発までに政府の途上国援助(ODA)を積極的に活用」、「専門的な人材の養成」、「安全対策や補償制度の整備」、「非政府組織(NGO)の支援促進」なども盛り込まれた。海外総動員法的な性格の部分である。

※国際平和協力懇談会報告書の要旨
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai/kettei/021218houkoku_s.html
※「国際平和協力懇談会」報告書
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai/kettei/021218houkoku.html




[イラク特措法を廃案に!自衛隊派兵に反対する 7.20大阪集会]

集会の報告

[基調報告]
    イラク戦争の泥沼化、ブッシュ・ブレアの窮地の下でのイラク特措法廃案の闘い
[集会決議]
    イラク特措法廃案!自衛隊派兵を阻止する闘いを地道に作り上げよう!