後期高齢者医療制度を今すぐ廃止せよ!
憲法25条が保障する生存権を奪うな!


後期高齢者医療制度廃止要求で、福田政権と対決を!

 世界的にも類例を見ない差別的で強負担の後期高齢者医療制度に対する反対が強まる中、6月13日保険料の2度目の天引きが強行された。全く許し難い。全国から沸き起こる反対の声にも関わらず、多くの高齢者のなけなしの年金から保険料が強制徴収されている。国会前では連日の座り込み行動が行われている。すでに400の地方議会が廃止や改善要求を行っている。
※後期高齢者医療制度:400地方議会「異議あり」 廃止、改善求め意見書
http://mainichi.jp/seibu/seikei/news/20080612ddg001010003000c.html

 民主党をはじめ野党は、5月下旬に参院で後期高齢者医療制度廃止法案を提出・可決し、衆院に送付した。参院では「福田首相の問責決議案」が可決された。史上はじめての事である。福田は、支持率が2割を切り身動きがとれなくなっている。野党はこの点で徹底して福田政権と対決すべきである。
※首相問責決議案が参院で憲政史上初の可決、福田首相は解散考えず
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK012102720080611

 野党の廃止法案に対して、読売、産経などの右翼マスコミは、「対案」がないこと、つまり財源がないことを批判している。朝日や毎日などの「リベラルな」メディアも、本質的には高齢者医療費をだれがどう負担するのかという点で支配層に譲歩している。社会保障について「税方式なら○○%」などと試案をする始末だ。私たちは、いかなる方式であれ、人民の負担で事を解決するのに反対だ。後期高齢者医療制度の問題は、憲法で保障された25条生存権の問題である。国民に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障することは国家の責務である。「現役世代が負担すべき」「税負担すべき」等々の議論は結局は、人民に負担を転嫁する自己責任論でしかない。
※税方式導入なら消費税「9.5〜18%」 公的年金で試算
http://www.asahi.com/politics/update/0519/TKY200805190254.html

戦争と米軍支援、不必要な道路とハコモノ、公共事業最優先が間違っている

 国家の責務として、高齢者がそして国民全体が安心して医療を受けられる体制を作り上げられなければならない。それは国民のあたり前の権利である。国家予算編成において、社会保障費が財政逼迫の原因などととりわけ医療費の高い高齢者に責任があるかのような宣伝がなされる。その真偽はともかく血税が社会保障につぎ込まれるのは当然だ。戦争と米軍支援、不必要な道路とハコモノ、公共事業につぎ込まれるのがそもそも間違っている。アメリカに毎年2000億円もの「思いやり予算」をくれてやり、必要な社会保障費2200億円を削減していくというのがおかしい。福田は、2008年骨太方針の基本骨子で2200億円抑制方針を堅持すると表明している。日本の国家が米軍を温かくもてなし日本の高齢者には冷たい仕打ちというのは絶対に受け入れられない。沖縄議会選挙で与党が惨敗したことに表れている。沖縄は全国でも、低所得者層の保険料負担増がもっとも多かった地域だ。年寄りの尊厳を踏みにじり、基地を押しつけ米軍を優遇する政府のやり方に不満と怒りが爆発したのも当然である。
※沖縄県議選、自公過半数割れ 高齢者医療への反発響く(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0608/SEB200806080002.html

 廃止法案が言う旧制度に戻すというだけでは不十分であることは言うまでもない。だが、問題はせっぱ詰まっている。悪法はやめるべきだ。年金からの天引きを中止し、制度そのものを廃止させること、さしあたって旧制度に戻すために徹底して闘うことを主張する。

負担軽減という宣伝のウソ 低所得者ほど負担増

 6月4日に厚生労働省が発表した保険料に関する実態調査では、7割の高齢者が負担減という宣伝が真っ赤なウソであったことが明らかになった。そもそも比較すべき国民健康保険徴収のモデルケースを勝手に細工し、新制度での保険料が安くなるようにしていた。厚労省の担当者が「あくまで平均的な架空のモデルであって、実態を必ずしも反映していない」と認めている。桝添や町村らが吹聴した「7割が負担減」という結果がでるように仕組んでいたのである。実態調査にいかなる信頼性も正当性も存在しない。だがその厚労省の調査結果でさえ、年金収入177万円未満の低所得層の39%で負担が増えている。沖縄県では、実に64%の人の負担が増えるという結果になっている。東京23区や名古屋市など、都市部の低所得層では78%で負担が増えたと推計されている。
※ 後期高齢者医療:低所得世帯ほど保険料負担減の割合少なく(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20080605k0000m010112000c.html
※都市部では8割が負担増=低所得層の保険料−後期医療調査(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080604-00000202-jij-pol
※後期高齢者医療制度、実は低所得者で負担増…厚労省想定ミス(読売新聞)
http://data.news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20080607-567-OYT1T00012.html?fr=rk

 5月からはサラリーマンの給与明細に、特別負担として、天引き分から高齢者医療にどれだけ回っているかが明示されている。全く卑劣だ。これも同様、現役世代と高齢者とを分断し高齢者が金食い虫のように宣伝し、敵視し、高齢者に対する怒りをかき立てようという腹だ。だが、そんな風にはいかない。なぜなら、当たり前のことだが、多くの現役サラリーマンは高齢者を親に持ち、また自分がいつかは「後期高齢者」になるからである。政府は、若者も含めた全世代に「将来に対する不安」を生み出しているのだ。後期高齢者医療費負担の押しつけに対する怒りは、高齢者だけでなく、団塊世代に、そして現役世代に広がっている。

排除と制裁の恐ろしいシステム

 この保険制度では、高齢者を差別し保険料を自動的に増額していくシステムが組み込まれている。2年ごとに見直される。一種の制裁システムである。医療費が高くついた地域はその分保険料が上がる仕組みだ。保険料が上がるのを止めようとすれば、病院に行かないようにしなければならない。しかも、自動車保険のように、事故をおこした(病気になった)人だけの保険料が増えるのではない。その広域連合の一人一人の負担が増える。「隣組」として連帯責任を負わされる。高齢者同士、あるいは現役世代との間で互いを監視させ、だれが医療費を増やす元凶になっているかをあぶり出し、自己規制を加えるようにし向ける恐るべきシステムだ。7年後には保険料が1.4倍になるという試算もある。
 それだけではない。延命治療を放棄させることを目的とした「後期高齢者終末期相談支援料(2000円)」、退院困難な入院高齢者を「退院支援計画」をつくって退院させる「後期高齢者退院調整加算」(1000円)、高額な検査や処置などをできないようにする「後期高齢者診療料」の新設、「後期高齢者」の健診からの排除等々、高額な延命治療の削減・終末期医療の切り捨て、病院からの追い出し、日常的な予防医療からの排除、在宅での見取り等々へ誘導するさまざまな仕組みがセットとして打ち出されている。
米軍協力・道路利権最優先、人民生活を切り捨ての福田政権を打倒しよう!(署名事務局)

改善策はまやかし−−「高齢者は医者にかからず早く死ね」の本質はおなじ

 6月12日にはわずかばかりの「改善策」が発表された。だが、一部高齢者の保険料の軽減、口座振り替えの容認、年金天引き対象の所得制限の緩和の検討など微々たる手直しにすぎない。そしそて多くが検討課題にとどまっている。年金収入80万円以下という生活保護水準を遙かに下回る高齢者からも保険料を徴収するという基本は変わらない。このような低所得の人が、年金から強制徴収され制度に組み込まれたとしても、一割の自己負担を支払って医療機関で受診することが本当に可能なのかという疑問を持たざるを得ない。また、保険料を納められない人から保険証を取り上げ、窓口10割支払いの「資格証明書」を交付するという基本方針も変わらない。悪名高い「後期高齢者終末期相談支援料」も組み込まれたままだ。
 そもそも人々の怒りは、医療費がかかる75歳以上を全体から分離し、「姥捨て山」として切り捨て、病院・医療機関から排除し、医療費を抑制し、できる限り医療費のかからないうちに墓場へと赴いていただくという切り捨て政策の根幹そのものに向いている。私たちは、高齢者を独立した保険制度に追い込み、医療費を削減し、延命治療さえ放棄するというこの医療制度そのものの思想を批判し、廃止を要求するものである。
※後期高齢者医療制度の改善策、低所得者の負担軽減など柱に(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080612-OYT1T00696.htm
※運用改善策要旨 後期高齢者医療制度(山陽新聞)
http://www.sanyo.oni.co.jp/newsk/2008/06/10/20080610010007651.html

「セーフティネット・クライシス」を推し進める後期高齢者医療制度 今すぐ廃止を!

 後期高齢者医療制度の問題は、決して独立した問題ではない。人々が安心して暮らし働いていくための保障、年をとったり病気やけがで働けなくなったときにどのようにして国が保障するのかという「セーフティネット」の問題である。「後期高齢者医療制度」は、この「セーフティネット」(安全網)の構築を国が放棄し、崩壊させていく集中的あらわれである。消えた年金問題、膨大な非正規雇用労働者の創出と雇用保険からの排除、生活保護を受けさせない水際作戦と母子加算や老齢加算の廃止、障害者や高齢者の介護を切り捨てる「介護保険法」と「自立支援法」等々社会保障制度全体が機能不全に陥る「セーフティネット・クライシス」が始まっているのだ。
※セーフティーネットの検証 ほころぶ社会保障 弱者にしわ寄せ(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2007/CK2007032502003947.html
※高齢者と医療制度の変遷 「無料化」から35年 新制度は混乱(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2008/CK2008051802012290.html

 これらは全て「自己責任論」というネオリベラリズムのイデオロギーによって推進され、「小泉構造改革」で加速した。だが、それは、国の責任を体よく放棄するための口実に過ぎない。高齢者は高齢者の自己責任で、障害者は障害者の自己責任で、母子家庭は母子家庭の自己責任で、非正規雇用者は非正規雇用者の自己責任で−−こんなイデオロギーがまかり通ったらどうなるのか。およそ一切の公的保障、公的扶助も切り捨てられていくだろう。
 経団連の御手洗らが執拗に主張し自民党はもちろん民主党さえ受け入れている、社会保障財源の税方式、「福祉目的税」「消費税」は、国や企業の負担を減免し国民に負担を押しつける究極の「自己責任論」である。
※消費税、来年度7〜8%に=基礎年金の財源確保で−御手洗経団連会長(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008051300863

 私たちは、国が憲法25条を守り、国の責務として「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するよう要求する。病気やけがをしたら費用の心配をせずに病院に行ける、気兼ねをせずに仕事を休んで家族の看護ができる、そのときは有給休暇があたえられ給与が支払われる、仕事を失ったらさしあたりの生活のために失業保険がもらえる、働けない事情があれば生活保護がもらえる、高齢になったら年金がもらえ安心して医者にかかれる−−これらがセーフティネットであり、国民が享受すべき基本的権利である。
 後期高齢者医療制度は見直しではなく、いますぐ廃止せよ。

2008年6月16日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局