通常国会開会にあたって==================
安倍政権の改憲準備、軍国主義化と対決しよう!
−−憲法改悪への第一歩=国民投票法案を廃案に−−

[1]安倍政権の弱体化。野党の妥協・動揺を許さない世論の圧力、大衆闘争が必要

(1)1月25日から通常国会が始まる。安倍右翼反動政権との、反戦平和、人民生活防衛、民主主義のための闘いの本格的な対決の場としなければならない。安倍首相はこの国会を改憲準備のための本格的な一歩と位置づけている。絶対に許してはならない。私たちは、とりわけ憲法改悪にむけた国民投票法案の成立を阻止するために全力を挙げなければならない。
 安倍政権は弱体化し危機的状況にある。相次いで発表された世論調査で支持率の低下に歯止めがかからない。不支持率は「危険水域」の3割台に突入している。安倍政権は全く求心力を失っている。党内からさえ「誰も首相と思っていない」「死に体」「末期症状」等々との声が挙がるほどである。しかし、与野党の議員数では依然圧倒的に与党有利である。何よりも自民・公明と基本政策で本質的な違いがない民主党の妥協的で動揺的な対応が、安倍政権の命脈を支えている状況にある。
※安倍内閣の支持率続落、39%に 政策、国民感覚とズレ
http://www.asahi.com/politics/update/0123/001.html
※安倍内閣支持40.7%に続落=不支持3割超、発足時のほぼ倍−時事世論調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070118-00000113-jij-pol

 安倍首相は先の臨時国会において教基法改悪法を強硬的に採決・成立させたが、それによって自らが持つ弱点をさらけ出すことになった。安倍政権は発足後わずか数カ月で、本間政府税調会長辞任に続いて、佐田行革担当相辞任など要人辞職に追い込まれた。さらに教基法改悪の張本人・伊吹文科相が疑惑の中心の一人となった。安倍政権は、史上まれにみる右翼反動政権であるだけでなく、クリーンのイメージとはほど遠い大スキャンダル政権であることが日々明らかになっている。復党問題は参院選に向けてくすぶり続けている。私たちが主張したように、強行採決は、安倍政権の強さでなく弱さである。論功褒賞人事と右翼連中が巣くう腐敗した政権の中から膿が吹き出てくる前に、何とか成立にこぎ着ける。これが教基法改悪強行採決の衝動の一つであった。

 このような政権の弱体化をもたらした要因の一つは紛れもなく先の臨時国会での与野党対決であり、ことに教基法改悪反対運動の力である。昨年春の通常国会での強行採決を阻止し、採決を臨時国会のぎりぎりまでもつれ込ませたことで、安倍政権から国対や党内調整の余裕を奪い、機能不全に陥れた。「首相補佐官」と官僚との公然たる対立、「与党内の根回し不足」、「危機管理の弱さ」等々は安倍政権が抱える本質的矛盾の噴出である。通常国会に向けた政策においても、教育再生会議の迷走、「共謀罪」を巡る二転三転、ホワイトカラーエグゼンプション法案の提案とその挫折、日本版NSCの腰砕け等々、安倍首相が肝いりでぶち挙げた諸課題が行き詰まりに陥っている。
※共謀罪法案、首相トーンダウン=通常国会成立にこだわらず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070122-00000196-jij-pol


(2)もちろん、これは、安倍政権が「自壊」することを意味しない。安倍内閣の支持率低下や孤立化を政権危機へと結びつけていくためには、労働者と勤労人民大衆による厳しい闘いが必要である。
 参院選をわずか半年後に控えて与党議員は「有権者」の意向を意識せざるを得ず、強硬姿勢に対する懸念が絶えず生み出される。しかし、安倍首相を「選挙の顔」として維持しなければならない自民党議員の共通の利害から、党内の批判勢力も含めて、「改憲」をはじめ安倍の政治公約を支えていこうという危険な方向が前に出ざるをえない。自民党の没落と政権の空中分解を防ぐために何が何でも国民投票法案を成立させようとしてくる危険性がある。復党問題では食い違いを見せた中川幹事長が国民投票法案の「5月3日憲法記念日までの成立」を公言するまでに事態は緊迫している。また、与党にとって、憲法改悪を巡って内部対立を抱える民主党を揺さぶるためにも、国民投票法を前面に押し出そうとする衝動が働いているのも確かだ。
※<国民投票法案>中川幹事長「憲法記念日までに成立を」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070112-00000081-mai-pol

 安倍政権の支持率が急低下し自民党離れが進んでいるにも関わらず、その支持が民主党はじめ野党に向かっていないというところに、日本の政治が陥っている危機の深刻さが表れている。民主党は、基本的に国民投票法案では合意しているものの、参院選を控え露骨な賛成に回ることはできない。しかし、党内の旧社会党系の護憲派と元自民・民社の改憲派の対立の中で、党の利害から改憲と国民投票法そのものを争点からはずそうという意向が出てきている。小沢代表は国民投票法には「慎重」であるが、鳩山幹事長はむしろ早期成立を主張している。かつて小沢代表自身が国民投票法にOKを出していた事情もある。「野党共闘の見直し」も含めて流動的である。
 私たちは、国民投票法案が憲法改悪のための直接の第一歩であり、とんでもない思想弾圧法、憲法違反法であることを暴露し闘いを構築することが必要である。この法案の阻止のために全力を上げなければならない。対案ではなく対決を、妥協ではなく徹底抗戦を求める院外の大衆運動こそが、安倍政権の弱体化を政権危機へと転じていくだろう。
※国民投票法案:早期成立に意欲 民主・鳩山幹事長
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070111k0000m010137000c.html



[2]憲法改悪のための国民投票法案の成立を絶対に阻止しよう

(1)安倍首相は、今年の年頭あいさつにおいて首相任期6年内の改憲を明言し、今国会での国民投票法案の成立を指示した。何という傲慢であろう。安倍首相は、自民党総裁選での自らの再選を所与のものとした上で、2期にわたる任期中の改憲を公約しているのである。私たちは、安倍政権の右翼的反動的諸政策と対決し、この目論見を破綻させていかなければならない。
 憲法改悪は、安倍の掲げる「戦後レジームからの脱却」の根幹である。それは、個人の尊厳を基調とし戦争を永久に放棄した平和国家から、「戦争できる国」への国家構造の根本的転換と国民の改造に他ならない。これを、憲法9条の改悪による自衛軍の保持・交戦権の明記を軸として、戦争放棄、基本的人権の尊重、国民主権の3原則を廃棄し日本国憲法の全面改悪によって成し遂げようと言うのである。
※自民党大会 首相「改憲に取り組む」 国民投票法案成立目指す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070117-00000036-san-pol

 私たちは、憲法改悪の直接の第一歩であり、それと一体のものである国民投票法に絶対反対である。いかなる修正案もあり得ない。廃案あるのみである。
 民主党は、その「対案路線」によって国民投票法においても対案を提起し、人民に対する許し難い裏切りを行っている。12月6日には与党と民主党との間で「有権者18歳以上」など9項目の修正内容を大筋合意し、民主党案と与党案を一体化すると伝えられている。すでに昨年5月に出された与党案では、当初もくろんでいたマスコミ規制は原則撤廃され、「外国人の運動禁止」の条項が削除されるなど、露骨な人権侵害や言論圧殺条項は部分的に後退した。しかし、与党にとってそもそもそれは折り込み済みであった。修正協議は、本質的な危険性を「修正」「変更」したわけではない。
※「改憲審査」3年凍結 自公民が国民投票法案修正で合意
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/061207/ssk061207000.htm

 「修正協議」を受けてどのような修正案が提起されるのかはまだ明らかではないが、この法律そのものが憲法違反であり、憲法改悪に向けた思想弾圧法である性格は全く変わっていない。国民投票法案の危険性は、厳格に定められ容易にはできないようにされている日本国憲法の改正手続きを、一片の法律によって骨抜きにし、極めて低いハードルで憲法改悪を実現できるようにすることにある。そしてそれは、憲法改悪に反対する意見や反対運動を封じ込め、発言できないようにし、賛成意見を宣揚する状況を作りだしていこうという危険な性格を持っているのである。
憲法改悪のための「国民投票法案」に反対する−−憲法改悪反対の議論や運動を禁止する驚くべき言論弾圧法案(署名事務局)


(2)改憲の発議は、96条において通常の法律とは違い総議員の2/3以上の賛成という厳しい条件が課せられている。「憲法改正」がそのような厳密な発議規定を置いているのは、時の政権やそれを担う政党によって、議会内での多数によっては容易に変えることができないようにするためである。それは、「多数決の横暴に対する規制」である。97条では基本的人権が「侵すことのできない永久の権利として」保障され、98条では、憲法に反するいかなる法令、行為も無効とされている。
※「第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」
「第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
「第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」

 ところが国民投票法案は、これらの条項を踏みにじり、圧倒的少数の賛成で憲法改悪を実現できる危険性をもっている。憲法で定められた要件である「国民投票の過半数」も、有権者の過半数でもなければ、全投票者数の過半数でもなく、全投票数から無効票を差し引いた有効投票の過半数とされている。しかも、国民投票が成立するための最低投票率については何も定められていない。非常に低い投票率でも、そこで過半数を取れば、国民の承認があったとみなされてしまい、有権者のわずか2割程度の賛成でも改憲が実現してしまう危険性をもっているのである。
※加えて言えば、「憲法改正」という重大問題にもかかわらず外国人の投票権についてははじめから完全に欠落させさられている。特に朝鮮・韓国・台湾出身の人々は、かつての日本の植民地政策で一方的に「日本人」とされた挙句、戦後はまた一方的に「外国人」とみなされ、様々な諸権利を享受することができないまま現在に至っている。昨年の兵庫知事選で伊丹駐屯地からイラクに派兵された自衛隊員の投票権が大問題になったことなどを考えれば、この法案が全く異常な人権感覚、排外主義に貫かれていると言う他ない。

 現行憲法の精神に従えば、この国民投票における過半数とは、国会議員で総議員を分母としているのと同じく、全有権者を分母とし、その過半数と考えるべきである。でなければ、国民投票法の存在をできるだけ国民から隠し、投票そのものから国民を遠ざけ、一部の賛成者の投票だけで「過半数」を実現させるというようなやり方が可能となるのである。
 国民投票法案は、「憲法改正」についての厳しい制約を、極めて形式的や装いをまとった「手続き法」の形で取り払おうという卑劣な企てである。


(3)さらに、賛成あるいは反対の立場から運動をする「国民投票運動」について教職員や公務員の地位利用の禁止条項がある。公務員、教職員が「その地位を利用した」国民投票運動は禁止される。そもそも「地位利用」「国民投票運動」の範囲がはっきりしない。教員が学校で生徒たちに現行の日本国憲法の意義を語ったり、公務員が改憲反対の運動をすることが禁止される危険性があるのである。特に学校教育の場での学習は決定的に重要である。反対の意見が封じ込められるだけでなく、そもそも憲法について議論したり、話し合うことがタブーとされるような雰囲気を作り出すだろう。数ヶ月、あるいは数年にわたって日本国憲法についての教育が不可能となる、あるいは自粛する雰囲気が作られる。「修正合意」では、公務員の地位利用について国民投票法での罰則は削除されたが、公務員法などで懲戒処分されることになった。同じことである。公務員法の濫用を招く危険性を持っている。


(4)また、「国費を使用する(政党などの)無料宣伝枠は、賛否平等とする」、「投票日前7日間は禁止される有料CMは禁止期間を延長する」などの修正事項がある。「賛成派はマスコミなどに対して、潤沢な資金を使って改憲賛成の宣伝をする」という批判を封じ込めるための些末な修正である。教基法改悪問題がマスコミから一切無視され、国会の密室で強行採決されたこと、逆にNHKでは教基法改悪法案審議の大詰めの段階で「愛国心教育」が堂々と放送されたことを思い起こすならば、賛成派の有料CMを1週間以上禁止することなど何の問題もないであろう。改憲に関する報道を政府が事実上コントロールする効果を持つことになるだろう。

 最後に、国民投票法の施行は成立より3年後とし、3年間は凍結するという修正内容がある。拙速な改憲を危ぶむ公明党や民主党の意向に配慮したためと伝えられている。しかし、これも安倍の「任期6年内」の改憲となんら矛盾しない。むしろ、「選挙人資格18歳以上」など公職選挙法や民法など関連法の整備を着実に押し進めていくための整備期間に他ならない。「憲法改正」に関する議論が凍結される一方、法整備だけが着々と進むことになってしまうのだ。



[3]防衛省昇格のもとで進む安倍政権の軍国主義化と対決しよう

(1)憲法改悪と国民投票法の制定策動と合わせて、日本の軍事化の動きは安倍政権の下で着々と進められている。「戦争できる国造り」が実態面で進行している。
 1月9日、防衛省が発足した。1954年の発足以降一貫して内閣府(総理府)の外局に留め置かれてきた防衛庁が、アメリカの国防総省などと肩を並べる「防衛省」へ格上げされた。それは、日本の自衛隊の本来任務に、「本土防衛」と並べて「海外派兵」を付け加えるという、自衛隊の侵略軍化のための自衛隊法「改正」とワンセットであった。安倍首相は、記念式典での訓辞で改めて、集団自衛権の行使に関する個別具体的事例の研究の必要に言及した。
 これと並行してすでに昨年末から年頭にかけて、安倍政権下での軍事化に関する動きが活発化している。産経や読売といった政府の広報紙化したマスコミがある時は意図的にリークし、ある時は特別の連載記事を掲載し、さらには社説で公然と主張するという形で、既成事実化しようという動きと重なっている。ごく最近新聞紙上などで報じられたものでも、その動きは極めて激しい。

 まず、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威を煽り、露骨な軍事的恫喝と軍事的挑発をエスカレートさせる内容がある。
−−安倍が政権につく直前の9月20日に作られたという、日本の核武装に関する政府の「内部文書」なるものが12月末に産経新聞によってリークされた。報告は「日本が小型核弾頭を試作するまでには少なくとも3〜5年かかる」とし、産経新聞は「時間がかかりすぎる」と懸念を表明している。安倍政権発足直後から執拗に繰り返された中川政務会長や麻生外相の核武装発言が決して彼らの個人的な思いつきではなく、北朝鮮を標的にした明確な政治的発言であることが裏付けられた。
※核弾頭試作に3年以上 費用2000〜3000億円 政府内部文書
http://www.sankei.co.jp/shakai/wadai/061225/wdi061225000.htm
−−「朝鮮半島有事」とそれが「日本有事」に発展する場合を想定し、港湾・空域の使用や後方支援活動などの詳細部分を詰めた「共同作戦計画」づくりが昨年12月から日米両政府によって開始されている。一方では都道府県、市町村で国民保護計画の策定が義務づけられ、「国民保護実動訓練」が開始されているもとで、北朝鮮を標的とした日米合同の「有事研究」が公然と研究されているのである。
※日米、有事計画を具体化 朝鮮半島問題想定
http://www.asahi.com/special/nuclear/TKY200701030318.html
−−すでに防衛省はミサイル防衛(MD)システムの導入前倒し策について、海上配備型迎撃ミサイルのスタンダード・ミサイル3(SM3)を搭載したイージス艦を、当初予定の2007年度末から3か月早めて07年中に配備する方針を明らかにしている。


(2)本来任務へと格上げされた海外派兵の任務を恒常化させるとともに、自衛隊を「戦える軍隊」に変貌させ帝国主義軍隊として国際的に認知させるための法整備と解釈改憲策動がある。
−−安倍首相は1月12日、日本の首相として初めてNATO理事会で演説し、「自衛隊が海外での活動を行うことをたらわない」と語った。
※安倍首相:自衛隊「海外活動ためらわず」−−NATOで初演説
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2007/01/13/20070113ddm001010071000c.html
−−武器輸出三原則を見直し、米以外の第3国とも共同開発を開始し、幅広いMDと兵器開発に道を開こうという、日本の軍需産業と防衛族の利害が公然化している。
※<自民党>米以外とも兵器開発を検討 武器輸出3原則緩和も
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070105k0000m010126000c.html
−−PKO活動について、自衛隊員らの武器使用の憲法解釈を変更し、「任務遂行への妨害排除」を理由とした武器使用を容認する検討を開始しされている。
※自衛隊PKO、武器の先制使用を検討…対象は非正規軍
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070114it01.htm?from=top
−−安倍首相が主張する集団自衛権行使に関する論議を活性化させるよう右翼マスコミは執拗に要求している。
※1月1日付・読売社説「タブーなき安全保障論議を 集団的自衛権『行使』を決断せよ」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070101ig90.htm


(3)要するに安倍政権は、憲法改悪を政権の大目標として設定しながら、「集団自衛権の行使」の政府解釈の変更や「海外派兵恒久法」の制定などの解釈改憲と憲法の骨抜き化を積み重ねていき、北朝鮮に対する軍事挑発であろうと、テロ特措法型の海外派兵であろうと、イラク特措法型の海外派兵であろうと、あるいはPKOであろうとPKFであろうと、アメリカが行う侵略戦争や武力挑発についてはいかなるものでも協力する体制を作り上げようとしているのである。安倍首相は、日米同盟を「血の同盟」と位置づけ、自衛隊員が命を犠牲にするような重大な対米協力が必要と強く主張するのである。
安倍政権:「主張する外交」と「血の同盟」(署名事務局)



[4]改悪教育基本法の具体化反対。安倍政権の反動的、反人民的政策と闘おう

(1)だが安倍外交の手練手管と強運も、ボロが出始めている。ブッシュ政権の方針転換による米中「2国間協議」の開催、金融問題での「妥協」、6ヶ国協議の再開をきっかけに、安倍の強硬路線一辺倒が破綻と行き詰まり、孤立化傾向を強めている。
 このような事態は、安倍が党首選の中で、北朝鮮カードを利用して抜きんでてきた時期や、昨秋の政権発足直後のように、電撃的な訪中や訪韓を実現した時期とは、明らかに潮目が変わってきていることを示している。今春に中国首相の来日を固め、7月の参院選挙前にも胡錦涛主席の訪日を数少ない頼みの綱として外交的得点を稼ごうと躍起になっているが、これこそ、安倍にはそれ以外に何の浮揚策も残されていないという行き詰まりを示している。
※対北朝鮮 米、直接交渉に軸足 原則立場を修正 金融制裁の部分解除も(1/19読売新聞朝刊)

 また、安倍が信奉するブッシュのネオコン的戦争政策も破綻にむかって突き進んでいる。ブッシュは昨秋の中間選挙で歴史的な大敗北を喫したにも関わらず、超党派の段階的撤退の提言を無視し、2万人を超えるイラク増派を打ち出し、さらなる泥沼化に一歩踏み出した。安倍首相はこの無謀な政策に理解を示す数少ない指導者である。ブッシュの盟友イギリスのブレアでさえブッシュと距離を置き始め、予定通りの英軍の撤退方針を再確認している。
 7月の参院選挙の時期に、ちょうど期限が切れる日本の航空自衛隊のイラク派兵延長問題が政治日程に上る。また別の重要な問題としては、沖縄現地の闘いによって決着を先延ばしさせている普天間基地の移設問題がある。イラクの泥沼化とバグダッドの惨劇が激化する中で安倍政権はあくまでもブッシュの無法な戦争政策に付いていくのか。ブッシュもまた、発足以来最低の支持率に直面している。
※ブッシュ大統領の支持、最低の28%に…米CBS調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070123-00000113-yom-int


(2)安倍の反動的・軍国主義的な政策は、国民の中から激しい抵抗を生み出さざるを得ないだろう。私たちはそれらを、反人民的な諸政策と不可分一体のものとして批判していかなければならない。すでに、非正規雇用の急拡大と特に若者の不安定雇用の増大、ワーキングプアの急拡大、特に生活保護世帯や母子世帯など貧困層の切り捨て、障害者や高齢者介護の切り捨て、いわゆる格差の拡大と人民大衆の窮乏化が進行している。安倍人気が陰る中で、新自由主義的「構造改革」の諸矛盾が一気に噴出し、人民大衆の中に大きな不安と不満、反発を生み出しているのである。福祉・医療切り捨て、弱者切り捨てと人民収奪の来年度予算案全体との対決が問題になるだろう。

 私たちはこれまで、日本の軍国主義化と反動化に反対し、憲法改悪反対と教育基本法改悪阻止の闘いに全力を挙げて参加してきた。安倍政権をぎりぎりまで追い詰めた全国の、そして国会周辺を埋め尽くした教基法改悪反対闘争を、新たな教育反動阻止と憲法改悪反対の闘いに引き継いでいかなければならない。
 安倍政権は、免許更新制など教職員攻撃を最大の課題の一つとしている。また、教基法改悪を受けて、それらを実現するための地教行法や学校教育法の改悪等に着手しようとするだろう。しかしそう簡単には行かないし、行かせてはならない。日本国憲法を根拠とし、また「不当な支配に服することなく」など改悪教基法でも排除できなかった基本条項を根拠とした新たな闘いが生み出されてくるだろう。大阪では教職員評価育成システムの給与反映という個別課題での裁判闘争が始まっている。
 私たちは、「戦争できる国造り」「国家のために死ねる国民造り」を阻止するために、軍国主義的政策に反対する闘争、改悪教基法の具体化との闘争、日本国憲法を守りその改悪を許さない闘争と連帯し、闘っていきたい。
[紹介]大阪府教委の「教職員評価・育成システム」に反対する訴訟 「新勤評反対訴訟」に支援を! (署名事務局)


2007年1月24日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局