ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(Y)
米ロ首脳会談とモスクワ条約について−−−−−−
米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略


■私たちはこれまで、「ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢」シリーズとして、6月下旬のカナナスキス・サミット、新中東「和平」構想、再び世界政治の焦点に浮上しているイラク攻撃準備、そのイラク攻撃に備え先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権の思惑、中でも核先制攻撃戦略について(6月1日のウェスト・ポイントでのブッシュ大統領の演説、6月10日付のワシントン・ポストに掲載されたすっぱ抜き記事など)、大ざっぱに見てきました。
 今回は5月に行われた米ロ首脳会談とモスクワ条約を評価したいと思います。事務局内部で討論用に準備していたメモ(5月27日作成)をそのまま掲載することにしました。情報は全て5月末段階のものです。少し古いのですが、現在の国際情勢を理解する上で決定的に重要なので、あえて取り上げることにしました。

■私たちも特別に注目してきたように、とりわけ最近のブッシュ政権は、許し難いほど露骨に「使用できる核」などと核兵器を弄び、核先制攻撃戦略を軍事脅迫の手段に使っています。しかしアメリカが核先制攻撃戦略を現実の政策として具体化できるのも、米ロの力関係の変化が背景にあります。その意味で最近の米ロ関係転換の舞台になった米ロ首脳会談とモスクワ条約は重要なのです。
 
■本文の結論部分で書いたように、現在の国際情勢が世界と日本の反戦平和運動に突き付けている課題は、@米による対イラク戦争を阻止すること、A米の先制核攻撃戦略と「核一極支配」の危険性を批判すること、この2つです。私たちが、今必死に闘っている有事法制は、まさにこのようなブッシュ政権の危険な核戦略、戦争政策をバックアップするものなのです。


2002年7月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局





米ロ首脳会談とモスクワ条約について−−−−−−
米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略

2002年5月27日

[1]はじめに−−米による新たな核脅迫の時代の到来。反核の課題が再び前面に。

 ブッシュ大統領は5月22日〜28日にかけて、EU・ロシア諸国を歴訪しました。とりわけ5月24日、ブッシュとプーチンの米ロ両大統領は首脳会談を開き、戦略核弾頭の配備数を現在の3分の1程度、各1700〜2200発に削減する新条約に調印しました。これがモスクワ条約です。

 しかしこの条約は従来の米ロ(米ソ時代を含む)間の核軍縮条約とは根本的に異なる性格を持ちます。核をめぐる戦略情勢を根本的に変えるものなのです。結論を先に言えば、米ロの「核の均衡」を前提とした核軍縮時代が終わり、世界の核管理・核開発・核使用の動向を米一国が主導する時代に入ったのです。もちろん私たちはいわゆる「核抑止論」が米ソ冷戦時代に核軍拡競争の口実にされてきたことをよく承知しています。

 しかし今立ち現れようとしているのは更にもっと危険な状況です。「核抑止」から「核使用」へ−−これがブッシュ政権の核戦略を立案する連中が構想している恐ろしいシナリオなのです。それはアメリカが、事実上一方の核大国ロシアとの事前協議や核軍縮交渉抜きに一方的に核戦略を策定することができる時代、専らアメリカ自身の政治的軍事的経済的な制約に縛られる新しい核時代に入ったことを意味します。

 米による新たな核脅迫の時代、反米諸国に核先制攻撃で恫喝する時代の到来です。私たちは来春と言われるブッシュ政権のイラク攻撃を阻止すると同時に、イラク攻撃での核脅迫そのものをやめさせなければなりません。反核の課題を再び前面に押し出す時が来たのです。


[2]ブッシュのEU・ロシア歴訪と世界情勢の新しい変化の兆し−−ブッシュの軍事的冒険主義的な暴走に弾みを付ける米ロ「準同盟」「新同盟」の危険性。

(1)ブッシュ政権は、米ロ関係を「新同盟関係」「準同盟関係」という新しい段階に引き上げることで、新しいカードを手に入れることとなった。
 ブッシュ大統領による5月下旬のEU・ロシア歴訪の日程そのものにこの新しい戦略関係が反映しています。訪問順序こそドイツに次いで2番目ですが、誰が見ても、4日間を費やしたロシア訪問がハイライトでした。もしロシアとの、笑いが出るほど米に有利な「モスクワ条約」調印がなければ、つまりEU歴訪だけだと、どんなに寂しく「成果」のないものだったか。ドイツでの大規模な抗議行動だけが目立つことになったでしょう。
 この時期、ブッシュは「9・11」とアフガン侵略直後の異常な「翼賛体制」に綻びが見え始めていたときで、中東政策での度重なる失敗、ベネズエラでのクーデタ失敗、カーター大統領による対キューバ政策での後手、そして「9・11」事前警告問題での非難等々で、勢いを失い始めていました。プーチンの思い切った対米協調とモスクワ条約は、ブッシュの外交と内政での相次ぐ失態に助け船を出したようなものです。

(2)米の単独行動主義(ユニラテラリズム)をめぐって米・EU間で政治的外交的対立と外交論争が起こっている。
 対イラク攻撃の執拗な追求、ABM条約破棄、MDの強引な開発。CO2削減と京都議定書問題。それだけではありません。最近先鋭化している鉄鋼セーフガードをめぐる保護貿易主義と貿易・経済戦争等々。米−EU間で対立が激化しています。
 フィナンシャル・タイムズ(5月21日付)に米元大統領補佐官シュレジンジャー氏とEU外交政策担当ソラーナ氏との正反対の主張が掲載されるなど、「大西洋関係」をめぐる大論争に発展しています。パウエル国務長官が5月18日に、「欧州は米国バッシングしている」と異例のEU首脳批判を行いました。
 このような状況から推測すれば、ブッシュは意図的にロシアを優先したものと思われます。クリントン政権初期に、米が対中政策を対日政策に優先させる構えを見せたとき、「ジャパン・パッシング」という言葉で特徴づけられました。これに似た「EUパッシング」なる特徴づけをすることができるかも知れません。
 プーチンのロシアは、ここがチャンスとばかりに、卑屈なくらいブッシュ政権に迎合し自ら進んで目下の同盟者として売り込んだのです。
 ブッシュ政権にとっては、ロシアの取り込みは、政治的に重要な意味を持つものです。すなわち一方では、最近米の単独行動主義に批判・反発を強めるEU諸国を牽制することであり、他方では中国を牽制するカードになることです。

(3)軍事的意味が最も大きい。ブッシュ政権にとって、ロシアの抱き込みは、アメリカの核戦力を中心とする軍事的覇権を完成させるものである。これで米の核一極支配が確立する。
 ブッシュ政権にとって、ロシアの抱き込みは、軍事的な意味が大きいと思われます。何よりもまず第一に、核戦略をより侵略的攻撃的なものに変えることができること、「米の核一極支配」を確立することが可能になるからです。(これについては次の項目で述べます)
 第二に、米・NATO同盟に引きずり込み、軍事戦略一般の分野、通常戦力の分野でもアメリカに対するロシアの対抗姿勢を無力化し牽制することができることです。
 5月15日のNATO外相理事会はロシアとNATO19カ国が対等の立場で参加する協議・決定機関「NATO・ロシア理事会」設置で合意、28日のローマでのNATO特別首脳会議で調印しました。ブッシュ大統領は、23日のベルリン演説で、ロシアを「NATO準メンバー」に加え、中・東欧7カ国の加盟も歓迎することを宣言しました。

(4)更には、ロシアの抱き込みは、経済的にも重要な意味を持つ。アメリカにとって、石油・エネルギー戦略は軍事戦略と不可分一体のもの。
 ブッシュのロシア抱き込みは、更に経済的な意義も持つものです。ロシアと旧ソ連圏中央アジア諸国の石油・天然ガス資源を米ロで共同開発し、IMF・世銀や米系国際金融資本による資金投入でテコ入れすることで、ロシアの石油・天然ガスの対米輸入を大々的に実現することができれば、米の中東依存を減らしOPECを牽制することが可能になるからです。ロシアの対米経済依存が強まれば強まるほど、アメリカに逆らうことができなくなる。ブッシュ政権を牛耳る連中はそう考えているはずです。

(5)プーチンは一線を越えたようだ。自国の基幹中の基幹産業である石油・天然ガス産業を米国資本に開放し売却してでも、対米従属的な対ドル依存的な経済再生戦略に踏み出そうとしている。


(6)もしここで述べたように、ロシアがアメリカの「準同盟者」、「新同盟者」になれば、世界情勢は変わる。ブッシュ政権の軍事的暴走を促進する非常に危険なこと。
 すでにプーチン政権は、対アフガン戦争でブッシュに対する犯罪的な加担者になりました。今回の米ロ会談とモスクワ条約で先制核攻撃戦略に弾みを付けました。またミサイル防衛(MD)も容認に傾きました。対イラク戦争にも頑強に反対しなくなったと言われています。等々。
 しかし何もかもがブッシュの思惑通りという訳ではありません。ブッシュ政権は特にミサイルその他の大量破壊兵器の拡散につながるとの理由でロシア−イラン関係を清算するよう圧力を加えましたが、ロシアはこの点では直ぐにOKを出しませんでした。米国内にもロシアの強硬派・軍部を警戒している者がいますし、ロシア軍部内部にも反米派が残っています。米ロ「準同盟」化はまだ始まったばかりです。流動的で不安定な状況が続くでしょう。


[3]「核抑止」戦略から「使える核」を用いた「先制核攻撃」戦略への転換。

(1)モスクワ条約はこれまでの米ロ(米ソ)核軍縮条約と根本的に違う。わずか3ページ。詳細な規定はない。
 以下はその要約。
@ 米がロシアを「敵」「戦略的脅威」と見なす時代は終わったと宣言、「パートナー」と位置づけた。米がロシアを目下の「準同盟者」として認めた。

A 「削減」を一応唱いながら、2012年までに1700〜2200発という配備数の限度を決めただけ。米側のしたい放題、言いたい放題の内容と条件が付けられている。削減する核弾頭はおろか、大陸間弾道ミサイルなど運搬手段の廃棄も義務づけられていない。削減する核兵器の種類や構成割合も双方の自由裁量に任される。もちろん検証方法などは全く取り決めなし。未だかつてこんないい加減で自分勝手な「軍縮条約」はなかった。「見せかけの核軍縮だ」「これじゃ核軍縮ではなく『配置転換』だ」など非難が上がるのも当然。
−−具体的には、将来の国際環境の変化を口実に(a)廃棄か保管かは自国の自由裁量、(b)3カ月の事前通告で条約を離脱できるとする。これだと国力も経済力もないロシアは「自然減」が不可避になり、アメリカは「保管」、すなわち「再配備」「再搭載」が可能になる。つまり、一発も廃棄しなくても違反にならないということ。これは「核軍縮条約」ではない。
−−現に米はこの新条約調印後も実戦配備の上限の2200発に加えて、すでに削減された弾頭のうち2400発を廃棄せずに保管する方針を既に示している。また別の情報では保管を含めた使用可能な保有数は15000発とも言われている。
−−米ロは冷戦終結後、第一次戦略兵器削減条約(STARTT、1994年発効)で、双方の戦略核配備数を上限6000発ずつまで減らすところまでは合意した。しかし3000〜3500発まで削減するとした第二次戦略兵器削減条約(STARTU)は署名だけで発効に至らず、従って第三次戦略兵器削減条約(STARTV)は全く進展しなかった。
 もし今回の新条約が、核軍縮条約と言うなら、すでに交渉中のこれら戦略兵器削減条約をそのまま交渉妥結にまで持ち込めば良いわけで、新条約を云々する必要は全くない。現に新条約は、2012年までにSTARTUレベルの約3分の2、現行の3分の1の1700〜2200発レベルにまで下げるとしているが、これはSTARTVと同レベルなのである。

B 事実上公式文書で初めてロシアは米ミサイル防衛(MD)を容認した。これまでMDに反対してきたロシア側の方針転換である。もちろんこの裏にはワンセットでABM条約破棄の容認がある。(現に米ロ首脳会談が行われた5月24日から数週間後の6月13日にはABM条約が失効する)
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh02052002.html
http://usembassy.state.gov/tokyo/wwwh3133.html#5_14_1
http://usinfo.state.gov/regional/eur/bush-europe/homepage.htm

(2)米ソ冷戦時代の核大国相互の、核戦略バランスを取ることによる、「相互確証破壊」(MAD)理論に終止符を打った。
 ABM条約は、1972年米ソデタントの中で締結された最も重要な米ソ核軍縮条約です。双方が相手側の戦略核からの防衛を脆弱にし、第2撃能力を確保することで、相互に核使用の衝動力を抑制しようというものです。「相互確証破壊」(MAD)理論と呼ばれました。もちろんこの考え方は反核平和運動が強く批判した「核抑止論」「恐怖の核の均衡」です。

(3)しかしそれに代わるものは何か。それは対ロシアの「核抑止」から「ならず者」途上国に対する「使用する核」への転換である。先制核使用戦略。
 しかしブッシュ政権が昨年12月に一方的に破棄を通告したABM条約の破棄は一体何を意味するのか。それはブッシュ政権自身が露骨に述べたように、「核抑止」をやめ、「核使用」に転換するというとんでもないシナリオを考えているのです。※

※ニューヨーク・タイムズ紙3月10日付は、小型核の開発・配備・使用をUAD(一方的確証破壊)と名付けている。

(4)ブッシュ政権のAMB条約破棄がMD戦略の発動と結合すれば一体どうなるか。米が敵の第2撃能力を心配せずに「使用できる核」を実際に使用することが可能になる。


(5)アメリカによる核脅迫の時代、アメリカがロシアとの交渉や合意抜きに一方的に核兵器体系、核戦力体系を構築できる時代の到来である。
 アメリカは冷戦の終焉後、クリントン政権の1990年代を通じて、@戦略敵については対ロシアから対「ならず者」途上国へ、A攻撃力の中心は核戦力から通常戦力へ−−軍事戦略の矛先と比重をシフトさせてきました。
 ブッシュ政権の新しい時代は、クリントン政権の軍事戦略をもう一度転換しようとするものです。@戦略敵については変わりません。対ロシアから対「ならず者」途上国へ、です。実際、今回の米ロ会談とモスクワ条約は、1990年代の10年間にわたり事実上形骸化してきた「対ロ核抑止」が最終的に「放棄」されたことを意味します。少なくとも、ロシアが対等の抑止相手ではなく「中国」並の扱い、核戦力では明らかに劣位の存在に格下げされたのです。
 米ソ冷戦時代とその余韻が残ったポスト冷戦時代は、核大国どうしの核対決、核対峙が双方の基本戦略になったことは言うまでもありません。ロシアの経済力の急速な低下と衰退、対米協調外交への転換で、軍の中での核戦力のしめる地位はかつてのような決定的な意味を持たなくなっています。
 しかし対ロシアに代わって、対「ならず者」途上国に対する「核使用」「先制核攻撃」が台頭しているのです。その意味でA攻撃力の中心は核戦力から通常戦力へという流れは軌道修正されようとしています。イラクを初め「悪の枢軸」国、「ならず者」途上国への「核使用」を本気で考え始めているのです。米ソの核均衡の下で事実上「抑止」=「使われないこと」が前提になっていた核兵器が、「ならず者」途上国を対象に現実に使われる危険性が現れてきたのです。


[4]イスラエル・パレスチナ情勢の一時的沈静化のもとで世界の当面する軍事政治情勢の焦点は再び対イラク戦争準備へ。

(1)ブッシュ政権は世界平和を根底からぶち壊す政策を次々と打ち出している。
 ブッシュ政権は世界情勢の軍事化、軍事的緊張激化、不安定化に弾みを付けています。アフガンでの掃討作戦の長期化・持続化、米軍の長期駐留、周辺の中央アジア諸国への新たな基地建設、イエメン・スーダン・フィリピン・コロンビア等々、全世界への軍事介入、ベネズエラでのクーデタ関与。等々。
 こうした当面の戦争拡大と軍事介入だけではありません。次の時代を暗い戦争の時代にする攻撃的な戦略の策定と準備です。先制攻撃戦略への転換、「使える核」への核戦略転換、ABM条約破棄、MD戦略推進等々−−ブッシュ政権の軍事戦略は短期的だけではなく、長期的にも、世界中を軍事的緊張の中に陥れ、世界情勢全体を軍事化するものなのです。世界を新しい軍事的戦略的不安定の時代に引きずり込むものなのです。

(2)イスラエルの対パレスチナ大規模侵攻は小康状態に入った。
 シャロンはヨルダン川西岸で殺戮と破壊と暴虐の限りを尽くして、次にガザへの侵攻という寸前で、パレスチナ側の抵抗の強さとイスラエル側の被害の大きさに恐れ、世界中からの、またイスラエル国内からの反対でかろうじて思いとどまっています。
 もちろんその後も軍事的包囲は続いています。ヒット・エンド・ラン方式でのパレスチナ居住地区への執拗な侵攻と殺戮行為、チエック・ポイントでの検問体制強化、占領地を封鎖するフェンス建設等々、その蛮行は続いています。

(3)再びブッシュの対イラク戦争準備が前面に出ようとしている。


(4)ブッシュ政権は最近、米中関係改善にシフトしたかのように見える。しかしこれも対イラク戦争準備の可能性がある。
 米は、台湾への大規模な兵器供与を当面の間凍結する方針決めました。対中関係改善シグナルです。昨春には、大型のキッド級駆逐艦、ディーゼル型潜水艦、P3C対潜哨戒機、機雷掃海用ヘリなど一括売却を決めていたことからすれば軌道修正です。中国が最も反対していた高性能探知システム付きイージス艦の売却についても、今回は見送るが「将来の検討課題」として残しておくと強硬姿勢を堅持していたのです。

(5)北朝鮮との正面切った対決を当面は先送りする方針についても、対イラク戦争準備に向けたものである。


(6)要するに、現在のブッシュ政権の軍事外交政策全体が、今秋あるいは来春と言われている対イラク戦争の準備に向けて展開されている。
 対中政策についても、対北朝鮮政策についても、一時的で戦術的なものと思われます。イラクのフセイン政権を打倒した後には、ブッシュ政権が「仮想敵」「悪の枢軸」と決め付けた残る反米諸国、あるいはアジア最大の競合国である中国に対する「準仮想敵」扱いが、不可避的に前面に出てくるでしょう。


[5]世界と日本の反核・反戦平和運動の諸課題−−ブッシュのイラク攻撃をいかに阻止するか。核使用阻止を前面に掲げ反核運動を再度強化しよう。

(1)ドイツ全土でイラク攻撃反対の大規模反戦行動。
 ブッシュのドイツ訪問を翌日に控えた5月21日、約250団体が加盟する「平和の枢軸」主催の集会とデモがベルリンで行われ、10万人が結集しました。「われわれは米国の戦争も、どんな戦争も望まない」というスローガンのもと、平和団体・環境保護団体・金属産業労組などの労働組合、プロテスタントなどの宗教者、学生、移民団体、民主的社会主義党(PDS)、緑の党などが参加しました。「戦争屋ブッシュのイラク攻撃反対」「悪魔と闘う前に自分を鏡に映せ」「石油利権のために血を流すな」「連立政府は戦争加担より失業対策を」などのスローガンが目立ったといいます。
 ブッシュの訪独反対の抗議行動は、22日もドイツ全国の60都市で行われ、主としてイラク攻撃反対がメインスローガンになりました。
http://uk.indymedia.org/front.php3?article_id=32033&group=webcast

(2)4/20反戦平和大行動を成功させたアメリカの反戦平和ネットワークの一つANSWERは、対イラク戦争を阻止すべく6月1日に緊急の全国反戦会議を呼びかけた。
 眼目は米の対イラク戦争を筆頭にブッシュの戦争拡大をストップさせるために大衆を動員することです。イラク、イスラエルの対パレスチナ全面戦争、コロンビアなど中南米への軍事介入、フィリピンなどアジアへの軍事介入、国内の人種差別と国内弾圧反対なども課題となっています。
http://www.internationalanswer.org/news/update/050102juneconf.html

(3)イギリスでも「戦争ストップ連合」がイラク攻撃阻止を掲げて全国で反戦署名運動を開始した。
 イギリス世論の過半数がイラク戦争に反対し、議会内の反対署名も160人を数え、ブッシュの「プードル」と言われるほど対米追随のブレア首相も無視できない情勢になっています。英核軍縮運動(CND)のノートン議長は、ブッシュ政権が「使える核」の開発と使用を見る限り、核の脅威は逆に高まっていると主張しました。
 そんな中、「戦争ストップ連合」と伝統的な核軍縮運動であるCNDが共闘して、「イラクを攻撃するな!」という署名運動を開始しました。※

http://www.stopwar.org.uk/
http://www.stopwar.org.uk/Iraq%20petition%20word97.doc(署名用紙)

(4)日本と世界の反戦平和運動の任務は重大。ブッシュの対イラク戦争も、新核戦略も、MDもまだ準備と策定の段階である。未然に阻止することができる。
 最近の世界の反戦平和運動の動向を見ても、ブッシュの対イラク戦争と先制核攻撃戦略の脅威と危険をどう阻止するかに集約されています。もう一度当面する諸課題を整理しましょう。
 第一に、何よりもブッシュの対イラク戦争を何としても阻止することです。これを阻止することができれば、ブッシュとラムズフェルド国防長官の新核戦略の野望をその発端で打ち砕くことができるでしょう。
 第二に、「使える核」なる危険きわまりない先制核攻撃戦略を打ち出そうとするブッシュの冒険主義に警鐘を乱打することです。もう一度世界中でブッシュの核使用を阻止する反核世論と反核運動を盛り上げなければなりません。
 第三に、MDを阻止することです。上述したように、MDと新核戦略=核先制攻撃は不可分一体のものです。MDを阻止できれば新核戦略は機能不全に陥るでしょう。MDの一構成部分であるTMDの共同開発と日本周辺でのMD関連配備を阻止することが重要です。
 第四に、シャロンの対パレスチナ全面戦争を一刻も早く集結させることです。パレスチナ人民連帯は反戦平和運動の共通のスローガンとなりました。
 第五に、今われわれが闘っている有事法制を阻止することです。これを阻止できれば、日米軍事同盟強化に打撃を与え、対イラク戦争準備とMD開発・配備に打撃を与えることになるでしょう。新たな核戦略に転換を図ろうとするアメリカへの日本の加担を阻止することによって、ブッシュ政権へ打撃を与えることができるでしょう。




ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢:

(T) カナナスキス・サミットと米ロ「準同盟」化の危険性
    −ブッシュ政権によるイラク攻撃包囲網構築の到達点と反戦平和運動の課題について−

(U) 米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
    −−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、
       「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−

(V) イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権

(W) 国際法・国際条約・国連決議を次々と破り無法者、ならず者となったブッシュのアメリカ
    −− 鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番のならず者はだーあれ −−

(X) [資料編] NHK ETV2000 より 「どう変わるのかアメリカの核戦略〜米ロ首脳会談を前に」