OECD(経済協力開発機構)において、先進29カ国だけで交渉されている「多国間投資協定」です。
アメリカやEU(欧州連合)の多国籍企業が後押しするMAIは「国際投資の自由化」をめ ざしており、多国籍企業により大きな「自由」と「権限」を与えるものです。
MAIは海外に進出している日本の大企業にとっても都合の良い協定ですが、この協定 によって、社会的弱者や途上国の人々の生活は、一握りの多国籍企業に押しつぶされてしまいます。世界規模の大競争に勝つために悪質な労働条件を押しつけ、環境を破壊している企業には、「自由」よりも先に「規制」が必要です。しかし、MAIが実施されれば、各国政府や自治体は住民の生活を守るための規制や政策を実施できなくなります。
このような企業利益優先のMAIに対し、世界各国の市民・NGOは「MAI反対・世界キャ ンペーン」を立ち上げました。このキャンペーンでは、今年4月末に予定されているMAIの締結期限を延長し、MAIの影響をうける市民や途上国の参加のもとで今後の議論を進めていくよう求めています。
私も絶対反対です。MAI
![]() 武者小路公秀 (明治学院大学国際 平和研究所) |
![]() 水原博子 (日本消費者連盟) |
![]() 高里鈴代 (那覇市市会議員) |
![]() 村井吉敬 (上智大学アジア 文化研究所) |
---|---|---|---|
MAIは20年間、大競争を継続する。その間、切り落とされる社会層の生活 の安全は誰が保障してくれるのだろう? | MAIによって企業活動は消費者の求める安全性を無視するようになりま す。このような横暴は断じて許せません。 | MAIによって、女性をはじめとする社会的弱者の人権がさらに侵害される こと、および労働者と環境への悪い影響が出ることを危惧します。 | MAIは「多国籍企業こそが王様」という、とんでもない世界をめざした 協定だから反対です。 |
MAIで何がどう変わる?
国内では・・・
MAIでさらに進む「キセイカンワ」
MAIでは海外からの投資を呼び込むために環境基準や労働基準を緩和することは禁じている。その一方で、投資家が政府を直接提訴できる紛争処理が盛り込まれている。となれば、提訴を恐れ、投資を阻害する可能性のある規制に関しては、あらかじめ緩和しておこうという流れが加速されていく。
また外国企業は、大規模店舗の出店を規制した「大店法」や農地の売買を規制した「農地法」を、投資の妨げとして目の敵にしてきた。MAIによって、規制は緩和する方向に向かうだろう。地域の実情に即して策定される自治体レベルの開発計画、開発規制も、それによって投資が妨げられる場合には提訴の対象となりうるため、緩やかなものとならざるを得ない。
このように、直接環境や労働の基準を下げるルールでなくとも、MAIによって私たち の暮らし、社会、地域を守る規制がどんどん緩和され、私たち一人一人が資本の前に丸裸にされていく。規制強化のための立法行為が投資家の提訴対象となってしまう。恩恵を一部の投資家に集中させるグロテスクな「キセイカンワ」を進めていく、それがMAIの「効用」である。
(神田浩史 地域自立発展研究所:IACOD事務局長)
エチル社 vs. カナダ政府…企業利益 vs. 環境規制カナダで操業する米企業エチル社は、同社の製品、MMT(有毒ガソリン添加剤)の輸 入と国内移動を禁止したカナダ議会の決定に対し、同社が被った損失に対する損害賠償(約315億円)を求めてカナダ政府を提訴しました。このような提訴を可能にしたNAFTA(北米自由貿易協定)の「投資家vs.国家」紛争解決メカニズムは、外国投資家が直接、現地政府を提訴できるようにするMAIの先行事例です。
NAFTAでは、MAIと同様、加盟国政府が投資家の財産を収用(没収)、またはそれと同様の効果を持つ措置を実施した場合、補償を義務づけています。このケースでエチル社が勝訴すれば、各国が適切な環境・社会政策・措置を実施する際には、税金で企業損失を補償しなければならないという先例になります。そして、補償金を当て込んだ類似のケースが続出するようになるでしょう。
エチル社はまた、この法案がカナダ議会を通過する6カ月も前に提訴の可能性を示唆 しており、実質的に可決を阻止しようとしていました。MAIの紛争解決メカニズムが実現すれば、このようにして民主的な意思決定プロセスが私企業に乗っ取られてしまうのです。
途上国では・・・
農村にまで押し寄せるグローバル化の波
自然と共存し、相互扶助や文化、宗教を尊重する生活を送ってきたカンボジアやベトナムの農村にも、80年代になって市場経済がもたらされ、地域社会が分断されました。経済成長のための大規模開発は、与党や有力者を潤わせましたが、農民は土地を奪われ、出稼ぎへの圧力が強まりました。貨幣が浸透するとともに、拝金主義が蔓延し、それが「子売り・娘売り」を生み、都市の性産業を拡大していきました。出稼ぎ労働者となった農民は都市で不安定な生活を強いられ、多くが半失業やホームレス状態となって犯罪の温床を作っていったのです。
MAIは、こうした社会変化に拍車をかけるでしょう。より好ましい生産条件を求めて 投資や移動の自由を保証された企業は、労働者を雇用不安に陥れ、劣悪な労働条件を押しつけます。市場経済がそれほど浸透していなかった農村部でも、近代農業が地域社会の基盤を破壊し、賃金労働と都市部への人口流出が増えるでしょう。農作業の余暇から生まれ、豊かな文化と社会に育まれてきた伝統産業も、もし投資家がもうかると見ればたちまち近代産業に衣替えさせられ、その土地の人々の生活や風土と切り離された大量生産・大量消費の仕組みに組み込まれてしまうでしょう。それでも生きなければならない村人は、ただ機械を動かすだけの存在になってしまいます。自然を失い、本当の意味で「豊か」に生きてきた村人は、生活のため、お金の為だけに働く存在に変えられてしまうのです。人が生きていくための価値観さえ変えられてしまうのです。
(高橋清貴・熊岡路矢 日本国際ボランティアセンター:JVC)
MAIの主な内容
◆投資と投資家(外国企業)の保護−現地政府が収用(没収)を行う際、外国企業への補償が義務づけられる。新たな環境・社会規制などが企業活動を制約することになれば、それも収用と同じと解釈され、その規制による企業損失を政府が補償しなければならなくなる。
◆投資の自由化−外国企業が参入・設立する際に条件をつけることを禁止するなど。ローカルコンテント(現地調達比率)政策、外貨・貿易均衡政策、株式公開・合弁などの参入条件が禁止される。これにより、各国政府や自治体は経済・開発政策を今までのようには実施できなくなる。地場産業は多国籍企業と対等に競争しなければならなくなる。
◆紛争解決メカニズムの設置−外国企業が現地政府を直接訴えられる紛争解決メカニズムの設置。国家財政によって外国企業に多額の補償を行わねばならなくなる可能性が高い。また、外国企業が国内法制の策定過程に影響力を行使できるようになる。
MAIによって投資活動の参入・撤退の自由が高まれば、企業の選択肢や交渉力が拡大 します。企業が海外に逃げ出すことを恐れる先進国政府や、企業を呼び込みたい途上国政府は、法人税の引き下げや自由貿易区の優遇税制によって税の引き下げ競争を行うようになります。
一方、進出企業は、国内法より優先される二国間の租税条約(二国間の二重課税や脱税の防止などのための条約)によって、すでに税負担が軽減されており、国内法人よりも優遇されています。租税条約によるこの優遇措置を残すため、MAIの基本理念である「内国民待遇(*)」を「税制」については対象外とするようです。しかし、投資活動の自由化は、逃げ足の速い企業活動や金融取り引きへの課税をより困難にし、様々な脱税の機会を増加させかねません。よってMAIは租税条約以上の「優遇措置」となります。
* 外国投資・企業と国内企業を同じ待遇で扱う原則
(川上豊幸 APECモニターNGOネットワーク)
1997年7月タイのバーツ危機に端を発したアジアの通貨危機は、アジア各国に暗雲を 投げかけています。1996年に先進国クラブであるOECD入りを果たした韓国までがIIMF(国際通貨基金)の支援を求めたことは、世界中に衝撃をもたらしました。この経済危機のなかで、アジア各国は外貨獲得のための輸出競争を強いられ、ただでさえ低かった労働者の賃金はさらに引き下げられ、一部の工場は閉鎖に追い込まれて失業者が一層増大しています。この危機をもたらした根本原因は外資に依存した経済成長にあり、加えて金融市場の自由化によってもたらされた金融投機が危機を一層拡大したのです。
アジア各国では多国籍企業の投資ならびに金融投機を規制すべきであるという声が高まっています。MAIは、現在はOECD加盟国間で討議されていますが、いずれは世界中に広げていくことが意図されており、そうなるとアジア諸国が自国の経済計画を立案するにあたって、多国籍企業の活動を規制することは協定違反になり、とくに南の国々は海外投資に依存した経済から脱却する道が閉ざされることになるのです。
(井上礼子 アジア太平洋資料センター:PARC共同代表)
WTO / OECD vs. 世界のNGO | |
---|---|
1993年12月 |
GATTウルグアイ・ラウンド妥結。投資関連の協定としては、 貿易関連投資措置(TRIMs)協定とサービス貿易(GATS)協定が成立 |
1995年1月 |
WTO(世界貿易機関)発足 |
5月 |
OECD閣僚理事会がMAIの作成を決定 |
9月 |
MAIの交渉が始まる。OECD金融財政企業局(DAFFE)が事務局を担当。 以後1カ月半に一度、交渉が行われている |
1996年3月 |
OECDによる途上国政府向けのMAIセミナーが開催される(香港)。 以後、ソウル、リオ、リガ、カイロで同様のセミナーが開催される |
12月 |
WTO閣僚会議で多国間投資協定を作ろうとする動きが挫折。 NGOによるMAI批判の声、高まる |
1997年10月 |
OECDパリ本部で「MAIに関するNGOとの協議」が開かれる。 世界のNGOが「MAI反対・世界キャンペーン」を開始する。 |
11月 |
MAIに関して、日本政府と日本のNGOの協議が始まる |
12月 |
OECDパリ本部の前で、NGOによるMAI反対デモ |
1998年 1月 |
OECDでビジネス産業諮問委員会(BIAC)と労働組合諮問委員会 (TUAC)とのMAI協議開催 |
2月 |
日本で「MAIにNO!キャンペーン」始まる |
4月 |
OECD閣僚理事会でMAIが締結されてしまう…? |
ニュージーランドでは……
イギリスはアオテアロア(ニュージーランド)を支配する際、先住マオリ民族との間にワイタンギ条約を結び、マオリの土地や漁業、森林などに対する不可侵の権利を認めました。しかし天然資源に対する先住民族の優先権を認めることは、MAI違反になります。そのため、マオリ民族のグループや労働組合、NGOなどが広範なMAI反対運動を計画しています。
▼まずは 反MAI派から・・
いずれからもMAI草案を入手できます
▼続いてMAI推進派・・・
キャンペーンでは今年4月のMAI交渉に向けて、国内外のNGOと連携しつつ、ハガキキャンペーン、全国キャラバン、署名活動、プレスリリースなどを行っていきます。
「MAIにNO!」キャンペーンの目指すもの
|
〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル3階 Tel 03-3834-2436 Fax 03-3834-2406 電子メール pf2001jp@jca.ax.apc.org ホームページ http://pf2001jp.vcom.or.jp/
アジア太平洋資料センター(PARC)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-30正光ビル303 Tel 03-3291-5901 Fax 03-3292-2437 電子メール parc@jca.ax.apc.org ホームページ http://www.jca.ax.apc.org/parc/index-j.html
APECモニターNGOネットワーク(AMネット)
〒531 大阪市北区国分寺1-7-14 国分寺ビル6階 tel/fax 06-354-6620 電子メール apecngo@mxa.meshnet.or.jp ホームページ http://www1.meshnet.or.jp/~apec-ngo/index.html