コメ関税化についての要請(12月15日)

市民フォーラム2001は、12月15日、中川農水大臣宛に「コメ関税化に関する要請文」を提出しました。内容に賛同してくださった社民党の大渕絹子氏のご協力を得て、食糧庁・農水省の担当者に1時間程度、要請と意見交換を行いました。詳しい内容についてはこちらをご覧ください。

(左から)大渕絹子参議院議員(社民党)、佐久間(市民フォーラム2001)、御地合氏(全日農)、田中(市民フォーラム2001)




 

(右から)山岸晴二食糧庁計画流通部長、谷村栄二農水省経済局国際経済課長補佐、永井春信食糧庁総務部企画課長補佐








コメ関税化についての要請

農林水産大臣 中川 昭一 殿


コメ関税化に関する要請



 私たちは、環境・社会的に持続可能かつ公正な社会システムへの変革を目指す立場から、国内および国際レベルで実施されている、規制緩和・自由化を柱とする現在の経済政策が、国内外の環境と社会全般に与える影響について懸念しています。こうしたグローバル化を促進する諸政策のもとで、概して一部の巨大な多国籍企業への富と権限の集中が進み、FDI(海外直接投資)や金融取引などを通じて内外の民間資本が各国政府の政策決定に過大な影響力を及ぼすようになりました。その結果、各国政府は「富の再分配」や環境保全、労働者保護、社会福祉などの政策目標を達成することが困難になってきていると、私たちは理解しています。

 こうした中、外部不経済をより多く抱える農業分野は、生産性・経済効率という面で不利な立場に追い込まれています。今の経済システムの中で日本の産業構造を国際競争力のあるものとするためには、コストの安い他の国で日本の食料を生産した方が良いということになります。

 しかし今、環境・食料・エネルギーなどのさまざまな面から、これまでの経済発展のあり方が問い直される中、環境・資源的制約を無視した産業構造そのものを変革しなければならないことが明白になってきました。このままいけば、世界的な気候変動や、各地での水不足や土壌劣化、および工業化による農地転用などにより、世界的に食料が不足する事態は避けられず、その結果、人々の生存が脅かされることは必至です。このような状況のもとで、食料自給は各国に課せられた最低限の責務と言わなければなりません。国内農業の解体による環境破壊・地域社会の崩壊などの問題も深刻さを増すことは間違いありません。

 今求められているのは、地球環境と地域環境の両方を守り、地域社会の主権と活力を取り戻すために、これまでの経済のあり方を根底から変革していくことであり、農業・食料問題についても、このような視点から抜本的に再考する必要があります。

 このような考えから、私たちは現在政府が検討している「コメの関税化」が農業貿易の完全自由化に向けた政策の第一歩、つまりは日本政府の農業貿易に関する政策の180度の転換だと認識しております。たとえ数年間は高い関税率を維持できたとしても、関税化は理論的にも農業貿易の自由化を受け入れたことを意味しますし、一旦関税化された品目については最終的には関税がゼロになるまで引き下げ交渉が終わらないことを意味すると理解しています。

 さらに、韓国や台湾を始めとする食料自給をWTOルールによって脅かされている他の国々--特に途上国--が日本の立場の変化の影響を受け、軒並み主要穀物の関税化を迫られる自体は避けがたいと懸念しています。

 このような状況の下、日本政府が取るべき策は、WTOルールの前提である「完全なる自由市場の創設」が環境や人々の生活にもたらす悪影響を論証し、新たな世界共存のための国際貿易ルールの礎となる考え方を明確に提示することであり、日欧米の多国籍企業の言いなりに、砲艦外交と自由主義の併存を認めることではないと考えます。以上の立場から、私たちは、日本政府に以下を要請いたします。

1. コメの関税化の前倒し実施は行わないこと。

2. 農業貿易ルールの策定および実施に関しては、事前に市民に対する情報開示を徹底し、広範な議論とそれに基づく国民的合意の上で決定すること。

3. WTO農業協定の次期交渉をにらみ、新たな農業貿易ルールのあり方について、食料自給・食料の安全性(食料主権)・環境保全・農村社会の再生などを確保することが各国政府の権利であり、また義務であるとする、しっかりとした理論構築を行い、その考え方を交渉各国に広めていくこと。

4. WTO農業協定の次期交渉では、2.で記述した視点に基づき、コメの関税化を受け入れず、さらにミニマム・アクセスそのものを返上すること。



1998年12月15日


市民フォーラム2001事務局長
佐久間智子



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