■食糧庁・農水省に対する申し入れの報告(12月15日)

参加者 大淵絹子参議院議員(社民党)
    増田浩司(社民党本部農水部長)
    御地合二郎(全日本農民組合連合会)
    佐久間智子(市民フォーラム2001)
    田中徹二(グループKIKI)
    檀上理恵(デポジット法制定全国ネットワーク)
 
    山岸晴二(食糧庁計画流通部長)
    谷村栄二(農水省経済局国際経済課長補佐)
    永井春信(食糧庁総務部企画課長補佐)
    

●市民フォーラム2001からの要請

 市民フォーラム2001は、1995年に大阪で行われたAPEC会議をきっかけに「環境と貿易」研究会を発足させ、関連する国際交渉・会合の情報を中心に、メディアに載らない情報を独自の視点で分析・発信してきた。
 今回のコメ関税化の前倒しについては、食料安全保障(少なくとも国家レベルでの自給および食の安全の確保)、環境保全地域コミュニティ保全の、大きく3つの観点から反対を表明する。
 WTOの推進する「自由化」の根拠となっている経済理論は、環境を保全できず、また生産要素の一つでもある労働の移動を認めないなどの点で理論的にも破綻しており、現実的にも今後長く続けられないことはもはや明らかである。この意味で、市民フォーラム2001は農業に限らず、「自由化」の考え方そのものに反対しているが、特に農業は、天候や地形に大きく依拠しており、「競争力」をもちえない性格がある。また、アメリカを中心とした世界政治レベルで「砲艦外交」が行われていることや、国内レベルで国際競争力のある産業を優先する政治が行われていることによって、前出の3つの観点を考慮した長期的な食料・農業政策が実現できていない。
 現在行われているミニマム・アクセス(MA)は、日本政府が「自由化」を受け入れないことに対するペナルティの意味がある。関税化への切り替えは、原則として「自由化」を受け入れることになる。これは日本だけの問題ではなく、現在同じようにコメの自由化を拒否している韓国などの国が、日本という大きな防波堤を失うことになる。
 さらに、今回は「関税化前倒しの可能性」から「前倒し決定」と報道されるまでに3週間程度しかなかった。 議論も不充分であるが、その前提となる情報・報道も不充分である。 

 以上の認識に基づいて、市民フォーラム2001は以下を要請する。


1. コメの関税化の前倒し実施は行わないこと。

2. 農業貿易ルールの策定および実施に関しては、事前に市民に対する情報開示を徹底し、広範な議論とそれに基づく国民的合意の上で決定すること。

3. WTO農業協定の次期交渉をにらみ、新たな農業貿易ルールのあり方について、食料自給・食料の安全性(食料主権)・環境保全・農村社会の再生などを確保することが各国政府の権利であり、また義務であるとする、しっかりとした理論構築を行い、その考え方を交渉各国に広めていくこと。

4.WTO農業協定の次期交渉では、2.で記述した視点に基づき、コメの関税化を受け入れず、さらにミニマム・アクセスそのものを返上すること。

 なお、現在農水省はフードシステム論を楯に海外に食料生産基盤を広げる日本の民間資本(食料産業)を擁護し、家族農家を切り捨てようとしているようにも見えるがいかがなものか。



●山岸晴二・食糧庁計画流通部長からの返答

 ウルグアイ・ラウンドでは「例外なき関税化」として全ての商品の関税化が原則とされた。ここで日本がコメの関税化を受け入れていれば1995年→2000年の間のMA米は3%(1995)から年率0.4%づつ増加し、2000年に5%に達するというスケジュールになっていたはずだが、その時点で関税化を受け入れなかったために、その特例措置を認めてもらう代わりに1995年で4%、以後年率0.8%づつ上昇して2000年には8%のMA米を受け入れねばならないことになった。
 2000年からの農業協定の再交渉は以後何年かにわたって行われるが、この特例措置については2000年中に交渉を終えねばならず、別扱いである。この措置を実施しているのは世界にたった4ヶ国(日本・韓国・イスラエル他)と少数派であり、特例措置を維持するためにはさらなるMA割当率の上昇は避けられない。そのため、関税化をするのかしないのかという議論は先に解決しておき、有利な立場で次期交渉に望む方が有利である。また、来年度から関税化することで1999年には7.2%、2000年には8%に増加する予定のMA米を、それぞれ6.8%、7.2%に押さえることができ、実質コメ輸入量の減少につながる。
 1999年4月から関税化するためには90日前、つまり8今年中にWTO事務局に決定を通告しなければならないために今の時期に議論が起きているが、コメ関税化はウルグアイラウンドが妥結して以降、常に選択肢として存在していたので、今年突然浮上したという批判は妥当でない。
 農水省としては、食品加工・流通業界も非常に重要だと考えているが、軸足はあくまで日本の農業にあり、食品資本だけを優遇しようとしていると見るのは間違いである。


●大淵絹子参議院議員(社民党)の意見

 島村・前農水大臣は「新しい農業貿易ルールを確立」することの重要性を強調していたが、今回の決定は既存の農業貿易ルールに盲従したに過ぎない。将来的に世界全体の自給率の低下は避けられず、こうした視点から世界農業貿易ルールを抜本的に改革して行かねばならないのが本筋である。
 今回の突然のコメの関税化は前倒しではなく、(1995年に関税化しておけば逆に今よりもずっと低いMAで済んだということを考えれば)後倒しであり、戦略的ではない。去年も一昨年もコメ関税化という選択肢はあったわけで、今年になって突然それが具体的に言われるようになったことにも違和感がある。


 最後に、情報開示と国民的議論・合意なしにコメ関税化およびあらゆる政府決定を行わないよう、繰り返し要請し、要請を終了。



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