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2005年5月10日発行204号ピースネットニュースより

愛国主義教育はいらない!
子どもが自由でいきいきと学べる学校と社会を!

ピースネット・市民平和基金 青山 正

 若い世代と話すとやはり新鮮な感じがしますね。と言うと唐突ですが、先日久しぶりに修学旅行での体験学習の一環で、ある地方の中学生たちがピースネットを訪れて、1時間の私の「平和を考える授業」を受けてくれました。以前にも小学校・中学校の修学旅行生を3回受け入れたことがありますが、わずか1時間の間にどれだけこちらの思いを伝えられるか、いつも悩むところですし、やはりこちらも緊張します。そもそも官庁とか新聞社とか大手のNGO・NPOに交じってどうしてピースネットのようなちっぽけなところが訪問先として選ばれるのか謎なのですが、それでもいまだに続いていることを考えると、悪い評価は受けていないのだろうとかってに判断しています。
 その中学生たちが来た時の話ですが、今回の訪問先としてたぶんみんながピースネットに来たいと思ってたわけではなく割り当てでたまたま来ることになったのでしょうし、以前来た小中学生たちも多くは同様に割り当てでピースネットに来て感じで、話をちゃんと聞いているのか、不安な時もありました。それでも毎回必ず一人か二人は私の話を理解してくれ、こちらが驚くほどきちんと反応してくる子どもたちがいました。またかつての例では小学校できちんと平和教育に取り組んで、その一環として訪問してくれたところもありました。今回来た中学生たちにまず東京に来て感じたこと、楽しかったことを尋ねると、「ディズニーランド」や「アメ横」に行ったことなどが挙げられました。中に一人「ピースネットを訪問することが楽しみでした」と言ってくれて、リップサービスでしょうが、おじさんとしてはつい感激してしまいました。それとみんなが言っていたのが「人の多さにびっくりした」ということでした。彼らにはまだ純朴な感じが残っていて、これだけ情報が氾濫して東京も他の地方も違いがあまりなくなっていると思っていた今の日本でも、まだまだ東京の悪しき部分に染まっていないところもあるようです。
 今、日本の教育はそのあり方が大きく問われています。「学力低下」を招いたとしてこれまでの「ゆとり教育」の見直しが叫ばれ、一方で教育の「規制緩和」として企業化も進行し、そして戦後の教育政策の根本を揺るがす「教育基本法」の改悪の動きも進んでいます。前号でも触れましたが、教育の基本に愛国心を据えようというこの改悪の動きは、この間の学校現場での「日の丸・君が代」の教師・生徒への強制と併せ、今後の日本の教育のあり方に大きな暗い影を落としています。どう考えても今後の日本の教育政策は、子どもたちが本当に自由に、そしていきいきと学び・遊べる学校や社会の実現とはほど遠いように思います。日本が抱える暗雲は学校を覆っているだけではなく、4月25日にJR福知山線で死者107名、負傷460名という大惨事を引き起こしたJR西日本の労働者の人権や人間性、そして乗客の安全を無視した管理・運営体制にも象徴されているように大企業や社会全体にも存在しているのではないでしょうか。
 中学生を相手にした私の話の最後に李政美(イ・ジョンミ)さんが歌う金子みすゞさんの詩「私と小鳥とすずと」の歌のCDを聞いてもらいましたが、国語の教科書にも載っていたらしく、私の平和論の最後に「みんなちがって、みんないい」というこの歌を聞いてもらった意図も何となく理解してくれたのではとかってに思っています。わずか1時間の出会いだけでは伝えられることは限られていますが、それでも普段の学校の授業ではおそらく触れられない視点を少しは伝えられるのでないかと思い、こういう機会をこれからも大切にしたいと思います。そして愛国主義・国家主義的な考えを教育の柱に据えようというような動きを変えていきましょう。

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