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2005年4月10日発行203号ピースネットニュースより

日本を覆う暗雲
国家主義・復古主義の動きと憲法改悪の道を止めよう!

ピースネット・市民平和基金 青山 正

 東京は桜が満開ですが、私たちが置かれた現状ではとても華やいだ気分にはなれそうにもありません。(とは言え心は明るく前向きでありたいと思うので、表紙のイラストは桜で明るいものにしました)韓国や中国では反日デモや日本商品の排斥運動が広がり、激しさを増しています。それはそれぞれの政府の意向を含んだものだとしても、韓国や中国の市民の間に日本に対する怒りが充満しているのは間違いがなく、その原因を創ったのはどう考えても日本側にあります。竹島の領有権問題や教科書の検定問題、そして日本の国連安全保障理事会の常任理事国入り問題などが立て続けに表面化したことが、中韓などアジア諸国の人々の怒りをかったのは明らかです。そしてその背景には過去の戦争責任を結局は曖昧にし、それどころか「新しい歴史教科書をつくる会」などの日本の加害責任を一切否定するような「自虐史観批判」が日本で広がりを見せている現状があります。
 教科書からは問題となった扶桑社の「新しい歴史教科書」だけではなく、他社のものも「慰安婦問題」や「強制連行問題」などの記述が減り、明らかに戦争責任を自覚する方向とは逆の流れが出てきていることに、アジア諸国の人々が不信感を募らせるのは当然です。それに加え憲法の改悪に向けた動きが着々と進み、自民党の新憲法起草委員会の要綱もまとまりました。その中心が憲法9条の改悪にあります。同要綱では9条2項を改定し、「自衛のための自衛軍を保持する」と明記し、集団的自衛権については解釈を容認するとしています。また国防を国民の責務とし、家庭等を保護する責務や親を敬う精神の尊重など、当初の「義務」という表現ではなくなったものの、極めて復古主義・国家主義的な草案となっています。現在すでに祝日法改正案が衆議院を通過してしまい、このままでは2年後から4月29日の「みどりの日」が「昭和の日」に変えられてしまいます。かつての昭和天皇の誕生日を「みどりの日」としたこと自体が問題ではありますが、それをさらに「昭和の日」と変えてしまうことは、今の日本の危うい状況を象徴しています。
 今の日本のあり方はアジア諸国の人々にとって危ういだけではなくて、日本の私たちにとっても危険なものとなっています。学校現場での「日の丸・君が代」強制は、教師だけではなく、児童・生徒に対しても向けられ、内心の自由・表現の自由はいとも簡単に否定されています。現在の憲法ですら守られていない日本で、もし自民党の考える憲法の改悪がなされたら一体どうなるでしょうか。国家のための「責務」を強いられ、内心・良心の自由も省みられない社会を私たちは望みません。今だって実質的には存在していないに等しいような思想・表現の自由や基本的人権は、本来民主主義のもっとも基本ですが、それすらも否定されかねません。そういう日本の状況を私たちは何とか変えていきたいと思います。改悪を止めるだけではなく、本来の民主主義を自分たちで創り出していきましょう。明るく、そしてしなやかに。

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