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2004年3月10日発行191号ピースネットニュースより

自衛隊イラク派兵がもたらす日本社会の重大な問題
そのカギを握るチェチェン問題に注目を! 今こそ平和を求めよう!

ピースネット・市民平和基金 青山 正

 自衛隊のイラク派兵が実施に移され、次々と自衛隊員がイラクへと送られていきました。そしてそれと連動して日本でいくつかの重大なことが起きています。ひとつは2月27日に立川自衛隊監視テント村に対して加えられた弾圧です。1ヵ月以上前に行った自衛隊官舎への反戦ビラの配布が住居侵入にあたるとして、不当な6ヵ所の家宅捜索と3名の事後逮捕者を出すという信じがたい弾圧事件が起きました。これは市民として当然な言論・表現の自由への許しがたい侵害であり、イラク反戦・派兵反対を理由とした政治的な弾圧です。そういう中で行われる自衛隊の派兵がいかに異常であり、大きな問題であるかを示しています。そしてイラクへ送り込まれる自衛隊員やその家族が、自ら疑問や批判をはさむ余地がないままに派兵が実施されることは悲劇であると思います。
 そしてイラク派兵を急いだ政府・自民党は次は、憲法9条の改悪に向けた動きの手始めとして、防衛庁を「防衛省」へ昇格させるための法案の準備を始め、また憲法改正のハードルを低くするための「憲法改正・国民投票法案」の準備と来年11月の新憲法草案策定の準備にも入りつつあります。教育基本法の改正案の提出も自民党はあきらめていません。昨年成立した有事法に続き、着々と海外派兵・戦争参加体制を支える国内の法整備体制作りが進められつつあります。
 そして、本来こうした政府・与党の動きに警鐘を鳴らすべきマスコミの報道姿勢は、残念ながら極めて頼りのないものとなっています。かつて「スパイ防止法」と称する「国家秘密法」が出た時には、私たち市民とマスコミ・言論界は連携をとって広範な反対運動を行って法案を葬ることができました。それも遠い昔のようです。
 こうした日本の状況の一歩先を行っているのが、チェチェン戦争を行っているロシアです。今月大統領選挙を迎えるロシアでは内閣総退陣により首相が変えられ、後任はプーチン大統領の息のかかった新首相が据えられ、いよいよプーチン独裁体制が確立していこうとしています。すでにマスコミの大半は政府系となりプーチン政権への批判の道を封じられ、独立系のメディアは存在できなくなりつつあります。議会もプーチン政権与党が大半を占めました。経済界に対しても野党の資金源となっていた新興財閥の代表者が次々と逮捕されたり、指名手配され、締め付けを強めています。このようにロシアで起きているプーチン政権の強権政策は、第2次チェチェン戦争の進行と共に進んできました。チェチェンでの殺戮と人権侵害を見過ごしてきたロシア社会で進んだ強権政治は、反テロの掛け声の元で世界に広がりつつあるのではないか、と私は危惧してきました。日本の状況もその一歩手前かもしれません。
 軍事力や強権政治に頼る勢力が世界に広がるのならば、それと正反対の平和と真の民主主義を願う市民も協力しあう必要があります。イラク戦争と占領の矛盾が明らかになり、米英においてもその大義が問われている中で、私たちは世界の市民とともに非暴力にねざした平和の実現をめざして歩んでいきましょう。その課題のひとつとしてぜひチェチェン問題の平和的解決も広く訴えていきたいと思います。

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