今までに策定した法案

労働者派遣法の一部を改正する法律案に対する修正試案

1999年4月21日
大脇雅子

一 臨時的・一時的な業務に係る労働者派遣の制限

1 派遣元事業主は、現行の適用対象業務(専門的業務等の26業務)以外の業務については、次のイからハまでに掲げる場合を除き、労働者派遣を行ってはならない。

イ 派遣先に雇用される労働者が休暇、休業等により業務に従事しないこととなった場合において、当該労働者の代替として労働者派遣を行うとき
ロ 派遣先における業務量が一時的に増加した場合において労働者派遣を行うとき
ハ 3年以内に完了することが予定されている業務について労働者派遣を行うとき

2 派遣先は、現行の適用対象業務以外の業務については、1のイからハまでに掲げる場合を除き、労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

3 派遣先は、現行の適用対象業務以外の業務について労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、派遣元事業主に対し、1のイからハまでに掲げる場合のいずれに該当するかを明示しなければならない。

4 2又は3に違反した派遣先については、企業名を公表する。

※ 高年齢者に係る労働者派遣事業の特例及び育児休業等取得者の業務について行われる労働者派遣事業の特例は、存続させる。

二 派遣労働者の適正な就業条件の確保等

1 賃金

(1) 派遣元事業主は、派遣労働者の賃金については、その就業の実態、派遣先において派遣労働者と同種の業務に従事する通常の労働者との均衡等を考慮して定めなければならない。

(2) 派遣先は、労働者派遣契約の締結に当たっては、あらかじめ、派遣先において派遣労働者と同種の業務に従事する通常の労働者の賃金を派遣元事業主に明示しなければならない。

(3) 派遣元事業主は、派遣労働者から請求があったときは、(2)の賃金及び当該派遣労働者に係る派遣料金の額を当該派遣労働者に明示しなければならない。

(4) 派遣元事業主は、(3)の請求をしたことを理由として、当該派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(5) (2)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

(6) (3)又は(4)に違反した場合についての罰則を設ける。

2 福利厚生及び教育訓練

(1) 派遣先は、診療所、給食施設等の施設であって、現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものについては、派遣労働者にも利用させなければならない。

(2) 派遣先は、派遣先の業務遂行上必要な教育訓練であって派遣元事業主が講ずることができないものについては、派遣労働者に対し当該教育訓練の機会を確保しなければならない。

(3) (1)又は(2)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

3 労働者派遣契約の内容

(1) 労働者派遣契約の締結に際して定めなければならない事項として、次の事項を加える。

イ 派遣料金
ロ 診療所、給食施設等の施設であって現に派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものについての利用に関する事項
ハ 派遣先の業務遂行上必要な教育訓練であって派遣元事業主が講ずることができないものについての機会の確保に関する事項

(2) 労働者派遣契約の当事者は、(1)の派遣料金の額を定めるに当たっては、1の(1)による派遣労働者の賃金が確保されるものとしなければならない。

(3) 派遣元事業主は、あらかじめ、派遣労働者に対し、(1)のロ及びハを明示しなければならない。

(4) (2)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

(5) (3)に違反した場合についての罰則を設ける。

4 適正な派遣就業の確保

派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、派遣先における通常の労働者との均衡等を考慮して、適切な業務上の指示、適切な就業環境の維持等必要な措置を講じなければならない。

5 性別又は年齢に係る事項の定めの禁止

(1) 労働者派遣契約の当事者は、労働者派遣契約の締結に際しては、業務の遂行上性別又は年齢に係る事項が必要であると認められる場合として労働省令で定める場合を除き、派遣労働者の性別及び年齢に係る事項を定めてはならない。

※ 高年齢者のみを派遣労働者とする派遣元事業主である場合においては、性別に係る事項を定めてはならないとする。

(2) (1)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

6 事前選別の禁止

(1) 派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けるに当たっては、事前に、派遣労働者の選別を行ってはならない。

(2) (1)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

7 派遣先におけるセクシュアル・ハラスメントに係る配慮義務

派遣先は、当該派遣先の職場において行われる性的な言動に対する派遣労働者の対応により当該派遣労働者がその就業条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該派遣労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上及び指揮命令上必要な配慮をしなければならない。

8 派遣先による中途解約等の制限

(1) 派遣先は、労働者派遣契約により派遣されている派遣労働者に係る派遣期間の満了前に当該派遣労働者から役務の提供を受けないこととなった場合においては、当該派遣労働者に対し、当該派遣期間の残期間分の賃金に相当する額を支払わなければならない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は派遣労働者の責めに帰すべき事由による場合においては、この限りでない。

(2) 派遣先は、労働者派遣契約により派遣されている派遣労働者に係る派遣期間の満了前に当該派遣労働者から役務の提供を受けないこととなった場合においては、すみやかに、当該派遣労働者及び派遣元事業主に対し、当該役務の提供を受けないこととなった理由を記載した書面を交付しなければならない。

(3) (1)又は(2)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

9 就業の機会の確保等

(1) 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について、各人の希望及び能力に応じた就業の機会及び教育訓練の機会を確保しなければならない。

(2) 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について就業の機会を与えるに当たっては、業務ごとに待機期間の長い労働者から順に与えるように努めなければならない。

(3) 派遣元事業主は、その常時雇用する派遣労働者について、派遣先において従事させる業務がない場合においては、当該派遣労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならない。

(4) (3)に違反した場合についての罰則を設ける。また、裁判所は、(3)に違反した派遣元事業主に対して、付加金の支払を命ずることができる。

三 常用雇用労働者の代替防止

1 専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われる労働者派遣事業の是正

(1) 労働大臣は、専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として労働者派遣事業を行う派遣元事業主が、第48条第2項の規定による勧告に従わないときは、当該派遣元事業主に対して、期限を定めて、当該勧告に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。

(2) (1)の処分に違反した場合についての罰則を設ける。

2 派遣労働者への転換の制限

(1) 派遣元事業主は、その雇用する労働者を派遣労働者としようとした場合において当該労働者の同意を得られなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(2) 事業主は、その雇用する労働者を当該事業主以外の派遣元事業主に雇用される派遣労働者として転籍させようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨を明示し、その同意を得なければならない。

(3) 事業主は、(2)の同意を得られなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(4) (1)又は(3)に違反した場合についての罰則を設ける。

3 派遣先に雇用されていた労働者に係る派遣就業の制限

(1) 派遣元事業主は、派遣労働者が派遣される日以前の6ヶ月以内に派遣先に雇用されていた場合、当該派遣労働者を派遣することはできない。

(2) (1)に違反した場合についての罰則を設ける。

4 専門的業務に係る労働者派遣契約の更新の制限

労働者派遣契約の当事者は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務に限る。)に係る労働者派遣契約を更新するときは、派遣期間が継続して3年を超えないものとしなければならない。

※ 労働者派遣契約で定める派遣期間の制限については、第26条第2項で規定している。

※ 現行の適用対象業務以外の業務に係る労働者派遣については、政府案で1年の上限が設けられる。

5 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関し必要な事項は、労働省令で定める。

四 派遣労働者の個人情報等の保護

1 秘密を守る義務

(1) 派遣先(その代理人、使用人その他の従業者を含む。1及び2の(1)において同じ。)は、正当な理由がある場合でなければ、労働者派遣の役務の提供を受けたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。派遣先でなくなった後においても、同様とする。

(2) (1)に違反した場合及び派遣元事業主(その代理人、使用人その他の従業者を含む。2の(1)において同じ。)が正当な理由なく秘密を漏らした場合についての罰則を設ける。

2 個人情報の保護

(1) 派遣元事業主は、労働者派遣に関し、労働者の個人情報を収集する場合には、当該労働者の年齢、健康状態(労働省令で定めるものに限る。)等その業務の目的の達成のために必要ではない情報として労働省令で定めるものを収集してはならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。

(2) 派遣元事業主は、労働者派遣に関し、その収集した労働者の個人情報を保管し、又は使用するに当たっては、当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。

(3) 派遣元事業主及び派遣先は、正当な理由がある場合でなければ、派遣労働者等について知り得た個人情報を他に漏らしてはならない。派遣元事業主及び派遣先でなくなった後においても、同様とする。

(4) 派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者等から、当該派遣元事業主又は派遣先が保有している個人情報であって当該派遣労働者等に係るものの開示を請求された場合には、正当な理由がない限り、これを拒んではならない。当該個人情報の全部又は一部の訂正、追加又は削除を請求された場合についても、同様とする。

(5) 派遣元事業主及び派遣先は、(4)の請求をしたことを理由として、派遣労働者等に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(6) (3)又は(4)に違反した派遣先については、企業名を公表する。

(7) (5)に違反した場合についての罰則を設ける。

五 派遣先による派遣労働者の雇用責任

1 派遣先は、次の(1)及び(2)を満たす場合においては、労働者派遣契約で定める派遣期間が経過した日以後、当該派遣労働者を、派遣先における通常の労働者であって同一の業務に従事するものとして雇用しているものとみなす。

(1) 派遣期間の満了時において、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務に継続して1年間以上従事することとなる派遣労働者が、当該派遣期間が経過した日以後、派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを希望する旨を、当該派遣期間が経過した日の前日までに当該派遣先に申し出た場合

(2) 派遣先が、労働者派遣契約の更新がされていないにもかかわらず、派遣期間が経過した日以後引き続き、イの申出をした派遣労働者を当該同一の業務に就業させている場合

2 派遣先は、次のイからハまでに掲げる場合には、当該派遣労働者(当該派遣先のために初めて派遣就業をした日から起算して2週間以内に、当該派遣先に雇用されることを当該派遣先に申し出た者に限る。)を、当該申出があった日以後、派遣先における通常の労働者であって同一の業務に従事するものとして雇用しているものとみなす。

イ 一の2に違反して労働者派遣の役務の提供を受けた場合
ロ 二の6に違反した場合において労働者派遣の役務の提供を受けたとき
ハ 労働者派遣契約で定める業務以外の業務に派遣労働者を従事させた場合

3 1又は2により派遣先が雇用しているものとみなす場合においては、当該派遣労働者と派遣元事業主との間の雇用関係は終了したものとみなす。

※ 派遣期間の満了に伴う派遣労働者の優先雇用に関する規定(政府案第40条の3)は、併存させる。

六 労働保険及び社会保険の加入状況についての明示

1 派遣元事業主は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、当該契約の相手方に対し、派遣元事業主の事業所における労働保険及び社会保険の加入状況及び派遣労働者への適用状況について明示しなければならない。

2 1により明示を受けた契約の相手方は、派遣元事業主が労働保険又は社会保険に関する法律に違反しているおそれがある場合には、当該契約を締結しないようにしなければならない。

七 法令の周知義務

1 派遣元事業主は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の労働省令で定める方法によって、派遣労働者等に周知させなければならない。

2 1に違反した場合についての罰則を設ける。

八 派遣元事業主に対する指導・助言及び改善命令

1 労働大臣は、一から七までに違反した派遣元事業主に対し、指導又は助言をすることができる。

2 労働大臣は、派遣元事業主が一から七までに違反した場合において、適正な派遣就業を確保するため必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、派遣労働者に係る雇用管理の方法の改善その他当該派遣労働者派遣事業の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

3 2による処分に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。




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