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第 147 国会報告
労働・社会政策委員会
2000年5月23日 14 号

会社分割に伴う労働契約の承継法案: 参考人質疑


○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。

きょうは、参考人の方々に貴重な御意見をいただきまして、私どもの審議に多大の示唆をお与えいただきましたこと、ありがとうございました。

まず、小谷野参考人にお伺いをいたしたいと思います。

小谷野参考人は、この会社分割で行われる法規制というのはいわゆる正規労働者を対象にした氷山の一角であって、その下には重層的な下請中小企業の労働者の権利の問題というものがなおざりにされているのだという重大な指摘をなさいました。

下請労働者が会社分割などでこうむる影響、それからそういう現場で下請労働者が持っている権利の限界について、もし先ほど触れられました日産や太平洋セメント以外に事例がございましたら、そうした事例を挙げながら具体的にさらにお述べいただけるでしょうか。

○参考人(小谷野毅君) 二つの例を申し上げたいと思うんです。一つは、会社分割の例でも金融機関の会社分割、これが代表例として取り上げられましたので、それにちなんでということではないですが、金融機関の例を挙げたいと思うんです。

これは、具体名を挙げますが、三和銀行の例です。銀行の場合は、行員の食事のために行内に食堂を持っているわけです。三和銀行の場合は、この間のリストラで行員のための食堂、この調理部門をもとは正規雇用された労働者で調理をしていたのですが、最近になってこれを下請化しました。業務委託をして別会社化にしたということになります。そうすると、そこに働いている労働者は三和銀行に雇われている労働者ではなくて三和銀行が業務委託をした東興フーズという下請会社の従業員ということになります。

ところで、この東興フーズでは去年来労働条件の改悪提案がなされました。これは、銀行が合理化を進めるので給食調理部門も合理化をしたいということで、月給制を時間給制に移行させる、それから諸手当を廃止する、それから労働時間を従来は六時間だったのを七時間に延長する、こういったいわば労働条件の不利益変更が提案されたんです。

ところが、この不利益変更は明らかに三和銀行の業務体制の再編に伴って行われるものなのに、東興フーズはもちろん団体交渉を拒否しています。と同時に、三和銀行に対してもそこに働く労働者は団交申し入れをしていますが、直接の雇用関係がないからということで団交が拒否をされているんです。

この事例は端緒的なものだと思います。例えば、会社分割の代表例として説明をされている興銀と第一勧銀と富士銀行の三行統合でできるみずほフィナンシャルグループの場合を考えても、個人部門、法人部門、投資部門というふうに各部門ごとに事業子会社を再編してつくるんだと説明をされておりますが、具体的に言うと、同一の地域に重複をしている店舗を整理するということが真っ先に行われるんだと思うんです。

例えば、大手町などは各行の店舗が集中をしています。ターミナル駅には各銀行の店舗が集中をしています。これらが皆整理統合されると、例えば、富士銀行の店舗だけを残して一勧の店舗、興銀の店舗が廃止されるということになれば、そこの給食調理部門で働いていた業務委託会社の労働者は恐らく廃業のために職を失うということが生じるのだろうと思われます。

このことについて、現行の法制度の中では、残念ながら直接雇用関係のある使用者にしか団交権を応諾する義務を認めていませんから、幾らフィナンシャルグループに団交を申し入れても、それは直接のお雇いになっている会社と団交をおやりください、このように言われるのではないかと懸念をしているわけです。

したがって、冒頭述べましたように、実質的に雇用労働条件に影響を与えるもの、これについては団交権を認めるというふうに判例でも法理が確定をし始めていますから、会社分割というまさに雇用の問題に直接かかわる問題については、分割する会社が下請労働者からの団交権を認めるように措置すべきだろう、このように考えるわけです。

同じように、二つ目の例として派遣労働者の問題があります。

派遣法は昨年規制緩和をされました。しかし、例えば銀行とか商社といった恐らく会社分割を利用するであろうと思われる主要な産業の事務部門では、多数の派遣労働者が今日実質的に常用代替されて働いているわけですね。つまり、臨時的、スポット的に派遣されているのではなくて、ほぼ常用雇用労働者と同じように通年的に働いている派遣労働者が非常に多い。

昨年の派遣法の改正では、これらの派遣労働者が一年以上継続的に働く場合には正社員に道を開くんだという措置がなされましたが、もし派遣の途中で、つまり一年未満の期間のときに分割をされた、そしてその派遣契約は打ち切られたということになった場合は、派遣労働者は一年間を超えて働き、そして正社員になる道を、みずからの選択とは別に、分割の都合によって奪われるということになりかねません。

こういった点から考えてみても、正規雇用労働者だけではなくて、その業務の実態を担っている下請とか非正規雇用労働者の権利保護のための交渉権の確立が必要だと考えています。

○大脇雅子君 先ほど、持ち株会社は利潤追求の最良のツールだといってさまざまなマニュアル本が売られているという御指摘がありましたが、持ち株会社が利潤を追求していくということになりますと、今まで直用の中での労使関係というのを基本としていた日本の企業風土、企業の労使関係というものにどのような影響が生ずるとお考えでしょうか。そして、下請労働者の立場に立ちますと、どのような法制度を望まれるのか、述べていただきたいと思います。

○参考人(小谷野毅君) 企業風土というお尋ねなのですが、私は、戦後の経営者の代表的な人格の方々、例えばソニーの盛田さんであるとか松下電器の松下幸之助さんといった方々は、企業の社会的責任について非常に敏感であったというふうに考えています。

例えば、松下幸之助さんを私は別に弁護するつもりはありませんけれども、松下さんは非常な啓蒙家ですから、企業のあるべき姿についてさまざまなところで講演を重ねました。その中で、企業というのは公共の存在であるということを非常に力説して、二つのことに留意すべきだと。一つは、労働者に対する雇用責任を果たさなきゃいけないし、福利厚生を重視しなきゃいけない。もう一つは、国民の暮らしに役立つ行動をしなきゃいけない。こういうことを力説されていました。

残念ながら企業の多くは、私は企業性悪説をとるつもりはもともとないですけれども、労働者の雇用責任をないがしろにしたり、あるいは市民社会の利益に反するような行動をしばしばとるというのは、七〇年代の公害、最近の薬害エイズ、こういった事例を語るまでもなく、枚挙にいとまがないと思うんです。それを規制する最大の担保は何かといったら雇用責任だと思うんです。

ところが、こうした雇用責任をないがしろにした現実、どういうことが起きているか。例えば、昨年起こった山陽新幹線のトンネルの崩落事故の件を考えてみたいと思うんです。

建設産業というのは非常に下請化が既にもう他の産業に先んじて進んでいますから、七割、八割は下請化されている。つまり、ゼネコンというのは事実上の持ち株会社と同じような事業経営をしていて、下請の末端の労働者の雇用に責任を果たさずに利潤追求をしているわけですね。

そうすると、利益目標を一次下請会社に与える、一次下請会社は二次下請会社に利潤目標を与える。このようにしてくると、末端の下請会社は、与えられた予算の範囲の中で予算以上の工事をこなすために、手抜きをしたり労働者の雇用労働条件を切り下げたりするわけです。その結果、粗悪なコンクリートが使われたり、手抜き工事が横行するというのは、この間の欠陥工事の事例や品質問題が雄弁に物語っているのだと思います。山陽新幹線のトンネル事故はまさにそのようなことではないかと思います。

あるいは、昨年世間を騒がせたジェー・シー・オーのウランの事故にしても同じだと思います。立派なマニュアルがあっても、現場で実際に働いている人たちは平気でバケツの中でウランをかきまぜていて、あのような大事故を起こすのだと思います。

このように、雇用責任を免れるという、そしてその結果、企業の最大利益を追求するということは、国民生活にも大きな被害を与えかねないという懸念を強く持ちます。

○大脇雅子君 具体的なそうした状況が現出されようとする今、どのような法制度を求められるのかということについて、加えて御説明ください。

○参考人(小谷野毅君) 二つの点で意見を述べたいと思います。

一つは、先ほど八田委員のお尋ねにもありましたけれども、まず、日本の物づくりの仕組みがどのような雇用形態のもとで行われているかという点について、例えば主要な株式公開企業に限ってで構いませんから、現実に一つの物づくりの中にどのような労働者がどのような形でかかわっているのか、これについて立体的な調査をぜひとも労働省が率先してやっていただきたいと思います。

同時に、先ほども述べましたが、この間のリストラで大企業の労働者は希望退職とか早期退職勧奨制度などで一定のソフトランディング措置が講じられているわけですけれども、下請系列企業では雇用問題がどのように処理をされたのか、こういうこともぜひ調査をしてもらいたいと思います。

二つ目には、そうした調査の上に立って、立法の目標としては、やはり下請業者の経営を保護すること。それから、下請労働者が、会社分割に限ってで構いませんので、親会社と会社分割の問題、その影響するところについて労使協議ができる制度をつくってもらいたいと思います。

同時に、持ち株会社に対しても団体交渉ができるような、そのような立法の道を切り開いていただきたいと考えます。

○大脇雅子君 奥川参考人と坂本参考人にお尋ねしたいんです。

奥川参考人は、事前事後に行われるリストラが問題なのだという御指摘がありました。坂本参考人は、分割の事前に労働者を移すことによってその分割法制を潜脱するという危険性があるという御指摘がありました。

営業に従事する基準として主従の判断基準が用いられておりますが、例えば労働者の従事すべき営業への配置転換の時期とか研修、教育訓練を受ける時期等を利用した労働者への差別的な取り扱いや選別、あるいは複数組合併存下における不当労働行為など、労働法上違法とされる問題が分割をめぐって起きるのではないか。そういう場合に、いわゆる違法な配転によって主たる従事者あるいは従たる従事者の異動が行われて、労働者がその配転の結果、異議を申し出る機会が失われたりするという形で、やはり大きな問題を生じるのではないか。

先ほど、事後の不利益取り扱いについては詳細な法理論を伺いましたが、事前にそれを潜脱して行われる事象に対してどのような法規制が必要かということについてお尋ねをしたいと思います。

○参考人(奥川貴弥君) 今、大脇先生が御指摘のように、企業がとるかもわからない手段が非常に多岐なんですね、考えられるのが。能力の問題だとかいろいろ理屈をつけて、十分考えられる。ですから、僕今ちょっと聞かれて、この辺をこういうふうに立法化すれば大丈夫じゃないかというような案が即座には出てこないんですが、今回の承継営業を主たる職務とする労働者が、実質的にそうである人たちが本当に移れるように、少なくとも事例を幾らか挙げて、附帯決議か何かの中に今先生がおっしゃったような事例を挙げて、脱法行為が行われないように附帯決議をするというようなのが今の段階では一番適切ではないかなと。日ごろ僕らが不当労働行為事件をやっておって今の事件を扱っておると余りにも多岐過ぎるんですよね。ですから、それを全部網羅して立法化していくというのは非常に困難を伴うのじゃないかというふうに思っています。

○参考人(坂本修君) 同意権を認めるということが一つはそれを解決する非常に大事なことだとは思っています。

しかし、大脇先生の今の御質問に対して、少なくともこんなことは考えられないだろうか。主従の問題で、あらかじめ社内配転などをしておいて女性を排除したり、会社の気に入らない少数組合を排除するということを防ぐためには、あるいは高年齢者を排除するなどということを防ぐためには、主従というこの会社の認定基準をどうするかということを法律に客観性を持たすこと、それから、例えば一年前なら一年前までさかのぼっての認定になるのだということで、直前移行型を阻止するための規定を設けること、その辺が多少は役に立つだろうかということです。

最後に、今奥川参考人も言われましたが、附帯決議というのは法文に比べれば弱いのですけれども、整理解雇の四要件などの趣旨を徹底するという趣旨の附帯決議が衆議院でされております。それ自体はそれでいいことなんですが、それは単に判例上の基準だけではなくて、例えば労組法とか、雇用機会均等法とか、それからILOの国際条約とか、そういう公序をやはりきちっと周知徹底し、公序に違反にならないようにということを、あり得るケースですから、附帯決議に盛り込むことが必要なんじゃないかと。

一点だけつけ加えますと、その点で、やはり女性の議員がこれだけ多く質疑されているということについて時代の進歩というのをしみじみ思いますけれども、余り議論されていないのは、二千万の女性は男性に比べてはるかに劣悪な労働条件で無権利の中で働いているのです。そして、今までの分社化を使ってのリストラなどでは、私の取り扱ったものでも、著名な大商社で二千人の女性労働者を一気に派遣労働者にしようとしたり、防ぎましたけれども、さまざまな問題が起きています。ですから、家庭責任を持つ労働者、均等法上の配置の問題なども頭に置きながら、やはりそういう権利が損なわれないように周知徹底するのだという附帯決議をしておくことは必要だというふうに思います。

企業の個人の経営者の方に個人的な悪意や偏見があるのではありません。しかしながら、利潤を追っていく社会というのはルールがなければ無限定の暴走になるんですね。これは盛田さん自身が、ソニーだけでやるとナショナルに負けてほかに負けるから、やっぱりそういう規範をつくってくれというのが亡くなられた盛田さんの論文でした。

よく弱肉強食のジャングルのおきてだというふうに言いますけれども、ジャングルでトラやオオカミは自分の必要とする量を食べればもう食べません。ジャングルには自然のルールがあります。中野好夫先生がたしか、人はけものにしかずと言いましたけれども、経済の仕組みというのは最低のルールをつくっておかないとやはりだめだということだと思います。何もかもがんじがらめにしろと言っているのではなくて、解雇規制、EUの既得権指令、それからフランスやあちこちで始まりました週三十五時間規制、それからパート労働者の給与が平均労働者の時間給より下回ってはならないという規定、すべて文明社会はその方向に進んでいるのです。

だから、企業分割法あるいは承継法を考えるときに、やはり世界はそういうルールを求めている。ルールなき資本主義と言われる日本がこれ以上のルールを破壊しないように、附帯決議を含めて、ありとあらゆる方法で参議院が役割を果たしていただくことをお願いしたいと思います。

○大脇雅子君 ありがとうございました。

成瀬参考人に一点お尋ねをしたいのですが、会社分割が行われる場合に、労働者への理解と協力を得るということで労使協議というのは有効な方法だと言われました。しかし、画一的な規制になじまないので、いわゆる労使の自治に任せていただきたい、こういう御発言でございますが、労働者としては、そうした場合にどのように協議の情報開示がされるのか、あるいはどのような会社側の理解と協力を求めるための行為があるのか、どこまで信頼をしたらよいのかという不安に駆られていると思います。

したがって、日経連としては、そうした労働者への理解と協力を求めるために、各企業に何らかの指示あるいは何らかの文書、そうしたものでどういう方向づけをされようとしているのでしょうか、お尋ねしたいと思います。

○参考人(成瀬健生君) 労使の協議につきましてはいろいろな形がございますが、労使コミュニケーション調査などによりますと、約七割ないし八割ぐらいの日本の労働者はこれにカバーされているという数字が出ておりますし、また労使協議の回数というふうなものの平均で見ましても月一回以上という程度の数字が出ていると私は記憶いたしております。実際、日本では労使協議制が、何も法律は実はないんですけれども、非常に普及して、しかも有効に機能しているというのが国際的に見ても注目されているというのが現実だと思うわけでございます。そういう一つの環境条件もございます。

そうした中で、日経連としましては、この理解と協力を得るように努めるということにつきましては徹底してキャンペーンを行い、傘下の企業の方々を含め、企業の理解を得るように努力をしてまいりたいと思っております。

○大脇雅子君 前回に引き続きましてさまざまな点を確認させていただきたいと思います。

会社分割にかかわって使用される営業の全部または一部の概念規定について、定義の定め方によって労働関係の一部を除外することがあってはならないという考えから前回質問させていただきました。

営業概念については、最高裁判所等の判例を参考にしながら、事業の組織的経済活動が有機的一体性を持って機能するための物的財産に限らず雇用されている労働者も含むという答弁として受けとめましたが、どうでしょうか。

本法三条によりますと、承継される営業に主として従事する労働者につきましては分割計画書等の記載で承継を認めているわけですが、では、分割計画書等への記載の仕方として、記載形式等については具体的にどのように考えていられるのでしょうか。

○政府参考人(小池信行君) 会社分割の対象となります営業には、物的財産だけでなくて、それが組織的、有機的に機能するための必要な労働者も含まれる、これは委員御指摘のとおりでございます。

これは分割計画書に記載することによりまして承継をされるということになるわけでありますが、その記載の方法でございます。これは抽象的に言えば、どういう労働関係が承継されることになるのか、それを特定できるように記載をするということになるわけでございます。

具体的にはその個人名を記載すればこれは最も明確になるわけでございますが、必ずしもその個人を記載しなければならないというふうには考えておりませんで、例えばある一つの工場や一つの支店がまとまった独立の営業としての単位を持っている、そういう機能を果たしているという場合には、例えば○○工場に勤務する労働者あるいは○○支店に勤務する労働者というような記載の仕方でも十分特定に足りるかなというふうに思っております。

○大脇雅子君 会社分割に関しては、債権者の権利として分割無効の訴えが定められております。

まず、通常の債権者の分割の無効を主張する場合というのは、具体的にはどのような無効原因を想定しているのでしょうか。

また、分割計画書等の情報の開示がなされた株主総会の二週間前から株主総会六カ月後の閲覧期間中で、どのような手続と分割及び設立会社の対応があるのでしょうか。

無効と判断された場合の対応はどのようになるのでしょうか。

○政府参考人(小池信行君) 御質問は三点あったというふうに理解をしております。

まず、債権者が分割無効を主張し得る場合はどういう場合かということでございますが、分割を承認しない債権者は、分割無効の事由があるときには訴えをもってその効力を争うことができる、つまり無効を主張することができるということになるわけでございますが。

考えられますのは、例えば会社が債権者に対して官報による告示をしなかった、そういう手続を怠ったというような場合。それから、債権者が分割について異議を述べた後に、会社がその債権者を害するおそれがあるにもかかわらずそのおそれがないとして弁済や担保の提供などの行為をしなかったという場合。さらには、事前開示が義務づけられております債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面、これに虚偽の記載がされている、つまりそこに表示された財産の評価額の判断を誤らせるようなそういう表示があった場合。これは債権者が分割無効の訴えをすることができるというふうに考えております。

二番目に、株主総会の二週間前、これはいわゆる事前備え置き書面が本店に備え置ける日でございますが、それから総会の六カ月後までに債権者がどのような手続をとるのか、会社がどう対応するかという御質問だったと思います。

これは幾つかございまして、まず、会社は株主総会の開催の日の二週間前から分割計画書等の書面を備え置かなければならない。債権者はいつでもこれを閲覧することができるということになります。

それから、会社は株主総会で会社分割の承認議決がされた日から二週間以内に債権者に対しまして、分割にもし異議があれば、一定の期間、これは一カ月を下ることができないとされておりますが、その期間内に異議を述べるべきと、そういう旨を官報をもって公告する、かつ、その知れている債権者については個別に催告をしなければならないということになっております。

債権者は、これを受けて、もし分割に異議があるならば異議を申述することができる。その場合には、その債権者を害するおそれがない限りは、その会社の方はその債権者に対して弁済をしたりあるいは担保を提供したりしなければならない、そういうような対応があるということになるわけでございます。

最後に、分割が無効になった場合でございますが、これは、その分割の無効の判決が確定するまでの間に形成された第三者との間の法律関係はこれは影響を受けない、つまり遡及効がないということになりまして、将来にわたって分割の効力が否定されるということになるわけでございます。

その場合、では、既存に生じた法律関係が一体、債権や債務がどうなるかということにつきましては、分割が新設の分割であるのかそれとも吸収型分割であるのかということによって変わってまいりまして、新設型の分割であります場合には、その分割無効の判決までに承継会社が取得いたしました財産はこれは分割した会社の方の所有に属するということになりますし、それから負担した債務もまたその分割した方の会社が負担をするということになります。それから、吸収分割であります場合には、これはその承継した会社が取得した財産は両方の会社の共有ということになりますし、負担した債務については双方の会社が連帯債務を負う、そういう関係になります。

○大脇雅子君 そうしますと、労働者は無効になったときにはどういう取り扱いを受けることになるのか。また、労働者が分割無効を主張できる場合にどのような場合があるんでしょうか。例えば未払い賃金の仮払いを求めて労働委員会に救済申し立てをした場合や、そしてバックペイを命ずる地労委の救済命令が出た場合など、無効を主張できるんでしょうか、債権者として。

○政府参考人(小池信行君) 労働者の未払い賃金債権であるとか、あるいは既に勤務した期間に対応する退職金債権であるとか、あるいは社内預金債権であるとか、そういう債権を持っている場合には、これは債権者として分割無効の訴えを提起することができるということになります。

無効の事由としては、分割手続の瑕疵が重大であるという場合にはこれは無効の訴えの提起が可能でございます。

それで、問題は、その訴えを提起する際に、そもそも労働者がその主張している債権を持っているかどうかということについて会社との間で争いがあるというケースがあり得るわけでございます。しかし、その場合でも訴えの提起をすることは可能でございます。しかし、最終的に分割無効の判決を得るためには、これはその訴訟の手続の中で債権の存在することが認定されなければならないということになります。ですから、例えば労働委員会に救済命令の申し立てをしている、これは現にその債権の存在に争いがあるという場合であろうと思いますが、その場合でも訴えの提起は可能でございます。しかし、今申しましたとおり、最終的には債権の認定が必要と。

それから、労働委員会から既にバックペイを命ずる救済命令が出ているというような場合には、その分割無効の訴訟の中で債権の存在が最終的に認められる蓋然性がかなり高いだろうというふうに思います。

○大脇雅子君 分割の効果が遡及効がないということになると、非常に複雑な労働関係が、労使の関係が出てくるのではないかというふうに思いますが、これはちょっとペダンティック過ぎる質問かもしれませんが、営業に主として従事しているとして設立会社等へ移る旨の事前通知を受けた場合に、労働者自身は分割による設立会社とか吸収会社へ行くことを希望しない、残留したい、したがって労働者の自分の判断では営業に従として従事しているんだというふうに考えた場合に、労働者が分割会社への残留を求めることができるでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 主として従としてという判断基準は省令及び指針で定め、運用上明らかにすると申し上げましたが、それを一義的には使用者が見てこの労働者はどちらに当たるか判断をします。その際に、労働者と使用者の見解が違ったという場合は、これはできるだけよく話し合っていただいて、話し合いを通じて決めてもらうことが一番いいわけですが、ぎりぎりの話になりますと、最終的には裁判所の判断を待つということになろうかと思います。

○大脇雅子君 営業に従事する基準として主従の判断基準というのが用いられるわけですが、例えば労働者の従事すべき営業への配置転換の時期とか、あるいは研修や教育訓練を受ける時期、そしてそれらを利用して労働者へ差別的な取り扱いと選別がされた場合、複数組合併存下における不当労働行為など、労働法上違法あるいは意図的なそういう処遇が行われる可能性があります。どの点で判断をするのかというような点で、労働者が配転について異議を申し出る機会が主従のそうした移動の中で機会を失うことがあってはいけないのではないか。

先ほど、参考人のところでも、事前には多様な対応があって、計画書作成前の会社の行為について合理性のない配転とか不当な動機や著しい不利益を伴うようなそういう配転によって問題が起きるので、例えばEUの指令などでは一年前というような規制があるんだよという御意見がありましたが、この点はどのように解釈、運用されるおつもりでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 今御指摘の、例えば不当労働行為に当たるような配転があったというケースになりますれば、例えば労働委員会に救済を申し出たり裁判所に訴えたりということになって、そうしたケースでは労働組合法に照らし、あるいは配転に関する判例法理に照らして労働委員会あるいは裁判所において無効という決定がなされることも十分あるわけです。そうした場合には、無効の決定を受け、使用者が労働省令、指針等をよくよく見て労働者について改めて主従の判断をするということになります。

この点につきましては、先生御指摘のようにEU指令では一年間といういわば保護規定があるわけですが、今回の承継法案の策定に当たっては、今申しましたように従来の仕組みで処理をしていくことが当面適当ではないかということで、特段の措置は講じなかったところであります。

○大脇雅子君 そうしますと、ともかく今言われたとおり、省令とか指針をしっかりつくっていただくことによって、紛争が起きないように、そして労働者の権利が侵害されないようにということが重要であろうと思われますので、この点を十分留意しておつくりいただきたいというふうに思います。

次は、会社分割によって包括承継される労働契約の労働条件は、新規設立会社の場合には分割会社の就業規則が新たに作成されても労働条件がそのまま維持されなければならないのではないかと考えますが、どうでしょうか。新たに作成された就業規則の内容が不利益変更された場合が生じるとすれば、労働契約が包括承継されるという意味がなくなってしまうのではないかというふうに思います。この点についても、一年以内に不利益変更をすることが許されないというEU指令もあるわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回、労働契約承継法案の性格として会社分割制度そのものと同じように包括承継ということをたびたび御説明いたしておりますが、それから当然の帰結として、分割会社から設立会社等に承継された労働契約については会社分割の効力発生時においてその内容を維持したまま承継されるということになります。そうした意味では、分割会社における就業規則が分割時点においてそのまま設立会社等に承継されるということになりますが、一方、就業規則によります労働条件の不利益変更という問題がございまして、それにつきましてはこれまで最高裁で判例が幾つか出され、それの考えに従って判断されていくことになろうかと思います。

具体的に申しますと、最高裁判例におきましては、就業規則の変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されないということがまずはっきりしております。そうした大枠の中ではありますが、当該変更された就業規則が合理的なものであるということが客観的に言える場合には、客観的にと申しますには、当該事業場のいろんな事情を総合判断して合理的であるというものである限りについて、個々の労働者がその変更された就業規則に同意できないということを理由にその就業規則の適用を拒否することはできないという判例がございますので、そうした考え方に従ってこの就業規則の不利益変更の問題は判断し取り扱われるものと考えます。

したがいまして、この不利益変更の問題は、会社分割におきます包括承継の効力の問題とは別の問題として考えていくことが現実的に必要であり、またそうでなければならない、こう思っております。

○大脇雅子君 今御説明がありました最高裁の判例の秋北バスの原則であろうかと思いますが、しかし包括承継して限りなく密接した時期にその就業規則の変更ということが行われれば、現場においては労働者の権利の擁護といいますか、不利益変更に対する保護がなかなか難しい場合も十分あるかと思いますので、これもまた指針とか省令で、判例に任せるのではなく、むしろそのことを明記していっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

それから、株主総会の決議に基づく会社分割の決定通知は二週間前に告知し、総会の六カ月後まで閲覧が可能になっていますが、債権者の財産的な損害については債権を担保する措置を講ずるということ等で閲覧期間内に対応できるというふうに考えられるわけですが、労働者の雇用とか労働条件の変動、しかも非常に激変の可能性に対処しなければならない労働者とか労働組合にとっては、分割決定に至るまでにできるだけ早い時期に会社と協議する重要性はどんなに強調しても強調し過ぎることはないと考えるわけです。

とりわけ純粋持ち株会社の場合の意思決定についてはどのようにかかわるか重要な問題であります。二週間前というのが非常に短過ぎる、そして、労働者の事前協議を効果的に行おうとすれば、協議の実効性を確保するための事前の一定の合理的な期間について、ガイドラインなど設置が必要だと考えるわけですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 私どもが労働者等への通知義務を株主総会の開催される二週間前までといたしましたのは、まさに株主が分割計画を知る時期との均衡を考慮したものであります。したがいまして、法制的にそれより早くということは非常に困難だろうというふうに考えておりますが、これまで議会におきまして修正されました商法の改正、承継法の改正の条項におきましてかなり柔軟な労使の話し合いがなされることをいわば期待し担保する措置がとられておりますので、この中で、先生御指摘のような点については、労使合意のもとでできるだけ労働者の身分の変更等についての本人に対する情報の伝達あるいは協議についての十分な期間がとれるような措置がなされることを期待しているところでございます。

○大脇雅子君 できるだけその点についても、将来的にはガイドラインなどをきちんと、労使自治というふうに先ほどの参考人は言われたんですけれども、周知徹底していただく必要があるのではないかというふうに思います。

次は、団体交渉と労働協約についてちょっと確認をしたいんですが、債務的部分とか制度的な部分については、その分割会社と労働組合との合意に基づいて分割計画書等に記載をすればそれは除かれる、そして合意に達しなかった部分は同一内容の労働協約が締結されたものとみなすという構造になっていますが、合意に達しなかった場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。また、そもそも第六条一項の場合で、分割会社が分割計画書等に記載しなかった場合に労働組合がとり得る措置というのはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。

○政府参考人(澤田陽太郎君) まず前段の、労働協約のいわゆる規範的部分以外の部分について、労使間で話し合ったけれども合意がなされなかった場合ということにつきましては、この第六条の第二項が適用されませんので、六条三項の基本的な条項に戻って、分割会社と設立会社において同一の内容の労働協約が締結されたものとみなすというところに行き着きます。

それから、そもそも分割会社が労働協約そのものを分割計画書等に記載しなかった場合、これは同じく六条三項のまさにみなすという条項が働くことになります。

○大脇雅子君 会社分割に伴う労働契約及び労働協約の承継のシステムについて第二条で、当該分割会社が雇用する労働者とされています。そうしますと、派遣労働者の取り扱いがまず問題になります。

すなわち、先般の改正で認められた臨時、一時的業務に関する派遣労働者が、派遣期間中に会社分割が行われたときは、一年を超えて正社員になることを希望する場合に、その派遣労働者にとっては当然の期待権を失うということになり、分割の前後の期間は当然通算すべきであると考えますが、これについてはどのような保障があるというふうに解釈したらよろしいのでしょうか。

○政府参考人(渡邊信君) 派遣労働者の派遣中に会社分割が行われて、設立会社がその派遣契約を承継したというときには、設立会社が派遣先の地位を承継するということになります。そこで、今御指摘の一年の期間についても、設立会社について条文に基づくいろいろな指導、勧告等を行うということになろうかと思います。

○大脇雅子君 雇用の多様化、流動化が進む中で、パートとか臨時的形態で働く労働者がありますが、この場合、主たる業務に従事している労働者は非常に多いということになります。本法案はそのような労働者の雇用労働条件の保障はぜひとも必要であり、保護に欠けることは許されないと考えますが、大臣の明確なお考えを伺いたいと思います。

○国務大臣(牧野隆守君) ただいま御審議いただいております法案は、会社分割に際して必要な労働者保護を図るものでございまして、本案の労働者にはパートタイム労働者や臨時労働者も当然に含まれ、いわゆる正規労働者と同様の保護が図られるものであります。

○大脇雅子君 十分その旨を徹底していただきたいと思います。パートや臨時的な形態で働く労働者が会社分割において正社員と異なって差別的取り扱いが行われないように、通達など明快に書いていただきたいと思います。

ちょっと時間もありますので、もう一問追加させていただきます。

これまで労働事件において、親会社、子会社の支配従属関係とか、企業合併、営業譲渡などの場合に、労働者の代表や労働組合の代表が親会社に団体交渉を申し入れても実効ある解決に至るのが非常に困難な場合が多く見られてきました。例えば純粋持ち株会社である場合とか、あるいは、直接の労使関係がないことを理由に当該分割会社の労働者や労働組合、下請中小零細企業の労働者や労働組合が団体交渉を拒否されるようなことは十分予想されるわけです。これまでの判例の蓄積からどのように考えているのか。

私は、直面する権利や労働条件の変動に対処するために、交渉、協議を実現する手だてを早急に講ずるべきだと考えるものでありますけれども、その点について御意見を伺いたいと思います。

○政府参考人(澤田陽太郎君) 労働組合が団体交渉を行うその相手方は使用者、一般的には労働契約上の雇用主、これが必要であるということが基本でございます。したがいまして、一般的に申しますと、たとえ親子会社という関係でありましても、それぞれが法人格を認められておりますので、親会社に子会社の労働者に対する使用者責任を認めることは困難であると考えます。

ただし、雇用主以外の事業主が基本的な労働条件等につきまして雇用主と同じ程度に現実的に支配、決定することができる地位にある、こういう場合にはその雇用主以外の事業者であっても使用者性が認められて、団体交渉応諾義務が生じる場合があるということが最高裁判例で出されております。ただ、その認定につきましては、個別の事案ごとにそれぞれの事実関係を総合的に勘案して判断されておりまして、一般的に適用し得る基準を定式化することは現時点では困難であるというふうに考えておりますし、また現実の親子会社の関係もさまざまでございますので、現行規定におきます使用者の解釈で柔軟に対応を図っていくことが当面妥当ではないか、こう考えております。

この点につきましては、純粋持ち株会社解禁を図るために独禁法改正がなされた際に、純粋持ち株会社解禁に伴う労使関係の問題について専門的な学識経験者で研究をするようにという国会の附帯決議をいただきました。

それを受けて、私ども二年間ほどこの使用者性の問題も含めて学識経験者だけではなくて労使も入れて議論してまいりましたが、昨年の秋に一応の報告が出されました。そこも結局、現在の今申しました判例における考え方を現実に適用して妥当な解決を図っていくことが当面必要ではないか、もうしばらく純粋持ち株会社だとか企業組織再編等の中でこうした親子関係における団体交渉の問題が実質的になされるような状態を確保するにはどうしたことが必要か、これは少し様子を見ようという結論になっておりまして、私どももそういう立場で今おるところでございます。

ただ、今法案の審議を通じまして、企業再編に伴う労働者保護の問題については学識経験者を中心とする検討の場を設けるということを私ども再三申し上げておりますので、そうした中でも検討メンバーの御意見も伺いながら、こうした問題も俎上にのせて議論をしていくことになるのではないかというふうに考えております。

○大脇雅子君 今のお答えというのは非常に大きな意義を含めていると思います。企業営業譲渡を初め、企業組織の再編に伴う労働者の保護の諸問題については、これから審議会、研究会等、立法上の措置を含めて進むわけですが、ぜひこの団交の応諾義務の問題についても含めて御検討をいただきたい。最後にその点について労働大臣の御所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(牧野隆守君) 先ほども局長が答弁いたしましたとおり、先生の御趣旨を十二分に尊重して検討してまいりたい、こう考えております。

○大脇雅子君 終わります。

   ─────────────

○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、内閣提出の本委員会審議に係る会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案について、反対の立場で討論を行います。

バブルがはじけた後、長引く不況は多くの中小零細企業の倒産と整理、淘汰をもたらし、あるいは中高年労働者に対するリストラが強行され、この三月期の最悪の完全失業率四・九%で、完全失業者は三百四十九万人に及んでおり、この四月期は新規学卒者で未就職者も加えて完全失業率の更新、完全失業者数の増加は必至と予想されています。

本法案は、その提案理由にありますように、会社分割制度を創設するため、今国会に提案されています商法改正法案にあわせ、これと一体のものとして、労働者の保護を図ることを目的としております。

この会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案提出の意義については私もよく理解できるところであります。しかしながら、本法律案は次の点でいまだ不十分であり、課題を抱えているという意味で私は反対するものであります。

第一に、商法上の営業概念の規定、及びその営業に主として従事するあるいは従として従事するかによる労働者の振り分けが行われる構造となっていることが、この間の審議で、主従の基準を労働省令、指針でできるだけ客観的に明示することが明らかになっていますけれども、会社の分割に伴って意図的な労働者の選別を通じた差別的取り扱いが生じる可能性が払拭し切れていないことであります。

第二に、労働契約締結の当事者を変更する場合の原則である民法第六百二十五条一項の特別規定として本法が制定されております。

しかし、民法第六百二十五条一項は強行規定であり、この強行規定を除外するということの意味は、形成権として異議申し立て権を認めていますものの、憲法二十二条の職業選択の自由、労働者の不利に強行規定を変更することができないという労働法の基本原理との間に疑義があるからであります。事前の協議と情報開示が明確でない場合、異議権の実効性ある権利行使が可能かどうか、にわかに評価することが困難であります。

第三に、労働協約の承継に関する手だては講じられていますが、長い間の労使関係の中で構築された労使慣行の重要性にかんがみた配慮に欠けていることであります。

また、分割会社に移った個別の労働条件変更については、就業規則変更の判例法理に従うということのみで、一九七七年のECの事業移転の指令のように一年以下は不利益変更してはならないという規制がありません。また、このことにより紛争の未然防止に手抜かりがあるのではないかということを危惧いたします。

第四に、例えば会社分割を決定するのが純粋持ち株会社である場合には、直接の労使関係がないことを理由に、当該分割会社の労働者、労働組合や下請中小零細企業の労働者や労働組合が団体交渉を拒否されることは十分予想できることです。

それは、直接の労使関係がないことを理由に団体交渉や協議を拒否され、結果として、雇用が奪われたり労働条件の切り下げが行われたりし、あるいは長い裁判闘争を余儀なくされる労働者や労働組合の苦難を見過ごしにできないからであります。

第五に、会社分割に伴って雇用不安や労働条件の劣悪化がもたらされるおそれがあるのは、分割会社の正規雇用労働者だけではありません。分割会社で現に働いているパート労働者、派遣労働者、臨時雇用の労働者等の雇用が確保されるための万全の対策が講じられるべきであることも指摘しておきたいと思います。

以上で討論を終わります。



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