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第 147 国会報告
金融経済活性化に関する特別委員会
2000年5月22日 11号

農協金融二法案


○大脇雅子君 それでは、農協金融二法案につきまして一点、先回質問をさせていただこうと思って時間がなかった点についてお聞きをいたします。

先般、農協の将来というものについてどのように位置づけていくかという大臣の御抱負を伺ったわけでございますが、系統信用事業の中で農林中金というのは米国の格付会社からも非常に高い格付が得られております。農林中金が九八年にまとめた報告書の「信用事業の組織整備の基本的考え方」というのによりますと、今後の農林中金の役割として、高い格付を維持しつつ、海外運用、国内大都市圏等での融資、運用商品への投資等、収益確保分野への経営資源の重点的な投入ということで安定的な収益還元を行うという方針が打ち出されております。

しかし、農林中金の役割といたしましては、例えば農協の貯貸率の低さということも背景にあるとは思いますけれども、相互扶助組織のよさということをどのようにそれを支援していくのかという点において、一般の都市銀行その他のような形での展開ということは、果たして質の高い農林漁業の振興のためにどういう意味を持ってくるのか、それについてどのように農水省としては指導を行おうとしているのかということについてお尋ねをいたします。

○政務次官(金田勝年君) ただいま委員御指摘の、農林中金が今後とも農林漁業に対する役割を果たしていくためにどういうふうに指導していくかという観点だと思うんですけれども、これにつきまして、農林中金は、申し上げるまでもなくて、農林漁業の系統金融機関の全国組織といたしまして、農林漁業団体等への貸し出しを通じまして農林漁業振興に直接寄与しているわけでありますし、また、農林漁業団体への収益還元を通じまして農山漁村、農林漁業の振興に貢献しているところであるわけであります。

我が農林水産省としましては、農林漁業関連産業への資金供給、そして農林漁業団体への収益の還元ということを農林中金が安定的に行っていくというためには、やはり農林中金の業務運営に当たりまして団体の意見が的確に反映されるようにしていきたい。そしてまた、適正な引き当て償却あるいは自己資本の確保、そしてリスク管理体制、法令遵守体制といったものを確立すること等によりまして経営の健全性の確保を図っていくということが非常に重要だと思っておりまして、私ども農林水産省としましては、これらを通じて農林中金が先ほど申し上げましたような本来の役割を的確に果たしていくことができるように適切に指導してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。

○大脇雅子君 それでは、保険業法の改正につきまして一点気になっていることをお尋ねしたいと思います。それは更生特例についてであります。

保険会社に係る更生特例法を整備することによりまして早期処理が可能となり、これによって保険契約者の負担が従来より軽減される見込みだと言われております。だから、この早期処理に当たっては、保険会社みずからが事業経営が困難である旨の監督当局への申し出の義務づけや、保険会社みずからが申し立てない場合の監督当局による更生手続開始の申し立ての権限というものがあるわけであります。早期処理を行うためには、その実効性の確保が何よりも重要だということであります。そして、多様な処理を可能にするということも重要であろうかと思います。そのために、例えば早期是正措置に更生手続開始命令を取り込む必要があるというふうに考えられますが、その点についてはどうでしょうか。

○政府参考人(乾文男君) 今お話ございましたように、御審議いただいております法律案が成立いたしますと、保険相互会社に対しましても会社更生手続が適用されることとなりますけれども、この更生手続は、会社自身が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき、あるいは破産の原因たる事実、例えば支払い不能でございますとか債務超過でございますとか、そうした事実の生ずるおそれがあるときには、手続開始の必要性の有無をみずから判断いたしまして自発的に申し立てることが原則的な対応として想定されているところでございます。

また、この法案が施行されますと、保険会社は、業務または財産の状況に照らしまして保険業の継続が困難であるときは、監督当局への申し出が罰則つきで義務づけられますとともに、保険会社がみずから申し立てを行わない場合には当局による申し立ても可能となるわけでございます。

このような手続が整備されますと、私ども、更生手続への移行は遅滞なく行われることとなると考えておりまして、早期是正措置に更生手続開始命令を盛り込むことは必ずしも必要ではないと考えているところでございます。

○大脇雅子君 確かに運用上はそういうふうな形で対応されて自発的な更生手続開始ということがなされればいいわけですけれども、なかなかにそうした処理の可能ということについては疑念がありますので、やはり法的にはそれを問題にしなきゃならないのではないかと私は考えるわけであります。

さて、現代の社会における保険事故の多様化、そして死亡保険というものから総合的な保障化というふうに、国民の生活にいわゆる保険というのは非常に組み込まれつつあると私は思うわけであります。自己責任の強化という傾向が強まる中で、二十一世紀の保険業界というのはどういう姿になるのだろうか。

今、生保業界の危機が叫ばれておりまして、保有契約高の減少化というのが進んでおりますけれども、それはやはり生保に対する非常に不信というものもあり、保険金詐欺事件というのが多発する中で、この犯罪というのはやはり機構的なものもあるのではないかというふうに考えるわけです。

今回の保険業法改正法案によりますと、現在の大手相互保険会社の株式化が進みまして、資本提携や持ち株会社の参入等により保険業界の再編が加速するということになろうかと思います。二十一世紀の保険業界の姿というものをどのように描かれているのか。国際社会の中の厳しい競争の中でどのような位置づけにあると予想されているのでしょうか。

苦境を招いた第一火災の破綻も、生保型経営というものに手を出したということで、積立型主力が裏目に出たということで批判もされているわけですが、この点について大蔵大臣と金融再生委員長にお尋ねをしたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) もう来年から二十一世紀でございますが、少し視野を広げて見た場合にどういうふうになるかというのはなかなか確たることを申し上げるのは難しいのでございますが、一つは、やはり高齢化社会がこれだけ進展してきておりますから、医療とか介護とか年金といった分野における多様な保険商品が出現してこなければならないだろうし、またそうなっていくのではないかと、まず一つ思うわけでございます。

それからもう一つは、金融システム改革をこのごろ進めておりますと、いろいろな業態を越えた、業態の垣根を越えた参入とかあるいは国境を越えた新規事業者の参入というようなものがどんどん進んでくるのではなかろうか。だから、保険サービスを提供していく主体というものがこれからはきっとふえていくのではなかろうかというようなことも想像されます。

それからもう一つは、これは保険だけではございませんけれども、インターネットとかそういった情報通信技術が発展してまいりますと、保険募集とか契約締結の形態というのも変化してくる。そういう中で、今までは対面していろいろな商品をきちっと説明するというようなことでございましたけれども、こういうことが進んでまいりますと、どういうことを考えていったらいいのかということも十分検討しておかなければならないのではないかなというようなふうに思います。

こういう状況で、保険会社は顧客の多様なニーズに対応した新たな保険商品あるいは高度なサービスの提供に努めていただくといったような努力が求められるのだろうと思いますが、このために今こういう法案でいろいろまた新しい形をお願いしているわけでありますが、経営合理化に向けた努力をしていただく一方、情報技術に係る投資というようなものもふやしていかなければならないんではないかなと思っております。

こういう取り組みの中で、個々の保険会社の経営判断に基づいて他の金融機関との資本提携とかあるいは再編が進んでいくということが予想されるわけでありますけれども、先ほどもちょっと申しましたが、保険相互会社の株式会社化等がそういう新しい変化の中で一つのツールになっていくのではないか。

大変大ざっぱな見通しでございますが、あらあら申し上げるとそんな感じがいたしております。

○政務次官(林芳正君) おまえ行ってこいということでございましたので、私から御答弁を差し上げます。

今、再生委員長から御答弁があったように、もう二十一世紀間近でございまして、今委員が御指摘になりましたように、リスクが自己責任ということになりますとかなりいろんなリスクが出てくる。このリスクをいかにみんなで分散してやるかというのが保険の基本的な理念でございますから、委員がまさにおっしゃいましたように、いろんな形というのが考えられるんではないか、こういうふうに思っております。

今、委員長からも医療、介護、年金というところが御指摘ありましたが、最近の商品の動向を見ますと既にそういう特約等もいろんな工夫が進んでおるところでございまして、我々といたしましては、まさにそういうところを創意工夫をしていただいて、そういうところでトラブルが生じませんように行政としてはきちっと見ていくというのが我々の基本的な姿勢ではないか、こういうふうに思っておるところでございます。

○大脇雅子君 個々の銀行や信用組合など金融機関、あるいは生命保険、損害保険会社等の経営破綻をした場合を想定いたしますと、預金者保護機構や保険契約者保護機構のスキームが本来予定されている機能を発揮すれば実際に破綻した個々の金融機関や保険会社の利用者はこのスキームに従って一定保護されるということになっているということはわかるんですが、業界全体に破綻が波及すれば明らかにこのスキーム自体も破綻をするということが危惧されるわけであります。

例えば、各金融機関や生保、保険会社の負担すべき保険料率の引き上げということは必至になるでありましょうし、国庫負担の増大も同様だというふうに考えられるわけです。そうしますと、際限のない後追い処理ばかりが続くことになる。このような事態を何としてでも避けて、我が国の金融業界のさらなる発展を図っていくということが非常に重要であろうかと思います。

二〇〇〇年の日本金融システムのデッサンにつきまして、さまざまに外資系機関と日本系機関というのが混合しまして日米や日欧や日アなどの合弁機関が同居するハイブリッド型のものも出てくるのではないか。そうしますと、むしろ、これからの金融システムの競争性とか開放性とかあるいは透明性とか国際性というものがそこで果たして担保されるのかどうか。そして、多様で安価な高品質な金融サービスの、いわゆるユーザーたる個人にとっても一般企業にとってもそうした商品化があるのだろうか。

異業種参入ムードというのはやむなしというのが一般の金融業界の立場でありますけれども、まだそれぞれには、都市銀行は基本的には賛成、信託銀行は条件つき肯定、地方銀行は影響を懸念する、第二地方銀行は否定的、信用金庫や信用組合は消極的と。一般的にこういう傾向の中でさまざまに異業種参入というのが進められて、これを金融再生委員長は自分のときにちゃんと進めたいというようなコメントも新聞に出しておられるわけですから、一体それは、そういう後追いではない積極的な金融システムの発展スキームというものに対してどのように考えておられるのか、金融再生委員長と大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) まず、どういうふうに将来を描いて進めていくかということと同時に、金融行政の立場から申し上げますと、もう委員もよく御承知のように、この数年、金融をめぐる行政組織というものが大きく変化してまいりまして、その変化の背後にありましたものが、例えば市場重視とか自己規律ということであったり、あるいは護送船団を廃止して民間主導でやっていくというようなことであったりして、その傾向は私基本的な傾向として今後もあるんだろう、また続けていかなければならないんだろうと、こういうふうに思っているわけでございます。

これから金融行政、七月から私ども今度は金融監督庁は金融庁というのになってまいりまして、来年の一月からは再生委員会もなくなるという形でございますけれども、そういうルールに基づいた行政と同時に、やはりどういう方向性を持ってこれから、決して事前裁量型というわけではないんですが、事後型の行政というにとどまらず、やはりどういう、戦略眼というのもやはり必要になってくるのかなという気がしているわけでございます。

まずそういうことを申し上げた上で、極めて一般論になるわけですが、今申し上げたような市場規律と自己責任の原則ということを前提にした上で、先ほどみんなが破綻していくと結局今のセーフティーネットもうまくいかなくなるんじゃないかということもおっしゃったわけですけれども、やはりディスクロージャーを拡充していく、それから財務状況に対する的確なモニタリングとか厳正な検査の実施、それからやはり早期是正措置を迅速かつ適切に発動していくというようなことで、問題の早期発見、早期の対応というようなことをやって金融機関の健全性の確保に努めるということがやはり一番の基本なのではないかと思っております。

それから、今おっしゃったようなセーフティーネットが十分かどうかという観点からいきますと、破綻した後の処理というものがこれが非常にもたもたしておりますと被害を広めていく、傷を深めていくということになりますから、破綻した後いかに迅速に傷をできるだけ最小限にしてやるかという、この工夫もさらに積み重ねていかなければならないんだろうと思っております。

極めて大ざっぱな御答弁になっておりますが、基本的にはそういうようなことを考えているわけでございます。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私の関心を今までの御答弁にもう一つ加えるといたしますれば、殊に生保は世帯の九割ぐらいがもうそれに頼っておるという状況であるし、かつては本当に片仮名でセイホと言ったら外国人が知っているぐらいの力をまた生命保険会社が持っておりましたが、今その昔日の面影はありません。

したがいまして、契約者も不安でございますし、かつてセイホと言われた、これはやはり予定利率みたいなことが関係があって、政府がこういう極端な低金利を維持しておるということに関係がないというわけにはいきません。ですから、何とかしてここのところはやはり、預金保険機構もございますけれども、政府が、やむを得ません、前に出まして、ここのところは何とか危険になりませんように過ごしていかなければなりませんで、その間にまたかつての生保が持っていたような力を、これだけ国民の貯蓄がございますから、回復してくれなければとてもこれは大変心配な事態になりかねないと思っております。

銀行の方のいろいろリスクはまあまあ済んだと思っておりますが、損保は余り心配がないと思います、小さいものはございますけれども。生保はさあこれは次の世紀に向かってどうしていくのかなという、ずうたいが大きいだけに政府としては高い強い関心を持っておりまして、そういう意味で今とりあえず何かあればという姿勢をきちんとしておきたいと考えておりますけれども、ここ三年ぐらいの間大変注意を要すると考えております。

○大脇雅子君 先ほど申し上げましたハイブリッド型の金融システム、そしてそれぞれの国境も越えあるいは業態も超えたさまざまな金融界というものが現出する場合に、そうしたものが日本の金融システムとしてどのようにやはり発展性あるいは未来性を持っていくのかという点について、もう一言大臣の御所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) もうちょっとおっしゃってください。

○大脇雅子君 要するに、さまざまなハイブリッド型の、国際化を超えて、あるいは業種も業態も超えて、国内では生保もさまざまな異業種も、銀行も信用組合も、さまざまな垣根を越えて交流というか、それをしていくわけですよね。そして、国際的にもさまざまな合弁のそうした金融機関が国内にできると思いますよね。そうすると、日本の金融界というものの姿、そしてそこの中で情報の開示とか、それから言ってみれば競争性とかあるいは開放性とか、そういったものがきちっとできるんだろうかと。

いわば未来に希望が持てる金融業界、そういう金融システムというものはどういうふうに大蔵大臣はできるのかということについて、御意見を伺いたいなと思います。

○国務大臣(宮澤喜一君) 私の力に超えるお尋ねでございますけれども、銀行とか証券会社とか、いろんなことを今まで言ってまいりましたけれども、これだけもう自由化が行われますと、おっしゃいますようにハイブリッドであったり、あるいはもう垣根というものがなくなったり、アメリカにおきましてもグラス・スティーガル法というのはついに事実上なくなろうとしておるわけでございますから、そういうことになって、一般的に金融機関というぐらいな言葉でとらえた方がいいような世の中になるのはもう必至と思っております。

その中で、やはりリードをとっておりますのはアメリカの金融機関であることは残念でございまして、かつて世界の十の銀行のうち九つぐらいまで日本の銀行であった時代がございますから、またそれだけの国民の貯蓄というものは現に健在でありますわけですから、この危機を乗り切って早くそういう世界の銀行とあるいは統合なりなんなり、角逐というか、何と申しますかやりとりのできる銀行なり証券会社なり、もうそういう名前は不適当でございましょうけれども、幾つかできればやっぱりいいなと考えております。がしかし、残念ながら銀行にはその力がまだございませんし、生保は先ほど申し上げましたような理由がありまして、これをどうかしてやらないといかぬという思いであります。

しかし、最後に思いますのは、やはりこれだけの国民の貯蓄がございますから、これが日本の金融機関の最終的な強みであると私は思っておりまして、さらに申すならば、この国民の貯蓄がやはりそれに見合ったインターナショナル並みなリターンがなければおかしいと思っています。今の問題は今の問題ですから急速にというわけにまいらないかもしれませんが、とにかくこんな状況では日本が国民の貯蓄を背景にして金融機関が世界に向かって活躍できるような状況にはなかなかならないのではないか。

しかし、本当は二十一世紀において日本はやはり世界の中でそういう金融の分野で一番活躍できる国ではないかということを思っておりますが、それにはやはり今のいろいろな欠陥、いろいろな傷を治していきませんといけないんではないかと思っております。

○大脇雅子君 ありがとうございました。



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