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第 147 国会報告
金融経済活性化に関する特別委員会
2000年5月19日 10号

農漁協金融


○大脇雅子君 農漁業政策というのは、食料の安定供給という国家の基本政策を担う重要な柱であり、国土環境の保全、循環型社会の再構築という側面からも二十一世紀に向けて積極的な政策を打ち立てる必要があります。農漁業者の自主的な相互扶助組織として運営されている農協、漁協は、これらの政策推進の中心として今後一層活発な取り組みが求められていると思います。

このような観点から以下質問をいたします。

まず、今般の改正法案で農漁協、信連、農林中金が行う信用事業も貯蓄等の全額保護のための特例措置期限が一年延期されることになります。しかし、これまで来年三月末の期限切れに向けて農協系統信用事業では体質改善等さまざまな経営努力を行われてきたと思うわけですが、農水省ではどのような指導をしてきたのか、また今後どのように対応するのか、お尋ねをいたします。

○国務大臣(玉沢徳一郎君) 農林水産省としましては、農協系統組織再編促進事業等を活用し、信用事業の体質強化を指導してきたところでありまして、これを受けまして農協系統はペイオフ解禁の当初の予定であります平成十三年三月末をめどに経営体質の強化に積極的に取り組んできたところであります。

具体的には、十三年三月を目標とする広域合併構想を強力に推進し、規模拡大による経営基盤の強化及び業務運営体制の強化を図りますほか、特に経営困難農協の合併等につきましては、県中央会に設けた基金から資金援助を行うなどの取り組みを行っているところであります。また、内部留保の充実に努めますとともに、増資を行い、不良債権についても早期処理に努めているところでございます。

○大脇雅子君 農漁協の事業の一環である信用事業におきましては、貯蓄量に比べて貸し出しの規模が小さく、金融機関として収益力が弱い、いわゆる貯貸率の低さということが指摘されています。

一九九八年度末の実績では、農協が三一・九%、信用農業協同組合連合会が一三・九%、農林中金が四九・四%であるのに対しまして、いわゆる都銀、地銀等の中で一番低い信金でも預貸率は七〇・八%であります。

農家の負債を増大させるという帰結にはもちろん問題がありますが、この原因はどこにあるとお考えなのでしょうか。また、今後この問題についてどのように取り組もうとされているのでしょうか。

○政府参考人(石原葵君) 農協の貯貸率でございますけれども、ただいま委員の方からお話がございましたように、他の金融業態に比べまして非常に低うございます。

この理由といたしましては、農村部におきましては、都市部に比べまして企業が少ないということもございまして、非常に資金需要が小さいということがあろうかと思います。また、農業におきましては他産業より設備需要が少ないということで、これも資金需要が小さいことにつながっているのではないかと思っております。さらに加えまして、農協は協同組織でございますので、員外貸し付けにつきましては制限を受けております。こういうような理由で貯貸率が低いのではないかというふうに考えております。

このような貯貸率が低いということは、先ほど申し上げました理由からやむを得ない面もあると思っておりますが、先ほども委員の方からお話がございましたように、農協の収益性の向上という観点からいたしますと、この貯貸率の向上が望ましいのは言うまでもございません。そういうこともございまして、農林水産省といたしましても、これまで融資先の拡大を図ってきたところでございます。幸い、ごくわずかでございますが、近年貯貸率は上昇傾向にございます。

農林水産省といたしましては、信連それから農林中金を含めました農協系統信用事業全体が健全に運営される、こういうのが一番重要でございますので、そういうものを念頭に置きつつ、この貯貸率の問題につきましても十分留意いたしまして適切な指導を行っていきたいと考えているところでございます。

○大脇雅子君 バブル経済崩壊によって不良債権が増大し、経営が困難となっている単位農漁協、あるいは信農連、信漁連が近年ふえつつあるということであります。貯金保険制度の発動件数が増加しているとのことでありますが、既に資金援助を受けた団体以外にも欠損金や不良債権を抱えた団体があるということが予想されるわけです。

経営困難に陥っている団体数、不良債権額、不良債権が生じた理由等を具体的にお示しいただきたいと思います。

○政府参考人(石原葵君) 平成十事業年度末時点のリスク管理債権、これの総額でございますが、信用事業を行う農協では一兆八百十六億円、それから信用農業協同組合連合会、信連でございますが、これが五千二百七十六億円となっております。

このように不良債権が生じました主な理由といたしましては、景気の低迷による債務者の経営不振や担保価値の下落ということがあろうかと考えております。

それから、自己資本比率四%未満の農協でございます。先ほど経営困難の農協とおっしゃいましたが、自己資本比率四%未満の農協ということでとらえますと、平成十一年三月末で三十九農協となっているところでございます。

○政府参考人(中須勇雄君) 漁協系統についてお答え申し上げますが、平成十事業年度末における漁協関係のリスク管理債権は、単協で千二百三十七億円、信漁連で四百十一億円となっております。

こうした不良債権が生じた主な理由としては、厳しい漁業経営環境あるいは信用事業執行体制の脆弱さ、そういった問題があろうかと思っております。

なお、自己資本比率四%未満の漁協は、平成十一年七月時点で七十九漁協ということに相なっております。

○大脇雅子君 規模が小さい中でかなりリスクを負った比率というのは相対的に高いということが憂慮されます。そうしますと、系統信用事業においてペイオフ解禁の一年延長措置というのがどのように影響してくるのでしょうか、大臣の御見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(玉沢徳一郎君) 我が国経済を確実な安定軌道に乗せるためには、一部の中小金融機関について経営の一層の実態把握を図り、その改善を確実なものとすること等により、より強固な金融システムの構築を図る必要があるとの観点から、与党間の合意を踏まえ、政府といたしましてもペイオフ解禁の一年延長の措置を図ることとしたところであります。

系統金融機関におきましては、当初予定どおり十三年三月末を目途に合併や自己資本の増強等による経営体質の強化に積極的に取り組んできたところでありますが、今回の一年延期の決定は、我が国金融システム全体をより強固なものとすることを目的としたものであること、ペイオフといった金融機関の基礎的な競争条件は同一である必要があることから、農協系統金融機関につきましてもペイオフ解禁を一年延期することとしたものでございます。

○大脇雅子君 一九九八年に策定された農水省の農政改革大綱というのによりますと、「事業機能の一層の強化や経営の効率化が求められている中で、農業者の協同組織として、農家農民のために各種事業を行う総合事業体としての本来の役割を十分に果たし得るようにする。」と、こう目的に書かれているわけです。こうした再編整備計画が実施されており、その進捗状況は六五・六%と言われているわけですけれども、今年度末までに全体で五万人の職員削減計画が打ち出されておりますが、これまでの経過と削減された職員の再就職支援、再雇用保障対策というのはどのようになっているのかお伺いいたします。

○政府参考人(石原葵君) 農協系統組織では、平成九年十月のJAの全国大会におきまして組織再編とあわせまして農協系統全体で五万人の人員削減を行うことを決定いたしまして、現在実行しているところでございます。具体的には、平成七年三月末の三十五万人から平成十三年三月末に三十万人にするということでございます。

これまでの進捗状況でございますが、平成十一年三月末、昨年の三月末現在の職員数は三十二万七千人となっているところでございます。

このような人員削減に当たりましては、系統といたしましては、新規採用等の抑制、それから早期退職優遇制度の導入、こういうような措置によりまして雇用上の問題が生じないよう努めているところでございます。

それからまた、職員の再雇用につきましても、定年退職者の再雇用のための人材センターを設置したり、あるいは定年年齢に達した者をそのまま雇用するあるいは再雇用するというような措置を講じているところでございます。

○大脇雅子君 冒頭述べましたように、農漁業政策というのは国の政策の柱であります。人体に害の少ない安全な食料の安定的で自立的な確保というのは平和的な生活を希求する国民の要求に沿う政策として基本的に受け入れなければならないものでありますし、二十一世紀にふさわしい農協活動の今後のあり方というものについてどのようにお考えなのか、大臣の御見解を伺います。

○国務大臣(玉沢徳一郎君) 委員御承知のとおりでございますが、食料・農業・農村基本法の理念の実現を積極的に推進していくことが農協系統にまず求められておると思います。また、大銀行の再編等の金融情勢の変化の中で、信用事業の体制整備、体質強化も重要な課題となってきております。こうしたことから、農協系統におきましては、本年十月のJA全国大会を目指して事業、組織の改革を進めようとしておりまして、先般におきましても理事会で取り組み方向の骨子を決定したと聞いております。

農協系統の事業、組織の改革は、基本法に基づく農業政策の推進の観点からも極めて重要であるため、農林水産省といたしましても、経済局長の私的検討会として農協系統の事業・組織に関する検討会を設置し、検討を開始したところであります。経済社会の大きな変化の中で、今後とも農協が担い手や女性を初めとする農家、組合員に対して地域農業の振興や農村社会の発展にとって必要なサービスを的確に提供していけるようにすることを旨として検討を進めているところでございます。

全中理事会で決定した取り組み方向の骨子のポイントを申し上げますと、食料・農業・農村基本法を踏まえて消費者との連携を強化していくこと、地域農業の振興や担い手農家の支援に積極的に取り組んでいくこと、農村社会のニーズに適応した的確な住民サービスを提供していくこと、金融情勢の変化を踏まえてJAグループの総合力を高め、高度なサービスを提供できかつ健全性の高い信用・共済事業の体制を確立していく、こういうことが決定をされておるわけでございまして、こうしたことが二十一世紀において農協が果たしていくべき大きな役割ではないかと考えておるわけでございますので、これにできるだけ協力をしてやっていくことが大事であると存じます。

○理事(須藤良太郎君) 時間です。

○大脇雅子君 はい。

戦後、私は、農村におりましたときに、やはり農協というのは農村地域の一つの司令塔であり一つの道しるべであったということでありますので、二十一世紀におきましてもそうした展開をぜひ御検討いただきたいと思います。

どうもありがとうございます。



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