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第 147 国会報告
金融経済活性化に関する特別委員会
2000年5月12日 8号

年金担保の融資問題


○大脇雅子君 先回、年金担保の融資問題についてお尋ねをいたしましたが、どうもそのお答えについて納得がいかないということがありますので、もう少し詳細に場合を分けてお尋ねをしてみたいと思います。

まず、年金証書あるいは年金権を担保に供させて融資するというのは、直接関係法令において譲渡が禁止され担保に供することが禁止され差し押さえが禁止されているということで、これに違反する取り立てがなされることは可罰的な違法性が、その規定する根拠がないとしても、そもそも担保に供すること自体というのは非常に高度な違法性があると考えます。

この前提について、厚生省、大蔵省、金融監督庁の御見解をお伺いいたします。その根拠を何と、その趣旨、法の趣旨というものをどのように理解しておられるかということです。これは大臣にお願いいたします。厚生省は担当者で結構です。

○政府参考人(吉武民樹君) ただいま先生お話がございましたとおり、私どもの年金の関係で申し上げますと、厚生年金につきましては厚生年金保険法の中で受給権の保護、公租公課の禁止を規定をいたしております。

この趣旨を申し上げますと、年金の保険給付を受ける権利につきまして譲渡、担保あるいは差し押さえをすることはできないということでございますが、これは給付の請求権といいますか年金の給付を受ける請求を行う権利、基本権と申しておりますが、それのみならずその支払いを受ける権利までも含めまして、広く含めて解釈すべきだというふうに解釈をいたしております。この趣旨を申し上げますと、受給権者の権利を保護するためということでございます。

仮にこのような制限がない場合を考えますと、例えば年金の給付を受ける権利につきまして、その給付を受ける権利を、例えば毎月月額二十三万の厚生年金のモデル年金の受給権のある方が、非常に一時的な金銭需要があるために、生涯給付を受ける権利全体を例えば五百万円で譲渡されるというようなことが起きますと、老後の生活の基本である年金の保険給付を受ける利益を長期間にわたって失うおそれがあるということでございまして、そういう形で受給権の保護ということをいたしております。

したがいまして、もともと年金の受給権は公法上の権利でございますし、このような制限を付されておりますからその権利は受給者の一身に専属するというふうに解しておりまして、例えば別の例で申し上げますと、受給権者が死亡された場合に、その老齢年金の受給権は遺族年金という形で継承されることはありますけれども、受給権そのものは相続をされないという形でございますので、そういう一身専属の権利としてできるだけ保全をすべきものだというふうに私どもは解釈をいたしております。

○国務大臣(谷垣禎一君) 先日来、大脇先生の問題意識を伺って、年金受給権を担保に供することを禁止されている、それの潜脱手段みたいなことが行われているのはおかしいじゃないかと。私もそれは確かにそういう感じがするなと思いまして、法律書生のころたしか恩給受給権がどうだというのは民法九十条との関係で、大審院判例ですか最高裁判例で何かああいうものを読んだことがあるような気がいたしまして、事務方にも少し何か適切な判例でもないか調べてごらんと、こんなことを言っているんですが。

ただ、国民年金法や厚生年金保険法の趣旨ということになりますと、私どもが解釈をするというわけにもなかなかまいりませんので、厚生省の解釈を私どもも参考にして執務をしたいと、こう思っております。

○国務大臣(宮澤喜一君) つけ加えるべきことはそうあるわけではございませんが、もともと違法性があるということはこれは問題がなくそうだと思っておりますが、個別のケースになりますと、貸金業者が受給者との間で具体的にどのような方法で貸し付け契約を締結しているのか、その点は貸金業者の実態を存じませんので詳細に申し上げることができません。

また、年金法、厚生年金保険法は大蔵省としてこの法律の規定を有権的に解釈する立場にはございませんものですから、基本的に違法であるということ、それはもう問題がありませんけれども、具体的なケースについてコメントすることが十分にできないという立場でございます。

○大脇雅子君 私は、厚生省の担当者が言われるようにこれは公法上の権利で、もし年金権とか児童扶養手当とか児童手当とかあるいは生活保護費などが担保に供せられて貸し金で取り立てが可能だということで現実に占奪されると、これは社会保障制度全体が崩壊して、国のやっぱり生存権体制というものが非常に危機に瀕してしまうのではないかという問題意識がございます。

そこで厚生省にお尋ねしますが、今現在行われているものは、年金証書とかあるいは年金証書に化体される年金権というものを一応業者に渡す形で印鑑と振り込み用の預金通帳を渡して、金融の貸金業者がそこから貸し金を取ってしまう。これは本人の預金に入ったものではなくて、むしろ年金を業者の自由になる預金口座に振り込ませるわけですから、そういう状況がある場合に厚生省としては具体的にどのような施策を考えておられるでしょうか。

○政府参考人(吉武民樹君) まず第一点御説明を申し上げたいと思いますが、実は現在の年金の受給は、先生御案内のとおり、大部分が年金受給者の方が金融機関の口座に自動振り込みを行うという形で行われております。ほぼ九九%この形で行われております。かつては、国庫金を基本的には郵便局に送付いたしまして、郵便局の窓口を中心としまして年金証書を提示していただきまして、そのことを確認して年金給付のお金が受給者に渡るという形をとっておりましたけれども、この形は現在では福祉年金等を除きましてほとんどございません。

したがいまして、年金証書が例えば実際の金融業者の、私も先日のテレビを見させていただきましたけれども、それは担保であるというような形で認識をされておりますが、実は振替口座の選定につきましては年金受給者の意思でいつでも変更ができます。その際には、仮に年金証書が業者の担保といいますか業者にとられておりましても、現実には年金額の支払い通知書というのを私どもは毎年発行いたしておりまして、その中に年金の基礎年金番号も書いてございますので、現在では基礎年金番号と住所、氏名によりまして基本的に年金受給者の確認ができる状態になっておりますので、仮に年金証書が業者の手元にあったといたしましても、それはなかなか実際上の人間関係といいますかで難しい面があるというのは想像ができますけれども、手段といたしましては口座を変更するということが自由にできる状態になっております。

したがいまして、今先生がおっしゃいました事態は、いわゆる年金の支給そのものが直接担保にとられているというところまではなかなか私どもも申し上げにくい点でございまして、形としては年金受給者の口座に年金が振り込まれ、そのお金が出されていった直後に返済に充てられるというような、こういう状態に近いような状態ではないかと思っております。

ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げました年金というのは老後生活の非常に中心的な給付でございますので、この年金給付につきまして年金の受給者の方々が御自分の判断でその使途を決めていく、借金の返済につきましても決めていくことができるだけ担保されるということが望ましいというふうに考えておりまして、現在起きております状態につきましても、私どもは先ほど申し上げました年金受給権の保全の趣旨からいいまして基本的には望ましくない姿だろうというふうに考えております。

○大脇雅子君 そうしますと、実際上でも、年金をとられてそこから弁済させられている本人にとってみれば、年金権は担保でとられて、そして実際上老後の生活としてそれが利用できないような状況になっているということである、そして最終的にはほとんど貧困の底で命を失うということになるわけですので、私は、先回金融監督庁にどういうことができるのかと申し上げましたときに、まず二つの場合に分けてお聞きしたいと思います。

都道府県をまたいでいる貸金業者の場合の監督はどこになりますか。

○政府参考人(乾文男君) 貸金業者はその所在地の都道府県の都道府県知事が管轄することになっておりますけれども、今御指摘のように複数の都道府県にまたがるときには大蔵省財務局が所管ということになっております。

○大脇雅子君 先回、乾政府参考人は大阪の方で大阪府が一応是正をした例を言われまして、そして当局も指導を行っているというふうに言われました。今までどういう指導をどこにいつ行われたのか、もう少し明快に説明をしてください。

○政務次官(村井仁君) この年金担保の融資問題、大脇先生から既にいろいろ御指摘ございますが、私どもといたしましても、国民年金法上禁止されているということも踏まえまして、貸金業規制法上は規定はございませんけれども、金融監督庁の行政上の指針でございます事務ガイドラインにおきまして契約締結の際の禁止事項として、年金受給証等の債務者の社会生活上必要な証明書等を徴求してはならないと、このように明示をいたしております。

具体的には、財務局、都道府県、財務局につきましてはただいま御説明のように複数の都道府県をまたがった場合でございますが、都道府県において行う貸金業者に対する監督でございますが、これに際しましてきちんとこれを守るように改めて指示をしているところでございまして、実は昨年の九月商工ローンを念頭に貸し金業務の適正化に関する要請を行ったわけでございますが、その際に財務局、都道府県等を通じて全貸金業者に対しまして文書によりまして、年金受給証等の債務者の社会生活上必要な証明書等を徴求しないことを含めて、適切な業務の運営を確保することを要請したということでございます。

今後とも、御趣旨を体しまして、都道府県等ともよく連携しまして適切な対応をしてまいりたいと思っております。

○大脇雅子君 それでは、今はその財務局関連の指導でございましたが、これがいわゆる一県の都道府県における金融業者の場合は、先回はともかく地方分権法があって私どもとしては何もできないんだというような趣旨に受け取られる答弁をされたんですが、これはどうなんでしょうか。たとえ自治事務としても、監督官庁としては、勧告や助言の制度もあり是正要求もできるわけですが、これとの関係では今後貸金業者に対して違法があった場合にどういうような取り扱いをされるんでしょうか。

○政務次官(村井仁君) 確かにこの事務は都道府県の自治事務ということになっておりますが、私どもといたしましては、地方自治法第二百四十五条の四におきまして国は普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言または勧告をすることができるという規定もございますので、いずれにいたしましても、都道府県とともに貸金業規制法に基づきます貸金業の監督事務を適切に執行する立場というのは金融監督庁として非常に重い責任を持っているわけでございますから、都道府県からよく実態も聞き取りましたり、調査をしてもらいましたり、必要があれば今引用いたしました条文に基づく勧告、助言等をしてまいりたいと思っております。

○大脇雅子君 私は先回の御答弁の根底における認識に問題があると思ったのは、要するに年金とかそうした社会保障の一身専属の権利を担保にすることと利息制限法の利率を超えて利息を取る場合と、これは違法性と法的な性質において断然違うと思うんですが、乾政府参考人はその点、利息制限法や出資法の上限金利を超えている云々というような場合の取り締まりと並列的にお話しになったので、私としてはどうしても、帰って考えてどうにもおかしいなと思ったんですが、今の御指摘によりますと、金融監督庁としても財務局ないしは都道府県に対してそれぞれの法的な根拠に基づいて的確な指導をしていただけるということなので、今後とも老人に悲しみと不安や恐怖を与えないような形で監督の目を光らせていただきたいと思うわけでございます。

立法政策ということがありまして、立法政策については金融監督庁の長官は私としては述べる必要はないと。確かに国会の問題でありますけれども、大蔵省としては、それでは立法政策というものについて、それに対して罰則がないとか云々というような法の欠缺状態についてどのように考えておられるか、御質問します。

○政務次官(林芳正君) お答え申し上げます。

貸金業法につきましては大蔵省が所管をしておりますし、委員御指摘がありましたように今いろんなやりとりがあったところでございますが、年金制度そのものや貸金業者の監督という意味では所管をしておりませんので、具体的にどのようなトラブルが今生じているかというのが細かくわかっていないというのは先ほど大臣から答弁があったとおりでございますが、ただ、今委員御指摘がありましたような問題を含めて、やはり年金受給権を実質的に担保とするような融資への対応については、やはり年金法制上、今御指摘がありましたように、この年金受給権の保護のあり方という検討や、それから今度は貸金業者の方でございますが、この貸し付けの実態や、今度は借りていらっしゃる方の方の御事情でこれは全部だめというふうにした場合に果たしてどうなのか。前回の改正のときもいろいろ御議論を国会の方でいただいたところでございますけれども、こういったことを考えながら、年金制度を所管しております厚生省、また貸金業者の監督に当たっている監督庁等の関係省庁といろいろとよく相談をして、今後検討する必要があるというふうに考えておるところでございます。

○大脇雅子君 先回もちょっと触れましたけれども、年金を担保にして一・五倍まで貸すことができるという年金福祉事業団の融資制度というのがあって、これが非常に人気を呼んでいるという新聞記事もあるんですが、厚生省、この点については現状と今後の扱い方についてどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(吉武民樹君) 従来より、年金福祉事業団が担当いたしまして、年金受給権者の方に対しましていわゆる小口資金の融資を行っております。これは、いわゆる住宅の融資等とは違いまして、端的に申しまして使途が自由な小口資金の融資でございまして、私どもの考え方から申し上げますと、年金の被保険者あるいは年金の受給者のためのいわば福祉施設事業という位置づけでございます。公務員で申し上げれば、共済組合で住宅資金の貸し付け等を行っておりますが、これの年金受給者に対するものということで。

ただ、最大の問題は、年金の受給者の方の場合に、例えば民間の金融機関から非常に貸し付けを受けにくいという状態がございますように、融資の原資は資金運用部からお借りをいたしておりますので、これは基本的にお返しをするべき資金でございますので、ここにつきまして担保が必要だということで、年金受給権を担保にするということを法律上位置づけをいたしまして行っております。

それで、平成八年度で千二百九十億円、約十万三千人の方に融資をいたしております。平成九年度が千三百二十億円、それから十年度は千六百五十九億円という形でございまして、年金福祉事業団も私どもも最近の経済情勢等にかんがえましてこの融資に対する資金需要が非常にふえているということを認識をいたしておりまして、平成十二年度は資金枠といたしまして千九百三十億円の資金枠を財政当局の御理解を得て用意をいたしております。

それからもう一点でございますが、従来のこの融資方法につきましては、融資をいたしますと毎月毎月の年金につきまして全額担保で回収をさせていただくという形になっております。年金額の大体一年半、それからその絶対枠で申し上げますと二百五十万を限度として融資をいたしますので、端的に申しますと、一年半たつとほぼ融資は回収をされるという形でございますが、これは貸し付け条件として非常に厳しいのではないかと、肝心の年金がお手元に残らないという形でございます。この点につきましてもことしの十月から改善をいたしまして、年金額の半額につきまして回収をさせていただく、年金額の半額は御自分のお手元に残るということを選択肢として設ける形にいたしております。

それから、貸し付けまでは従来約一月半から二カ月ほどかかっておりました。これは、年金の受給権があるということを確認いたしますし、それから全国約二万五千の民間金融機関の窓口で受付業務をやっていただいておりますので、民間金融機関から年金福祉事業団へ到達するまでの処理期間もございます。これは、民間金融機関の御協力も得まして、ことしの秋からほぼ一カ月に短縮をいたしたいというふうに思っております。

金利を申し上げますと、二・一%でございますので、したがいまして先ほどの四〇%といった金利とは全く違いがございますので、これが年金受給者の本来の福利のために用意しておる制度でございますので、できるだけこの制度が機能を発揮できるように私どもこれからさらに努力をしてまいりたいというふうに思っております。

私どもの希望から申し上げれば、できればこの融資をまず活用していただいて年金受給者の方が安定した生活が保持できるようにということを私どももできるだけ努力をしてまいりたいというふうに思っております。

○大脇雅子君 温かい処理をぜひお願いしたいと思います。

時間がなくなりましたが、保険業法の改正について一点お尋ねをいたします。

早期是正措置というのが損害を大きくしないための一番大きな法的措置であるけれども、なかなかに実行できないということで、とりわけ生命保険業界については大変大きな危惧がされているわけであります。そのためには金融監督庁が早期是正措置を発動するための情報開示が非常に大切だと思うわけですが、この情報開示というものがなかなかにできない我が国の業界の体質というものがあるんですが、これについてはどのように情報開示のあり方についてお考えであるかお尋ねをしておきたいと思います。

○政務次官(村井仁君) 御指摘のように、早期是正措置非常に大事でございますが、ただいまの御質問は、早期是正措置を発動した場合にそのことを情報開示するべきではないかというような御趣旨に解してよろしゅうございましょうか。

○大脇雅子君 そういう趣旨ではなくて、早期是正措置を発動するための条件として、情報開示が経営体の方からなされなければ立入検査とかモニタリングの強化が必要だと思うわけですけれども、その点でどういうふうな措置をとられるか、どう考えられるかと、こういうことでございます。

○政務次官(村井仁君) 全くそのとおりだと思うわけでございまして、私どもは保険業界がそれぞれの経営状況というものを適切な形でディスクローズしていくということが非常に大事なことだと思っております。

さような意味で既にいろいろなことをやっておりますが、例えば自己資本比率あるいはソルベンシーマージン比率というようなものがそれぞれの保険会社によりまして表にきちんと開示されるというような、みずからそれを開示するというようなことが行われていく、これが非常に大事だと思っております。

○大脇雅子君 それでは、次の質問は次回にさせていただきます。

どうもありがとうございました。



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