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第 147 国会報告
憲法調査会
2000年3月3日 03 号

自由討議


○大脇雅子君 第一回のフリートーキングを集約いたしますと、憲法における主権在民と民主主義、平和主義及び個人の尊厳と基本的人権保障の原則は、憲法に内在する人類の普遍的価値であるということが多くの委員の意見によって確認されたと思います。

多くの委員から現憲法の制定過程についてさまざまな意見が出されているので、それについて意見を述べたいと思います。

憲法の調査においては、現憲法の形式上の制定過程のみを調査しても、その本質的部分を理解することはできません。

岩倉具視を団長とする遣欧視察団報告書「特命全権大使米欧回覧実記」は、大国のみならず小国の調査もして鋭い洞察を加えています。明治維新のリーダーたちがこの国の形をどうしようとしたか、明治憲法はどのように制定されたかも見るべきでありましょう。

他方、植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」等、自由民権運動を全国的に展開した民衆のこの国の形への思いはどうであったか。

私擬憲法はおよそ六十八案あったと言われております。そのような無名の民間憲法草案にも先駆的内容を持ったものが多く存在いたしました。ぜひとも調査の中で発掘し、研究すべきでありましょう。近代日本の出発点においてもう一つの日本をつくろうとした民衆の伝統と歴史の経験を引き継ぐ必要があると思います。

その後の歴史の中で、日本は覇権を求めて軍事大国として列強の一員となり、敗戦に至ったのでありますが、大正デモクラシーも視野に入れて、我が国の立憲君主制と議会制民主主義の変遷プロセスを明らかにし、貴重な歴史の教訓を我々は求めるべきであると思います。

現憲法制定誕生過程においても、憲法研究会の「憲法草案要綱」や高野岩三郎「日本共和国憲法私案要綱」、社会党を初めとする各政党の新憲法草案や私擬憲法草案等は、これまでの自由民権論の水脈を受け継いで国家を超えた多様な各国憲法を参考にしております。日本の民衆の伝統を踏まえて二十一世紀の国の形を論ずることが重要であると思います。

二十一世紀の国際社会における日本のあり方を問うべきだという意見が出されております。この場合、国際社会の動向を踏まえ、我が国の理論的、実践的努力の成果を踏まえて検討が加えられるべきであると思います。

例えば、憲法前文と憲法第九条を考察いたしますと、簗瀬委員も憲法前文の重要性を指摘されておりますが、憲法が存在することによって日本は軍事力や武力という軍事価値を重視しない文化、国民の気風を育ててきたと思います。そして、憲法施行五十年を経て、平和的生存権という人権の理論を紡ぎ出してきました。

平和的生存権とは、戦争や軍事力によって自己の生命や生活を奪われない権利で、徴兵を拒否する権利も含み、国の交戦権を否認して統治権を制限する権利としての意味を持ちます。十九世紀は自由権的基本権、二十世紀は社会的生存権、二十一世紀の人権はまさに平和的生存権であると思います。

憲法は、国際条約の平和への権利を先取りし、核の時代に戦争という選択肢がなくなった今、平和的共生のための基本的指針として国際的に現実性を持つようになったと思われます。これは、日本の歴史の中で培われてきた非戦や軍備撤廃の思想的伝統が胚として内にはらんできた思想でありました。

グローバル化しつつある社会や人間関係を地球規模の枠組みでとらえ直すとき、国連における国際社会の政策目的も、今やヒューマンセキュリティー、つまり人間の安全保障を中心に据えた紛争の予防と平和の構築が提案されております。

アメリカでも、チャールズ・オーバビー博士は憲法九条の会を結成して運動が続けられております。アジア太平洋における平和と軍縮会議のマニラ大会においても、日本国憲法九条を守る決議がなされております。ハーグ平和会議における各国議会は日本国憲法九条に倣い政府が戦争することを禁止する決議を行うべきというアジェンダ等、国際社会において我が国の憲法はその現代的意義が生かされつつあります。

○大脇雅子君 はい。

冷戦の中を生き抜いてきた平和憲法は、今、護憲を超えて世界へ発信されるべきものと思われます。これを布憲論と呼ぶ学説もあります。

最後に、きょうはひな祭りです。九条改悪を許さない女たちの集いで朗読された高良留美子の詩を朗読したいと思います。

世界に広がっていけ

わたしたちの憲法

それは世界平和のさきがけ

生命の芽

泥の海をこえて

新しい世界の到来を告知する

オリーブの一枝

○大脇雅子君 私どもは別に論憲を否定しているわけではありません。ここに参加していること自身がまさに積極的に論議に参加していくという姿勢で臨んでおります。環境権とか私学助成の問題というのは、現実的にその議論のときに意見は申し上げますが、当然その議論に私どもは参加してまいります。

ただ、私が申し上げたいのは、常に現実の中で、憲法を頂点とした個別法の中で、なぜ環境基本法に環境権が含まれなかったのか、私学助成の中でなぜ公的な教育も含めて国民の教育を受ける権利というものが充実していなかったかという点について、私は、憲法を改正したらそうしたことが充実するということではなくて、まさに現実の中でそういう政策がとられて、憲法の中でそれを確認されるべきだと思っています。

特に、憲法の中でいわゆる幸福追求の権利という憲法十三条がありまして、私はそれがまさに基本となっているのではないかというふうに思うわけです。

自衛隊の問題についてでございますが、村山政権が政権をとりましたとき、社会党の党内論争の結果、自衛隊を容認する大多数の国民を無視した安全保障はあり得ないという結論の中で合憲の認識を示したことはあります。

私自身の個人的な見解としては、そうした連立政権に組み入るときは、党の基本原則というものは一応凍結をいたしましてその連立政権の中に入ってそしてやるべきであったというふうに私は思うわけですが、ただ、参加をした政権の中で、社会党が軍縮と自衛隊の段階的縮小に着手する基盤をそこで主張していこうという姿勢のもとに私どもは政策合意をいたしました。したがって、政策の中には憲法を尊重するということをしたわけでございます。

従来の自衛隊の違憲論というものは誤りであったのかといいますと、それは私どもとしてはそのようには考えておりません。東西冷戦と第二次大戦の経験から、国民の声を背景に社会党は自衛隊違憲の主張を掲げて再軍備や軍拡路線と闘ってきました。確かに、自衛隊というものは現在世界第二位の力を持つとまで言われておりますけれども、しかし、憲法九条があったがゆえに私はその軍事的な拡張は抑止されたと思いますし、先ほど述べましたように、軍事的な価値というものが社会の中で最上位に推されたことはなかったと。とりわけGNP一%以内の枠に抑制するということは憲法の九条あってこその効果であったと思っております。



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