Owaki: Activity: 145 国会: 憲法調査会反対討論

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第 145 国会報告
本会議
1999年7月26日

憲法調査会を設置するための国会法改正法案に対する反対討論

私は社会民主党・護憲連合を代表して、今回上程されました「国会法の一部を改正する法律案」、｢国会法の一部を改正する法律に対する修正案｣および｢国会審議の活性化及び政治主導の攻策決定システムの確立に関する法律案｣について、反対の立場から、討論を致します。

わが国の憲法は、占領下に連合国総司令部ＧＨＱの作成した原案を基本にして制定された憲法とみなされて、政権政党が自主憲法制定をもとめるもとで、改憲か護憲かをめぐって揺れ動いて来た憲法でした。一九五六年に内閣に設置された憲法調査会には、当時の社会党の不参加のまま、一九六四年最終報告書は、「改憲の是非」の結論を出さず、両論とその論拠、考え方の差異を併記して、国民の判断に待つという基本的態度を堅持しました。改憲の流れは瀬を速めたり、淵を作ったり、絶えることなく続いてきましたが、憲法の制定過程を厳密に検証する作業が進むなかで、いわゆる｢ＧＨＱによる押しつけ論｣は、憲法制定過程を国家対国家の対立の図式で一面的にとらえるものであること、日本の憲法は、第二次世界大戦の惨禍の血を吐くような反省の上に立ち、未来にわたって実現されるべき普遍的人権と平和を希求した当時の国家を超えた多様かつ複雑な国際社会の願望と、明治維新以来弾圧されながらも連綿と続いてきた自由民権運動の流れが混ざり合い、明治憲法の痕跡も残しながら、日本帝国議会の審議を経て日本化されつつ、誕生したものであることが明らかになってきています。それから五〇年余、憲法の基本的原理、すなわち国民主権、平和主義、基本的人権保障の原則は、日本国民の暮らしに定着し、日本の経済発展の基礎となり、国際的にも日本のアイデンティティーとなってきました。そして冷戦が終結し、なお民族紛争や局地的な戦争が絶えないいま、日本の平和憲法は、核の時代の平和を先取りして世界の理想を体現し、世界のグランドデザインを描く憲法として、光を放つようになりました。一九九九年五月、一〇〇年目の第三回ハーグ国際平和会議で採択されたハーグ・アジェンダ一九九九、「公正な社会秩序のための十の基本原則｣は、「各国議会は日本の憲法九条に習い、政府が戦争をすることを禁止する決議を行うべきこと」と謳いました。この立場からすれば、憲法改正の発議権を持つ国会に、憲法に関し「広範かつ総合的に調査を行う」ための憲法調査会を、今この時期に、設置する目的は何処にあるのかと、鋭くかつ深く問わねばなりません。

不思議なことに、法文には、調査の目的や理由は一切書かれていません。次条に「前条に定めるもののほか、憲法調査会に関する事項は、各議院の議決によりこれを定める」とあって、間口がどれだけでも広げられるようになっているのにも注意しなければなりません。「憲法制度調査委員会設置推進議員連盟」の設立から憲法調査会設立の議員立法提案の経過、一連の国家主義的法案、すなわちガイドライン関連法の可決と住民基本台帳法の改正法案、国旗・国歌法案、組織的犯罪対策措置法案等々、の流れからすれば、明らかに隠された真意は、「現行法制との乖離現象」の解消、すなわち改憲に繋がるものと断ぜざるをえません。むしろ明治憲法への回帰のようにすら見えます。確かに憲法調査会には議案提案権はありませんが、議長に報告書を提出するのですから、その内容によっては影響は大きなものがありましょう。また法案には、憲法調査会は調査のため必要があるときは、「最高裁判所長官の出席及び説明を求めることが出来る」旨規定がありますが、最高裁長官は違憲立法審査を行う裁判所の長であり、司法の運営上の問題点を除いて、憲法や憲法に関する事件および裁判についての説明や意見を求めるのは、司法に対する立法の介入となり許されません。適用次第で違憲となります。よもや軍事裁判所など、憲法第七六条を侵すことはないと思われますが心配です。また、委員は「各会派の所属議員数の比率により割り当てる」となっていて、必ずしも少数者の発言を保障していません。むしろ会派に平等に意見を表明する権利を保障すベきです。衆議院の議院運営委員会の会議録によれば、幹事数名の解釈も、二桁もありうる、常識の範囲等と説明されていて曖昧です。幹事が多数派のみで占められる危険もあります。国会法の運営は全会派の一致で行われると言う慣習が破られた衆議院での状況、修正案の作成を議運の理事のみで運んだ参議院での状況は、民主主義に明らかに反していたからです。

いま、私たち国会議員のすベきことは、ひとつひとつの法案の審議において、個別具体的に、すベての常任委貝会と特別委員会、調査会において、憲法とのかかわりを論じ、検証し、憲法と現行法制との乖離をもたらしたことを反省し、それを解消し、現行憲法を具現すべく努力することではないでしょうか。憲法第十章「最高法規」第九九条は、「国会議員は憲法を尊重し擁護する義務を負う｣と規定しているのですから、真摯にこの原則を踏まえたうえで、国民とともに議論を交わすことをまず行うべきでしょう。

私は声を大にして言いたい。憲法に人権規定が不備だと言う人々は、これまで女性や子ども、外国人の権利の実現に努力した人たちばかりでしょうか。環境権が必要だという人たちは環境を破壊する公共事業のチェックに熱心だった人たちばかりだったでしょうか。情報公開法の中になぜ知る権利が入らなかったのでしょうか。自衛隊の海外派兵を可能とするいわゆる「普通の国」を望まれているのではないでしょうか。日常の営為として、立法改革を継続する中でこそ、憲法の改正の課題は正当性をもつのです。

またここ数年の各種世論調査では、改憲志向が増加しているものの、積極的な憲法改正を望んでいる段階には至っていないことも看過できません。

憲法調査会を設置すベき理由の曖昧なまま、国民的コンセンサスのある二一世紀の日本のヴィジョンも描ききれないまま、審議時間も不十分なまま、いまこの時に、憲法調査会を設置することに、社会民主党は断固として反対します。

次に、国会審議の活性化等の法案に反対する理由は、副大臣、大臣政務官の設置や政府委員の廃止が、かえって行政の透明化と官僚の説明責任を曖昧にし、斡旋利得罪の新設や企業献金の廃止を伴わない限り、政・官・財の癒着の深化、利権政治の拡大に対する懸念が拭えないからです。副大臣等の新設に伴う所要の経費の提示もありません。与党と内閣の一体化により、強権的政治の土壌が一層強まり、国会を形骸化し、官僚制の民主化を阻害する危険性もないとはいえません。国家基本政策委員会も審議の意味も薄く、立法府を活性化するためには、まず国会の政策立案機能を強化し、調査室と法制局の充実、法案の発議要件の緩和、議員の自由討論の場こそ確保することが重要です。

二一世紀を迎える時代の歴史的転換期にあたり、民主主義と人権の尊重される社会で、人々が平和に生存することを保障することこそ政治に課せられた責務であると訴えて、私の反対討論を終わります。

大脇雅子国会報告Internet版

第 145 国会報告 本会議 1999年7月26日

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1999年7月26日