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日本寄せ場学会2009年秋季シンポジウム

多様な運動空間の構築をまなざす

2009年11月28日(土)、29日(日)
場所:京都大学文学部学生控室(通称ブンピカ)

開催趣旨

 寄せ場には、日雇労働者の激烈な闘争が繰り広げられてきた歴史がある。それらの闘争は、労働者が「寄せ場」という場を共有していたこと、そしてそこに共同性が生まれていたことによって支えられていた。寄せ場がときに寄り場と言い換えられるように、それは資本によって囲い込まれていた場でありながら、同時に労働者が抵抗の拠点とする「運動空間」でもあったのだ。
それでは、現代はどうか。1990年代以降の寄せ場の解体のなかで、労働者が失ったのは仕事や住居だけではない。みずからが権利を主張する土台となる空間をも、掘り崩されていったのである。だからこそ私たちは、抵抗の基盤となる「運動空間」を再構築しなければならない。
その動きは、すでに足元ではじまっている。公園に点在するテント村の活動は、まさにその典型といえるだろう。あるいは、ビッグイシュー等、各地で繰り広げられているソーシャル・ミックスの試みも、その射程に入りうるかもしれない。いずれにせよ、ここ数十年間の変化があまりに激しいために、研究者も活動家も、そのような多様な抵抗にどのような意味を見出し、位置づければいいのか、戸惑いつづけてきたように思われる。
かような状況にあって、本学会では歴史学や社会学、文学、建築学等々、さまざまな領域から都市下層をめぐる支配と抵抗に対する議論を積み重ねてきた。これらの議論の蓄積を踏まえ、本シンポジウムにおいては、現在の運動空間がどのような状況にあるのか、そしてどのような可能性を秘めているのか、といった点をめぐり議論を交わしたい。

第一日目 11月28日(土)

講演1:稲葉奈々子(茨城大学)13:00〜14:30 (時間は講演と討論の両方を含む)
占拠という技法(アート):公共空間のとりもどし方

 公共空間の占拠は、世界各地で社会運動の技法となる一方で、スクオッターなどそれ自体が生き抜く技法としてあみだされてきた。本報告では、ホームレスや失業者など「持たざる者」が生きて行く上での物質的必要に迫られての占拠が、社会運動としての公共空間占拠に転換していったあり方を90年代以降のフランスの住宅占拠運動から読み解いていきたい。運動に参加する「持たざる者」の当事者にとっては、社会運動が掲げる「オルタナティブ」はどうでもよいことで、みずからが安定した「普通の」生活を送ることが最大重要事項である。住宅から立ち退きになりそうな人にとっては、右だろうが左だろうが、住宅を保障してくれるならば、どちらでもよいのである。そういう動機で運動の担い手になっていく「持たざる者」たちが、はたと、自分個人の住宅と尊厳のための闘いから、同じ状況にある他の人を支援する闘いに転換することがある。この転換の生成が、占拠していた公共空間で起きることがある。その過程を、社会運動生成の過程として、持たざる者当事者に焦点を当てて議論したい。

講演2:岡本祥浩(中京大学)14:30〜16:00
居住福祉の実現を目指したまちづくりの課題

 日本の都市計画の思想は、「用途純化」と「機能分化」という言葉に象徴される特徴を持っている。この思想は、都市や地域を効率的に構築していくに適した考え方であった。更に土地や住宅の市場を通した都市の形成が、経済的なフィルターを通して現実的に人々を細分化し、特定の属性に偏ったきわめて歪んだ地域社会を形成してきた。
 一方では、老若男女様々な人々が一定の地域に暮らすことが都市の魅力であり、活力であるという認識が高まっている。障がい者、低所得者、ホームレス、母子・父子家庭、一人暮らし世帯などこれまで都市計画のモデル的世帯ではなかった人々にも配慮することが、「ノーマルな地域社会」を形成する重要な考えであることにも光が当てられるようになってきた。
 本報告は、「特定の人々の地域社会」の形成という現実と「すべての人々を包摂する地域社会」という理想とのギャップ、そしてそれを克服する課題を提示したい。

講演3:桜井大造(野戦之月海筆子)16:30〜18:00
疾走するテント芝居、鎬を削る<公共空間>(仮題)


第二日目 11月29日(日)
講演:原口剛(神戸大学)9:00〜10:30
寄せ場と大学の関係性から視えるものー1970年代寄せ場運動史ききとり調査中間報告

映画上映:ドキュメンタリー上映「長居青春酔夢歌」(65 min.)
佐藤零郎監督 10:30〜

〈会場アクセス〉

●会場:京都大学文学部学生控え室(通称ブンピカ)


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日本寄せ場学会2009年度総会
「総寄せ場化は何をもたらすのか」
2009年5月23日(土)・24日(日) 
会場:明治学院大学 
白金キャンパス (3号館3203教室)
東京都港区白金台1-2-37

※どなたでも参加できます(予約不要・直接お越しください)

開催主旨

 経済グローバリゼーションは、非正規雇用層を増大させるとともにその選別を熾烈化させた。また、グローバリゼーションが促した情報化は、資本にとっての労働力の意味をも変質させ、携帯電話をもった個を「いつでも、どこでも」調達できるようなシステムを完成させつつあるようにも見える。さらに、資本は、労働力の調達先をグローバルに拡張して「どこからでも」人を集めることができるようになっている。資本にとっての非正規労働者は、もはや具体的な身体をもつ存在ではなく、温情主義が介在する余地すらない「統計的な集団」になりつつある。社会の総寄せ場化とは、労働者の生活どころか身体すら想定されていない、「いつでも、どこでも、どこからでも」のリクルート・システムが完成されていく過程のことでもあるのだ。総寄せ場化状況における雇用関係の変質とともに、それに伴って、遍在する貧困層に対する監視化が国家・社会のリアクションとして現れ出ていることも気にかかるところである。

 しかし、経営科学やリクルート・システムが変更されたところで、そして、たとえ資本によって「用済み」とされようが、生身の身体はどこかに場所を占めて生存する。生活を立ち上げようとする。自尊感情を保とうとする。流動化され孤立化していたとしても、具体的な身体が交差することによって、そこに新たに連帯の契機が生まれることはないだろうか。総寄せ場化の現状を真摯に分析するとともに、そのような問題意識を失ってはならない。

 本総会では、グローバル資本主義下における労働力商品化について原理的に検討しつつ、同時に実際の労働現場の変容とそれに抗う労働者たちの生について、ブラジル人労働者と「フリーター」について特に取り上げて論じ合いたい。また、寄せ場学会においてこれまで論じられてきた寄せ場労働者や野宿者との連続性と変化についても議論したいと考える。

5月23日(土)13:00-18:00

基調報告 西澤晃彦(東洋大学)
報告1 小倉利丸(富山大学)
 「グローバル資本主義下の搾取的労働からの解放を構想する」
報告2 丹野清人(首都大学東京)
 「非正規切りと世界同時不況
   −−不況の結果の派遣切りか、非正規を切るための不況か」
報告3 トム・ギル(明治学院大学)
 「アメリカのホームレス集落」

5月24日(日)10:00-14:00

田浪亜央江(大学講師/ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉)
 「激動のパレスチナ情勢瞥見」
中野真紀子(デモクラシーナウ!日本
 「「世界一の大国」の貧困事情を覗く」


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2008年度日本寄せ場学会秋季シンポジウム
「大貧困時代をいかにこえるか――寄せ場から見通す未来」

日時:2008年12月6日(土)・7日(日)
会場:記録と表現とメディアのための組織(remo)
(大阪市東淀川区東中島4-4-4-1F)

※どなたでも参加できます(予約不要)

6日 13:00 挨拶 藤田進(大学教員)
  13:10 講演 伊藤公雄(京都大学)
      「憎悪/嫌悪のポリテイクスを越えて
       ――憎悪を跳ね返し、怒りを組織するために」
  14:15 報告 中山幸雄(広島アビエルト)
      「今、抱きしめたい二人――山岡強一の現闘委総括をふまえて」
  15:00 コメント 池田浩士(京都精華大学)
  15:40 報告 松沢哲成(大学教員)
      「<ロームシャ>から見る戦後日本史」
  16:25 コメント 金子マーティン(日本女子大学)
  17:00 全体質疑・討論
  18:00 懇親会

7日 「労農関係の再構築――戦後農村史から見通す寄せ場の未来」
  10:00 映画上映『どぶろくの辰』(1949 年)解説:水野阿修羅
  13:00 報告 鈴木隆洋(京都大学)
      「労農は連帯できるのか――言説・運動内にある断絶」
  14:00 報告 安岡健一(京都大学)
      「戦後日本農村と人の移動――引揚・開拓・海外移民」
  15:00 ディスカッション

■会場アクセス:JR新大阪駅東出口より徒歩7分
        地下鉄御堂筋線新大阪駅徒歩12分(JR新大阪 東出口に向かってください。)
        阪急崇禅寺駅より徒歩7分
        GoogleMAPの地図はこちら



終了しました

2008年度寄せ場学会総会
《共》を編み上げる
−−寄せ場・野宿・プレカリアートをつなぐもの−−
開催のお知らせ
(協力:大阪市立大学都市研究プラザ)
日程:2008年5月24‐25日
会場:24日 大阪市立大学高原記念館/25日 大阪市立大学西成プラザ
会場地図は以下のホームページをご参照ください
大阪市立大学高原記念館大阪市立大学西成プラザ

―呼びかけ―

 「寄せ場―――それは日本の下層社会である。そこでは人間性が無慈悲に奪われる。だからこそ人間への激しい希求がある。熾烈な闘いがある」。日本寄せ場学会の原点ともいうべきこの言葉を、いま、どのように捉えるべきか。「寄せ場」が「日本の下層社会」を指し示す概念であるとするならば、それはもはや、釜ヶ崎や山谷といった、特定の囲い込まれた空間のみを名指すものではないだろう。公園や路上、河川敷で、排除や襲撃に脅かされながら生きる野宿生活者。ネットカフェにかろうじて寝床を見出すしかない、「見えない」ホームレス。過酷な労働、低賃金を強いられる非正規雇用の労働者。かつて主流社会の周縁であった「寄せ場」は、いまや、社会そのものの編成原理として普遍化されつつある。
 寄せ場の歴史が示すように、権力の常套手段は<分断>である。社会全般の領域に普遍化された「寄せ場」においては、人々の日常生活は丸ごと資本に呑み込まれ、分断され、孤立させられている。そうして無数の人々が、人間性を無慈悲に奪われ続けている。そうであるならば、闘争は、分断を乗り越えるところからはじめられなければならないだろう。労働の現場で、日常の生活で、つながりを増殖させていくこと。怒りを表現に、表現を力へと転化させていくこと。そのような相乗効果を実現する場所をつくりだしたいという思いから、「《共》を編み上げる」というテーマを設定した。
 寄せ場には、歴史的な労働運動の蓄積がある。野宿の現場には、排除に抗するなかで紡ぎだされた実践と表現がある。非正規雇用の労働者たちは、いままさに、声を上げ、対抗の力を生み出そうとしている。歴史的にも地理的にも多様な実践を、差異を尊重しつつ交差させ、重ね合わせることで、対抗的な《共》のあり方を展望してみたい。多くの方々にご参加いただき、自由に議論していただくことを願います。

プログラム■

★5月24日(土) 昼の部(13:00−17:30)
  ――パネルディスカッション

13:00−13:10 
 ●開会
13:10−14:00 
 ●報告「非正規の組織化――分断を乗り越える」
   船場潤之(関西非正規等労働組合ユニオンぼちぼち)
14:00−14:50
 ●報告「耕すこと/働くこと――つながりの中から再び個を確立するために」
   綱島洋之(京都大学大学院アジア・アフリカ研究科/野宿者ネットワーク)
15:00−15:20
 ●コメント「釜ヶ崎での活動経験から」
   水野阿修羅(日雇労働者)
15:20−15:40
 ●コメント「山谷での活動経験から」
   中村光男(山谷争議団/あうん)
15:40−17:10
 ●全体討論
17:10−17:30
 ●総会

★5月24日(土) 夜の部(19:00−21:30)
  ――映像上映(16ミリ)釜ヶ崎の運動史を振り返る

19:00−21:00
 ●映像上映
  1)「73−74年釜ヶ崎越冬斗争の記録(英語版)」
  2)「民族差別/釜ヶ崎差別糾弾斗争」
  3)「5・1釜ヶ崎メーデー」
21:00−21:30
 ●トークセッション

★5月25日(日)
  ――釜ヶ崎を歩く(10:00−12:30)

10:00−11:00
 ●フィールドワーク(集合場所:大阪市立大学西成プラザ)
11:00−12:30
 ●レクチャー×釜ヶ崎資料の映写公開
  1)「釜共闘の時代」水野阿修羅
  2)「釜ヶ崎のこどもたち」小柳伸顕(釜ヶ崎キリスト教協友会)

* 釜ヶ崎の「旅路の里」に宿泊可能です。希望される方は、5月15日までに以下の連絡先までご連絡ください。
→ eメール: enu3kya●mb.infoweb.ne.jp [●を@にして送信])

* 釜ヶ崎の簡易宿所に宿泊をご希望の方は、各自で予約していただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
  → 「大阪の安い宿」
*そのほか、総会についてのお問い合わせは下記にご連絡ください。
→eメール: haraguch0508●yahoo.co.jp[●を@にして送信])


2007年度寄せ場学会秋期シンポジウム
開催のお知らせ

終了しました
2007年11月24‐25日(於:筑波大学)

―シンポジウム開催にあたって―

 寄せ場学会は、資本主義近代における人間の精神的・物質的悲惨と搾取からの解放を希求し、解放に向けての理論的考察と実証的作業の取り組みを、近代社会最底辺たる日本の山谷、釜ヶ崎などの「寄せ場」を対象にしてすすめるべく誕生した。日雇労働者の街「寄せ場」は、今日その姿を大きく変えて一見消えつつあるが、しかし、寄せ場を特徴づける労働者の非正規・不安定・無権利就労形態は、衰えるどころか、グローバルな新自由主義経済の展開のもと基幹産業・サービス産業にまでひろく浸透し、資本主義のもっとも有効な搾取機構としてはるかに重要性を増してきている。〈寄せ場型非正規就労形態〉の拡大を通じて働く者の貧しさ・悲惨が広範に蔓延する今日、「寄せ場」ということばはもはや下層社会特有の空間概念にとどまらず、社会の「寄せ場」化という事態として、先進国社会内部や第三世界開発都市にも通底する概念として把握すべきものとなってきた。「寄せ場」をめぐる事態がそのように大きく変化してきているのを前にして、本学会が築いてきた「寄せ場」をめぐる理論的・実証的作業はどこまで有効なのか、またはどのような欠陥をさらしているのだろうか。今秋のシンポジウムは学会創立20年目に当たって、学会がこれまで築き上げてきた「寄せ場」論の成果と今後の取組課題を時間をかけてじっくりと確認することを主目標とし、年報全巻の諸論文を踏まえた総括的報告と寄せ場運動現場からの問題提起の報告とそれらを受けての討論参加者討論とによって学会の今後の活動の方向性が見えてくることが期待される。このところ「寄せ場」の立論のむずかしさもあって会員間の議論が低調なのは残念であり、今回のシンポに参加して「寄せ場」について何を問うべきかが議論され、お互いの問題関心共有化へつながる機会となることを期待したい。二日目『山谷 やられたらやりかえせ』を上映するが、資本に対抗する「寄せ場」の攻撃性の重要性を是非見ていただきたい。多くの方々のシンポへの参加をお願いいたします。

■第1日目 11月24日(土)――基調報告と討論

13:00-15:00 基調報告
・松沢哲成(日本近現代史・東京女子大学):「20号に及んだ年報『寄せ場』が提起した諸問題」
・水野阿修羅(釜ヶ崎・アジアンフレンド):「現代日本の格差――不定就労層運動考」

15:00-17:30 「両報告を受けての討論」
討論参加者:中村光男(東京・アジア・ワーカーズ・ネットワーク「あうん」)、小柳伸顕(釜ケ崎キリスト教協友会)、中山幸雄(広島・造園業)、伊藤一彦(日中関係・国際関係論)、加賀谷真澄(文学・筑波大学大学院)ほか
司会:藤田進(アラブ現代史・東京外国語大学)

18:30- 懇親会
 
*先般送付いたしました学会通信のなかで、討論参加者の加賀屋真澄さんの肩書きが誤表記されておりました。
 お詫び申し上げます。

■第2日目 11月25日(日)――映画と報告

(1) 10:00-12:00 映画「やられたらやりかえせ」―解説(「山谷」制作・上映委員会)

(2) 13:00-15:00 報告「現代欧米下層社会考」        
・清水知子(英文学/文化研究・筑波大学):「冷戦のアポリアースパイの老舗と監視の<眼>」
 <他は未定>
 司会:中西昭雄(寒灯舎編集人) 

(3)15:00−16:00 全体的総括討論
 司会:中西昭雄(寒灯舎編集人)

会場: 筑波大学 大学会館特別会議室
交通: @東京・秋葉原駅地下ホームから「つくばエクスプレス」に乗車、「つくば」下車(最短で45分)。「つくばセンター」から大学方面行きバスで「大学会館前」下車(約15分)。
A東京駅八重洲口バスターミナルより「筑波大学」行きバスに乗車、「大学会館前」(つくばセンターではない)で下車。
宿泊: 24日夜宿泊の用意あり。宿泊希望者は11月17日(土)までに学会事務局へ申込のこと。
(長井事務局長:Eメール: enu3kya●mb.infoweb.ne.jp [●を@にして送信])


2006年度日本寄せ場学会秋期シンポジウム
〈世界の現状をどう捉えるべきか
イスラエル・パレスチナ・レバノンからの問題提起〉

[終了しました]
12月2日(土)・3日(日)
会場:大阪・釜ヶ崎「喜望の家

――秋のシンポジウムに向けて――

 2006年夏、イラク、アフガニスタンにおける反占領闘争の激化による米軍の混迷化に加えて、パレスチナ・レバノン占領地におけるイスラエル軍事作戦の失敗は、米国・イスラエル・その他同盟諸国が掲げている「テロ撲滅による民主化」がいかに住民の激しい反発と抵抗を喚起しているかを示している。アラブ民衆の反占領闘争は反米産油国イランに支援されており、イランがより強力な国家となって反占領アラブ運動と結びつきことを懸念する米国は、イランが核を持つことは断じて許せず、「イランの核査察拒否」問題については戦争も辞さないという強い態度で臨んでいる。

 反占領アラブ民衆闘争において、占領体制下で人間としての尊厳を傷つけられた個人が、イスラームを基軸として圧倒的に強力な軍事占領体制に立ち向かっていくという光景がある。時代錯誤とおぼしきそうしたアラブ民衆行動に加えて、イスラエル、パレスチナ、レバノンという国境や宗教の違いを超えて占領反対で結束していく住民の動きがある。そのような反占領民衆運動が米国・イスラエルの築く中東支配体制をゆるがしている様子を部分的にでも明らかにしようというのが、今秋のシンポジウムの狙いである。発表に加えて、映像も紹介する。

 シンポジウムへの多くの方々の参加とそこでの意見交換をお願いする次第である。

■第一日目:12月2日()■

1.報告者:田浪亜央江(一橋大学)
13:30 ビデオ上映 英語タイトル'A Job to Win' 
90年代イスラエルがバブルで繁栄するなか、外国人労働力がイスラエル国内のアラブ人労働力を代替し始めた。このビデオは、非シオニスト左派政党「ダアム」によって組織された労働組合が、失業を余儀なくされたアラブ人のあいだに浸透してゆく過程を記録したもの(30分)
14:00 報告「パレスチナ/イスラエルにおける共産主義と民族主義 理念と実践の矛盾・相克」
イスラエル建国後のユダヤ人とアラブ人の関係について、共産主義と労働問題の位置づけを中心にしながら報告。イスラエル共産党史がテーマの一つになるが、思想史的な話よりも、具体的な事例や人物像に触れながら、出来るだけ「今」に結びつけて話す予定。
15:00 コメント:奥山真知(常磐大学)
15:15 質疑

2.報告者:藤田進 (東京外国語大学)
15:45 報告「イスラエル占領体制を挟撃するイスラーム民衆運動の今日」(45分)
イスラエル占領に抗して形成される新たな「アラブ」アイデンティティを、ヒズボッラーやハマースを軸とするイスラーム民衆結集に探る。
16:30 コメント:村山盛忠(日本基督教団牧師)【予定】
16:45 質疑

3. 全体討議(17時-18時)

■第二日目:12月3日()■

イスラエル映画「ラシュミア谷の人々―この十年」
(Wadi1981-1991、アモスギタイ監督、97分)

フィールドワーク:釜ヶ崎を歩く(11時〜)


寄せ場学会創立20周年に当たって
総会「グローバリゼーションを撃つ!寄せ場学会20年の総括」へ結集を!

 寄せ場の「頭脳」やま(山岡強一)さんが国粋会に繋がるヤクザに虐殺されて、20年になります。本学会は、彼亡き後、多くのさまざまな分野の人々が結集し知恵を凝集することを通じて、寄せ場とそれを取り巻く既存体制総体を何とか透視しようとして、1987年4月東京で創立されました。11月には釜ケ崎で結成記念大シンポジウムも持たれました。以来、各地の寄せ場その他で、シンポジウムや講演会を開き、調査や内部学習会、労働ゼミなどを実践し努力を重ねてきました。寄せ場とこれを取り巻く状況については、様々な角度から、各人それなりの捉え方が提起され、その間には非常に活発な論争も行なわれてきました。その成果は、年々刊行の『寄せ場』に表現される一方、兼ねてから念願の単行本『寄せ場文献精読306選――近代日本の下層社会』としても結晶しています。20周年に当たって、これまで我々の知はどこまで進んだか、足りないものは何か何処か、厳密な点検が求められています。グローバリゼーションと小泉改革が貧窮と深刻さを社会全般、世界全体にまき散らし、精神的にも物質的にも貧しい、悲惨、としか言いようのない現実がどんどん進行しています。事は急を要します。多くの人の結集によって反撃の知の構築に向かおうではありませんか。皆さんの参加を心から呼びかけます。

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第20回日本寄せ場学会総会
〈グローバリゼーションを撃つ! 寄せ場学会20年の総括〉
2006年5月27日(土)・28日(日)
於 京都精華大学

5/27(土)
13時30分〜 パネルディスカッション

総論◆池田浩士(京都精華大学)
寄せ場の盛衰◆松沢哲成(東京女子大学)
山谷から◆中村光男(日雇全協)
釜ケ崎から◆小柳伸顕(釜ケ崎キリスト教協友会)
アラブ、ムスリムとは◆藤田進(東京外国語大学)
外国人労働者のいま◆田巻松雄(宇都宮大学)
建設業の変遷◆岡本祥浩(中京大学)


5/28(日)
10時〜 研究報告
「誰がフリーターになるのか?──フリーターの析出と社会的不平等の世代間再生産」
妻木進吾(学術振興会・同志社大学大学院)
「ニューレフトからニュー<レリジャス>ライトへ──転換する寄せ場のポリティクス」
白波瀬達也(関西学院大学大学院)
「大阪港の港湾労働からみる釜ケ崎の戦後史」
原口剛(大阪市立大学大学院)
「飯場労働論の展開」(予定)
渡辺拓也(大阪市立大学大学院)
13時30分〜 映画「山谷ーやられたらやりかえせ」上映

■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

京都精華大学までのアクセス
(1)京都駅、阪急四条方面から:地下鉄烏丸線で終点の「国際会館」下車(京都から正味20 分)。3番出口から地上に出てすぐ右手に20メートル、京都精華大学へのスクールバス乗場あり。(無料) 土曜は10分間隔。日曜は通常は運休だが、28日はオープンキャンパスが予定されているので、間隔はあくかもしれないが利用できる見込み。ダメならタクシーで約700円。
(2)京阪・出町柳から:叡山電車・鞍馬、静市、二軒茶屋方面ゆきで「京都精華大学前」下車(正味17分)、そこが大学。
■5月27日宿泊希望の方は、事務局に連絡してください。
事務局:TEL:03-3415-9653
    E-mail:enu3kya●mb.infoweb.ne.jp
        (●を半角の@に変えてください)




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日本
寄せ場学会2005年度総会

時代の転換点に立って
〜戦後体制の変貌とグローバリゼーション下の日本列島を問う〜

終了しました

 日本の戦後体制が米国占領下のなかで作られたことは言うまでもない。しかしながら、それは他方で戦前期の軍事寡頭体制を掘り崩す役割を担っていたことも、想起しなくてはならない。かくて、45〜60年代頃の時期におけるこの列島の国家と社会は、一方で戦前期的管理体制の残渣を残しつつ、GHQとアメリカ中心主義という、「戦後民主主義」体制を形づくっていたのであった。それは確かに、張りぼての虚像ではあった。しかしながら、そこには<民衆>、言い換えれば被支配層を基軸として経済、社会の民主化を図るという考え方も細々であるとはいえ貫かれていたとは言えるのではなかろうか。
 では、そういった戦後体制は、寄せ場にとって、また広く下層にとってどのようなものであったろうか。また、21世紀に入って変貌著しいこの列島社会=国家は、どのような地平へと到達していくのであろうか。転落しつつあるこの体制の着地点は、広汎な下層にとって、一般に普通の人々にとって、どのような意味を持つものとなるのであろうか。
 往事を振り返り、周辺をぐるりと見回し、我らが今後行きく先を遙かに望もうではないか。今、確かに時代が大きく転換し、列島総体が新たな運命を迎えようとしているのだから。
 グローバリゼーション、民衆運動、世界企業トヨタの下請けと臨時労働者、野宿態勢の撤去(刈り込み)、万博、自衛隊の海外派兵と「非常事態」づくり......
 様々な論点と視角から、時代の転換の意味を問うことが求められている!

多くの人の参集を!!

2005年5月28日(土)・29日(日)
会場:名古屋・働く人の家

名古屋市熱田区伝馬2-28-14
地下鉄名城線・伝馬町3番出口から内田橋方向へ。
市営伝馬荘で左折、聖アントニオ幼稚園隣

■一日目(5月28日、土曜日)■
会場の都合により開始時刻が1時間遅くなりました。
ご注意ください(下記赤字の部分が変更箇所)。

●総会    14時30分 
●報告と質疑 
15時から19時 

グローバリゼーションは戦後体制の枠組みを根本から変えているのか。
世界企業を支える下層労働の現実は?民衆運動の方向性は?

15時 小田原紀雄 「戦後体制の枠組の変貌と下層」
16時 小倉利丸(富山大学)「グローバリゼーション下の民衆運動」
17時 丹野清人(東京都立大学)「トヨタ一次下請けにける期間工」
18時  総括討論 司会 岡本祥浩(中京大学)
19時半頃〜 懇親会



■二日目(5月29日、日曜日)■

●報告と質疑 9時から13時

自立支援法制定から3年。名古屋における行政代執行、自立支援事業、アフターフォロー、万博を通じてみるホームレス問題・対策の現状!

9時 藤井克彦(笹島診療所)
 「追い立てられる野宿者―名古屋市の『公園利用の適正化』と行政代執行」
10時 藤田博仁(愛知県立大学)
 「名古屋市の自立支援事業と野宿者のアフターフォロー」
11時 原口剛(大阪市立大学大学院)
 「万博とホームレス」(原口報告は28日に変わることもあります)
12時 総括討論  司会 田巻松雄(宇都宮大学)


宿泊希望者は学会事務局までご連絡下さい

名古屋働く人の家では1泊1000円程度で宿泊が出来ます。宿泊希望者は田巻(宇都宮大学、028−649−5191またはtamakim@cc.utsunomiya-u.ac.jp)までご連絡下さい。電話連絡で不在の場合は留守電にメッセージを入れておいて下さい。後ほどこちらからお電話いたします。


2004年秋季シンポジウム
〈映像に見る下層社会=寄せ場〉
終了しました

 時代、場所も異なる「寄せ場」が登場する5つの映画を見 て、それぞれの寄せ場に精通している5人にコメントしてもらい、討論のなかで、映画に描かれている「寄せ場」とは何かを考える。
 また、「寄せ場」が少しでも登場する映画のリストアップと整理は、どのような形式で可能か、も考えていきたい。

11月27日(土)14:00〜
『東京の宿』
(1935年、松竹、80分、監督=小津安二郎、解説=松沢哲成)
  失業した父親が子連れで木賃宿に泊り、職探し。当時の山谷を彷佛とさせる。

『当たりや大将』(1962年、日活、87分、監督=中平康、解説=水野阿修羅)
  釜ケ崎で当たりやをしている男の物語。

『風の群像』(1992年、東海テレビ、50分、ディレクター=広中幹男、解説=藤井克彦)
  名古屋・笹島の91年炊き出し・越冬から92年春闘の時期を描いたドキュメンタリー。

11月28日(日)10:00〜
『にあんちゃん』
(1959年、日活、101分、監督=今村昌平、解説=中山幸雄)
  佐賀県の小炭鉱。両親を亡くした在日朝鮮人の4人の子供たちの必死な生活。

『1984・寿ドヤ街・生きる』(1981年、92分、監督=渡辺孝明、解説=山本薫子)
  
横浜の日雇労働者の街、寿町を描いたドキュメンタリー。

会場:広島 カフェ・テアトロ・アビエルト
     
広島県広島市安佐南区八木9-10-40

問い合わせ
 082-873-6068(カフェ・テアトロ・アビエルト/夜間のみ)
 090-4896-0967(中山)
 03-5382-6374 東京女子大学 松沢研究室
 参加希望者および宿泊希望者は中山または松沢研究室にお 問い合わせください。


日本寄せ場学会2004年度総会
終了しました

2004年5月29日(土)-30日(日)
於 東京女子大学善福寺キャンパス9101教室(9号館101)
※交通案内は末尾に掲載
参加費:なし(無料)

今年度総会は「戦争・占領・統治」「書誌刊行記念シンポジウム」の2本立てで行います。
特に予約等の必要はなく、会員でない方の参加も大歓迎ですのでどうぞ奮ってご参加ください。


■29日(土)
 
12時より:運営委員会(運営委員の方は9202教室=9号館202にご参集ください)
 13時より:総会
 14時より18時:

〈戦争・占領・統治〉−−報告と討議

 20世紀は「汚い戦争の世紀」といわれる。そして21世紀はさらなる血にまみれて幕を開けた。戦争の技術も、高度情報社会の発展とともに、驚くほどの変化を見ている。だが、病院も子どもも老人も死を免れることは出来ない。そして、外国軍、他民族による占領は、かつてと同様に、一片の正当性も持たないまま恣に支配を続け、権力を振るう。当然ながらそれに反発する、ナショナリズム・民族主義が台頭する。行き着く先はどこか?
 〈戦争・占領・統治〉のあり様を振り返り、今後の成り行く先を考えていく。

●基調報告
・加藤晴康(横浜市立大学名誉教授)

●報告
・藤田進(東京外国語大学)
「占領下イラク・パレスチナの都市騒乱と山谷暴動の記憶」

 イラク・パレスチナにおける占領軍とアラブ民衆の暴力的対抗はその武力や犠牲の度合いの決定的な格差にも拘わらず長期化し、占領軍はいま、泥沼に引き込まれている。そのことを、かつての山谷暴動の記憶に照らして読み解きを試みる。

・奥山眞知(常盤大学)
「イスラエル・パレスチナ問題の現状と展望」

 自己の正当性を絶対化して他者を排除するイスラエル国家。その「ユダヤ民主国家」という自己規定、および、その法に内在化された差別の現実を検討し、そこにはらまれる内部の亀裂を歴史と現在の動きの中に探る。

・中野真紀子(翻訳家)
「『移動』をめぐる支配と被支配−−離散共同体と帰還権の主張」 

 2003年秋に発表された和平提案「ジュネーヴ合意」の是非めぐる議論の中心には、パレスチナ人の「帰還権」の事実上の放棄という問題がある。この帰還権というコンセプトは、膨大な数の在外同胞(ディアスポラ共同体)を双方が背後に抱えるという、イスラエル=パレスチナ紛争を特異なものにしている特徴の根幹にあると思われる。在外パレスチナ人の声を代表するものとしてエドワード・サイードを取り上げ、「移動性」への脅迫的なまでの彼の執着と、帰還すべき故郷のない(つまりホームレスの)状態を生きるという理想が、一つの土地をそれぞれのホームランド(祖国)であると主張して争うパレスチナ人とユダヤ人の双方の「帰還権」の主張とどのようにつながっているかを考察したい。

・金子マーティン(日本女子大学)
「戦時下日本のユダヤ人対策」

 第二次世界大戦前夜、神戸は増大するユダヤ人難民との接点となった。そこにある種の「美談」も生まれている。しかし、実態はどうであったか。その現実を検討しつつ、戦後の日本人の対ユダヤ人意識のあり方を問う。

・コメンテーター=田巻松雄(宇都宮大学)

18時頃より:懇親会

■30日(日)
 10時より13時:

『近代日本の下層社会 寄せ場文献精読306選』
刊行記念シンポジウム
−〈寄せ場学〉を志す人へ−

 日本寄せ場学会の編集による文献案内がついに完成(総会当日に刊行)。標題の通り、近現代の下層社会・寄せ場・都市下層に関する重要文献306点および関連文献1000余点を紹介し、下層から近現代を照射することを目指した、過去に例のない画期的な文献案内となっている。総会2日目は、この文献案内をひもときつつ、寄せ場とはそもそも何である(あった)のか、寄せ場/下層社会/都市下層をめぐってこれまで何が〈問題〉とされ論じられてきたのか、そして、寄せ場/都市下層をめぐって現在まき起こっている現象は歴史の中でどのように捉えなおすことができるのかetc.といった問題について、執筆者たちによる文献解説を手がかりに考える。

・報告予定者 小柳伸顕(釜ヶ崎キリスト教協友会)
       松沢哲成(東京女子大学)
       中山幸雄(造園業)
       トム・ギル(明治学院大学)
       中西昭雄(寒灯舎)
        進行=北川由紀彦(日本学術振興会)

※当日は文献案内
日本寄せ場学会編『近代日本の下層社会 寄せ場文献精読306選』れんが書房新社、定価3000円(+税150円)
 を特別割引で頒布します。

■東京女子大学善福寺キャンパスへの交通
JR中央線・西荻窪駅より徒歩5分(特別快速・通勤快速は停車しません。また、土日ダイヤでは、快速も停車しません。総武線・東西線を利用するか、吉祥寺駅を利用してください)。
バス利用のときは、西荻窪駅北口(1番のりば)から吉祥寺駅行き「女子大前」下車
         吉祥寺駅北口(3番のりば)から西荻窪駅行き「女子大前」下車
案内地図(東京女子大学HP内)



自衛隊派兵反対運動への弾圧に抗議する

声明

 すでに、2004年3月5日の朝日新聞社説「ビラ配りでなぜ逮捕」などで知られているように、去る2月27日、東京都立川市の市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人が逮捕され、団体事務所や個人宅の6ヶ所が捜索され、さらにパソコン等まで押収されるという弾圧を受けました。
 その理由は、この1月に、立川市にある陸上自衛隊駐屯地近くの自衛隊官舎に「自衛官・ご家族の皆さんへ − イラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声をあげよう!」というビラを配ったことが、「住居侵入」にあたるというものでした。そもそも集合住宅の郵便受けにビラを入れるという行為が「住居侵入」であるというならば、日常行われている広告などのチラシ配りなどは、一切が不法行為ということになります。しかし、今回の逮捕・捜索はあきらかに自衛隊派兵への反対運動の封殺をねらった、きわめて政治的なものといわざるをえません。
 自衛隊へのイラクへの派兵は、日本が有する軍事力の海外での行使と結びつく重大な転機として、多くの懸念や反対の声がおこっています。今回の逮捕は、そうした声から自衛隊員やその家族を遮断し、自由な言論を押さえ込もうとする、一方的かつ行き過ぎた権力の行使であり、私たちは、今回の事態をきわめて深刻な憂慮すべきものと考えます。
 私たちは、このような国家・警察の行為に対して強く抗議するとともに、逮捕された3名の即時釈放を求めます。

2004年3月8日 日本寄せ場学会
2003年度 秋季シンポジウム
〈志願と動員〉
ナチ第三帝国と大日本帝国の教訓
■終了しました■

 多くの人々の自発的な意志が体制改善の方向に生かされることは、これまでの歴史の中では残念ながらあまり多くはなく、かえって既存体制の改悪や管理強化、あるいは権力の肥大化の方向に持って行かれてしまうことがしばしばであった。今回は、ナチス第三帝国と大日本帝国の事例を検討し、そこからどのような教訓──プラスであれマイナスであれ──を引き出せるか、考えていきたい。と同時に、そういった歴史的事例が、最近の険悪な内外の情勢を読み取る上において、どれほど有効なのか,役に立つのか、併せて点検していきたい。

日時:2003年11月15日(土):13時−18時
         16日(日):9時−13時
 於:東京外国語大学 府中キャンパス
     
本部管理棟(通称事務棟)2階大会議室

※会場が(当初予定されていた)東京女子大学から
変更になりましたので
ご注意ください

■11月15日(土)13時−
  
当日は事務棟(1階)の通用口付近にご参集ください
〈パフォーマンス〉
 「反帝と反グローバリゼーションのはざまで、
                身体表現の位置、
                  そして不可能性」
  出演:桜井大造と寄せ場に関わった人たち
〈報告〉(16時頃からを予定)
 池田浩士
 「ナチスにおける〈志願と動員〉
     :越冬闘争と歓喜力行団を中心に」(仮題)
〈討論〉

■11月16日(日)9時-14時頃まで
〈報告〉
 松沢哲成
 「1920、30年代日本における〈志願と動員〉
             :満蒙問題に焦点を当てて」
 なすび(山谷労働者福祉会館)
 「
NPOをめぐる問題状況について
〈討論〉

会場:東京外国語大学 府中キャンパス
   本部管理棟(通称事務棟)2階大会議室
※会場が(当初予定されていた)東京女子大学から
変更になりましたのでご注意ください。

(住所:〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
      地図1(東京外大HP内)地図2( 東京外大学祭HP内)
 
最寄駅:1.(JR中央線「武蔵境駅」で乗り換え)西武多摩川線「多磨」駅下車
                                 (旧「多磨墓地前」駅)
       徒歩:約5分  (新宿駅〜武蔵境〜多磨駅間は40分弱)
     2.(新宿から京王八王子/府中/高幡不動行)京王線「飛田給」駅下車
       徒歩:約20分
       バス:飛田給駅北口より[調30]または[飛01]系統に
          乗り「東京外国語大学前」停留所下車
      (京王線新宿駅〜飛田給駅間は約30分)


学習会&年報『寄せ場』合評会
終了しました

学習会報告題目(予定)

池田浩士「『ナチスと労働』に関連する先行研究の紹介と批判」
平野千果子「フランス植民地主義の歴史:その研究状況と今後の可能性」

日時:2003年8月30日(土)・31日(日)
於 京都(大原)
※民宿にて合宿形式で行います(日帰りも可).参加を希望される方はこちらまでご一報ください.


2003年度寄せ場学会総会第一日目参加記

藤田 進

 2003年度寄せ場学会総会が東京・山谷労働者福祉会館で開かれ、当日は大雨であったが参加者の出足はよく、会場はほぼ満員となった。今年度総会のテーマは「戦争と崩壊の時代」であり、インターネットで知ったという非会員の人々の参加が結構おり、テーマへの人々の関心の高さをうかがわせた。米国がイラク攻撃から軍事占領へと有無を言わさず突き進み、その一極的世界支配構造づくりの進行の中で民衆が背負い込む犠牲と負担は人間性剥奪状況のむきだしの現実となってあらわれおり、ここ日本でも日米同盟が金科玉条の政府支配権力による周辺有事事態三法強行成立と米国傘下での日本のイラク出兵が現実のものとなること、日本民衆がアジアの民衆と軍事対決へと追い込まれ様相となってきた。そうした危機的情勢を受けて、総会報告は(1)加藤晴康「『帝国』と『国家主権』のはざまでー戦争からSARSまでー」、(2)稲葉奈々子「反グローバリズム運動は世界でどのように結びついているか:ポルトアレグレ世界社会フォーラムを中心として」および小柳伸顕「変容し続ける寄せ場釜ヶ崎」が準備された。
 加藤報告は「帝国」を論じるに、折からのSARSの世界的蔓延化に対して取られた国際的検疫体制を取り上げた。検疫体制(カランティーン)という15世紀西欧起源の制度が疫病防止を目的にしつつ、「防疫」-->一定地域の隔離-->隔離対象の乞食・放浪者の拘束-->彼らの収容施設の「病院」(本来、役に立たない者を収容するところの意)の設立-->防疫に際しての「健康」の含意「心身の健全状態(社会的健全をも含む)」、防疫体制の陣頭指揮権は警察(都市ポリス)、等々の制度の本質的脈絡を踏まえて、検疫体制が貧困の排除・隔離に重きを置いた制度であったのを明らかにした。次いで加藤は、イラク戦争が終わっても米国がイラクを占領し続けていることにふれ、米国は戦争を検疫体制と同列に位置づけており、イラクが「健全」と判断しない限りは戦争・占領をやめる必要はないと考えていると指摘した。国家主権の角逐があっても、「検疫」という西欧近代の制度と含意を根拠とした支配方式が打ち出されている限り西欧諸国は米国に同意し、西欧に擦り寄る日本などの納得はたやすく、こうしてイラクにみるように、米国の支配方式は持たざる者たちの抵抗を合法的に抑え込むことで帝国の広がりをもって貫徹する。加藤の西欧近代国家に共通する制度と論理が支えとなって国家主権を超えて帝国的支配方式が実現するという主張は充分に説得的であった。
 一方稲葉報告は「グローバリズムに対抗」する運動についての報告で、ヨーロッパにおける運動をベースに資本主義的市場経済世界とは違う「もうひとつの世界」を目指す「世界社会フォーラム」の運動の、そのまた新しい潮流である「持たざる者の運動」に着目しての報告だった。稲葉報告の特徴は、「ことば」による表現を欠いてはいるが「持たざる者」故にさまざまな「占拠」という具体的直接行動をする者たちを、「抵抗のかたち」による表現者として大きく評価する点にある。ヨーロッパのそうした者たちの運動は、2003年における世界社会フォーラムにおけるブラジル土地なし農民のワーカーズコレクティブなる生産との出会いを契機に、さらに<持たざる者の生産力、生産性>の構築へと動きだし、市場経済価値の世界では自分たちが無価値とされたきたことに対抗して自己生産を切り開こうと新局面を迎えているという点が報告された。ただしその<生産>とはどのようなものか、稲葉は「日本のNPO活動も、これにあたるものもある」といったがその実態はよくわからない。また稲葉は「抵抗のかたち」を広く社会運動としてとらえたいと言い「チアパスのサパティスタ解放戦線」をも挙げているが、これも具体的に知りたいところである。だがよくわからない二点も含めて聞いていた筆者には、かつて軍事組織のPLOがベイルート難民キャンプとその周辺を拠点として一種の住民コンミューンを組織してイスラエルやアラブ権力と対抗したことが想起され、反グローバリズムで対抗する運動を「もう一つの社会」を共通項に「持たざる者の生産」から解放戦線まで多様ながらも「具体的な直接運動」として一様に社会運動としてとらえようとする稲葉の方法はなかなかに魅力的であった。
 小柳報告は、釜ヶ崎でのNPO活動が行政の支援も受けて展開して、「就業生活保障」「福祉」などに実績を上げているのを紹介し、資料に添付された「釜ヶ崎のまち再生」の絵図からは釜ヶ崎の明るい展望さえのぞかれるようである。だが釜ヶ崎を熟知する小柳は一方で「閑散とした朝の寄せ場」の光景を報告し、労働者中心に隘路をのりこえんとしたかつての釜ヶ崎労働者の活気は衰えて受け身の沈黙が横溢している状況を描きだした。
 以上の三本の報告を受けて、参加者間でいろいろと議論が出されたが、なんといっても議論は釜ヶ崎におけるNPO評価について集中した。稲葉報告にみる、持たざる者が反グローバリズムを掲げて「もうひとつの世界」を構築していこうとする動きがある一方で、小柳報告に見るのは、行政に支えられNPOに相談して自己救済をはかる制度を備えながらその分ことばを発せず逼塞する労働者の姿である。グローバリゼーション下の持たざる者の運動は、行政が国内労働者の身近な条件改善をはかる一方で、占領状態下にあるイラクの持たざる者たちを隔離し痛めつけることに加担するというような事態にどう対処すればよいのか?今日の帝国の持たざる者への支配様式への対抗は、持たざる側が一国的な枠を突破して相互に声を大にして呼びかけつながりあっていくことこそが重要でないのか。筆者は報告と議論を聞いていてそんなことを感じた。



2003年度総会
戦争と崩壊の時代にあって
〈車座の談議〉
終了しました
日時:2003年5月31日(土)・6月1日(日)
於 (5月31日)山谷労働者福祉会館2階(13時-17時半頃)
(6月1日)山谷労働者福祉会館前(朝9時)集合

会員でなくても、また事前の申込みが無くても参加できます。
ふるってご参加ください。
なお、当日配付資料代(1000円以内・未定)がかかりますので
ご了承ください。

1日目(5月31日)
13時から17時半頃まで
戦争と崩壊の時代にあって〈車座の談議〉

○総会基調(加藤晴康)
 
年報『寄せ場』の特集タイトルを「『定型』の崩壊」としたのは、1996年(第9号)のことであった。さらに眼前に進行する既成の秩序の動揺と加速化する崩壊。アメリカの力の行使は、あらたな「帝国」体制による整形手術なのか?その一方で、流動化の進む底辺に、あらたな枠組みと選別を押しつける秩序の強制は著しい。今回の総会は、寄せ場学会の原点に戻り、平場で車座での思い切った自由な討議が期待される。

予定されている発言者(あるいは論点提起者)
・松沢哲成(司会・東京女子大学教員/近・現代史)
・加藤晴康(総会基調・著述業/歴史学)
・稲葉奈々子(茨城大学教員/社会学)
・小柳伸顕(釜ヶ崎キリスト教協友会)
・藤田進(東京外国語大学教員/現代アラブ史)
・中野真紀子(翻訳家)
・池田浩士(京都大学教員/文学)
・中山幸雄(元山谷現闘委(山谷悪質業者追放現場闘争委員会)メンバー)

※車座形式での討議ですので、ご参加の方どなたでも発言できます。 
・なお、18時頃から会場周辺で懇親会を予定しています。

2日目(6月1日)
朝9時から午後3、4時頃まで
山谷と周辺における「被差別空間」の形成を歩く

 人足寄場や小塚原刑場の跡を訪ね、ドヤ街と朝鮮人部落、月島の盛んに思いを致し、遊郭吉原の閉じられた空間と囚われ人たちのなれの果て、駆け込み寺を垣間見、周辺に今なおブルーシートで立てこもる路上の命の群れと出会う旅。

会場(山谷労働者福祉会館)への行き方

JR常磐線または営団地下鉄日比谷線 南千住駅 下車徒歩10分

    ・日比谷線南千住駅前の歩道橋を渡り吉野通りを浅草方面へ
    ・泪橋(なみだばし)交差点を越える
    ・浅草警察署山谷派出所前右折・いろは通り商店街入り口

山谷労働者福祉会館
東京都台東区日本堤 1-25-11

問合せ先:日本寄せ場学会事務局
〒167-0041 東京都杉並区善福寺2-6-1
東京女子大学松沢研究室気付
       TEL 03-5382-6374
       FAX 03-3396-3203
  e-mail(事務局)


秋季シンポジウムを終えて
アメリカの一極支配とホームレスを結ぶ回路をさがす
小柳 伸顕(釜ヶ崎キリスト教協友会)

 このテーマでシンポジウムの会場を担当した者として最初に心配したのは、このテーマで人が集まるかと言うことでした。
「新しい帝国主義・・・・犠牲と負担を強いる米の一極支配構造」
 最もホットな話題が、「ホームレス」や「ホームレス自立支援法」ならば、かなり距離があります。日本寄せ場学会は、臨場的でありたいと言うことからすれば、一見、腰が引けているようにも見えます。
 しかし、テーマ設定は、さまざまな議論の末でした。ホームレスを世界とくにアジアの空間(場)と時間(歴史)の中で再度とらえ直してみようとの観点からテーマは決められました。それで特集1「アジア社会におけるグローバリゼーションと都市下層問題」、特集2「再来する『大東亜共栄圏』」の2本立てになりました。また、グローバリゼーションを自分たちなりに解明しようとした試みもテーマには込められていました。
2002年12月7日、大阪は肌寒く、小雨が降っていました。会場の喜望の家(大阪市西成区・釜ヶ崎)は、暖房を入れて丁度いい室温でした。
主催者の心配をよそに、1時すぎには、会場はほぼ満員。出した40脚の椅子には、若い人たちの姿が目立ちました。
 シンポジウムは、中西昭雄さんの司会、二人のコメンテーター藤田進さんと加藤晴康さんによって進められました。途中、15分の休憩はあったとは言え6時過ぎまでの長丁場でした。中西さんの司会、二人のコメンテーターのコメントが、シンポジウムの流れを引き締めました。シンポジウムの進行は、報告とコメントそして質疑といった手順でした。

●アジアの視野の中で
 特集1の報告者は3人。まず田巻松雄さんが、「ホームレスの増大と日本社会の変化〜アジアにおける労働者市場の国際的再編成を視野に入れて〜」を報告されました。田巻さんの報告は、司会者の中西さんも指摘しましたが、「意欲的な報告」でした。今日のホームレスが、単に日雇労働者、とくに建設業の問題に起因するだけでなく、広く日本社会の製造業と深く関わるとの指摘でした。それはまた、日本の製造業が低賃金を求め生産拠点を海外、特にアジアへと移動させたこととも不可分だと言うのです。その過程を種々な統計を用いて実証に努められました。試論だと言われましたが、田巻さんの指摘は、ホームレス問題を単に福祉政策として終らせるのではなく、広く労働問題として取り組むとき、欠かせない視点です。藤田さんもコメントで、アラブの産油国の現状とからませ労働力の課題であると言われました。
 田巻さんの報告が鳥瞰図的だとすれば、フィリピンのマニラをケースとして取りあげた青木秀男さんの「マニラの都市貧困層:労働・居住・運動」は、生産拠点が移動させられたマニラで、働けば働くほどに貧困を強いられるフィリピンの人々を描き出しました。その点を「労働のインフォーマル化」として提起されました。ここでは、労働のインフォーマル/フォーマルをめぐって議論が活発になされました。一報告40分と若干の討論では問題が出されただけで充分な整理はできませんでした。青木さんが「都市貧困層」を終始問題にされたのは、青木さんの臨場的な研究姿勢から来ているのだと発言の端々から読みとることができました。
 青木さんの姿勢をさらに徹底したのが、松薗祐子さんの「タイにおける廃品回収業とグローバリゼーション」でした。松薗さんとタイとの出会いは20年以上になります。その中で「廃品回収業―くずや」、特にスラムのビニール回収業に焦点をさだめ、それが農村、スラムそして海外からの再生プラスチック原料輸入でどう変って来たかを報告されました。報告の最後に、日本でリサイクルが進めば、タイのビニール回収業は厳しい立場に立たされるとの指摘には、複雑な心境になりました。日本からの再生プラスチック原料輸出は、タイの再生ビニールの値を下げるのです。
 ビニール袋一枚に世界を見ることができると言えます。ビニールを追求していけば、石油資本に到達するのです。それは、アメリカやイラクとも無関係ではないことに気付きました。

●試論の中から
 特集2は、松沢哲成さんの「アジアの現状は『大東亜共栄圏』の再来と言えるか?」で始まりました。特集2は、主として歴史からのアプローチでした。松沢さんは、アメリカ帝国を清水知久に依拠して説明したあと、「米帝国とソ帝国」を取り上げました。
 さらに一歩つっこんで、現代における日本、アメリカ、アジア諸国の関係は、「新たなる『大東亜共栄圏』か? それとも <日米合作帝国>か?」との課題を提起されました。松沢さんはこの提起に資料(史料)的に裏付けをされましたが、明確な答えは出されませんでした。
 むしろこれから整理の段階に入られるのではと思いました。大航海時代から2001年9月11日の事件の中で「大東亜共栄圏」を検討していこうとの姿勢と言えないでしょうか。松沢さんの報告に対して加藤さんが、「歴史は過渡期である。社会学は理路整然としているが、歴史の方は試論である」とコメントされましたが同感です。なかなか味のあるコメントと聞きました。
 松沢さんが500年の単位で歴史を問い直そうとするのに対して、濱村篤さんの「寄せ場とオールドカマー──戦後における寄せ場形成の再検討」は、戦後50年を問題にする「寄せ場形成試論」と言えましょう。山岡強一の問題提起を大切にしながら、寄せ場と在日朝鮮人の関係に注目した試論でした。
濱村さんの試論に対しては、水野阿修羅さんが、横浜・寿での在日朝鮮人との関係、あるいは名古屋・笹島の在日朝鮮人日雇労働者が語った朝鮮総連の運動方針(本名を名のらない)など、これから深められるべき課題を沢山出されました。
 今回は、直接松沢試論と濱村試論は切り結びませんでしたが、必ずどこかで出会うことを期待した二つの試論でした。また雑賀恵子さんの「寄せ場と生産点」との関係への言及も興味深く聞きました。
秋季シンポジウムのサブテーマ「犠牲と負担を強いる米の一極支配構造」は、寄せ場や都市下層、大東亜共栄圏や戦後寄せ場形成の再検討で少し輪郭が見えて来たようにも思います。これが、多分、ホームレスを問題にするとき忘れてはならない視点ではないでしょうか。
 秋季シンポジウムは年報「寄せ場」16号(03年5月刊行予定)で特集します。

●阿修羅さんと歩く
 
6時少々すぎにシンポジウムは終了し、会場を「百番」に移し交流会。シンポジウム参加者の六割24人が残ってくれました。その大半は学生たちで、宇都宮大からは6名の参加がありました。大学院の研究生たちが、日頃出会わない研究者と意見を交換していたのが印象的でした。交流会学割制も参加者の巾を広げたと言えましょう。その結果か、交流会の雰囲気もこれまでとは少々違っていました。宿泊は、旅路の里とドヤ組に分れました。
 さて、12月8日―61年前日本軍が、アジア解放を口実に東南アジアの国々へ侵略をはじめた日―は、「水野阿修羅さんと歩く釜ヶ崎形成史」でした。宿泊組全員を含む計20名で歩きました。これだけまとまったフィールドワークは参加者にとって初めての経験でしょう。
 まず、水野阿修羅さん作の「私は、時間管理が、とくい・苦手」にはじまるアンケートに答える中でフィールドワークははじまりました。約1時間、野宿をめぐる意見交換を終え、いよいよスタート。10時旅路の里出発―釜ヶ崎の「野宿者対策関連施設」を見たあと、旧飛田遊郭を通り、近松と縁の深い「猫塚」や「芸人の天王寺村跡」を抜け、新世界(ジャンジャン横丁)、天王寺公園をみながら、この周辺が、第五回内国勧業博覧会会場跡であったこと、また日露戦争後のロシア人捕虜収容所跡だったことの説明を聞きました。1903年勧業博を見学する天皇のため沿道の長町(今の日本橋)の人々が釜ヶ崎に強制移住させられたと、釜ヶ崎形成のポイントを話されました。3時間コースで終るはずだったフィールドワークもみんなの要望で、昔の西浜部落を通り抜け、西成公園のシェルター(臨時宿泊所)の横を通り、渡し舟で大正区まで足を伸ばしました。最後はJR大正駅前で遅い昼食を沖縄料理でとり、全コースを終えました。3時半でした。

(『寄せ場学会通信』53より転載)


2002年度 秋季シンポジウム
新しい帝国主義……?
──犠牲と負担を強いる米の一極支配構造──
終了しました

 超大国アメリカによる世界の一極的支配という悪魔の手は、あまりにも恣意的に各地域に、あるいは個別の各主権国家の上に伸ばされている(されようとしている)。世界一の軍事力と経済力を背景に、「テロ」に抗してキリスト教と自由を守るという単純至極の「大義」の下、これまでに確立してきている独立独歩の国家という主権概念をねじ曲げ、協調と提携を通じた外交関係の樹立という従来の国際慣行を無視し、グローバリゼーションという名のまったく一方的な経済進出=浸透を強行しつつある。
 そういった勝手きわまる帝国主義の横行が齎すものは、いったい何か。限りなく多大の犠牲、大量の負担を、各地域に、それら住民のさまざまな層と部分に、強いることになるであろう。流される涙と血は、これまでとは比較にならない程のものとなろう。
 ──地球は破局へと向かっているのかもしれない。

 以下においてわれわれが試みようとするものは、そういった急速急激な墜落傾向を引き留めひっくり返すための一助にもならないかもしれない。しかしながら、われわれはやらなければならない。生きている限り、真実の認識とその抽象化・理論化をもってわれわれは闘わなければならない。
 二つの方向から、ささやかながら、世界の現状に迫りたい。

12月7日(土)13:00-18:00
 於 喜望の家
(大阪市西成区萩ノ茶屋2-8-18日本福音ルーテル教会釜が崎ディアコニア・センター)
[TEL 06-6632-1310/FAX 06-6632-1309]

特集1  アジア社会におけるグローバリゼーションと都市下層問題

 田巻 松雄(宇都宮大学)   「ホームレスの増大と日本社会の変化」
 青木 秀男(都市社会学研究所) 「マニラの都市貧困層──労働と居住」(仮題)
 松薗 祐子(いわき明星大学) 「タイにおける廃品回収業とグローバリゼーション」

特集2  再来する「大東亜共栄圏」

 松沢 哲成(東京女子大)  「さきの「大東亜共栄圏」と今日、今後」
 濱村 篤(寄せ場学会会員) 「寄せ場とオールドカマー
                 ──戦後における寄せ場形成の再検討」

 コメンテーター/ 加藤晴康(横浜市大)

   19:00頃〜懇親会
    宿泊場所「旅路の里」(宿泊希望者はお早めに事務局まで申し出てください。
                定員オーバーのときは、門限のゆるいドヤに案内します)

12月8日(日)早朝から昼過ぎまで

 水野阿修羅と歩く「釜ヶ崎形成史」

以下、プログラム詳細
12月7日 
特集1
 「アジア社会におけるグローバリゼーションと都市下層問題」

 経済のグローバリゼーションは、各国の産業及び都市構造を大きく変容させている。とりわけ、この傾向は、経済と政治の管理機能が集中するグローバル都市で著しい。グローバル都市は、資本・人・情報の国際及び国内流通の中継点である。同時に、都心部で経営・管理を担うビジネス・エリートと非熟練・低賃金の職種を担う周辺的労働者に、階層構造が分極化している。また、都市のジェントリフィケーションが進行するなど、都市空間も大きく変容している。現代世界は,新しい国際分業が諸都市間のグローバル・ネットワークを空間的に連鎖させる形で作用しており、この連鎖・連節によって都市の機能と構造は位置付けられている。このようなグローバル化が拡大している現代世界の中で、グローバル都市における都市下層と地域社会の国際比較研究を目指すことが問われている。

 本特集は、アジア社会における都市下層問題を「グローバリゼーションと産業・階層構造の変容」を基軸としつつ検討する。都市下層の形成過程と階層構成は国・都市によって大きく異なる。日本では、グローバリゼーションの影響による社会的分極化は、それほど明瞭ではない。グローバリゼーションが多くの個人や地域社会に犠牲を強いる構造は他のアジア諸国でより明瞭に見られてきた。なぜそうなのか。現在のアジア諸国の姿は日本がこれから変容していく姿を示唆しているのかもしれない。都市下層の実態と変容を検証しつつ、グローバリゼーションの問題についての理論的な展望を目指したい。

田巻 松雄(宇都宮大学)
「ホームレスの増大と日本社会の変化」

 日本におけるホームレスの増大は、どのような日本社会の変化を反映しているのか。この問題について、寄せ場の変容、非正規雇用の全般的拡大、グローバリゼーションの影響という3つの視点から考えてみたい。寄せ場が最盛期であった70年代から今日までを対象とする長期的な視点をとる。グローバリゼーションの影響については、グローバリゼーション仮説というべきものを整理したうえで、その受容の日本的なあり方を検討する。

青木 秀男(都市社会学研究所)
「マニラの都市貧困層─労働と居住」 (仮題)

 今日(1990年代以降)のマニラの都市貧困層の労働と居住について、現状(分析)にみる若干の理論的問題を提起したい。労働では、informal group論の議論を超えて<新貧困層>概念を提起し、途上国都市の貧困研究の視座転換の必要を訴えたい。居住では、squatter(及びホームレス)の動向と政策を俯瞰し、住民運動の課題(居住権問題と運動論)について提起したい。いずれも日本のホームレス研究に通底する議論であると考える。

松薗 祐子(いわき明星大学)
「タイにおける廃品回収業とグローバリゼーション」

 廃品回収業は都市下層民の典型的な生業の一つである。しかし、今日、廃品回収業はリサイクル業として経済のグローバル化の影響を強く受けている。タイ・バンコク近郊農村やスラム・スクォッター住民が行っている廃品をめぐるさまざまな生業の事例から、都市下層民が市場経済の周縁におかれている状況を考える。

特集 2
再来する「大東亜共栄圏」

 1930年代半ばから40年代半ば、日本は国内において厳重な労働力―人民管理を行い圧政を敷きつつ、広くアジア―太平洋に侵略の手を伸ばし、その広域に君臨する飯場の親父よろしく、支配下の労働者―人民に重労働を強要し恣に移動させ再配置させていた。泰緬鉄道工事、中国人・朝鮮人の日本国内への強制連行、「満州」における重労働強要等々、その数は数え切れない。そうした<兵営国家>日本は、独伊と手を結んで<圏(ブロック)>を形成し、英仏などと結んでもう一つのブロックを形作った米国陣営と対峙した。米英などのブロックは、ソ連ともゆるい提携の道を選んだ。
 当時の帝国主義的な対立と拮抗は、こうして圏どうしの対決という形をとった(やや違った形・内容ではあったものの、スターリン下のソ連は広い意味で一種の帝国主義とすることができる)。
 70年代頃から以降、再生日本は帝国主義的膨張の道をより明確にしていった。アジア各地から(入管法の建前とは別に)実質上外国人労働者を続々受け入れ、国内体制の底辺・下部へと組み込んでいった。ときにそれは「大東亜共 ”円 ”圏」と呼ばれるほどに肥大化し、アジア各地にその支配の翼を広げていった。
 しかし、戦前の前記の場合とは異なりこのたびの円の支配は、ドルの支配のもとに、それと密接に繋がりつつで実行されている。大親分たる米国のもとに、EUや日本、そして旧ソ連=ロシア等々が小親分として世界の各地域担当に割り当てられ、またさらに監督とか帳場等々の機能・役割をあてがわれて、世界支配を実施している。
 この小特集では、戦前―戦後の「大東亜共栄=円圏」の歴史と実態の一端に触れつつ、その労働者―人民支配の在りようから、寄せ場と飯場の形成史という視点において、多少とも理論化・抽象化を試みようとするものである。

松沢 哲成(東京女子大)
「さきの「大東亜共栄圏」と今日、今後」

 日本の戦前の「大東亜共栄圏」について略説し、その特徴を摘記しつつ、そういった特質が70年代から今日まで、どのように継受され変容されているか、見通しを述べる。とくに、戦前的なブロック対決型の世界帝国主義から、巨大な一国が、その下に、階層的に、あるいは機能的ないし地域分散的にその他の大国、中小国を従えつつ、普通の人々と各地域を支配するという(新しい)帝国主義的在り方を考察し、その連続性と不連続性について私見を述べていきたい。

濱村 篤(寄せ場学会会員)
「寄せ場とオールドカマー──戦後における寄せ場形成の再検討」

 現今「グローバリゼーション」という言葉でくくられる現象の下で、とりわけ、アジアにおける労働力移動と労働市場の諸相が大きく変化してきている。こうした中国やベトナムでも顕著に見られる変化の中に、いかにも「寄せ場的」だと感じられる労働力移動や労働力市場の形成が認められる。が、このとき「寄せ場的」と感じられるときの特徴とは何なのか? 日本の寄せ場にもう一度戻って検討を加えてみる必要があるのではないか? 従来、寄せ場学会の中では、労働市場としての寄せ場がだんだんと衰亡してゆく様子について取り扱うものは多かったが、戦後の寄せ場形成史について検討を加えているものは少なかったと言えよう。現今のアジアでまさに今起きつつある現象を捉えるには、かつて敗戦後にまさに形成されつつあった寄せ場についてもう一度検討を加える必要があるように考えられる。
 その中で、今回は、オールドカマー、とりわけ在日韓国・朝鮮人のコミュニティーを寄せ場とからめて考えてみたい。敗戦の時に日本に居た朝鮮人は、その多くが、帰還されることなく日本に止めおかれた。そしてその労働力は敗戦後の日本復興に際して大きな役割を果たしてきた。しかも、すべてではないにしても、多くが下層に止めおかれる労働力として、日本に止めおかれたのは事実である。そして、現在でもなお、東京の寄せ場山谷の近くには在日韓国・朝鮮人の多く住む三河島が、そして、釜が崎の近くにも猪飼野がある。
 従来寄せ場のことは限定された寄せ場空間の形成史として語られ、オールドカマーのコミュニティーは、オールドカマーのコミュニティーの形成史として語られてきた。これらを、寄せ場形成の過程で、さらに広範囲に、統合的に、よりダイナミックに捉えることがもしできるのであれば、寄せ場というものを、囲い込まれた場所というよりは、そこを下層の労働者が移動するボーダーとして捉え返すことができるのではないか。今回は、そうした、戦後における寄せ場形成再検討についての提言としたい。

12月8日
水野 阿修羅と歩く
「釜ヶ崎形成史」

 釜ヶ崎の形成は、1903年の第五回内国勧業博覧会にさかのぼります。博覧会は、現在の天王寺公園、正確に言えば、博覧会会場跡が、天王寺公園になったのです。
 博覧会に明治天皇が来るというので、その沿道一帯のスラムクリアランスが行われました。スラム街は、当時の名護(長)町です。現在の日東町、日本橋の電気屋街一帯です。
 これまでもスラム街の解体移転は、何度か計画されましたが、住民の反対で実現しませんでした。しかし、天皇にかこつけて強行されました。その移転先が、いまの釜ヶ崎です。
 当時の町名で言えば、今宮村字釜ヶ崎です。当時、釜ヶ崎周辺には、電光社というマッチ工場もありました。いまの大阪市立更生相談所の北側にその痕跡があります。
 博覧会では、アイヌ民族や琉球人、台湾原住民を「展示」する学術人類館事件があったり、期間中、「乞食」(野宿者)を授産所へ強制収容するという事件もありました。
 釜ヶ崎の周囲には、西に日本一の被差別部落西浜部落(渡辺村)が、東南には、飛田刑場跡、のちの飛田遊廓がありました。また、北には博覧会と前後して歓楽街、いまの新世界の前身が生れたのです。
 釜ヶ崎が、労働者の町へと変貌していくのは、1950年代からです。とくに朝鮮戦争が一つの転機ですが、大きくカーブを切ったのは、1960年代の日本のエネルギー革命と農村の解体からです。
 こんな釜ヶ崎の変貌の歴史を、長年、釜ヶ崎で日雇労働者として働き、いまは釜ヶ崎のまち再生フォーラムや「メンズリブ」運動にかかわっている水野阿修羅さんの説明を聞きながら一緒に歩きませんか。
<註:形成史については、『釜ヶ崎──歴史と現在』(三一書房)のとくに34〜64ページを参照してください>→NPO釜ヶ崎のホームページで、電子化されたものを読むことが出来ます


年報『寄せ場』15号合評会(2002.8.24-25.)報告

 暑い京都で熱い討議を、とて企画された年報『寄せ場』15号合評会は、京都駅近く、興正寺境内の興正会館で、挙行された。
 さっそく、中西が、濱村論文と雑賀論文についてレジュメつきで論評を開始。彼が問題にしたのは、同論文181ページの以下のところである。

「宮内康は、歴史に対する把握の仕方を大きく分類する際の判断基準として次のことを挙げている。『歴史を、時間の単なる継起的な流れとしてみるか、それとも時間の空間的な広がりとしてみるかということで、私たちの基本的姿勢が決まるように見える』『前者の立場をとるものは、歴史を……進歩発展の過程としてとらえる』(宮内437ページ)。このような立場をとるものにとって、歴史の中での半端なもの、不出来なもの、滞ったもの、キッチュなもの、要するに歴史の『廃物』は、容易に看過されてしまう。これに対して、『後者の立場をとる者つまり歴史を時間の空間的な広がりととしてみる者は、歴史を進歩としてとらえるよりもむしろ、ひとつの展開としてとらえる。彼にとっては、歴史とは、この世界の展開された全状況であり、従って歴史のいっさいが彼にとって意味のあるものである。そのような彼の主要な関心事は、それゆえ広がりを増すことと同時に、広がりの底を掘りおこすことである』(宮内同前)……」

 歴史を時間の空間的な広がりとしてとらえる、というのが今ひとつ分かり難いという指摘だった。続いて、パリのパサージュについて論及し、それをベンヤミンの『パサージュ論』へと繋ぐのが、濱村論文の狙いであったわけだが、そこのところは少し飛びすぎ、つまり無媒介過ぎる(池田)という批判もされた。宮内康とベンヤミンを結びつけるのには何か媒介項が必要、とは、本人もその場の大勢も納得のようでもあったが、しかしそういったいわば厳密性を求めるよりは何か問題意識を示唆し突きつけていくことこそ濱村論文の真骨頂(松沢)という意見もあった。
 濱村本人としては、近代化のプロセスのなかで、寄せ場という事象がそれとどのように結びつくのか、が問題意識なのであるという説明があった。続いて、労働のアウラについて、また日仏の資本主義形成の違いについて、と話が飛び、さらにリアルなことをリアルに再現することの無意味さあるいは難しさ(たとい聞き取りや聞き書きに拠ったとしても)が言及された。

 次いで雑賀論文に移る。
 中西提起は、雑賀が、池田訳本のあとがきから「事後の視線で過去の現場を見るという態度をできる限り避ける」ことが重要、という部分を引用しつつ、それは立派なこと肯定しつつ敢てそれは原理的に不可能としている、と指摘した。雑賀の主張は、情念の排除はもちろん必須なのだが、認識は一般に認識主体の何らかの感情移入をかならず伴わざるを得ない、というものだ。いわば精神現象学的世界だ(松沢)。従ってまた、雑賀は、追体験なるものは果たして可能なのであろうか、とかなり悲観的でもある。それをどのように位置付けるのか、また根拠、裏付けることとはどういうことか……、と議論は続いた。
 話は変わって、池田の訳した「ホルスト・ヴェッセル」のなかで主人公が女衒の手から「娼婦」を救い、<英雄>となるのだが、それはどういうことを表現しているのか。また、主人公はいくつかの肉体労働に従事するのだが、当時のドイツにおいて、肉体労働、とくに鉱山労働がいかなる意味を持っていたのか、それが最下層の労働であったが故にもつ<神聖さ>があったのではないか、それは結局ドイツロマン主義に独特のものであったのではなかろうか、という指摘があった(下平尾)。日本のロマン主義はそれとは全く違う、とも。

 最後に、中西から、吉野源三郎と1980年頃話したときの次のような思い出が披露され、池田の今回の訳業に、より視覚的な本・雑誌が加わると良いのに、との要望がなされた。曰く、
「中野好夫に言わせるとね、グラフ雑誌というのは、ファッシズムの感性を育て
 る、というのだ。見開きページ毎に、映像構成で(論理的でなく)同時代を脈絡なく伝達・説明しようとする手法が、感覚的にファッシズムに通じる、というのだよ。雑誌『世界』でグラビアページをつくるときに、そのことは頭にあったね」。

 次に、トム・ギル「アメリカン・ホームレス」は、アメリカの研究状況について詳しく説明され納得的であった。ではそれ以外の西洋諸国の状況はどのようなものなのだろうか。また、アメリカのシェルターを実際に視察した人たちの「あぁなっては、おしまい」という感想は、どのような状況をもとに発されるのか。改めて視察報告がほしいという話が浮上していた。東か西か、どちらかで学習集会が持たれるべきなのだろうか。

藤田論文について
 湾岸地域の建設土木産業の実態が知りたい。とくに、藤田論文が強調している彼のカファーラ・システム下のクウェート労働者はどういった労働に従事していたのか、その内容、職種などが知りたいとの意見が、中山他から出された。

田巻論文について
 韓国や台湾は日本の旧植民地でもあることだし、それが今日にどういう影響を及ぼしているか、解明が欲しかったというのが一つ。それから発展して、アジアと日本の労働者の入り組んだ連関構造の解明がぜひ欲しい、との強い要望がなされた(小柳、中西など)。

(文中敬称略)(2002.9.1. 文責:川上&松沢)


2002年総会報告を聞いて考えたこと(『寄せ場学会通信』51より転載)

第一日(2002.6.8.)
 前半の2本(小柳伸顕「釜ヶ崎から発信する──その2 変容する寄せ場釜ヶ崎の風景」、なすび「寄せ場・野宿者運動全国懇談会の活動と展望」)は、近年の寄せ場/野宿者をめぐる運動現場からの報告であった。両報告の中で筆者が特に気になったのは、近年の寄せ場/野宿者をめぐる情勢の変化の中で、運動の現場も錯綜しているという事実であった。
 例えば、小柳報告の中では、釜ヶ崎において日雇労働運動、野宿者運動、事業体(NPO)の責任者が重なりあうに至った現状にたいするある種の危機感が表明されていたし、なすび報告の中心は、運動体がここ数年国家/行政サイドから矢継ぎ早に打ち出されてきている諸施策(「自立支援」「シェルター」「ホームレス対策基本法案」等)への対応に追われ、全国懇という、本来運動方針の違いなどを超えて議論するために設けられた場においても充分な議論がなされないでおり、結果的にそうしたイシューに対する態度・方針の相違が運動体間の連携の足かせとなっているという、痛切な現状分析であった。
 寄せ場学会が単なる研究(者の)コミュニティではないのだとすれば、そうした状況の中で寄せ場学会が(そして筆者個人が)寄せ場に、〈底辺〉に「投げ返さなければならない」ことは何なのか、という問いをあらためて突きつけられた思いがした。
 続く稲葉奈々子報告(「失業者運動とジェンダー 競争から降りる女性と男性の現在」)は、フランスにおける「持たざる者の運動」の中にみられる「競争社会から降りる/労働市場から離脱する」という運動戦略が「労働市場への統合」という旧来の社会統合の像に代わるオルタナティヴな社会統合像を提示できているのか、という問題提起であった。日本における近年の国家/行政の「ホームレス対策」の一つの柱が「自立支援」という(少なくとも表向きは)「ホームレス」の労働市場への再統合を志向した施策であるという現状を考えるとき、こうした問題提起は示唆に富んだものであると思う。
 小柳報告・なすび報告と稲葉報告との関連でもう一点。稲葉氏による「持たざる者の運動」の紹介を兼ねた研究報告に触発される形でここ数年、寄せ場/野宿者運動が国内外の失業者・下層労働者の運動との広汎な連帯・連携を模索していることを筆者もあちこちで耳にするようになったのだけれども、そうした試みがフランスのような規模でのひろがりをいまひとつ獲得しえないでいる(少なくとも筆者にはそのように感じられる)のはなぜなのだろうか。そろそろ、日本における社会運動についてのきめ細かな分析(を通じた運動のあらたな展開可能性の模索)が必要とされる時期にきているのかもしれない、と思った。
 4本目の池田浩士報告(「スカブラとケツワリ〈石炭の文学史〉より」)は、その前半部分:石炭と人間との関わりの歴史──国内で石炭産業が「終焉」してもそこに様々な形で労働者として携わっていた人間の生は終わらない──で報告時間を目一杯使ってしまい、報告の後半(おそらくは今回の報告の主題であった):労働/支配からの逃亡による抵抗の考察にまで至らず、やや消化不良の感が残った。最後の松沢哲成報告(「拝外と排外、そして支配秩序の形成」)は、現代の日本社会の支配秩序の原形についての拝跪、拝外、排外をキーワードとした試論(となるはず)であったが、(総会全体として)時間が足りず、駆け足での概略提示に終わらざるを得なかった。今後の学習会(あるいは研究合宿?秋のシンポジウム?)での完全なかたちでの報告に期待したい。
 ところで、今回の総会のテーマは「〈底辺〉という思想─反資本主義への助走として─」であった。たしかに各報告はこのテーマと少なからず関連するものであったと思う。それだけに、やはり、きちんとした総括討論の時間がほしかった。(北川由紀彦)

第二日(2002.6.9.)
 第二次インティファーダ下のヨルダン川西岸の街道に一人の人形使いを追い、難民キャンプに足を止めながら、一つの民がよその民の夢の中でどう生きているのか、それを解説抜きで提示した映画「パレスティナ パレスティナ」(フランス、2002年)が上映された。
 エンディングで流れた占領軍が公布した1300の法令の一部はその理不尽さゆえに観るものを圧倒させたのではないだろうか。なお、上映終了後、映画のワンシーンから分かるように、自治区から自治区への移動にも検問があり、移動の自由が奪われていること。自治区の未舗装の道路に対し、入植地の舗装され、整備の行き届いた道路にバス、どのような僻地であろうと、移動が保証されている入植者たち。この違いは一体、何を意味するのだろうか。さらに、兵役拒否の青年の声明文にあったイスラエルの存立基盤、平和に対する見解などについて、藤田進の解説があった。
 午後、加藤晴康の「『汚い戦争』の世紀」では『戦争論』を著したクラウゼヴィッツの言葉から始まり、きれいな戦争など存在しないにもかかわらず、人民のために、「正義のために」と声高に叫びながら行われ、民衆が戦争へ参加した人民戦争、そして現在の境界線の不明瞭な戦争まで言及された。しかし実際には人民のためではなく、「正義」も存在せず、境界線が不明瞭なため、制限を失いつつある。テロと戦争の境界線も不明瞭になりつつある今、どのような戦争があるのか。そしてそれらを記憶する場所はいかなるものになるのか。
 藤田進の「世界史の中のイスラム」は、多様性の共存を根幹としているイスラムの中でも、難民、移民、外国人労働者といった少数に属する人たちを扱うという設定のもと、難民になる前のパレスティナの人たちの生活、その後の彼らの生活、映画で描かれた第二次インティファーダにも触れつつ、民衆の抵抗とパレスティナ難民などについての報告であった。
 最後に新委員長に就任された小柳伸顕から一言。
 個から全体への照射、少しでも私たちや世の人に活かされる報告、理論を提起し続ける場で寄せ場学会があり続けられるように、という抱負を語られ、その通りになることを願いながら、無事解散。
 こういう討議を聞いていて、わたしは思った──「グローバリゼーション」という言葉の意味、どうしてカタカナなのか。日本語で、自分たちの日常の言葉で何故、表現できないのか。寄せ場学会において、「グローバリゼーション」という言葉をどのような意味で使うのか。すでに定義はしてあるのか、などなど。(川上奈緒子)

            (文中、敬称略)


日本寄せ場学会 第16回総会
〈底辺〉という思想
反資本主義への助走として
2002年6月8日(土)−9日(日)終了しました
於 宇都宮大学

 昨年末のシンポジウム《グローバリゼイション下の底辺下層》から半年、なお世界および日本をとりまく状況は激変しつつあります。打ち続くアフガン空爆、パレスチナ侵攻、“不審船沈没”をはじめ、テロ防止・安全保障という名目のアメリカ合衆国とその追従国による軍事支配は、世界中のあらゆる空間で、その手を休めようとしていません。国内においても“有事”法制、深刻度を増す不況、高卒就職率の悪化など、政府・資本とその御用学者は、自分たちの生き残りをかけて、総動員体制と新しい階級格差を生み出すことに躍起です。こうした現在にこそ、世界をその底辺でとらえ「下層社会から現代を照射する」、寄せ場学会の理念と批評性が問われ、求められているのではないでしょうか。
 今回の総会は、各発表者がこれまでさまざまな運動や研究の前線でとりくんできた成果をもとに構成されています。いま、〈底辺〉の視座から世界と対峙し、向き合い続けていくということは、どういうことなのか。世界が資本主義で埋め尽くされてしまうまえにその具体性を獲得するための、まずは足がかりとして、ともに考える場にしたいと思います。ひとりでも多くの方のご参加を!



6月8日(土) 司会:田巻松雄

14:00−報告(仮題のものも含む)
 ●小柳伸顕「釜ヶ崎をめぐる状況」
 ●なすび「全国懇の活動報告」
 ●稲葉奈々子「失業者運動とジェンダー」
 ●池田浩士「スカブラとケツワリ:〈石炭の文学史〉から」
 ●松沢哲成「拝外と排外、そして支配秩序の形成」

6月9日(日) 司会:伊藤一彦

10:00− 映画上映
 
ドキュメンタリー映画『パレスチナ パレスチナ』
 (監督・撮影・音響:ドミニク・デュボスク、フランス、2002年)
この映画は、第二次インティファーダ下の、ヨルダン川西岸の街道に一人の人形使いを追い、難民キャンプに足を止めながら、一つの民がよその民の夢の中でどう生きているのか、それを解説抜きで提示する。

   
コメント:奥山眞知

13:00− 報告
 ●加藤晴康「西欧近代におけるアウトサイダー」
 ●藤田進「世界史の中のイスラム」

資料実費:1000円(会員500円)*両日通用です。
会場:宇都宮大学(峰キャンパスB棟 1122教室)
会場までのアクセス:

宇都宮駅まで 宇都宮駅から宇都宮大学まで
鉄道:
・JR宇都宮線およびJR東北本線
 上野駅から宇都宮線
  (快速で1時間40分)
・東北新幹線
 東京駅から1時間/上野駅から50分
バス:
・京都および大阪から,宇都宮駅行き
   直行深夜バスあり(復路もあり)
バス:(JRバスおよび東野バス)
宇都宮駅前チサンホテル脇の小道を通り抜けると左手にあるバス停「宮の橋」より乗車、「宇大前」下車(10〜15分)
タクシー:
宇都宮駅前から700円程度(行先は「宇都宮大学・峰キャンパス」と告げてください)


連絡先:TEL&FAX:028-649-5191(田巻研究室)