補足:税制問題に関する立場と政策


 消費税の増額が現実のものになろうとしています。多くの国会議員が消費税廃止の 公約を反古にし、消費税に真っ向から反対していた社会党も政権の座について、もは や抵抗する力を失っています。 もちろん、単に反対するばかりでなく、国や自治体 の政策実施の基盤となる税制問題については真剣に議論しなければなりません。私た ちは、この税制問題についても明確な主張と提言を行おうと考えています。

内容

  • 消費税は不公平
  • 羽田前首相発言批判
  • 軍事費の削減は時代の流れ
  • 産業基盤整備優先型「公共事業・ODA」の削減
  • 少子・高齢社会と税の直間比率
  • 公正な負担・支出による年金財源の確保
  • 大量生産・大量消費社会からの脱却
  • 多国籍・巨大企業の税務申告は電子データで
  • 福祉目的税批判


  • 消費税は不公平

     消費税は誰かれの区別なく三%の税率。国民福祉税は7%の構想でした。これは先 程の「税金はお金をたくさん稼いだ人・企業からとるべし」という税金のとり方の原 則と全く逆です。何億と稼ぐ高額所得者も数十万の低所得者も、生活必需品にかかる お金に大差はないのですが、みんな一律の税率。税率がアップすればするほど、公平 どころか不公平の拡大再生産はパワーアップしてしまいます。しかも、1989年の 消費税導入時には「税率アップはしない」と言っていたのに、もう7%にアップで す。将来にわたって、どこまでアップを要求してくるのか、知れたものではありませ ん。目先のしかも高額所得者・大企業中心の減税などに惑わされずに「消費税は不公 平なんだ」の声を大きくしていかなければなりません。


  • 羽田前首相発言批判

       「誰でも増税は嫌だ。しかし責任ある国家を考えると…」羽田前首相が首相就任後 初の記者会見で、消費税増税に関して言った言葉です。一見、本音でしゃべっている ようで、受けはいいのかもしれませんが、計算された嘘のイヤラシサを見抜かなけば なりません。 不公平税制の消費税は貧富の差を増大します。このことは、差別など の人権問題の助長につながり、ひいては国家から活力を奪ってしまいます。  「責任ある国家」とは不公平や差別をますます広げるようなものであってはなりま せん。加えて、ただでさえ世界一物価の高い日本に、物価を押し上げる効果を持つ、 消費税アップは不合理・不公平の極みであります。消費税や所得税が日本に比べて圧 倒的に高い、スウェーデンなどよりも、日本の物価は高いということを忘れてはなり ません。 確かに高額所得者・大企業は政府案の税制改革によって非常に儲かるので すから、活力が高まるでしょうが、これでは一般市民にとっては極めて「無責任な国 家」なのです。


  • 軍事費の削減は時代の流れ

      いまさらとおっしゃるでしょうが、日本は「戦争や武力の行使を 放棄し、陸海空軍その他の戦力を保持しない」と憲法で世界に宣言した国です。その 国が、いまや世界第二位、来年には五兆円にもなるであろうという勢いで、軍事費 (防衛費)を増大し続けていくのは、明らかに間違いです。 日本の軍事費(防衛 費)は削減すべきです。これはアメリカやロシアに見られるように、冷戦構造崩壊後 の世界の趨勢に従うものですし、また憲法九条のとりあえずの政策化でもあります。 そしてなによりも、少子・高齢社会に向けての福祉政策拡充の有力な財源になりま す。 「北朝鮮問題?」大丈夫です。こんなのは、仮想敵国ソビエト崩壊後、自衛 隊・日米安保条約不要論が勢いを増すのを恐れた日米政府側の謀略という意見だって あるのです。非戦・平和を希求する憲法九条に自信を持ち、辛抱強い政策展開をして いけば、必ずや平和裡に解決することができます。

    産業基盤整備優先型「公共事業・ODA」の削減

     日本の公共事業は、産業基盤整備を超がつくほど優先して行なって きました。その結果、この分野でのストックは既にアメリカを抜いて世界第一位で す。又、このことは一定の富を日本にもたらしたものの、巨大な無駄・無自覚な大量 生産・大量消費・各種公害・環境破壊を引き起こしたことも、忘れてはなりません。  加えて「それが第三世界への援助政策(ODA)に短絡的に結びつき、一般的市民が善意で支持している政策が、第三世界の支配層と日本の大企業にのみ有利で、一般 市民には生活環境破壊と人権抑圧にしかなっていない」という論文が多々発表されて いる、ことにも注目する必要があります。 もう「もっともっと」の時代ではないの です。少子・高齢社会に向けての、福祉政策の有力財源には、産業基盤整備優先型 「公共事業・ODA」の削減をあてるべきです。

    少子・高齢社会と税の直間比率

     「少子・高齢社会に向け、税の直間比率のゆがみを正す。」政府、 大蔵省、財界、これにベッタリの政治家・学者・マスコミが、異口同音に言っている のを、よく耳にします。はっきり言えば「社会福祉をモットしてもらいたかったら、 間接税・消費税アップを認めよ」ということです。 で、そのしてくれるという福祉 社会像なのですが、この三月末に厚生省の肝煎りで作成された、21世紀福祉ビ ジョンには「公的保障中心でも自助努力中心でもない、公民の適性な組合せによる適 性給付・適性負担という日本独自の…」と表現されています。公的保障中心福祉とし ての例は、すごいのがスウェーデンですが、人口やGNPで日本に近いドイツなどを 思い浮べるのが適当でしょう。 ここで問題なのは、ドイツのようでない「独自の福 祉社会」を目指す日本が、その財源としてだけは間接税・消費税アップを目論み、日 本の直間比率(73%:27%)をドイツの直間比率(44%:56%)のようにし て行こうとしていることです。なぜ、目指す社会が違うのに、税体系だけが同じでな ければならないのでしょうか?同じでないことが「ゆがみ」でそれを「正す」ので しょうか?理解できません。明らかに矛盾しています。 「独自の」というのであれ ばその財源としてアメリカ(直間比率九一%:九%)タイプも充分に研究の余地があ るのです。

    公正な負担・支出による年金財源の確保

     公的年金は世代間の助け合いによる老後保障ではありますが、高齢 者福祉の大きな柱でもあります。ですから政府には、これを単に世代間相互扶助にま かせておくのではなく、積極的に展開していく責任があります。具体的に言えば、そ の国庫負担率などは、もっともっと引き上げていくべきなのです。 六年前、「高齢 化社会に向け、福祉の充実のために、消費税は必要だ」と言って、政府は消費税を導 入しました。しかし、その後、一般会計に占める社会保障費の率は、ほとんど伸び ず、先述した、公共事業やODA・軍事費だけが突出した伸びを示しました。公的年 金に関しては、国庫負担は据え置かれたまま、給付水準は切り下げ、保険料(掛け 金)は増加され、負担は、年金受給者や勤労者にだけ押し付けられてきたのです。  そして今、大蔵省は再び「少子・高齢社会の福祉の充実のために消費税の税率アップ が必要だ」と言っています。しかし、三月に国会に提出された年金改革法案は、「支 給年令は六十才から六十五才へ引き上げ、支給水準は引き下げ、保険料(掛け金)は 増、しかし、年金財政への国庫負担の増はゼロ」という内容です。つまり消費税アッ プの理由とは裏腹に、実際はここでも、年金受給者や勤労者に一方的に負担を押し付 けているだけなのです。 もうお分りでしょう、過去の経過からして、前政府・大蔵 省の消費税アップに対する言い分は、全く信用できません。 公的年金の国庫負担の 財源は、高齢者福祉の本質からいっても、所得のない人からも税金を負担させるよう な不公平な消費税などに頼るべきではなく、所得税などの直接税を中心にすべきなの です。もちろん増税してなどというのではありません。大企業に「おまけ」している 税金をなくし、産業基盤整備優先型「公共事業・ODA」や軍事費を削減すれば、そ の財源はあるのです。公的保障中心の福祉を 前政府は少子・高齢社会の目指すべき 福祉を「公的保障中心でも自助努力中心でもない、公民の適性な組合せによる適性給 付・適性負担という日本独自の…」と考えているようです。しかし私たちはそれを 「公的保障中心」で行なうべきだと考えています。 一例でしかありませんが、特別 養護老人ホームは、作っても作っても、待機者は後を断たず、その数は新潟市で六百 五十人、期間は一年半とも言われています。単純に計算しても、全国では十五万を越 える市民が待っていることになります。 巨額の投資をした挙げ句に今だに企業が集 まらずに閑古鳥のなく東港周辺、長岡テクノポリス構想などなど、新潟でも、産業界 への施設は有り余る程ですが、高齢者や障害者の施設・施策は全く足らないのです。 このことは、これまでの税の使途が、産業基盤整備優先型「公共事業・ODA」や軍事費などを、いかに優先・偏重していたかの裏返しの結果だと指摘しなければなりません。 産業界はこのような「公的補助」を受けてきた訳ですし、なによりも、生活弱者への福祉抜きでは税も国家も考えられない以上、一刻も早く、待つ事無く、希望する施設に高齢者・障害者が入れるように事業展開するべきです。また在宅介護を充実して、ギリギリまで地域での生活を保障するような施策も、緊急を要します。 医療面では看護婦・看護士の増員など多様な医療スタッフの充実もしなければなりません。これらを基本的に税金、しかも直接税でやっていくことを提案します。

    大量生産・大量消費社会からの脱却

     大量生産・大量消費社会からの脱却というコンセプトを税制改革に反映しなければなりません。そこで提案するのが、法人・事業所得の計算上、必要経費に算入する減価償却費の基礎となる法定耐用年数の段階的長期化。法人広告費の必要経費算入の有限化なのです。 「物を大切に長く使おう!」というのが耐用年数の長期化の意味ですし、「もっと作るから、もっと買え!」を過熱させるより「もう少しユックリ行こうヨ!」というのが法人広告費の有限化の意味です。

    多国籍・巨大企業の税務申告は電子データで

     市民や企業の活動の秘密に国家が介入すべきでないとの原則は守らなければなりません。しかし、市民の圧倒的多数が、その収入における「いつ、どこから、いくら」を国家に知られている一方で、多国籍企業や巨大企業が、グループを作り様々な取引を行って、この「いつ、どこから、いくら」を国家にほとんど知られないようにした挙げ句、巨額な脱税を行なっているという事実は、このまま放置しておく訳にはいきません。最新技術を使って、多国籍企業や巨大企業の活動を把握し、把握の度合いを市民に対してのものと同じにする努力も極めて大事です。 こういった企業の殆どは会計処理にコンピュータを使っています。ところが税務申告は文字通り書類でおこなわれ、この書類整理は一から手作業ですので、結果、多国籍企業や巨大企業の活動は全体として把握できず、税金も取れないということになっているようです。多国籍企業や巨大企業にその取引の詳細をコンピュータ入力する義務を負わせ、その電子データをフロッピーもしくはコンピュータネットワークを介して提出させるようにして、連結財務諸表のほか企業情報の詳細をもっと効率的に把握し、市民にも公表できるように制度化すべきです。

    福祉目的税批判

     「福祉目的」「年金目的」の消費税、はたまた「地方消費税」ならいいではないか、などという意見がありますが、間違いです。 そもそも、日本という国の政府は、税金を「福祉目的」にしか使えないのです。現状憲法のもとでは、自衛隊も迎賓館でのパーティーもみんな「福祉」なのです。従って「福祉目的」「年金目的」の消費税なる言い方自体に、大きなゴマカシがあり、これで市民に必要な福祉が充実する保障など全くありません。かえって、高齢者や心身障害者への福祉・医療・年金などの制度が貧困になる危険性が高いのです。 また前政府はこんな提案をする前に、まず税金の取り方と使途の両方に関して、高額所得者や多国籍・巨大企業が、所得の低い「人・企業」に比べて不当に有利だという、不公平を正すべきです。それが無い所で、こういう安易な「…目的消費税」を導入すると、本来所得の再配分機能を期待されている所得税、法人税、相続税などの直接税での税金を、みーんな産業界や軍事へ流してしまうことになりかねないのです。そうなったら不公平はますます拡大し、税体系の論理的崩壊につながります。 加えて「地方消費税」なんていいかげんな言葉でしょう。地方主権に向かう時代に、その地方の福祉行政を、消費税などという不公平な税金、「税金はお金をたくさん稼いだ人・企業からとるべし」の原則と全く逆の税金で、運営していこうというのでしょうか。批判回避だけの思惑が目立ち容認できません。減税を求める そもそもこの世の中、特例は除いて、物価と給料は上がっていきます。すると、この上がる分の、所得税で最低十%、消費税で三%が、何の苦労もなく、政府に税収の自然増として転がり込んでしまう。市民にとっては物価と給料の上昇イコール増税という訳なのです。物価が上がった分、所得税計算における基礎控除額も自動的に上げていく物価調整減税を、システム化していない日本だから、こうなってしまうのです。 今、所得税減税を求めると、その見返りとして消費税増税をされてしまいそうで、言いにくいのですが、しかし正当な権利は主張して行かねばなりません。物価にスライドする自動物価調整減税の制度化をすべきです。 また基礎控除額三十五万がなんとも低すぎます、一人世帯の生活扶助額の三分の一 にも満たない額では、憲法第二十五条の要求する「市民の最低生活」の保障すら税制 でしていないことになります。基礎控除額百十万、配偶者・扶養控除は一人当たり五 十万にすべきです。 それから、高額所得者・大企業に有利な源泉分離課税を廃止し て所得計算における総合課税を強力に推進。税額計算での累進税率の適用を高額所得 者には引き上げ、低所得者には引き下げる。全体にもっと細かい累進税率にして、平 均的サラリーマンや小規模事業者中心の減税をしていくことを要求します。産業優先 の不公平是正 税金の使途だけでなく、産業界や一部資産家は、税制面でも優遇され てきました。「不公平な税制を正す会」の試算では、政府が大企業や資産家に「おま け」している税金は、二十一兆四千億円にもなるそうです。これだけあれば消費税 アップの必要はもちろんありませんし、消費税の廃止だってできるのです。 市民の 所得税の計算では、生きて行く上で最低必要なお金としての生活扶助額の三分の一に も満たない基礎控除しか認めないのに、企業には、アメリカなどでは許されていな い、各種引当金・準備金という、実際に発生していない費用の計上を認めています。 これだけで九兆九千億円もの税金が「おまけ」されています。 法人企業の受け取り 配当金の八十%は非課税。これで二千四百億円の「おまけ」。 利子や配当の二十% 源泉分離課税も、産業界や一部資産家優遇です。大多数の市民が該当する収入では、 利子や配当を総合課税で計算しても税率は二十%未満です。つまり大方の市民は損、 逆に産業界や一部資産家は「おまけ」してもらっているのです。これを以前のように 総合課税に改正すれば大方の市民は減税となり税収は八千百億円も増えます。 また 消費税制度のもと、株式輸出型企業は、輸出補助金ともいえる莫大な輸出戻し税が、 転がり込むようになっているなど、特に優遇されています。 これ以外にも税制に は、産業界や一部資産家優先の不公平・不公正が沢山あります。こんな不公平・不公 正を無くす約束・契約作業抜きに消費税アップなどということは、断じて許されませ ん。 以下若干の税制改革案を提示してみました。これが実行されれば、消費税アッ プなどに頼らずに不公平が是正され、なおかつ少子・高齢社会に向けた福祉充実の財 源も確保できるはずです。


    まとめ:税制改革案

    <法人税> 1 申告方式の改正○大企業や一定の数以上の子会社・関連会社をもつ企業にたいす るフロッピー申告制度を導入する。
    2 所得計算の不公平の改正
     ○各種引当金などの段階的廃止。
     ○法定耐用年数の段階的長期化。
     ○交際費を厳密に申告させ用件にあったものは全額経費計上を認める。その他のも のは一切経費計上を認めない。
        ○広告費の計上に制限を設ける。
     ○特別償却、割り増し償却の廃止 
       3 税額計算
     ○法人税率の累進化。
       ○消費税戻し税の廃止。
     ○各種源泉分離課税を廃止して総合課税を強力に推進。
     ○使途不明金に関しては原則全額課税とする。
     ○受け取り配当の益金不算入制度の廃止。
     ○外国税額控除制度の是正。
     ○試験研究費の税額控除の廃止○配当控除の廃止
      <所得税>
    1 所得計算の不公平是正
     ○事業所得の計算上認められている各種引当金・準備金の段階的廃止。
     ○法定耐用年数の段階的長期化。
     ○事業所得の計算上、交際費を厳密に申告させ用件にあったものは全額経費計上を 認める。その他のものは一切経 費計上を認めない。
     ○家族労働に支えられる事業所得者に所得の計算上、事業主報酬と専従者給与を大 幅に認める。また概算経費と実額計算の選択制を認める。
     ○給与所得者に所得の計算上、給与所得控除方式と実額計算の選択制を認める。
    2 所得控除の改正
     ○基礎・配偶者・扶養控除は生活扶助基準額までアップ。
        ○基礎・配偶者・扶養控除は物価にスライドしてアップ。
        ○社会保険料・寄付金控除は税額控除に変える。
    3 税額計算の改正
     ○高額所得者に有利な源泉分離課税制度を廃止して総合課税制度を強力に推進す る。
     ○税額計算の超過累進税率を、高額所得者には引き上げ、低所得者には引き下げる。全体にもっと細かい累進税率にしていく。
     ○歴年課税の原則にもっと複数年平均課税制度を導入。
       <資産税>
     「稼ぐ・儲ける・所得」といった、ある期間での収入に税金をかける以外に、投機 的に所有する土地・ゴルフ会員券、別荘などの大企業・高額所得者特有の財産に低率 の税金をかける。
     <間接税>
     ○現行消費税は最終的に廃止する。
     ○固定的に考えてはいけないが、いわゆるゼイタク、環境破壊や健康阻害要因の強 い、物品やサービスに限り、個別消費税を課税する。その場合、物品やサービスごと に免税点や税率を区分し出来るかぎり「税金はお金をたくさん稼いだ人・企業からと るべし」の原則に配慮する。
    <その他>
     ○行政と取引のある企業に、一定額以上の使途不明金があった場合には行政は当該 企業との取引・契約を停止・破棄しなければならないよう義務付ける。


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