「うちの理事さん」

     キッコリーズ 山田隆信

2000年5月号掲載

 

 みなさん、こんにちは。きっこりーず代表の山田です。

 森づくりフォーラムの理事という、僕にはとても身分不相応な大役を仰せつかっております。理事の皆さんを見渡してもその道の方達ばかりで、なんだか大変恐縮していますが、自分なりにがんばるつもりですので、よろしくお願いします。

  さて、地元の山口県では、きっこりーずといういい加減な団体の代表をしています。なにがいい加減かというと、森づくりの団体のNPO法人化とか、しっかりした組織作りという流行に逆らって、会則、会費なしで優先順位の低い活動を目指しているからです。

 森とのつきあいは、ながーいつきあいです。一度手入れをしただけで、ハイさよなら!では最初から手入れをしない方がマシです。ところが、使命感に燃えてがんばると、途中で息切れをして長続きしないし、周りの人がついてこなくなる事もあります。だから、楽しくなければ続かない!自分が楽しいからやっているんだ!という思いを大切に、遊び心を持って活動に取り組んでいます。

 そういうわけで、縛られるのがいやなので会則はなし、会費はとらずにその日にかかった経費を頭割りのどんぶり勘定で済まし、次回開催の連絡は連絡網とホームページでながし、当然事務局もないので会報もだしていません。

 しかも、優先順位の低い活動を目指しているので、会員の参加は毎回10名前後。もし会員が、「今日は我が家の用事と森づくりどっちにしようかしら?」と悩んだときには迷うことなく我が家の用事を選んでもらえるように、きっこりーずの優先順位は常に低くしてもらっています。さらに、会員制を取っていないので、会員と呼んでいいものかどうかわかりませんが、会員は70人程度いるはずです。たぶん。

 まあ、関心を持つ人がまだ少ない地方では、こんなやり方かなでもいいかな?というところで、肩の力を抜いて、のんびり、いい加減にやるように心がけています。

 そう、肝心の活動ですが、雑木林の手入れを月に1回程度やっています。美祢市の園田秀則さんという指導林業士の方が、自分の山を「小さな森」と名付けて解放していて、そこの0.5ha程のクヌギ・コナラ林を借りて、その手入れを遊びながらしています、いや遊びながら手入れをしている?いや、単に遊んでいるだけかも・・・。

 山口県では、放置すると照葉樹林になるか、竹が侵入するかどちらかなので、作業としては抜き伐りや、下草刈り、伐竹などをしています。ただし、あまりまじめに作業をすると周りが見えなくなって怪我をしやすいので「まじめにしないように」と常に声をかけています。また、伐った材を有効に利用するために、「森の遊び人」という森林教育プログラムを作って、ピザを焼いたり、木工をしたり、森の中に居場所を作ったりしています。

 とうぜん、そのプログラムは「小さな森」以外でも体験できるように、年に4,5回程度一般を対象にした自治体などのイベントでの出張講師もしています。

 その手入れされた雑木林は「小さな森」を訪れた人の良い遊び場になっていますし、ピザなどの森林教育プログラムも「小さな森」で体験できるようになっています。むしろ、地元の人たちがおもしろがってくれて、自分たちで指導者になって「小さな森」で展開しています。おかげで、森林体験と森での遊びを求めて多くのグループが訪れるようになりました。

 だから、場所を借りるかわりに、森の手入れやプログラム提供をするといった、持ちつ持たれつのつもりで地元と仲良くやっています。森と関わる場合、森や自分たちが元気になるだけでなく、地元の人も元気になる視点は大切だと思います。

 そういえば、きっこりーずのおかげか、「小さな森」のおかげかはわかりませんが、山口県で森の手入れとピザを体験できる場所は、7カ所くらいに増えてしまいました。

 さて、仕事も実は林業と関わっていて、県の林業関係の公務員をしています。主な担当は森林整備の上下流の連携、間伐の推進等です。行政の施策をよく読んでみると、このとおりに森林整備が進めば、日本の森林はなんてすばらしくなるんだ!と思いますが、現実はそう甘くありません。

 補助事業を導入しても、いくら行政が旗振りしても、誰もついてこなければ意味がないわけで、行政が走りすぎたらいけません。かといって林家が走りすぎてもダメ、市民が走りすぎてもダメ。そこでその3者をうまく結んでバランスをとるのが、必要なのかなと思っています。

 さてさて、ここで宣伝。6月2〜4日に「全国雑木林会議2000やまぐち」山口県徳地町と美祢市で開催します。山口県と近県の団体を巻き込んで実行委員会を作って、その実行委員長をしているので、是非遊びに来てください。仕事とは別でやっているので「大変だけど、がんばれよ」とよく言われますが、そのたびに「大変にならないように、がんばっています」と答えています。仕事抜きで市民の手作りでやっていると、本当に楽しいです。特に、地方でこんなイベントをやると、いろいろな人や団体とのつながりができるし、みんな元気になるし。

 全国的にもいえることですが、森づくりに関わる人、団体が増えています。それぞれに様々な方向性があって、様々な到達点があります。本当におもしろいですね。やはり多様な森林を守るには、多様な人たちによって守り、育てられるべきなんでしょうね。

 そんななかで、森づくりフォーラムの理事として全国展開をしていく上で、いろんな団体の小さな声、その団体だけではできない声を集めて、大きな力に変えていけるような活動をしてみたいなあ等と思います。 

 きっこりーずの活動に持っていくるもの・・・「笑顔」

 

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