「共に生長する喜び」

     秋田森の会・風のハーモニー 佐藤清太郎

2000年4月号掲載

 

「共に生長する喜び」

 雪深く寒い東北、秋田の森も早春になると日顔も多く、森の木々の芽もふくらみ、マンサクは少し赤黄色の花芽が見えてきた。林の中の小枝も雪の中より跳ね返り(今年も元気で頑張って大きくなるぞ)と言っているかのような仕草が所々に見える。少し土が見えるところでは、ふきのとう(バッケャ)が顔を出している。

 そんな中に積雪の重みで倒れた杉の木や大きな枝が裂け、ぶら下がっている赤松の木もある。タラの木の芽も冬期間のカモシカや野うさぎの食糧になり、森の生き物たちに喜んで提供したであろう食跡もいたる所に見える。その多さより計り知ると今年の冬は、動物たちには厳しい冬であっただろうと感じる。

 しかし、もうすぐ雪も解けて森の地表も現れ、草も木も虫たちも冬眠を終え、いつもの「時」と変わらぬ、にぎやかな森の営みが始まる。

 私にとっても、この時期がとっても忙しく、又、うれしい「時」でもある。それは三歳児のころより年数回森に遊びに来て、森のいろいろな生きものたちと仲良しになった保育園児の卒園式や小学校の卒業式、そして年度末の親子発表会などの様々な集いに招待されることが多くなる。

 数日前も、ある保育園のお別れ会に出席した。園児達が私を見つけると(清太郎の森のおじさんが来たよ)と仲間に知らせに走り、日頃森でいっしょに遊んでいるわんぱく幼児が顔を見せてくれる。でもすぐ先生に見つかり部屋に呼び戻されるが、私にとってはとてもいい言葉よりも重みのあるあいさつである。

 又、別の「親子発表会」に参加した時のことである。子供たちの今年度一年間の森や他の事業所(職場)などの体験発表と、来年度はあんなこと・こんなことに挑戦して見たいという声を聞いた。

 その後、親子さんの指導者側へのお礼の言葉があった中に、ひとりの若い母親が小さな声で(私の息子が、明日森に行くから、おにぎりつくってと言ってはしゃいでいる姿を見ると、翌朝少し早めに起きて、おにぎり弁当をつくり持たせると喜んで家を出て行く。夕方仕事より帰ってくると、息子の靴も服も汚れている、靴の中やポケットの中などから木の葉や草・木の実など、いくつも入っていることが多くなった。でもそんな泥靴や服を見ながら手で洗濯をするのが近頃楽しくなった。最初のころは、靴と靴下が少し汚れている程度であったが、今は全身汚れている。

 今日も子どもが一生懸命森の中で遊んでくれて、よかったなぁーとひとりうれしく思っていると語ってくれた。)

 私は聞いていながら、お母さんが子どもの靴や汚れた服を見ながら、共に喜び共に生長しようとする豊かな心に感動させられた。

 今、私たちは森に木を植えたり、下草刈り除伐間伐の作業をしながら、森の環境にお手伝いをしている。手入れを行った木々たちのゆっくりとしたいい環境の中で育っている姿は、実にすばらしく、いい気持ちになる。

 作業後いい汗を流した時に仲間と飲む、お酒やビールがとても美味しく、また参加するのだという仲間もいる。

 私は、いつも森に入る、森で作業をする、帰りに森からいろいろな恵みを戴いて来る。

 また行かないと何か忘れ物でもしたかのように思うことが多くなった。年齢のせいだろうか、それとも別に理由があるのだろうか、いろいろ考えながらも足は森に向かっている。森の中では、昨日は全然見えなかった草花が芽を出し咲いたりしている。虫も小鳥も昨日とは全然異なった姿と歌声に聞こえ見えてくる。

 そんなくり返しがあるから私は、森に行くのだろう。そして森の生きものたちと共に生長して生きている喜びを味わうために。

 ◆今年の「秋田森の会・風のハーモニー」の計画で、活動内容を簡単に紹介しておきます。

1月22〜23日

 東京のモリモリネットワークと一緒に「森と雪と子ど もたちイン秋田」を開催。160名で盛会に行われました。

4月29日 (緑の日)

 会活動の報告と今年度計画。及びシイタケ500本植菌 作業と健康の森環境整備。

5月27日 10周年記念事業

 「森林と健康」をテーマに、医学博士・大友英一先生の 記念講演」。及び「自然と共に生きよう」を副題にシン ポジウム。

 パネラーに医学博士・人学学長・生花道家元他。

7月下旬

 「健康の森」での森林体験実習。

10月

 紅葉の森の集いと炭づくり体験。

その他

・月に5日位・保育園児との森林浴と森の宝もの探し。

・市内小・中学校との観察会や体験実習

12月中旬

 日本赤十字短大生とのクリスマスパーティー

 

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