いろんな人に聞いてみました。森との関係。  

森の列島に暮らす・14  

“手段としてのビジネス”とクリアな目的とアウトドア活動

篠 健司さん
パタゴニア・日本支社 環境担当

 

 

 アウトドアウェアメーカーであるパタゴニアは、1985年から売り上げの1%を環境保護活動資金として援助するプログラムを始めてており、これまで1,000を超える団体に20億円以上を寄付している。日本支社でも1994年から同様の活動を行っている。今回は、日本支社環境担当の篠さんにお話しを伺った。

 パタゴニアは、著名な登山家であった創始者のイヴォン・シュイナードが独自の道具をつくりはじめたことをきっかけに、アウトドアを愛する仲間が集まってつくられた会社です。ある時、自分たちがつくった道具で山が傷つけられている現状に気づき、環境に負荷のない道具をつくりはじめたことから、パタゴニアの環境活動は始まりました。自分たちが愛する自然を守りたいという気持ちが、パタゴニアが環境活動を行う原動力なのです。
 パタゴニアの存在意義は「ビジネスを手段として環境危機の警鐘を鳴らし、解決向けて貢献するために存在する」ということ。お店や商品は、あくまでこの目的を達成するための手段であって、そのために会社があるのです。例えば1993年、企業として初めて消費者から回収したペットボトルを再生したフリース製品をつくり始めたのも、その表れです。もともとパタゴニアには“言葉よりも行動を”という考えがあります。そして、ビジネスを継続していく中で、できるだけ環境に負荷のない経営を行い、かつ顧客や関連企業に様々な方法でメッセージを伝えていくことが、私たちが企業として、環境に対して大きな貢献ができる方法ではないかと考えているのです。



 昨年の5月、パタゴニアがこれまで得てきたスキルや経験を環境保護団体やNPOの 方たちに提供するための会議がアメリカで行われ、私も参加してきました。そこで私は、自然を守る手段としての、ビジネスと市民活動との間の垣根が無くなってきていることを感じました。アメリカのNPOは、例えばマーケティングや広報、人材育成などを、ビジネスに近いやり方で行っています。日本のNPOも、もっと企業の持つスキルを活動に利用できるのではないでしょうか。そうすることによって、活動の目的をより高いレベルで達成できるようになるのではないかと思います。
 自然環境保護支援プログラムに申請があれば、私はその目的がキチンとしているか、 それに対して戦略的に計画がなされているかをしっかりと見て審査しています。日本には“その目的が達成できたら解散してしまう”くらいクリアな目的を持っているNPOが少ないように思います。運動が長期化するにしたがい、目的を達成するための活動というよりは、組織を運営していくための活動になってしまっている団体が多いのかな、とも感じています。
 パタゴニアは、危機感をもって草の根的に活動している団体を特にフォーカスしてサポートしたいと考えています。もちろん観察会や環境教育も大切ですが、それだけ では実際に自然を守るまでにかなりの時間がかかってしまうし、もしかしたら環境破壊の速度が速すぎて追いついていけないのではないか、との思いがあるからです。

 “森とともに暮らす社会”とは、私たちがもっと森の中に入り、もっと森の恵みを理解した上で感謝しながら使っていく、という社会を実現することではないでしょうか。ですから、特に子供たちをもっと森に連れていく機会をつくらなければならないし、そのためにも美しい森を守る必要があると思います。
 アメリカの場合は、バックパッキングやキャンプに出かけるといったアウトドア活動が、本当に日常的に行われていています。サマーキャンプなどでは2〜3週間も子供をアウトドアに送り出したりしているわけです。日本はまだ非日常ですよね。アウトドア活動がもっと日常となることが、“森とともに暮らす社会”の第一歩となるのではないでしょうか。そういう意味では、パタゴニアという会社の製品を通じてアウトドアの魅力を知っていただき、それが森に出掛けるきっかけとなれば、森を大切に しようという想いがさらに広がっていくでしょうし、それはパタゴニアや他のアウトドアウェアメーカーの義務だと思っています。

 (編集部)

 KENJI SHINO

 1988年パタゴニア日本支社設立と同時に入社。広報担当、鎌倉店、目白店、横浜店各 マネージャーを経て、1999年末に退社。2001年より復帰。現在、横浜店マネージャーと環境担当を兼務。環境グループの支援、社内環境教育などを担当。

 

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 森の列島に暮らす・03年3月
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