激動の20世紀が終わろうとしています。地球規模の環境悪化に伴い、人類の存在自体を左右するほどの危機が訪れています。一方、旧態依然とした社会システムは行き詰まりを見せ、情報化社会の到来による大きな意識変革が起こりはじめています。私たちは、今まで人類が蓄積してきた叡智の上に、新たなる社会の枠組みを創る必要に迫られています。まさに21世紀は「創造の時代」です。この時代の変わり目に、birthは生まれました。
■ 動機(モチベーション)
米ソの冷戦下、核兵器により地球上の生きとし生けるものが、すべて滅びてしまうかもしれない。そんな緊張感の中、私は10代を過ごしました。「風の谷のナウシカ」は、夢物語ではなく、現実の世界そのものだったのです。社会に目を向ければ、「破壊」の営みばかりが目につき、「保全」はマイナー路線でしかありません。なぜ「人類にとって一番重要な」仕事が成り立ちにくいのだろう。なぜ同じ「想い」を持ちながら力が分散してしまうのだろう。この壁を乗り越えるには、人々がつながる仕組みが必要だ。多様な細胞が集まった生命体が「生き抜け!」という共通目的で統制されているように、誰もが共有できる理念を柱としたネットワークを創ろう。その中核には、進むべき方向を見定めるパイロットフィッシュ(水先案内人)が必要だ。しかしこのような組織は、既存の枠組みの中には見つからない。それなら、自分たちで創ってしまおう!。きっと、次代を担おうというエネルギーが、集まってくるに違いない・・・。
birthは、そのような「想い」が集まる受け皿として、スタートしました。
■
使命(ミッション)
NPO(Non Profit
Organization)は「使命(=活動理念)」を拠り所とした組織です。公平原則を持つ行政機関や、収益性を基準とする企業と異なり、「使命」が意思決定の判断基準となるため、既存の枠組みにとらわれません。birthがNPOという形態をとったのは、この自由で柔軟な特質が、前述の「受け皿」としての機能を果たすに最適だと考えたからです。
使命(ミッション)の素は、「未来の青写真(ビジョン)」を描くことから始まります。birthが考える青写真は、人・自然・共存・地域・市民・幸せ・・愛・・がキーワードです。私たちは「人と自然の共存という視点から地域社会のあり方を考え、市民社会の構築と生活環境の向上に寄与すること」を使命とし、「think
globally, act locally」の視点をベースとした、共存型社会を担う組織を創ろうと考えました。
■ 事業(プロジェクト)
NPOでは、使命を果たすために、事業が計画(プラン)、実施(アクション)、評価(フィードバック)されます。birthが進めている事業の一覧は「団体DATA」をご覧ください。ここではその中から、いくつかの事業について紹介します。
1.
多様な組織間の協働(パートナーシップ事業)
〜「里山タスクグループ」
「里山に象徴される持続可能な社会環境を創ろう!」。この総論に対して、異議を唱える人はいないでしょう。しかし実際には、緑地問題ひとつ取り上げても、複雑な主体間同士の利害調整が必要となります。そこで里山保全に関わる種々の主体を体系的・組織的に連携し、大きな潮流を生み出そうと考え、ネットワーク組織「里山タスクグループ(里山TG)」を発足しました。構成メンバーは、行政マン、環境NGO/NPOスタッフ、企業コンサルタント、財団職員、農林業者、学生等、第一戦で活躍する人々です。メンバーはここで意見・情報を交換し、共有した知恵・知識を自分のフィールドへ持ち帰り実践します。里山TGは、この分野では前例のない広いネットワークを実現し、シンクタンクとしての役割をも果たす組織として急成長しています。birthはニュートラルなNPOであるが故に、多種多様な組織・個人をつなぐ中核的役割を担っています。(写真参照:里山TG検討会)
2.市民組織のイノキュベーション(サポート事業)
各地で地域の環境保全を目指す市民組織が、続々と生まれています。それと同時に、合意形成がとれない、継続が不安定、組織意識や責任感が乏しいなど、組織運営上の問題点が浮上しているのも事実です。
そこでbirthでは、そのような状況を回避するために、組織運営の初期設定とメンテナンスを実施しています。例えば、行政主導のボランティア団体において、参加者が主体性を伸ばす仕組みづくりを提案する(東久留米自然ふれあいボランティア)。
市民が自主的に発足した会において、井の中の蛙とならぬために、客観的な評価をする機会をつくる(鶴川地域まちづくり市民の会)。
組織の枠組みと、人材・資金・情報ルートをつくる(自然の学校)、などです。
さらに、ボランティアでは手の回らない領域についての委託も受けています。組織づくりは、家づくりに似ています。家主の希望を聞きながら、建築士として共に快適な家−グループの骨格を作るのが、birthの役割です。
■ Future Creator 「birth」(未来の創造者)
私はbirth発足直後、NPO先進地と言われる米国ベイエリアに飛びました。インターンとしてNPOの財務・人事・情報のマネジメントシステムを学ぶためです。地球の裏側に来て、私は自分達の目指した方向は正しかったと改めて確信しました。多くのNPOキャリアの言葉から、このセクターが「社会をよりよくしていこう!」という情熱の受け皿であることを感じ取ったからです。日本においても、たくさんの人々が、絶望の向こうにある希望の光を模索しています。この気持ちを受け止める場をひとつでも増やすために、birthは「未来社会の担い手」として、その使命をまっとうしたいと考えています。
DATA
● 本部
〒208−0004
東京都武蔵村山市本町4-31-2-103
tel/fax:042-561-8113
E-mail:birth@momo.so-net.ne.jp
● 使命(ミッション)
「人と自然の共存という視点から地域社会のあり方を考え、市民社会の構築と生活環境の向上に寄与すること」
● 発足時期と経過
1998年5月発足。環境NGO、市民、財団、行政、企業との共同事業を進めると共に、マーケティングを展開。組織基盤を固め、ネットワークを広げながら、環境保全を社会の主流とするための企画戦略を打ち出しつづけている。
● 活動範囲
関東周辺〜全国
● 活動の内容
1)パートナーシップ事業 ・・コミュニティと連携
組織間の仲介・ネットワーク事務局・共同事業の企画実施
2)
教育・普及啓発事業 ・・地域愛の育成
地域発見のセミナー、体験教育の企画および講師派遣・関連図書の刊行
3)
研究調査事業 ・・分析と提案
緑地関連の法制度研究・市民参加型環境調査
4)
サポート事業 ・・育成と支援
市民組織のイノキュベーション(育成)・組織運営の講座開催・IT戦略
5)
環境デザイン事業 ・・ビジュアル戦略
● 活動の課題
理念と経営の両立。プロとして社会的責任を担う組織となること。
● 今後の予定
緑地保全戦略の構築。NPOマネジメントの実践。地域教育プログラムの企画。
● 会費・会員特典
正会員5000円/年 季刊birth発行
birth企画へのご優待(情報交換会・講習会等)
団体紹介・目次 団体紹介・00年8月 |