関西電力のコジェマ社製MOX燃料疑惑

関西電力が違法にMOX燃料を製造していた疑惑

■ 関電のMOX燃料はメロックスの・・どの施設でつくられたのか?
■ フランス政府のプルトニウム持ち込み許可は出ていたのか?
2002年3月14日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之

 関西電力は、昨年12月26日、コジエマ社・メロックス工場で製造していたMOX燃料の製造中止を発表しました。理由は、「関電自らが事前監査を行わなかった等の手続き上の問題で経産省の許可が出ないから」というものでした。
 しかし実際には、以下に述べるように、関電が違法行為を犯していたのではないかという疑惑が生じています。それは、プルトニウムの持ち込みが許可されていない施設で、MOX燃料を製造していたのではないかというものです。
 そこで私たちは、この問題について、3月5日付けで経産省に質問書を出し、関電用のMOX燃料はメロックスのどの施設で作られ検査されたのかなど6項目にわたってこの疑惑を確かめようとしました。ところが、それに対する3月12日付けの国の回答では、ただ一言「承知していない」と書かれているだけです[資料1:質問書と回答]。関電を指導すべき立場で事前の協議を何度も行っていながら、重要な疑惑のからむ問題について「承知していない」とはきわめて無責任な回答ではないでしょうか。
 そこで私たちは、この疑惑について広く明らかにする必要があると判断しました。以下に順を追って説明します。

1.コジェマ社のメロックスMOX製造工場は、当初フランスの電力会社EDF用のMOXのみを製造していた。
 EDF用のMOX燃料は、平均プルトニウム富化度が3.5%と比較的低く、PWR用で、燃料集合体は17×17タイプと高浜原発と同じだが富化度構成が異なる。
 
2.コジェマ社は、MOX市場拡大を狙って、海外用MOX生産のため、施設を拡張した。
 海外の電力会社とフランスEDFは、経済的効率化のため、MOX燃料の高燃焼度化を追及しています。実際、ドイツ、スイスなどではすでに高燃焼度化を実施しています。そのためにはプルトニウム富化度を上げる必要があり、例えば、関電の高浜4号MOX燃料の核分裂性プルトニウム富化度は6.1%で、EDF用と比べて高くなっています。高富化度にした場合、MOX燃料製造時に労働者の被曝が増えるなどから、従来とは違う特別な製造設備・施設が必要となります。コジェマ社は、メロックス工場の拡張により、高富化度用、BWR用など、あらゆるタイプの(マルチデザインの)MOX燃料製造を追及しています。

3.コジェマ社は、2つの方法で、マルチデザイン用MOX製造を可能に
 @ 既存のメロックス工場内にマルチデザイン用の新ラインを設置
 A MWFBと呼ばれる新施設をメロックス工場内に建設(MWFB:Melox West Fitting Building)
 以上の@とAの両方を使って、マルチデザイン用のMOX燃料製造が可能となった[資料2:模式図参照]。模式図から明らかなように、Aは@の新ラインの一部を構成するものです。関電用のMOX燃料もこの@とAを使って製造されたと考えられます。

4.MWFB施設に対するフランス政府の許可
資料3:フランス原子力施設安全局 DSIN2000より]
 ・1999年7月30日  海外用のMOX燃料を製造する施設・設備に関する許可
 ・2000年4月18日  MWFB(上記A)施設・設備へのプルトニウム持ち込み許可
 ・2000年5月17日  MWFB施設の本格操業開始

5.メロックスMOX燃料製造工場での関電用MOX燃料の製造経過
 [資料4:製造過程
 ・1999年6月25日  原子燃料工業鰍通じてコモックス社と契約
 ・1999年11月3日〜2000年1月8日  ペレット製造(16体分すべて)
 ・2000年2月22日〜4月18日  燃料棒製造・燃料集合体組立(8体のみ)
 ・2000年6月2日〜7月7日  ペレットおよび燃料棒製造(不良となった2集合体分の再製造)

 上記に記載されている2000年2月22日からの関電の燃料棒製造は、新施設(MWFB)で行われたと考えられます。しかし、この施設へのプルトニウム持ち込み許可が出されるのは4月18日であるため、フランス政府の許可前に違法にプルトニウムを持ち込み、MOX燃料を製造していた疑いがあります。

6.関電はメロックス工場内のどの施設でMOX燃料を作ったかを言わない
 この問題に関する関西電力の回答[2/26関電交渉]
 ・(新しい)拡張施設(ができたこと)の存在を知っていることは認めました。
 ・しかし、メロックス工場のどの施設でMOX燃料を製造したかについては、コモックス社の要求で、守秘義務上言えないと答えました。

7.この問題に関する3月上旬までの国の対応
                [2/16保安院原子力発電検査課 有倉陽司班長の電話回答]
 ・関電用MOX燃料が作られたのは、メロックスのメロックス工場
 ・関電が事前監査を行わなかったのだから製造中止になった。それだけで情報は十分。

8.東京電力はメロックス工場内のどの施設でMOX燃料を作ったか公表している
  東京電力は福島原発用MOX燃料を、メロックス工場の新施設(MWFB)で製造中であることを、市民との交渉の場で明らかにしています。東電は製造場所は言えるが、関電は言えないとは辻褄が合わない話です。関電が言う「守秘義務」は言い逃れにすぎないのは明らかです。

9.東電は製造確認試験で、なぜプルトニウムを使わなかったのか?
  東電がメロックス社でのMOX燃料製造について国に提出した「輸入燃料体検査申請書」(2000年11月14日付)の「品質保証に関する説明書」では以下のように記載されています。「技術的能力の評価」において、「1999年から2000年にかけて日本向けBWR仕様のMOX燃料を初めて製造するメロックス社に対してMOX燃料の各製造工程毎に、製造実績の調査及び実際の部材または模擬部材を使用してMOX燃料の製造確認試験を実施し、その技術的能力を評価した」。しかし、その実際の部材とは、「UO2燃料材約80sを使用して研削工程の能力を調査」、「当社仕様のUO2燃料材を使用して24本の燃料要素の製造」となっています。
なぜ東電は、プルトニウムを原料とするMOX燃料の製造確認試験に、かんじんのプルトニウムを使用せず、かわりにウランを用いた試験を行ったのでしょうか?
  一方、東電は、ベルゴニュークリア社でMOX燃料を製造した時には、「約80sのMOX粉末を使用して」製造確認試験を行っています。すなわち、ベルゴニュークリア社ではプルトニウムを使用した試験を行っていたのです。
                                (下線は引用者による)
 
10.私達は、経産省宛に質問書を提出。全く無責任な回答。
 ・私達は3/5に福島瑞穂参議院議員事務所を通じて、経産省宛に質問書を提出し、以下のことを主張しています:
 ・関電MOX燃料がどの施設で作られたのか等を明らかにすべきです。
 ・関電MOX燃料が、フランス政府のプルトニウム持ち込み許可が出る前に、違法に製造されていた疑惑がある以上、この問題について全ての事実を明らかにすべきです。この問題はMOX燃料の安全性への疑惑につながります。またとりわけ、核兵器の材料でもあるプルトニウムは、特別厳格な管理が要求されるにもかかわらず、ずさんな管理が行われていたとすれば大きな問題です。
◇ 私たちの以上の主張に対して経産省は、ただ一言「承知していない」で済ませています。きわめて無責任な態度ではないでしょうか。

関電も経産省も、以上の疑惑に一切答えようとしていません。これでは疑惑は一層深まるばかりです。責任ある回答を要求します。メロックスでのMOX燃料製造が合法的に行われたと言うのであれば、その事実を明らかにすべきです。



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