関西電力が国の定めた「技術基準」を用いずに2次系配管の
余寿命評価を行っていたことに関する要請書


福井県知事 西川 一誠  様
福井県原子力安全専門委員会 様

 私たちは、2次系配管管理について、1月20日に関西電力本店で交渉を行いました。関西電力からの回答内容は、適正な2次系配管管理を行う姿勢に欠けていると疑わざるを得ない内容でした。特に、配管の最小必要肉厚の算定方法に関する関西電力の回答は、「過失」というより「悪意のある」規制逃れと思われる内容でした。
 最小必要肉厚の算定方法に関する関西電力の回答内容に関連して、貴職ならびに貴委員会が、関西電力と原子力安全・保安院に対し再びその真偽を質されるよう要請します。

要  請  事  項

1.「発電用火力設備の技術基準の解釈について」第4条第1項第1号の「ただし書」を不適切に適用して「最小必要肉厚」を算定した意図はどこにあったのか、関西電力に確認して下さい。

 「ただし書き」を適用して余寿命を延ばしていた問題について保安院は、昨年9月27日付「中間とりまとめ」で「『ただし書』を独自に解釈し、余寿命が短い(余寿命評価が1年未満)配管に適用していたためである。このような運用は適切とは言えない」(23頁)と関西電力を批判しています。
 ところが、関西電力は、余寿命が1年未満になった配管に適用した点を認めず、「余寿命を延ばす意図で適用したのではない。『ただし書き』の条文があったので適用しただけである。火力だけに限るとの記載がなかったので、当時は原子力に適用できると考えた」と回答しました。これでは、保安院の「不適切」という指摘を真摯に受け止めているとは到底考えることができません。
 どのような動機・意図から「ただし書き」を適用したのかを明らかにすることこそ、安全性を最優先する配管管理のために必要な事項ではないでしょうか。
 そのため、この点について、関西電力が明確な見解を示すようにしてくださることを要請します。

2.ミルシートの「実績値」から最小必要肉厚を算出する手法が、「技術基準」に照らして適切であるのかを関西電力及び原子力安全・保安院に確認してください。

 材料のミルシートに記載されている「実績値」(「引張試験」強度)から最小必要肉厚を算定し、余寿命を延ばしていた問題は、貴委員会の第9回(平成16年10月8日)で取り上げられました。第9回の議事概要には、保安院の梶田課長が、「資料2において、・・念のために取替えると記載しているが、これは関西電力の技術基準に対する認識が不十分と言わざるを得ない」と発言され、岸田副社長が「・・・梶田課長のご指摘の通りであり、・・・」「・・『念のため』と記載していることについては、誠に申し訳ないと思っている」と謝罪した旨が書かれています。
 岸田副社長が謝罪したにもかかわらず、関西電力の私たちへの回答は、ミルシートの「当該材料の実績値」を用いて最小必要肉厚を算定し、配管管理の健全性を評価しても問題ないというものでした。
 具体的には、「実機材料(のデータ)に関しては、技術基準に明記されていないものでも健全性の証明は可能であろう。ただし、評価の手順を社内規準に定めずにやるのは不適切だと(保安院)から指摘されている」という回答です。
 他方、保安院は、関西電力が行ったミルシートの「実績値」から最小必要肉厚を算出する手法の妥当性について、文書等で正式に適切か不適切かを評価することをしていません。
 ご承知の通りミルシートは、当該材料がJIS規格品であることを証明する製造所の「検査証明書」です。この証明書に記載された「実績値」から最小必要肉厚を算定し、健全性を評価する手法は、工学上から見て非常識ではないでしょうか。
 ぜひ、貴職と貴委員会が、関西電力と保安院に対し、「当該材料の実績値」から最小必要肉厚を算定し、余寿命を延ばす手法そのものが、「技術基準」に照らして認められるものなのかを確認されるよう要請します。

 上記の2点を明確にすることは、安全性を最優先した適切な配管管理にとって不可欠なことと考えます。私たちの要請に応えてください。

 (付記)私たちが保安院に1月月31日提出した質問書を添付しますので、ご一読ください。

 2005年1月31日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
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