7月13日 関電交渉報告
「第二再処理工場の建設は当然前提だろうと思う」−その根拠は示せず
「建設するのですね?」→「必ず建設すると言いましたか!」
「政策大綱ができたことは、福井県もホームページを見て知っているだろう」

   


 7月13日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。大阪市内の関電本店で、午後6時から約2時間半の交渉だった。関電からは広報3名、市民は約20名が参加した。事前に提出していた質問書「使用済MOX燃料の行き先は決まっているのですか?」(6月23日付)と「『製造期間を通じた、製造・品質保証活動の確認』に関する追加質問」(7月6日付)を基に進めた。
 関電は、「第二再処理工場の建設は当然前提だろうと思う」と語りながら、その根拠は何も示すことができなかった。あげくには、「必ず建設すると言いましたか!」などと言い出した。使用済MOX燃料の処理の方策も語ることができないのに、高浜プルサーマルは来年に開始すると語った。関電の無責任な姿勢に、参加者は強い怒りと不信感を強くした。

1.使用済みMOX燃料の処理の方策について

◆「第二再処理工場の建設は当然前提だろうと思う」−その根拠は示せず
 プルサーマル実施によって発生する使用済MOX燃料の処理の方策については、5月18日の国との交渉で、「現時点では処理の方策は決まっていない」「第二再処理工場は建設するかどうか決まっていない」と資源エネ庁は明確に回答していた。この国の回答について、関電の見解を問うた。
 関電は最初の回答で「原子力政策大綱で2010年頃から検討を開始することになっている。国を中心に検討が進められると認識している」と抽象的な回答を繰り返した。国の見解と同じなのか異なるのか、明確な回答を避けた。途中で、「現在は2009年、検討開始は2010年頃なので、そういう意味では、現時点では処理の方策は決まっていない」ことは認めた。しかし、第二再処理工場については、「建設は当然前提だろうと思う」と答えた。そこで、何を根拠にして「建設は当然前提」と答えているのかを問うた。しかし、これについては言葉を濁し、「詳しい内容は分かりませんが、6月に決定された『原子力推進強化策』の中で、第二再処理工場の積立金の検討等の話も出ている・・・」等と言いながら、結局「原子力政策大綱で2010年頃から検討を開始することになっている」と「政策大綱」に逃げ込む。国の「原子力立国計画」(2006年)では、「2045年頃に第二再処理工場建設」と書かれている。「建設は当然前提」の根拠は、「原子力立国計画」ではないのかと問うと、「立国計画にそのように書かれていることは承知している」と言いながらも、なぜか、それを根拠にしているとは一言も語らなかった。
 参加者から「そうすると、第二再処理工場は建設されるのですね」と問われると、関電広報は突然形相を変えて、威圧的に「必ず建設すると言いましたか!」と怒鳴り出した。思わず本音を漏らしてしまったのか・・。結局、明確な根拠もなく、「国策だから」「国が中心に検討を進めている」と繰り返します。しかし、過去には、国策を電事連がひっくり返した実績がある。新型転換炉の実証炉建設は国策として進められていたが、金がかかりすぎるという理由で電事連は計画から撤退すると表明し、国策はあっというまになきものとなった。このことを指摘されると、関電はただ黙っていた。

◆「準備的検討が進んでいない理由は承知していない」−まるで他人事
 次に、2010年頃からの検討に向けた「準備的検討」が進んでいない問題について確認した。この「準備的検討」は電事連も入った5者協議会で進めることになっているが、2008年度末に出す予定の「最終成果報告」も、2007年度中に出す予定だった「中間成果報告」も出ていない。なぜ遅れているのかとの質問に対しては、「遅れている理由は承知していない」とまるで他人事のような回答だった。「電事連も参加しているのに、無責任だ」と批判されると、「原子力研究開発機構が中核機関として進めることになっている」と強調するばかり。「では、機構が仕事をさぼっているということか」と問うても「分かりません」と答えるだけ。「遅れている理由は分からないというが、そもそも機構や電事連に確認したのか」と問うと、問い合わせもしていないことが分かった。そのため、機構と電事連に遅れている理由を確認して、再度回答することになった。

◆「政策大綱ができたことは、福井県もホームページを見て知っているだろう」
 使用済MOX燃料の処理について、関電は福井県に対して、10年以上前の事前了解願いの時に説明しただけだ。その内容は、当時の原子力長期計画に基づいて「2010年頃に決定される第二再処理工場に運ぶ」というものだ(現在の政策大綱では「2010年頃から検討開始」と後退している)。福井県に改めて説明しないのはなぜかと問うと、「2005年に政策大綱ができたことは福井県さんもHP等を見て知っているだろう。当面、使用済MOX燃料は原発プールに置くことに変わりはないので、特段説明はしていない」と平然と語った。参加者は、「福井県は、使用済MOX燃料は搬出してもらわなければならないと言っている。搬出の方策が後退しているのに、当面はプールに置くから説明の必要なしとは無責任ではないか」と批判した。関電は「使用済MOXは、できたら運び出したい」などとまたもや本音がぽろりと。「できたら」とはどういうことかと参加者からは怒りの発言が続いた。


2.関電のMOX製造は「製造期間を通じた社員の派遣」という国の通達を満たしていない問題について

 1999年に高浜3・4号機用MOX燃料で発覚したBNFLデータねつ造事件の教訓として、国は2000年7月14日付の通達で「製造期間を通じてMOX燃料加工工場に社員を派遣し」製造状況・品質保証活動を確認するよう、電力会社に求めた。現在関電がフランスのメロックス社で製造しているMOX燃料は、この国の要求を満たしていないという疑いがある。
 メロックス社でのMOX製造は、まず一次混合としてプルトニウム約30%のMOX燃料を製造し、その後、二次混合をおこなう2段階方式をとる。「製造期間を通じた社員の派遣」でいう製造期間の始まりをどう規定するのか。今回の交渉では、この問題について、関電が出している資料などに基づき確認をおこなっていった。

◆「製造期間」は、二次混合から
 関電が昨年11月10日に国に提出した輸入燃料体検査申請書では、「製造期間」を「メロックス社での当社向けMOX燃料集合体のための二次混合開始から全燃料集合体の組立後の検査完了までの期間」と規定している。「製造開始」は二次混合からであり、社員の派遣も二次混合からだと、今回の交渉でも認めた。しかし、関電の資料では、「MOX燃料製造の主な流れ」として一次混合から書かれている。この立場では、二次混合から社員を派遣するという関電のMOX製造は、「一次混合」時点の確認をおこなっていないため、国の通達を満たしていないことになる。

◆「製造開始」はペレット成形から
 他方、関電は、「製造期間」と区別して、「製造開始」という概念を持ち込んでいる。関電の資料では、「ペレット成形」の箇所に、わざわざ「製造開始」という注記を加えているものがある。交渉で関電は、「輸入燃料体検査制度が変更されたことによって、製造開始はペレット成形以降と定義されることになった」と何度も繰り返した。そこで、「そのような定義はどこに書かれているのか」と聞いたが、「明確な文書はない」と答えた。根拠を示す文書も何もないのに、なぜそう理解できるのか追及すると説明できず黙ってしまう。結局、「製造開始はペレット成形以降という解釈で申請を昨年11月におこなったが、保安院から特段の指示はなかったので通達は満足されていると判断している」と繰り返すだけであった。
 関電の説明によれば、「製造開始」は、初期製造を開始した今年1月30日だという(本格製造は5月6日から)。関電が福井新聞に出した一面広告(6月27日付)では、「製造期間中は・・・社員2〜6名を現地に派遣」と書かれている。社員を派遣したのはいつからかと問うと、すぐには分からないということで、確認して後日回答することになった。

◆矛盾に満ちた「製造開始」=ペレット成形
 私たちは、昨年12月18日に保安院と交渉をおこない、何を根拠に「製造開始」を「ペレット成形以降」としているのか見解を質した。保安院は電気事業法施行規則78条2項の表がその根拠であるとした。そこには、輸入燃料体検査申請書の提出時期を「燃料材の成形加工に着手する一月前」とするという記述がある。関電も、「保安院がそう言っている」として、「製造開始」はペレット成形からという見解をとっている。
 そこで交渉では、関電に対して、申請書を提出するのはペレット成形に着手する1ヶ月前ということでよいのかと確認を求めた。関電は「そうなる」と認めた。国は申請書を受理後、1ヶ月間審査して許可を出すことになる。
 そうすると端的な場合、ペレット成形の1ヶ月前に申請書を提出し、1ヶ月間の国の審査を経て国の許可が下りた時点からペレット成形にかかってよいことになる。しかしその場合は、国の許可が下りるより前にすでに一次混合や二次混合の工程を始めていることになる。そのような行為が法的・制度的に許されているとの結論に行き着く。これは製造開始=ペレット成形とむりやりこじつけた結果生じた矛盾である。このことを関電に質すと、関電は「確かにその可能性はあるが・・・」と、それ以上答えることはできなかった。
 そもそも、輸入燃料体検査の申請は、製造を始めてよいかどうかということを国に確認することが目的のはずである。当然、申請書の提出は製造前であり、提出期限の「燃料材の成形加工1ヶ月前」とは、「ペレット成形の1ヶ月前」の時点ではなく、MOX燃料の製造自体(一次混合から始まる過程)の開始1ヶ月前を意味しているはずだ。

 最後に現時点で明らかな事実関係を整理すると以下のようになる。
  ・関電が輸入燃料体検査申請書を国に提出   昨年11月10日
  ・国の許可 1ヶ月間問題なければ許可なので 昨年12月10日
  ・ペレット成形開始(関電・保安院の見解ではここから「製造開始」) 1月30日
 今後、さらに事実関係を公表するよう要求していこう。


(09/07/16UP)