2月14日 関西電力との交渉速報
◆「緊急非常事態」と言いながら、
    「今年度の『異常事象』19件の分析は行っていない。原因は分からない」
◆トラブル原因は「水平展開の突っ込み不足」(福井県安全専門委)
    →「これまで水平展開を主にやってきた」
◆MOX燃料を製造するメロックス工場の監査で
    「関電としてはペレット寸法データを公開するよう求める」、「協議する」
◆高浜4号機用MOX燃料データねつ造は「主な経緯ではない」


  2月14日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。中之島のダイビル第3会議室で午後6時半から9時前まで。市民側参加者は25名、関電からは広報部員3名が出席した。1月23日に提出していた「『トラブル低減に向けた取り組み計画』などに関する質問書」と2月1日の「プルサーマル計画の準備作業再開に関する追加質問書」を基に行った。ここでは、いくつかの特徴的な点について報告する。
 全体として関電の回答は、答をはぐらかすものだった。参加者は「まじめに答えるべき」と関電の姿勢を厳しく批判した。プルサーマル再開に向けて、福井県知事の指示で提出した関電の「トラブル低減策」では、「今年度の異常事象の分析は行っていないので、原因は分からない」と平然と語り、福井県で指摘された「水平展開の突っ込み不足」については「これまで水平展開を主としてやっている」などと居直った。プルサーマルの経緯について、1999年の高浜4号機用MOX燃料のデータねつ造事件とそれによるプルサーマル中止は「主な出来事ではない」とまで語った。これらの回答は、5名もの死者を出す大事故を引き起こし、MOX燃料データねつ造を隠ぺいし何の反省も行わない関電の傲慢な姿勢を改めて参加者の前に示すものとなった。このような姿勢でプルサーマルが再開されれば、本当に危険なことになると痛感した。関電のプルサーマル計画を止めていこう。

◆「緊急非常事態」と言いながら、「今年度の『異常事象』19件の分析は行っていない。原因は分からない」
 プルサーマル再開にあたって、福井県知事は関電の原発で最近トラブルが増加している点を問題にし、その「低減対策」を求めていた。関電は1月15日に報告書を出したが、福井県の安全専門委員会で厳しい意見が出たことなどもあり、30日に報告書を出し直した。関電が出した報告書は、過去5年間のトラブル157件を分析の対象としている。しかし、昨年度の7件に対し今年度は既に19件もの異常事象が起きていることの分析は何も書かれていない。これはなぜなのか、知事への回答にもなっていないと問うていた。関電は「今年度の19件の分析は行っていない。だから今年度トラブルが増えた原因は分からない」と平然と語り、「私たちは5年間のトラブルの分析を行った・・・」を繰り返すばかりであった。そして過去5年間のトラブル原因としては、「し忘れ・し間違い」が最も多く、下請け会社に責任をなすりつけている。この点については「若干の気配りや配慮が欠けていた」と言いだし、関電としての責任は、下請けに対する「若干の気配り・配慮不足」だという。自らの安全管理の不備を棚に上げた、傲慢極まりない姿勢である。今年度のトラブル増加に対して、昨年12月に関電の原子力事業本部副本部長は「緊急非常事態と考えている」と表明していた。「緊急非常事態」と言いながら、その原因も明らかにしようとしない関電。こんな姿勢で危険な原発を動かしている関電に対して、参加者からは根本的な疑問と批判の声が続いた。同時に、福井県民をはじめ周辺住民を愚弄するものだ。

◆「水平展開の突っ込み不足」(福井県安全専門委)→「これまで水平展開を主にやってきた」
 1月15日に関電が出した報告書に対しては、福井県の安全専門委員会で委員から「水平展開の突っ込み不足によるトラブルはなかったのか」と厳しい意見が出されていた。私たちは、関電のトラブル「要因分析」に「水平展開不足」が入っていないのはなぜかと問うていた。これに対して「これまでは水平展開を主にやってきた。背景分析ができていなかったので人的背後要因などを分析した」と驚くべき回答であった。福井県の安全専門委員会で指摘されたことも軽くうけ流し、「もともと水平展開には力を入れてやってきた」というのだ。昨年11月に見つかった大飯2号の配管減肉は、2004年の大飯1号での配管減肉や美浜3号機事故の水平展開不足ではないのかと問うと、「大飯2号はデータを取得していた。データのばらつきがあった」と繰り返し、水平展開不足とは決して認めなかった。「データを取得していた」といっても、17年も前に測定しただけで、2004年7月の大飯1号の減肉発覚後も同年8月の美浜3号機事故後も配管肉厚を測定していなかった。福井県の安全専門委員会では、まさに大飯2号の配管減肉が「水平展開の突っ込み不足」として取り上げられた。それにもかかわらず、今に至っても「問題なし」と居直り、「水平展開不足」と認めようとしない。そして、1月30日に出し直した報告書では、「過去の水平展開の妥当性評価、追加対策の立案を5月頃までに完了する」としている。定期検査の延長にもつながり、経済性をそこなう水平展開を徹底してやる気のないことが、はっきりと現れている。関電の安全軽視の姿勢を改めて示すものだ。

◆プルサーマルの経緯に「1999年高浜4号でのMOX燃料データねつ造とプルサーマル中止」が書かれていないのは「主な経緯ではないから」
 関電は1月30日に、プルサーマル計画の準備作業を再開すると発表した。その発表にあたって「当社のプルサーマル計画について」として「主な経緯」をHPにも掲載している。そこには、1999年9月13日に「MOX燃料データ問題が発覚(高浜3号機用燃料)」と書かれているが、高浜4号機でのデータねつ造問題と12月16日にプルサーマル中止を決定したことについては一言もふれられていない。なぜ高浜4号の問題が書かれていないのかと問うていた。回答は「経緯が簡単に分かるものを配布した」、「主な経緯をピックアップしたもの」、「紙面の都合もある」というこれまた驚くべき回答だった。2001年にコジェマ社でMOX燃料を製造しておきながら60億円も支払って廃棄にした経緯についても、同様に「主な経緯ではない」との理由で書いていないという。
 参加者からは厳しい批判が続いた。そもそも関電のプルサーマル計画は高浜4号機で始める予定でありMOX燃料も輸送済みだった。それを私たち市民がデータねつ造を暴いて裁判をおこし、その判決が1999年12月17日に予定されていた。関電は、その判決の前日(12月16日)になって4号機でもデータねつ造があったことをやっと認め中止を発表した。それ以降、日本のプルサーマル計画は中断し続けた。「これが主な経緯ではないとはどういうことか」、「結局、高浜4号機でのデータねつ造事件を真剣に反省していないことの現れだ」と参加者は厳しく追及した。事実関電は、データねつ造があったことを知りながら、それを隠し続け「ねつ造はなし」と裁判でも主張していた(この当時の関電プルサーマルの責任者は、いまは六ヶ所再処理工場の品質管理の責任者になっている)。この自らの責任を隠し続けて、またプルサーマルを再開するというのだ。無責任極まりないものだ。

◆フランスのメロックス工場の監査では「関電としては、MOX燃料ペレットの寸法について公開するよう求める」「アレバ社と協議する」
 関電は2月18〜21日に4名の社員を、MOX燃料を製造するメロックス工場に派遣し、品質保証システムの監査を行うことになっている。この監査の内容について、データねつ造事件の反省を踏まえて、メロックス工場に対しMOX燃料ペレット寸法のデータを公表するよう関電として求めるかと質問書で問うていた。これに対して関電は、「協議する」と回答した。質問では、「関電としてデータ公開を求めるか」と聞いている。「協議する」では答えになっていないと言うと、「当社としては公開を求めます」と明言した。しかし、相手があることなので「協議する」という。「正式契約を結んでから協議して、やはり断られたので、データ公開はできないでは困る」、「データを公開しなければ正式契約は結ばないという姿勢をはっきりさせて監査に望むべき」等々の意見が相次いだ。「協議する時期はいつなのか」と問うと、「今は分からない」というので翌日電話で回答することになった。翌日電話があり、「担当者がつかまらないので、協議の時期については現時点では分からない。月曜(2月18日)に再度電話します」とのことだった。
 また、メロックス工場では九州電力が既にMOX燃料を製造している。しかし、試験用のバネ等の材料を使って燃料棒が製造されていたことが明らかになり、製造し直すことになったと九電が2月1日に発表した(完成した燃料棒4224本のうち1516本もが正規の部品ではなかた)。この問題について、当然監査で確認するのだろうと問うと、交渉では一般的な「品質管理」を繰り返すばかりではっきりしなかった。そのためこれも翌日電話で回答することになった。電話回答では「九電の燃料でおきたトラブルに対し、どのような改善策がとられているのかを今回の監査で調べる。それが不十分な場合には改めて改善策を求めて判断する」という。当然のことだ。

 活断層問題、耐震安全性の問題については、おおかた、現在行っているバックチェックで検討中という回答だった。日本原電の浦底断層値切り問題については「総合的に評価されていると考える。データが拡充されているのでそれも検討し、3月のバックチェック評価で報告する」と答えた。またバックチェックで使用したデータの全てを公表するのかと問うていたが、「全て出すかどうかはまだ分からない」と答えるのみだった。
 また、2003年に行っていた海域活断層調査については、「敷地に与える影響が小さいために公表しなかった」という。その資料を当日出してきた。日本原電が調査した15本の活断層については長さ等が書かれた資料も含まれていたが、関電が調査した4本の活断層についてはそれらの数値はなかった。その点を指摘されると、その場で関電職員が手書きで数値を書き入れた。
 六ヶ所再処理工場との関係では、
 ・ガラス固化体の保管料は1体いくらという形で支払うのではなく、保管料も含めて再処理に必要な費用を支払っている。
 ・関電分の使用済み核燃料でこれまでせん断されたのは130トン、290体分。
 ・関電分の高レベル濃縮廃液の量は、原燃から連絡をうける契約にはなっていない。
 ・関電分のガラス固化体については、配賦(割り当て)はされていない。知らせが来ていない。
 ・関電分のプルトニウムとウランの量については、割り当ての通知がないため示せない。
というものだった。

 全体として関電の回答は、質問していることに答えずに、回答をはぐらかすものだった。これに対して参加者から最後に、「もっとまじめに答えるべき」「正面から向き合うべき」「読み上げている回答のコピーを渡せばいい」等の意見が続いた。人を愚弄するような回答に対し、「関電の企業姿勢の問題だ」と多くの参加者が怒りをあらわにした。

(08/02/15UP)