7月10日関電交渉報告 その1(美浜1号機の水漏れ事故)
美浜1号機の水漏れ事故−コンクリートと鉄筋の健全性確認はずさん
■水漏れの時期−「いつから漏れだしたかは分からない」
■しみ込み部の点検は1箇所のみ。残り3箇所は「調査の必要なし」
■しみ込んだホウ酸で鉄筋がサビる可能性は考慮せず


 7月10日関電と午後6時から9時まで交渉を行った。関電からは広報の3人、市民側は、初めて交渉に参加した人たちを含め29名が参加した。
 交渉は、7月3日に提出した(1)美浜1号機格納容器内コンクリート壁などからの水漏れに関する追加質問、(2)関電の温暖化・CO2対策に関する質問について、一通りの回答を聞いた後、質疑のやり取りを行った。以下、交渉の主な点を報告する。なお、図面などを資料としてまとめているので参照していただきたい。

 最初の約1時間は、美浜1号機の水漏れに関する問題であった。関電が、6月14日に公表した「原子炉格納容器内壁面の水のにじみに関する原因と対策」および5月17日付の質問への電話回答(6月20日)に関して、コンクリートと鉄筋が健全であるとする根拠について質問していた。関電が調査したのは、主として水漏れのにじみ出し部であり、しみ込んだ側のコンクリートと鉄筋はほとんど調査せずに健全性が確認できたとしている。この点を主に追及した。

1.しみ込み部のコンクリートの調査は、わずか1箇所で表面だけ
 しみ込み部については、「1箇所だけだが、床の段差のところでライナーとアングルを切り取ったのでその所のコンクリートの健全性を確認した」と回答。確認方法は、コンクリート面に水をたらしてリトマス試験紙でPHを測定し、PH値が9〜11のアルカリ性であったので、健全と判断したという。しみ込み部(ライナーの貫通き裂部)は4箇所あるのに、なぜ残りの3箇所を調べないのかと追及した。すると、後に述べる「弱酸性のホウ酸で中和」論を繰り返すだけだった。また、にじみ出した水はわずかでも、しみ込み部からにじみ出し部までは、7メートル以上もあるではないかと確認すると、関電もそれは認める。ならば、7mの間のコンクリートと鉄筋を点検することが必要なのではないか、しみ込み部のコンクリートを削り取り、中の鉄筋の状態も調べなければ健全性が確認できないのではいかと追及したが、その必要性を認めようとはしなかった。

2.「漏れた量は約40cc」程度。しかし「いつから漏れ出したかは分からない」
  漏れている時間が分からなければ漏れた量を計算することはできない

 コンクリートの中がどれほどの湿潤状態かを調査する必要性を認めないため、いつから漏れ出したか分かっているのかと糾すと、「いつから漏れ出したかは分からない」と回答する。にもかかわらず、「ライナーの穴の大きさが20〜30ミクロンなので、漏れた量は40cc程度」と平気で答える。いくら穴が小さくても長時間漏れが続いていれば、漏れた量は多くなる。コンクリートから外へにじみ出した量が少なければ、それだけコンクリート内に溜まっている可能性もある。漏れている時間も分からずに漏れ出した量を計算してわずかとする結論には信頼は置けない。

3.「弱酸性のホウ酸は、コンクリート中の成分と反応して中和されるから問題はない」
  酸性のホウ酸が鉄筋を濡らせば、サビが発生する可能性は排除

 酸性のホウ酸水がコンクリートと鉄筋に与える影響について、「弱酸性のホウ酸はコンクリートに多量にある水酸化カルシウムのごくわずかと反応してホウ酸カルシウムになり、中和させるので問題ない」ことを繰り返し主張した。この主張は、コンクリート内のき裂の状態も調べず、弱酸性のホウ酸水が鉄筋にたどり着くまでに、必ず水酸化カルシウムと反応し中和されるという前提に立つものある。き裂の状況によっては、直接ホウ酸水が鉄筋を濡らし、錆を発生させて鉄筋コンクリート構造を劣化させる可能性を頭から否定するものである。これでは、「安全」と宣言するための調査でしかない。

4.「(腐食していない)鉄筋の状態の写真、(中性化が進展していない)コンクリート試験結果の公表は、作業終了後、公開できるかどうかを検討」
 関電が健全と評価した鉄筋とコンクリートについての状況写真の公開を要求していた。しかし、回答は、作業後に公開できるかどうかを検討というものであった。作業とは、ライナーの穴あき部の補修作業(再溶接など)という。6月14日に「原因と対策」を公表しているのに、健全性を示す証拠写真は、約1ヶ月先の手直し工事終了後に、公開を検討するというのである。なぜ、今すぐ公開しないのかと追及したが、「作業終了後に検討」を繰り返すだけだった。
 念には念を入れた点検を行わずに健全と評価したり、評価の元になった写真もすぐには公開しようとしない体質では、再び事故を繰り返す。老朽炉美浜1号機は運転するなと要求して、この問題については終え、CO2問題に移った。

(07/07/12UP)