関電の温暖化・CO2対策に関する質問書
◆温暖化防止を真に目指すのなら、なぜCO2排出量の削減を
  直接目標にしないのですか
◆原発の利用率はいまよりずっと高くするのですか


関西電力社長 森 詳介 様

2007年7月3日

  現在、CO2の排出量を削減することが焦眉の課題になっており、京都議定書によれば、日本は2010年ごろに1990年度比で6%削減することになっています。
 貴社は2008〜2012年度平均の「使用端CO2排出原単位」を、0.282(kg-CO2/kWh)程度にすることを目標に掲げています。この値は90年度の0.353及び2005年度の約0.35と比べて20%削減となります。しかしこの原単位とは、「使用電力量1kWhあたりのCO2排出量」であり、貴社はCO2排出量そのものを削減することについては何も触れていません。 
 電事連が表明しているように、CO2排出量は使用端CO2排出原単位×使用電力量できまるはずです。使用電力量が相当な率で増えればCO2排出量はむしろ増加することになります。事実、電事連の2010年度目標では、使用端CO2排出原単位は90年度比でやはり20%の減少ですが、使用電力量が36%も増加するために、CO2排出量は10%の増となっています。
 なぜ貴社はCO2排出量自体の削減を目標として掲げないのか、私たちは強い疑問を抱かざるを得ません。また、貴社がどのような想定によって原単位0.282を導いたのかについても何も説明されていません。
 そのため、以下の質問を行います。末尾のデータ請求については、メールまたはFAX、あるいは記載されている箇所のURLを知らせるなどしてください。
(関電)はじめに、我々は電力自由化の中でやっておりますので、電力需要に関するもの、燃料の調達に関するもの、石油をどれだけ買うとか、LNGをどれだけ買うとか想定されるものについては、基本的にはお答えさせてもらっていません。その中でどういう範囲でお答えさせていただけるかという中でお答えを準備しています。例えば2010年に火力の中でLNGがどれだけ、石炭がどれだけと想定してしまうと、今から燃料を調達しにいこうとすると足元を見られるわけです。そういうわけで、燃料種別に関しての細かいことに関する公開というのは今日はしませんので、それを念頭において、回答を聞いてもらえればと思います。

1.貴社は2008〜2012年度平均で使用端CO2排出原単位を0.282kg-CO2/kWhにするとのことですが、その場合の想定について
電源 電源別原単位
LC (発電分)
g-CO2/kWh
送電端
構成比率
石炭
石油
LNG
太陽光
風力
原子力
地熱
水力
975(887)
742(704)
608(478)
53( 0)
29( 0)
22( 0)
15( 0)
11( 0)
 

(1)原単位算出の基礎データについて。
・使用端電力量(実際に使用した電力の量)と送電端電力量(使用端に送電ロス分や変電所内分を加えた量)はいくらと想定していますか。
答:使用端電力量は2008〜2012年度の平均で1506億キロワットアワー(kWh)。
 送電端電力量は同じく2008〜2012年度の平均で1595億キロワットアワー(kWh)。

・送電端電力量の電源別構成比率を右表の空欄に書き込んでください。
答:燃料種別の分かるものについては公開は控える。
 公開できるのは、火力全般という形で。
 水力12%、火力33%、原子力54%、新エネルギーとして0%
 但しこれは、関西電力の自社発電分のみ。新エネルギーはパーセントではゼロになってますが、少しはやります。新エネルギーの中身についても言えない。地熱はありません。そういうと風力と太陽光しかないですが。
 他社融通についても、分かってしまうと他社からも足元を見られるので回答は差し控える。
・右表の中欄には電力中央研究所の送電端電源別原単位を書いています。貴社は原単位を算出する際、採掘から発電までのライフサイクル(LC)と括弧内に示した直接発電分のどちらを用いていますか。
答:CO2排出量の計算に関しては、省令があり、「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」が定められており、これに基づいてCO2排出量の計算を行っている。
 ライフサイクルではない。

(2)原子力の利用率について、電事連は87〜88%(2010年度)と想定しています。貴社はどう想定していますか。その想定の内容・根拠を示してください。
 なお、貴社の原単位が約0.26と低い2002〜2003年度には、原発利用率がほぼ90%にも達していますが、このような姿勢が美浜3号機事故につながったのではありませんか。
答:短期的には、運転計画に基づいて80%の前半を見込んでいる。
 長期的には、原子力の至近の運転実績と定格熱出力一定運転を考慮し85%を見込んでいる。[後のやりとりで、「至近の運転実績」とは、「1999〜2003年の5年間の実績」のことだと回答。これは2004年の美浜3号機事故前の5年間で、関電の原発の利用率が最も高かった時期を選んでいることが明らかになった。定期検査の短縮によって、2002年では原発の利用率は約90%。そして5名もの死者を出した美浜3号機事故が起きた]
 実際、原子力の場合は毎年1月末に運転計画を出している。それが向こう3カ年が80%代前半。
 2010年頃では85%(原単位0.282を計算するときの原発の稼働率)

(3)京都メカニズムによる海外でのCO2削減事業等による分も考慮していますか。その分で、貴社のCO2排出量から何トン削減する予定ですか。その分がないときの使用端CO2排出原単位はいくらですか。
答:当社はCO2排出原単位の低減にかかる目標については、安全確保と信頼確保を前提に原子力発電を推進していくとともに、LNG火力のコンバインドサイクルの発電設備への更新等による火力発電の効率向上や、水力・太陽光・風力等の再生可能エネルギーの開発普及等の対策と合わせ、地球規模でのCO2削減につながる京都メカニズムの活用等の方策を展開することにより、その達成に向け最大限努力しいく所存である。なお今後も京都メカニズムの活用の見通しについてはCO2クレジット獲得に支障を生じる恐れがあることから、具体的な活用量および、活用しない場合の使用端CO2排出原単位については回答を差し控える。
 まず、京都メカニズムによる海外でのCO2削減については考慮しています。海外でのCO2削減の事業については織り込んだ数字で0.282を想定している。実際にどの程度かは、CO2クレジット獲得に支障が生じる恐れがあるため、具体的な活用量や活用しない場合の回答は差し控える。

(4)原単位が0.282となるときのCO2排出量は何万トンと算出していますか。1990年度のCO2排出量4261万トンから何%の減少または増加になるのですか。
答:上記と同じで、今後のCO2排出量に関する見通しについては、電力需要等の様々な要因により変更することから、具体的数値については回答を差し控える。
 排出量は言えないということです。

2.貴社の温暖化・CO2対策の考え方について

(1)貴社はなぜ使用端排出量原単位の削減を目標とするのですか。なぜ直接に、CO2排出量の削減を目標としないのですか。
答:電気の使用に伴う CO2排出量は、お客さまの使用電力量と使用端 CO2排出原単位を掛け合わせて算出できる。このうち、お客さまの使用電力量は天候やお客さまの電気の使用事情といった電気事業者の努力が及ばない諸状況により増減することから、電気事業としては、自らの努力が反映可能な原単位目標を採用している。[電事連の文章と同じ]

(2)CO2排出原単位は、電源別原単位が与えられたとき、電源構成比率によって決まります(電源別原単位に構成比率を掛けた平均で決まります)。CO2排出原単位の削減は、CO2をほとんど出さない太陽光、風力、原子力、地熱及び水力の比率を高めることで実現されます。しかし、今後原発はさらに老朽化するので、原発利用率はむしろいまより低く見積もるべきではありませんか。貴社は原発に頼らずに原単位を下げる方法についてどう考えているのですか。
答:当社はCO2排出原単位の低減にかかわる問題については、安全確保と信頼回復を前提に原子力発電を推進していくとともに、LNG火力のコンバインドサイクル発電設備への更新等による火力発電の効率向上や水力・太陽光・風力等の再生可能エネルギーの開発普及等の対策と合わせ、地球規模でのCO2削減につながる京都メカニズムの活用等の方策を展開することにより、その達成に向け最大限の努力をしていく所存である。

(3)貴社はオール電化の宣伝をしていますが、それは使用電力量を増やすことを目的にしているのですか。それではCO2排出量が増えることになるのではありませんか。CO2排出量を削減するために、オール電化の宣伝はやめるべきではありませんか。
答:当社は環境性・省エネ性に優れたエコキュートやIHクッキングヒータ等をはじめとするオール電化による安心・快適・経済的で環境にやさしい暮らしをお客様にお届けすることを目的に、オール電化のPR活動を展開させてもらっている。オール電化住宅では、ガスキッチンに代わって厨房ではIHクッキングヒータが、給湯ではエコキュート、これはCO2を冷媒としたヒートポンプ式の給湯器、エコキュート等が導入されるため、電気使用量自体は増えるものの都市ガス等の消費がなくなるためCO2排出量は削減されるものと考えています。オール電化住宅と都市ガス併用住宅の環境性については、CO2の排出量といった観点から比較した場合、エコキュートとIHクッキングヒータを使用したオール電化住宅では、都市ガス併用(ガスコンロ・ガス給湯器を使用するものを想定しているが)に比べ、CO2排出量は約20%削減されると試算している。加えて、一般的にオール電化住宅では燃焼の伴わないIHクッキングヒータで調理するので、夏場の冷房効率があがり、燃焼によるCO2や水蒸気が発生しないので換気が少なくてすみ、冬場の暖房効率も高くなるという特徴があると考えている。
 当社としては引き続きオール電化による安心・快適・経済的で環境に優しい暮らしをお客様にお届けするため、オール電化のPR活動を展開していくものである。

(4)京都メカニズムによって削減されるCO2の量は、電力の使用とは関係がないため、使用端CO2排出原単位の計算に繰り込むのは筋違いではありませんか。
答:いままでの答と同じだが、京都メカニズムについては地球規模での温暖化対策に資するものであり、国際的にもその活用が認められている。したがって当社としては原子力の安全・安定運転、火力の熱効率向上など自社電源によるCO2排出削減とあわせ、京都メカニズムを活用していくことで、CO2排出削減に取り組んでいく所在である。


■データ請求
 貴社は1990年度から2005年度までの使用端CO2排出原単位、使用電力量及びCO2排出量を公表しています。使用端CO2排出原単位算出の基礎になっているはずの次の諸量などの数値データを、年度ごとに示してください。
(1)送電端電力量
(2)送電端電力量の電源別構成比率(上記表の項目について)。
(3)原発設備利用率(年度平均、各原発の年度ごと)
(4)原発の定期検査日数(年度平均、年度での最短定検日数、原発毎の日数)
答:整理した状態のものを準備していない。唯一まとまっているのが、
 (3)の設備利用率は関西電力のHPにあるのでそれを見て欲しい。
 (4)はまとめたもので用意するつもりはないので、最近のものはプレス資料をみてもらえれば。定期安全レビューの資料に運転実績を載せているので初回からの定期検査の日数が出ている。
 (1)は公表していない。
 (2)は、発受電電力量は所内電力が入っているが、電事連のHPで電力各社の統計が見られる。火力については(石油・石炭・LNGと)分解していないが。

2007年7月3日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/07/12UP)