関電の「報告書」(10月23日)は 品質保証に関する国の新基準を満たしていない
来年3月のMOX製造契約を阻止しよう!


 関西電力は、10月23日に「海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況について」(以下、「報告書」という)を発表した。同日、この「報告書」を福井県や高浜町に持参し、あたかも品質保証体制が改善されたかのような説明を行い、今年度中にMOX燃料の製造契約を結びたいと表明した。同時に、福井県内・高浜町内で、プルサーマル推進の大宣伝を行っている。パンフレットは既に33万部以上も配布し、11月26日付福井新聞では、2面全面を使った大広告を出している。さらに、「出前説明会」230回、「出前教室」460回。私たちの電気料金を湯水のように使って、異常なまでに「プルサーマル復活」を演出している。
 しかしBNFLデータねつ造事件、コジェマ社でのMOX製造中止の疑惑等、関電プルサーマルは呪われている。そして起死回生とばかりに出した「報告書」にも大問題があった。関電の「報告書」は、品質保証に関する国の新基準(JEAC4111-2003)を満たしていないのだ。
 関電の「品質保証の改善」が、実は国の品質保証の新基準を満たしていないという事実を広く宣伝していこう。

■品質保証に関する国の新基準はJEAC4111-2003。関電はISO9001で評価
 品質保証に関する国の基準は、東電事件の後に変更された。まず、品質保証活動を保安規定に入れることが原子炉等規制法の改定で義務づけられた。同時に、今年10月1日の省令改正により、品質保証に関する基準が変更になった。これまでの民間基準であった「JEAG4101-2000」(原子力発電所の品質保証指針)が、国の基準として「JEAC4111-2003」(原子力発電所における安全のための品質保証規程)に変更された。関電も当然このことを知っていた。このJEAC4111-2003は、「品質に係わる国際的な規格であるISO9001を基本として・・・原子力固有の事項を追加している」と「報告書」にも記載している。しかし、「報告書」の品質保証に関する判断基準は、実際にはISO9001で行っている。7月14日に関電本店で私たちと行った交渉でも、「イソ9001で評価している」と何度も「いそ、いそ」と繰り返し述べていた。

■自らのスケジュールを最優先させた関電
 他人事だと思っていた東電事件の後始末が、ここにきて関電に跳ねかえってきた。関電は、2001年6月11日に「第1回プルサーマル推進会議」を立ち上げ、「報告書」を当面のゴールとして、その復活に取り組んできた。翌年7月31日に原子力安全・保安院が発表した「品質保証に関する確認事項(内規)」では、日本電気協会技術指針JEAG4101「原子力発電所の品質保証指針」あるいは国際標準化機構の「ISO9000」に準拠すればいいとなっていた。関電は、「ISO9000」の改訂版「ISO9001」で評価しておけば、十分すぎると思っていたに違いない。
 その1ヶ月後の2002年8月29日に東電事件が発覚した。そしてあの悪名高い「検査のあり方検討会」を中心に、「維持基準」の導入がはかられていく。その一環として、品質保証に関する基準が「JEAG4101」から「JEAC4111-2003」に変更される過程が始まった。今年5月には、電気協会・原子力規格委員会が「JEAC4101・品質保証規程(仮称)改定案」を発表した。
 関電には時間がなかった。7月4日の第5回「プルサーマル推進会議」では、今回の「報告書」の概要を発表し、7月7日〜29日には、ロイドの監査を受け、お墨付きをもらう手はずになっており、その通り実行した。「報告書」では、5月に出された上記「JEAC4101・品質保証規程(仮称)改定案」を、勝手に「JEAC4111-2003策定案」と呼んでいる。
 他方、この頃の国の動きはどうだったか。9月24日、原子炉等規制法に基づく省令「実用発電用原子炉の設置・運転に関する規則」が改訂された。9月30日には、日本電気協会がJEAC4111-2003を策定。これによって、「JEAC4111-2003」は「原子力発電所における安全のための品質保証規定」となった。10月1日には、この省令が施行され猶予期間3ヶ月(12月31日)と決められた。これによって、年末までに各電力会社が品質保証に関する変更許可申請を出すことになった。
 10月1日の省令改正・施行が発表されながら、関電は10月23日に新基準を満たさない「報告書」を発表した。関電があえてこの時期に「報告書」を発表したのは、来年3月までにMOX製造契約を締結するという自らのスケジュールを最優先においたからだ。「報告書」はまず国が評価し、しかも「立入検査」も行われる。福井県は、国の評価をうけて判断すると言っている。逆算すると時間的余裕がなかったに違いない。

■「報告書」は新基準に即して「充実を図っている」途上と自ら認める
 関電は、この新基準問題を気にしている。「報告書」では、新基準に「配慮」している姿勢を国に示すため、様々な文言を並べ立てている。ここに関電の弱点がある。「報告書」の「はじめに」では、「さらに、策定されたJEAC4111-2003に基づき、品質マネジメントシステムの充実を図っています」とわざわざ書き入れている。しかし、「充実」の内容や「充実した結果」については書かれていない。「充実を図っている」途上だと自ら吐露している。「報告書」発表の翌日に福井県で行われた安全対策協議会の場で、関電はこの「報告書」を説明した。その説明資料には、わざわざ「JEAC4111-2003(ISO9001:2000をベース)」と書き込んだ資料まで用意していたとのことである。「報告書」からは、「新基準はISO9001がベースになっているのだからいいじゃないか」「基準が変わる前から2年以上もかけて作ってきたのに・・・」と傲慢な関電の、弱々しい言い訳が聞こえてくるようだ。

■保安院は異例の発表
 この間に、国と関電との間でどのようなやり取りがあったかは知る由もない。関電「報告書」に対し、国がどのような姿勢で臨んでいるか、公表されている事実から紹介する。
関電が「報告書」を発表した同日、保安院はプレス発表した。BNFL委員会報告書(2000年6月14日)を引用しながら、「これは・・・『関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには、通商産業省が同社の品質保証体制が申請者資格を有するに足るよう改善されたことを確認する作業が必要』との方針を受け、提出されたものです」と、関電「報告書」の目的をわざわざ規定した。しかし、「報告書」そのものには、このような趣旨は一切書かれていない。
 さらに、12月9日には、関電宛に出した通知文書を保安院のホームページで公開した(平成15・12・08 原院第1号)。そこでは、省令改正を踏まえた、「新しい品質保証体制との整合性についても確認することが適当」と述べ、「報告書」は、関電が今月末までに出す変更許可申請の後、「書類審査に加え、立入検査も併せて行い、十分な審査を行う」という。国の審査は年明けにずれ込んだ。「立入検査」は関電だけに行われる。
 そして、2000年6月のBNFL委員会報告書の前記引用文からすれば、現在でも関電だけは「申請者資格があるとは認められていない」ことになっている。
 もちろん関電は、BNFLデータねつ造事件について、なぜ高浜4号用にはデータねつ造なしと決めつけたのか、その根本的責任について一切明らかにしていない。
 関電の「報告書」が国の新基準を満たしていない事実を広く宣伝しよう。このような「報告書」で、福井県や高浜町にプルサーマル再開を願い出たことを謝罪させよう。私たちは、12月18日、グリーン・アクションと共同で「報告書」に関する質問書を関電に出した(質問書は当会のHP参照)。新しい年に、新たな運動をつくりあげよう。3月のMOX契約を阻止しよう。