(創刊:2001年8月18日) ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛ メール・ニュース vol.9(2) 発行:2002年9月25日 登録者数:313人 http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html ▲▲▲緊急特集第1弾!!! 在日朝鮮人へのハラスメントとメディア▲▲▲ ▼▼▼報道の激化と嫌がらせの増加に因果関係?▼▼▼ ▲▲▲▲▲NHK裁判第八回口頭弁論――ひと口報告▲▲▲▲▲ ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ ▲▲▲やったね!(^O^)BRO初の番組出演者による申立て受理▲▲▲ ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ ■もくじ■ 1. 緊急特集!!!(1)「北朝鮮」報道を問う 在日朝鮮人へのハラスメントとメディア (板垣竜太) 嫌がらせの実態を整理し、メディア表象との関連を分析 2. NHK裁判第八回口頭弁論――ひと口報告 3. 2001年ETVシリーズ「戦争をどう裁くか」に関する 番組出演者によるBRO申立て受理のお知らせ ********************(1)******************** 1. 緊急特集!!!(1)「北朝鮮」報道を問う 在日朝鮮人へのハラスメントとメディア (板垣竜太) 日朝首脳会談前の報道の状況は、さながら小泉首相が人質解放交渉にでも行く かのような雰囲気だった。これまで日朝国交正常化を阻んでいた最大の障壁は過 去に日本がおこなったことに対する責任問題だったのだが、そのことはもはや解 決済みとでもいわんばかりに、メディアの焦点は日本人拉致問題に向けられてい た。近い過去に起きた北朝鮮による人権侵害を「国民運動」化することで、遠い 過去に起きた日本による人権侵害を打ち消そうとしているとすら思われた。 会談前、メディアは「北朝鮮」特集をしばしば組んだ。ある朝のテレビ番組で、 輸入物のアサリの50%が北朝鮮産だというデータが流れた瞬間、出演者は「ちゃ んと冷凍されてるんですか?」「知らないうちに食べてたんだ..」と何かおか しなものでも食べさせられたかのような反応を示した。繰り返し流される「不審 船」「テポドン」「マスゲーム」のイメージとともに、「北朝鮮」と名指された ものを一緒くたに「不審」な目でみるまなざしが、形成されつつあったのである。 一方で「国民運動」化した日本人拉致問題と、他方で「不審」なまなざしで表象さ れた「北朝鮮」、これが首脳会談後に在日朝鮮人への嫌がらせを引き起こした土壌で ある。拉致議連は、9月17日に全国生中継された記者会見において、悲嘆にくれる被 害者家族の声に混ぜ込むかたちで、「最大限の制裁措置」というメッセージをたれ流 した。これはまさに報復の論理であり、こうした論理が会談後の嫌がらせをはじめと した反動に拍車をかけた。しかしそれは、「極端な時代」(ホブズボーム)としての20 世紀に国家主権によって人権を踏みにじられた無数の被害者たちに対する冒涜でしか ない。 以下、新聞報道を通じて把握できたものに限って、在日朝鮮人への嫌がらせの 実態を整理した。朝鮮学校や朝鮮総連が主たる対象となっており、予想以上に広 範囲にわたっている。電話・掲示板・メール等による嫌がらせだけでなく、朝鮮 学校の児童・生徒への直接の嫌がらせも起きている。これは飽くまでも表面化し たものだけであり、水面下ではまだ多くの嫌がらせが発生しているだろう(メキ キネットの事務局にも、会談後におかしなメールが舞い込んでいる)。これは司 法的な意味では報道被害とはよべないだろうが、少しとりあげた事例からも、メ ディアの表象の仕方に責任の一端があることは明らかである。歴史的な視野も批 判的な検証も欠いたイメージを商品として大量流通させるマスメディアの責任は 重大だといわざるを得ない。 ------------------------------------------------------------------------ 【大阪】 9月17日 夕方以降、市内の朝鮮初級学校に「生徒を殺すぞ」という強迫電話。他の複数 の朝鮮学校にも同様の電話あり。(産9/17) 朝鮮総連大阪本部に、「朝鮮に帰れ」といった内容の嫌がらせ電話がひっきり なしにかかる。(産9/17) 9月18日 朝、朝鮮初中級学校に登校中の中1の女子生徒が、中年女性に無言で背中を突 き飛ばされた。同市内の別の学校ではチマチョゴリで自転車登校していた中3女 子が、男性から石を投げられた。 (朝9/18) 夜、WBCスーパーフライ級王者で在日朝鮮人三世の徳山昌守選手の公式ホーム ページにある「応援掲示板」が、閉鎖された。「北へ帰れ」など誹謗中傷する内 容の書き込みが相次いだため。所属する金沢ジムにも嫌がらせ電話が相次いだ。 徳山選手は「自分のことよりも、朝鮮学校に通う子どもたちに嫌がらせが相次い でいるのが心配だ」と話したという(読9/19、毎9/19、朝9/20、日スポ9/20) 9月19日 朝、生野区の路上で、中級学校2年の女子生徒が、高校生風の男5人から暴言 を吐かれ、たばこの箱を投げつけられた。 (毎9/20) 【東京】 9月17日 夜以降、朝鮮総連中央本部に「北朝鮮に帰れ」「殺すぞ」といった電話が数十 件以上相次いだ。中央本部は、 「児童・生徒への被害が心配」として、朝鮮総 連系の学校に、チマチョゴリ以外の服での登校を促す異例の通知を出した。(時 9/18) また夕方から夜にかけて、朝鮮総連中央本部周辺を走り回る右翼団体の街宣車 があったため、警視庁は中央本部周辺に機動隊を配置し、巡回を強化した。 (朝9/19) 9月18日 東京朝鮮中高級学校に「おまえらぶっ殺してやる」と電話。 (産9/18) 福田康夫官房長官は記者会見で、脅迫や嫌がらせについて「断じて認めること はできない。日本国内で日本の法律に従って生活する善良な市民に対する圧迫だ」 と批判。 (時9/18) 9月20日 福田康夫官房長官が、村井仁国家公安委員長と会い、「犯罪行為が起こること がないように十分注意してほしい」と、安全対策を徹底するよう指示。(時9/20) 森山法相が、全国の法務局、地方法務局に対し、人権相談への対応強化や人権 啓発への積極的な取り組みを指示。(毎9/20) 【新潟】 9月17日 会談以降、新潟朝鮮初中級学校に「数カ月以内に子供たちに害を及ぼす」といっ た嫌がらせ電話が相次いだ。これを受けて18日を臨時休校にし、19日以降は チマチョゴリを当面着用しないことを決定。(新潟9/18、毎9/18) 【神奈川】 9月17日 夕方以降、神奈川朝鮮初中級学校に、「朝鮮に帰れ」「拉致問題をどうしてく れる」といった約30本の嫌がらせ電話。 放課後の部活動を中止して集団下校を 行い、教諭が駅まで同伴した。(毎9/18、9/19) 朝鮮総連県本部に、「朝鮮学園を爆破するぞ」といった強迫電話がかかる。 ( 神9/19、毎9/19) 9月18日 朝、神奈川朝鮮初中高級学校では、女子児童が登校中のバスの中で、男性に 「この朝鮮の学生が」となじられ足をけられた。同校には「朝鮮人は国に帰れ」 「危害を加えてやるぞ」など嫌がらせ電話が約30件あった。(神9/19、産9/18) 川崎の南部朝鮮初級学校、川崎朝鮮初中級学校では、警察署員が警備にあたっ た。(毎9/19) 横須賀朝鮮幼稚園は臨時休園とした。 (毎9/19) 【愛知】 9月17日 愛知中高級学校では、帰宅途中の女子生徒が一宮市駅で見知らぬ男にスカート の裾を引っ張られ「朝鮮人か」と罵声を浴びせられた。別の女子生徒4名も名古 屋市内の駅で暴言を吐かれた。いずれもチマチョゴリ姿だった。 (毎9/18) 9月18日 朝、在日朝鮮人愛知県商工会会館に、「めぐみさんを帰せ」などと書かれたス プレーの落書きが発見される。朝10時までに、朝鮮総連愛知県本部には「学校は どこにある。カッターで切りつけてやる」といった電話が16件、メールが40本寄 せられる。(毎9/18、朝9/18) 【兵庫】 神戸朝鮮高級学校では、「北朝鮮に帰れ」などと言って一方的に電話を切られ る被害が数件。 (毎9/19) 【仙台】 9月17日 会談直後から、東北朝鮮初中高級学校のホームページの掲示板に、「朝鮮人帰 れ」「拉致するぞ」といった書き込みが相次ぎ、3頁に渡って「死ね」と連記し たものもあった。(河北9/18、産9/18) 9月18日 朝、東北朝鮮初中高級学校に「殺すぞ」という電話が寄せられたため、同校は 当面、児童・生徒に集団登下校するよう指導した。(河北9/18) 【埼玉】 9月17日 埼玉朝鮮初中級学校と埼玉朝鮮幼稚園では集団下校を実施。 (毎9/19) さいたま市内の焼肉屋に「店をつぶしてやる」と強迫電話。 (毎9/19) 【広島】 広島朝鮮初中高級学校では、ホームページの掲示板に「朝鮮へ帰れ」「お前ら は鬼畜だ」といった書き込みが12件あったほか、金正日総書記の名で「拉致した」 と画面いっぱいにつづった悪質なメールも送られた。 (中国9/19) 朝鮮総連広島県本部にも脅迫まがいの電話。18日正午前には約10分間、政治結 社の街宣車が誹謗の演説。 (中国9/19) 【奈良】 9月17日 夜、県警に男の声で「朝鮮会館を爆破する」という内容の110番電話があっ た。県警から朝鮮総連県本部に連絡し、交番の警察官2人が立ち会って調査した が異状は無かった。総連県本部は奈良朝鮮初中級学校に集団登下校を指示した。 (毎9/19) 【栃木】 9月17日 夜以降、朝鮮総連栃木県本部に嫌がらせ電話が相次ぐ。 (毎9/18) 【長野】 9月18日 松本の長野朝鮮初中級学校では、前日から嫌がらせ電話が相次いだため、登校 時に子どもを父母や朝鮮総連職員が保護。 (信毎9/18) 【山口】 9月17日 朝鮮総連山口県本部に、北朝鮮を「テロ国家」などと非難する抗議電話が数十 回。 (朝9/18) ********************(2)******************** 2. 第8回口頭弁論ひとこと傍聴記録 9月4日の口頭弁論では、7月10日の第7回口頭弁論後の裁判進行協議で証拠採用が 決まった原告側申請の2本のビデオ――NHKの改ざん番組の録画と、ビデオ塾制作 『沈黙の歴史を破って「女性国際戦犯法廷」の記録』――が上映されました。 ざっと数えたところ約80名が傍聴席に。弁護団はNHK側10名、VAWW側は一人欠席でし た。まず原告側準備書面と被告側準備書面、それから双方の証拠が交わされました。 VAWW側の準備書面は、今回番組の内容にまで踏み込んで、どのように問題なのかを具 体的な次元で主張しました。(1)ビデオ塾版をベースに、(2)12月27日台本、(3)放映 台本の3つを対照させる表を提出し、(2)には(1)と重なるシーンが10場面あるのに、 (3)では1場面しかなかった、という立証を行いました。 そしてビデオの上映。上映順序をめぐって、原告・被告双方から対立する意見が出さ れたそうですが、最終的に裁判官の判断により、「ビデオ塾→NHK改ざん番組録画」 の順序になりました。モニターは思っていたよりもたくさんあって、裁判官3名と原 告席・被告席には液晶モニターがそれぞれ1台ずつ合計5台、さらに傍聴席側に向け られたブラウン管のモニターが2台という構成でした。裁判官は割に熱心に見ていた と思います(裁判長は居眠りしていたようにも見えたけど目が小さいからよく分から ず)。「法廷」は現実の法廷批判でもあったわけですから、熱心に見てもらわないと 困ります。NHK側は大変態度が悪かった。 ただ、ETVの頭出しができておらず、最初に第1夜の場面が流れるというハプニング がありました。しかしこれも後から考えてみれば、結果として第2夜の冒頭で第1夜 の冒頭シーンが使い回されたことが法廷内で立証されることになったわけです。 その後の説明会についても、一言報告。 ある下請けテレビ制作会社の元社員という方が、貴重な内部情報を紹介してください ま した。国会(2002年3月28日参議院総務委員会)でとりあげられたETV2001の放映時間に ついて、44分に満たなかったものが179本中5本あるという答弁だったが、実は残り4 本は「スポット」(番組予告等)を入れるためにあらかじめ短くしていたものだった、 という情報でした。このことでETVシリーズ「戦争をどう裁くか」第2夜の異常性 が浮かび上がったことになります。この板谷駿一(NHK専務理事)の答弁を読み直す と、規準放送時間外で番組を放映した例として、ETVの後に「ひるどき日本列島」を もってきてその「日常茶飯事」性を強調していますが、あの生中継番組を例に出すな んていうのはあまりに頓珍漢な答弁です。 それから最近耳にしたところでは、ETVは2002をもって終わるんだそうです。全く別 の番組が予定されているということで、わずかな良心すら風前の灯火に..。 次回は11月27日11時からです。みなさん、ぜひ傍聴にいらしてください! (メキキ事務局代筆) ********************(3)******************** 3. 2001年ETVシリーズ「戦争をどう裁くか」に関する 番組出演者によるBRO申立て受理のお知らせ 先回のメルマガ(8月28日号)では、NHKのETVシリーズ特集「戦争をどう裁 くか」第二夜「問われる戦時性暴力」(2001年1月30日放映)に加えられた改変に関 して、番組出演者が「BRO(放送と人権等権利に関する委員会機構)」に行った申 立てを行い、その件について、審理入りするかどうかの検討が、8月20日の委員会 (BRC)でおこなわれたこと、そのさい、委員のなかから意見がいろいろと出たた めに結論が出ず、次回の委員会(9月17日)に結論を持ち越すことになった、とい うことをお伝えしました。 いろいろとご心配をおかけしてきましたが、今回は、17日の委員会で申立てが受理さ れたという、とりあえず、うれしいお知らせです。申立て受理については、朝日新聞 と東京新聞に掲載されました。今後、NHKからの答弁があり、それに対する反論 や、さらなる立証を行うことになります。以下、申立て人本人からの一言。「今まで この件に心を寄せてくださってきた皆さん、何かに役立つようなよい成果が少しでも 得られますよう、これからもどうぞ見守っていてください。」 メキキ・ネットでは、今日のメディア規制に対抗するためにも、BROの審理の透明 性の確保が大切だと考えています。委員会の傍聴希望を求めたり、運用規則にのっ とって詳しい議事録を請求するということを求めてゆきたいと考えています。 ****************************************************************** [編集後記] 先回は、愛媛の熱い夏の闘いをお伝えしました。今回と次回は、金・小泉会談をめ ぐって加熱している北朝鮮関連報道ウォッチの《緊急特集!!!》第一弾です。 ここに掲載した板垣氏の記事は、9月21日づけで「反日の君ネット」の投稿され、日 本人、日本社会による朝鮮人への暴力とハラスメントの報道にいち早く皆の注意を喚 起したものです。メキキ・メルマガ向けに少し手を加えてくださいました。 ただちに嫌がらせをやめさせましょう!他人事ではありません。伝えられることなく 闇に葬り去られている数々の暴力にも、想像を逞しくしましょう。北朝鮮をステレオ タイプ化し、反・北朝鮮、反朝鮮人差別を助長するようなメディアの報道や語り口 に、五感を研ぎ澄ませて対抗しましょう。 先回、愛媛の報告をしてくださった大内裕和さんが書かれていたように、ジャーナリ ストの良心がよりよく反映されるメディア環境をつくる責任は、メディアによる報道 を受け取る側ひとりひとりが負っているものでもあります。そのためには、私たちが 批判的検証をもとめる読者であること、メディアに批判的な歴史認識をたえず求めて 行くことが欠かせません。メディア報道に歴史的視野と批判的検証を! 次号では、現在、北京におられる歴史学者の長志津絵さんからのメディア・ウォッチ をお届します。お楽しみに! (vol.8編集担当=メキキ・ネット事務局) ****************************************************************** ■みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています! (メキキ・ネット事務局一同) ◇─────────────────────────────────◇ │発行= 2002年8月25日 │ │発行所=メキキ・ネット事務局 │ │ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html │ │ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp │ │ FAX: 020-4666-7325 │ ◇─────────────────────────────────◇ |