米山リサ
凄まじい一年が明けました。VAWW−NETジャパンが主催した2000年「女性国際戦犯法廷」をあつかったNHK番組、ETV2001「戦争をどう裁くか」第二夜は、当初の企画と異なる改ざん番組として放映されました。その背後に、与党政治家の圧力があったという事実が、今回、4年もの年月を経て明らかになりました。このことを報道機関の方々にたいして明らかにしてくださった、NHKプロデューサー長井暁さんの志を無駄にしないために、その声にこだましようではありませんか。
長井プロデューサーは、政権の座にある右翼系政治家の脅しに屈したNHK幹部によって、現場の制作者たちが番組制作論とはまったく異なる変更を強いられ、段階をおって最終的な大改変へとつながったことを、当時現場を掌握していたデスクの証言としてはっきりと述べられました。番組が、本来の意図を大きくふみはずし、VAWW−NETジャパンをはじめとする番組協力者たちの期待を裏切るものとなって放送された理由と経緯が明らかにされたのです。このことは、NHK裁判にとって大きな意味をもつことになるでしょう。
当番組は、世界との平和と共生を模索する21世紀の日本社会の行く末を根底から左右する問題をあつかうものでした。まさに公共放送が扱うにふさわしいテーマでした。その番組が、日ごろから極右的なイデオロギーをふりかざし、歴史を修正し、人々の恐怖と憎しみをあおることに終始している与党政治家の圧力と、それに屈した一部のNHK幹部の手によって、改ざんされてしまったのです。その結果、番組は、日本軍従軍慰安婦制度の歴史と、これを国際法のグローバル・スタンダードの見地から「人道に対する罪」として裁いた「女性国際戦犯法廷」について、極めて歪んだ知識と誤った理解を与え、告発する女性たちを侮辱し深く傷つける内容となって放送されてしまいました。この事実が明らかになった以上、NHKを脅迫した政治家およびそれに追随したNHK幹部は、公共放送としての責任を放棄してしまったことを視聴者にたいして謝罪するとともに、法廷に参加した女性たちにたいして、彼女たちを貶めるような番組にことわりもなくその姿や声を使ったことを、すみやかに、深く、謝罪すべきです。
この問題についてはこれまでにも、様々な質問、抗議、要望、批判が、NHKに対して寄せられてきました。しかし、NHKからの誠意ある説明は、まだ一度もなされていません。NHKによる黙殺は、排外的で差別的なナショナリズムによるメディアのさらなる歪曲をゆるしてしまうことに他なりません。長井プロデューサーの会見は、閉塞し批判力を失う日本のメディア界に、鋭い警鐘を打ち鳴らすものです。 一人でできることには、限りがあります。しかし、閉ざされた組織の重い扉を押し開き、新しい関係を培うさきがけとなるのは、やはり人間の一人一人でしかありえません。長井プロデューサーの決意と志に、私たちそれぞれのできるやり方で応えてゆこうではありませんか。
新しい年が、もっともよい意味で波乱に満ちた一年となりますように。
カリフォルニア州サンディエゴから。
2005年1月16日