国賠ネットワーク 第22回 交流集会
―― 布川事件の冤罪再審から学ぶもの ――


■ 国賠ネットワーク
さまざまな国賠裁判を結ぶネットワークは1989年に作られました。国や自治体の公務員から不法な被害を受けた人々が国家賠償法1条に基づいて、その責任を問い、謝罪や賠償を求める訴訟です。無実の罪で逮捕・拘留・起訴された冤罪被害者を中心に、国賠裁判を闘う原告や支援グループの、緩やかな連携と支援交流をめざしたネットワークです。

■ 交流集会
年に一度、さまざまな国賠の当事者、支援者が集まって、互いに報告し、語り合い、智恵を共有する全国的な交流集会を開いています。今年で22回目となります。富山(氷見)冤罪国賠、沖田痴漢冤罪国賠、たちかぜ国賠、バレンタイン国賠、麻生邸国賠、その他新たな国賠裁判の報告もあります。

■ 講 演
今回お話し頂くのは、いま再審裁判を闘っている布川事件の元被告・桜井昌司さん。でっち上げが明らかとなった足利事件、厚労省の村木厚子さんの証拠改ざん事件と同様に、桜井さん杉山さんの布川事件も、この3月16日の再審判決で無罪が出される予定です。ここに至るまでの43年間、警察・検察はさまざまな無罪証拠を隠し、社会的正義と真実を歪めてきました。桜井さんの豊かでユニークなお話しと共に、証拠の発見や開示に向けた取組みなど、その闘いから学びたいと思います。

■ 2011年 2月19日(土) 午後 1:45〜4:45

■ 渋谷勤労福祉会館 第一洋室 渋谷区神南1-19-8  (03) 3462-2511

■ 講演 : 布川再審から冤罪の根絶へ  桜井昌司さん

■ 各国賠裁判の現状報告

■ 国賠ネットワーク大賞、最悪賞の決定

■ 参加費 500円 (資料・茶菓子含)

■ 進行プログラム
総会                               進行 土屋 翼
13:15〜13:20 総会をもつ経過報告                    土屋 翼
13:20〜13:45 会則討議・承認                        磯部 忠
     レジュメ、国賠ネットワーク栞など受付で配布 
  
交流会                            司会 大河内
13:45〜13:55 (10) この一年間の報告               土屋 翼
13:55〜14:40 (45) 講演/布川再審から冤罪の根絶へ
             講師/桜井昌司さん(布川事件再審)
14:40〜15:20 (40) 質疑                   司会  井上 清志 
15:20〜15:25 (5) 全面可視化・全証拠開示・個人通報制度  磯部 忠     
15:25〜15:40 (15)  休憩 署名、書籍、資料販売 、リサイクル品販売など        
15;40〜16;30 各国賠からの報告
河内国賠、沖田痴漢冤罪国賠、バレンタイン国賠、たちかぜ国賠、富山冤罪国賠、麻生邸リアリテイツアー国賠、
            大河原国賠 築地署公妨国賠、消防署パワハラ国賠、水俣国賠、
            星野獄中処遇国賠(予定)、よど号国賠(予定)
16;30〜16:40  国賠ネットワーク大賞、最悪賞の選考 ・・・・ 進行 松永 優
16:40〜16:45  閉会挨拶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・司会 大河内
16;45〜17:00 後片付け、二次会案内(寅次郎) 
                                

■ 講演報告
講演/布川再審から冤罪の根絶へ
講師/桜井昌司さん(布川事件再審)報告/織田和夫
(国賠ネットワーク)

■ 集会報告
いつもそうだが、一番寒い時期に、国賠ネットの一番熱い交流集会が開かれる。講演が布川再審の桜井さんということもあってか、テレビカメラも入り、初めての人も多数参加し、70人ほどになった。渋谷の勤労福祉会館、それも大きな会議室を確保したことは正解であったし、用意していた茶菓が足りないというハプニングも起きた。総合司会は大河内さん。集会は冒頭、初めての「総会」から始まった。

□ 国賠ネットワーク 第1回総会
国賠ネットワークは、国家賠償請求訴訟を闘っている9団体が渋谷区勤労福祉会館(大向区民会館だったかも知れない)に集まって、1990年2月17日にスタートした。すでに21年間を経過し、今年は第22回交流集会を同じ渋谷勤福で2月19日に開催した。
今年は交流集会に先だって、初めての総会を開き、会則を決めた。20年余の活動を経て、今更ながらの感があるが、会則があった方が何かと便利という期待もある。近頃は郵便振替口座や銀行口座の開設に、会則が求められたりする。決算報告がキチンとされていないと、損害賠償を訴える主体になれないらしいなどの噂もある。2年前に提案された会則案から定例会や合宿で議論し、会則案がやっとまとめられた。
総会の進行は土屋さん、会則案の提案説明は磯部さんが行った。準備の定例会やメーリングリストを使っ
た周知もあって、議論はほとんどなかった。ただ一点、
第9条の除名について、「もう少し厳密に明文化すべき」、「むしろ、除名の規定は無い方が良い」、「提案のように緩やかに書かれていれば良い、現実に必要になった時に定例会で決めれば良い」、などの意見が交わされ、挙手により原案通りと決まった。
来年も交流集会に先立つ30分ぐらいで総会を開き、活動に関わる基本的な事項や世話人の選出が行われることになった。
総会は円滑な進行で終わり、交流集会は定刻に開始した。ところが一つ、やり残しがあった。今年の世話人を選出していない。前夜まで、下打ち合わせのメールは流れながら、世話人選出の準備が十分でなかった。
最後に、次会の定例会(4月7日18:30〜、ルノアール神田南口駅前店)で、世話人を決めたいと提案をすることをすっかり忘れてしまった。提案者が高齢のためのミスで、たいへん申し訳ありません。不慣れな第1回総会の珍事とお許しください。
   
□ ネットワークこの1年
交流集会のプログラムの最初は、土屋さんから「この1年の報告」がなされた。マスコミで裁判員裁判の話題が多く取り上げられ、足利事件や大阪の特捜による村木さんの証拠でっち上げなどがあり、冤罪に対する社会的な関心が高まっている。若い人たちの国賠も幾つか参加が増えてきたが、ネットのメンバーの老齢化もすすんで、亡くなる方も出てきている。その世代交代をめざして「世話人」という複数合議体制でやっていきたい。すすんで参加してほしい。
講演「布川再審から冤罪の根絶を」
桜井さんの講演の報告は6,7ページに抄録を掲載。

□ 冤罪国賠を闘う原告と支援者たち
■自衛官自殺訴訟「たちかぜ」国賠 原告Iさん
 5年近くかかったが1月26日に判決があった。争った部分はほとんど認められながら、息子の自殺の予見可能性は認定されず、不当判決。国側は控訴しなかったが、こちらも付帯控訴をした。2年近く取材されたものはNNNドキュメントとして放送され、放送後若い人や弁護士や自衛隊員などから多くの反応があって勇気づけられた。現在では浜松や札幌や前橋でも提訴されているし、仙台でも提訴すると聞いている。こういった裁判が増え、少しでもこういった事が無くなることを願っている。
■富山(氷見)冤罪国賠を支える会事務局井上さん 
 原告の柳原さんは富山から東京に引っ越しがんばっています。裁判の前半は証拠開示の攻防を中心にやり、全証拠の開示を求めた。裁判所が、捜査記録、供述調書等の開示を決めて出てきたものの、すべてがマスキングされて真っ黒だった。捜査指揮簿は情報開示条例を用いて開示を見たが、60ページのものがやはりマスキングで真っ黒だった。柳原さんの公判中に第三事件が起きている。これは手口が全く同じなのだが、捜査官も同じだったので、県警は知っていて隠ぺいしたのではないかと思われる。これは国賠訴訟の中で明らかになったので、大きな収穫だと思っている。
柳原浩さん:黒く塗られた資料ではないものを、どう出
させるかということを考えている。
■麻生邸リアリティ・ツアー事件国賠 原告Aさん
 2008年頃貧困問題が顕在化し、その根源は貧困者の問題ではなく金持ちの問題だという視点を持ちリアリティーを取り戻そうということで、62億円とも言われている麻生の家を見に行った。40人ほどで張りぼて人形などを仕立て、お祭り気分でスタートした。渋谷・東急本店に向かう途中で、先頭を歩いていた園原告に公安が抱き着いて無届デモということで公安条例違反で逮捕した。近くでぼうっとしていたオレと渡辺さんも公務執行妨害で、計3人が逮捕された。
 マスコミも大勢いたが、警察発表を鵜呑みにし体当たりしたといった報道もあったが、仲間が撮ったビデオからそんなことがまったくなかったことがわかる。2010年2月26日に国賠を提訴した。自分たちの裁判と同時に公安条例撤廃の活動も強めていきたい。
■築地署公妨国賠事件 原告二本松さん
 築地は市場としても観光地としても有名で、買い出し客のために仕入れの車なら5時から12時まで路上駐車が黙認されていた。女性の警察官が、エンジンをかけ運転席に乗ってラジオを聴いていた妻に無視されたと車の前に立ちはだかった。私が「どいてくれますか?」と言ったところ、どかなかったので業務妨害ではないかと主張した。私が運転をしていないので、道交法にも問えず、突き飛ばされた、ドアで手首を挟んだ、車で逃走しようとした、という主張をした。結果的に起訴すべきものもなく、ケガも自傷だということになり19日の勾留が解けたが、起訴しないから(警官の)カバンに触れたという調書にサインしろと言われた。しなければ起訴すると強要されサインしてしまった。
 公判は8回を数えた。証拠資料の全面開示を求めても原告プライバシー侵害を理由に開示しないので、東京地裁合議係りは文書送付嘱託を決定した。東京地検は1月7日に現場見分調書を出してきた。逮捕した時に色々な角度から車の写真を撮ったのだが、それには多くの路上駐車車両が写っていたため出せなかったものと思われる。何もないのに不当逮捕勾留されたので、証拠を出させて、ちゃんと国賠で訴えていきたい。
■大河原国賠 支援者杉山さん
 群馬県警の裏金を告発したため、人事のいやがらせとでっちあげの公務執行妨害、後に懲戒免職となった事件で、懲戒免職の取り消しと冤罪被害の賠償請求をしている。証拠調べ、証人申請をやってきて、特に7月には検事正らの証人尋問をしたかったのだが叶えられず、すべてが却下され結審してしまった。この却下は、裁判所が真実を見たくないという意思かと思われる。 上毛新聞などのメディアの当初の間違った報道に対し、訂正要求あるいは損害賠償請求をしようということになったが、時効時期をすぎてしまった。そこで、新聞購読者が賠償請求を起こすことは可能ではないかと、準備を進めている。
■星野証拠開示・獄中処遇国賠 星野さん
 夫の星野文昭は本来再審無罪判決を勝ち取ってから国賠請求したかったのですが、ふたつの国賠を始めることになりました。誰もが人間らしい生き方をすることを大事にしています。1971年11月14日に渋谷の沖縄米軍基地反対に対するデモで機動隊がひとり死亡し無期懲役刑を受けた。
 マスコミはビデオを写し、それを警察が利用したが今それが見当らないと言っている。それは通用しないので3月に提訴予定です。昨年徳島刑務所で7人の友人面会者が拒否され、そのうちの一人は私で、結婚記念日だったからですが、弁護士面会が終わっているので弁護士面会を一般面会にカウントしたため認められないというものだった。これについても提訴予定です。
よど号国賠 救援連絡センター山中さん
 よど号事件は昨年が40年だった。当初9人の出国者がいたが今は4人と日本人妻など6人が残っている。順次帰国予定だったが、2002年日本人拉致事件容疑で逮捕状が3人に出た。そのでっちあげの逮捕容疑について国賠準備をしている。5月連休明けになると思う。いわゆる逮捕状発布と刑事手続きに対しそれを取り消すということを含めて国賠を行うことについては否定的な意見もあるが、なんとか提訴にもっていきたいと考えている。 3回にわたる訪朝も成果をあげてきている。
■横浜事件 第三次再審請求人木村さん
 夫の木村亨は何度か笹下大学を出たといっていた。桜井さんの講演を聴いていて桜井さんも笹下大学を出た人だと思った。笹下というのは横浜拘置所のあったところです。木村はそこで色々なことを学んだと言っていた。 横浜事件の国賠はしたいと思っているて、何人かの方々と準備段階に入っている。桜井さんの明るさを学びたいと思う。
■バレンタイン国賠 バレンタインさん、支援の磯部さん
 上告の印紙代を支援会で皆さんに呼びかけ協力してくれた人にお礼をいいたい。 最高裁に上告しているが、何もやることがないので要請行動をしている。その中で、高裁段階の石山鑑定が間違っているということを主張した。この人の鑑定で泣いている人が何人もいるのでメディアも関心を持ってもらいたい。最高裁で正義が実現することを期待しています。

□ 国賠ネットワーク大賞・最悪賞の選考
集会の最後は、恒例の「大賞」、「最悪賞」の選考である。会員からノミネートされていたのは、大賞候補は、数々の冤罪スクープをした朝日新聞記者の板橋洋佳さん。もう一人は、郵便不正事件で無罪となり、国賠を起こした村木厚子さんと弁護団。
最悪賞候補は、村木さんをでっち上げた大阪の特捜部の前田検事と大林検事総長。もう一人は、大臣就任前には死刑に反対していた前法務大臣の千葉景子さん。会場から意見が述べられ、板橋記者は仕事として取材したことで新聞社からも賞をもらっている、市民運動が大賞を与えるべきではない、など議論が沸騰。時間も押し迫ったので、両賞ともに二人の候補と該当者なし、の三択から参加者の挙手で採決がなされた。 
その結果、大賞は板橋記者が多数で決定。会場からの提案で村木さんには「特別賞」が与えられた。最悪賞は大多数で千葉恵子さんの受賞と決まった。
こうして、熱気は二次会まで持ち越されていった。

                                 【 事務局まとめ 】


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