2002.3.2 第13回 国賠ネット交流会
−いま、「冤罪国賠」の崩壊を止められるか!−

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■■ 2002年3月2日(土) 14〜17時 日本キリスト教会館 4F会議室


■■ 呼びかけ文
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 いま国賠は、危機に直面している。この一年、「ハンセン病国賠」、「天安門事件・林国賠」、「栃木天皇警備人権侵害国賠」などは勝利したものの、国家権力のでっち上げ・刑事無罪を問う国賠−「冤罪国賠」はそのほとんどを敗訴している。昨年4月高裁判決に続き、暮れの最高裁上告棄却の「総監公舎」、死刑から再審無罪の「松山事件」、「土田・日石・ピース缶」国賠などの<実質敗訴>がナダレをうって起き社会的な不安や怯えといった閉塞感が、保守・保身的な秩序維持へとベクトルを動かしているのだろう。一連の「冤罪国賠総崩れ」は、この機を利用しての国・最高裁の策謀に思えて仕方がない。
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 国賠ネットワークに繋がる冤罪国賠の希望の星は、事実上、この3月13日に高裁判決をむかえる「遠藤国賠」だけになってしまった。遠藤国賠は一審で負けての控訴審、しかも原告側の証人申請をことごとく却下しての判決指定だけに、今度の判決に危機感を強めている。これら冤罪国賠の連敗に歯止めがかけられるかどうか、それは国賠ネットとしての正念場でもある。昨年末からの冤罪国賠の敗因を冷静に分析するとともに、今後の国賠ネットの貴重な財産として共有化することが、この交流会のテーマとなるだろう。
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 最高裁での自判無罪の遠藤国賠は、裁判官までも「被告」とするユニークで困難な国賠を闘っている。当初、マスコミをも賑わせた大弁護団での闘いであったが、このところ社会的にも支援の沈滞ムードはいなめない。3・13の判決を前に、再度、遠藤国賠を社会的にアピールしていくために、今回の交流会での講演を代理人である阿部泰雄弁護士にお願いした。
 ここ一番、国賠の希望と、みんなの元気を出すためにも、3月2日(土)交流会には全員が参加ください。

第13回 国賠ネットワーク 交流会
    ■ 2002年3月2日(土)
    ■ P.M.14:00−17:00
    ■ 日本キリスト教会館(3202-0544)
    ■ 講演:阿部泰雄弁護士      
    ■ 報告:冤罪国賠の原告と支援
    ■ 発言:国賠を闘う人たち
    ■ 国賠ネット「大賞」「最悪賞」決定

■■ 阿部泰雄さん紹介
1974年、仙台弁護士会に弁護士登録。遠藤事件の弁護をして25年以上になる。現在、遠藤国賠の中心的弁護士。松山事件再審弁護団・同事件国賠代理人団に参加。遠藤事件と類似のひき逃げ冤罪事件2件、盗品等有償譲受け罪の事件、放火冤罪事件など都合7件の刑事事件で無罪判決を得る。  昨年1月より、「仙台 筋弛緩剤点滴事件」の弁護団長。 [遠藤国賠事務局:寅次郎]


■■ 交流集会 資料
 3/2の集会資料を通行人乙さんがスキャナーで取り込んで、http://mallkun.to/tuukouninotu/13kouryu/000menu.htmに載せています。参加できなかった方は参考にご覧下さい。


■■ 国賠ネットワーク、この1年の動き (2001.2〜2002.2)準備中


■■ 講演:  

「 冤罪の構造と国家賠償 」    弁護士  阿 部 泰 雄


■■ 第13回 国賠ネットワーク交流集会報告 (報告 井上清志)

 2002年3月2日、日本キリスト教会館にて第13回国賠ネットワーク交流集会が開催された。早いもので今年は13回目、集会の副題は"いま、冤罪国賠の崩壊を止められか"。この1年間、土日P国賠高裁判決、総監公舎国賠最高裁判決があった。両者とも一部勝訴ではあるが実質敗訴。副題は、なんとかこの現状を打破していきたいという思いを込めたものである。 

■あいさつ
 集会は事務局の磯部氏(旧松永国賠)の司会によって進められた。まず、主催者を代表して土屋氏があいさつ。「第13回は14年目で平成と同じ14年となるが、国賠はあいかわらず苦しい状況が続いている。勝ち組、負け組からいえば5分5分。但し、一部勝訴を勝ち組にしている問題はあるが。権力側からみると国賠法はうまく機能しているように思うかもしれないが、われわれからみれば全く機能していない。かって天覧国賠、原宿Xデー国賠のひとたちが終わってからが大事という言い方をしていたが、様々な事情で参加していないのは残念である。全員が落っこちないで粘り強く、石にかじりつくつもりで頑張りましょう」と力強いあいさつがあった。
 続いて、司会よりこの一年の国賠ネットワークの活動報告があり土日P国賠の報告があった。
■土日P国賠
 土日P国賠原告の榎下氏は「高裁判決は堀原告にのみ100万円、取調室の出来事のみを判断したもので、争点となっていた別件逮捕、勾留などについては違法とはいえないとして全て棄却された。また原告の前林、江口さんについては全く触れていない。無罪確定までの13年間に審理されたきた争点については判決には全く反映されていない。原告4人は即上告した。一方、東京都も上告した」との報告があり、原告は今後も戦い抜くとの決意表明がなされた。
■「冤罪の構造と国家賠償」の講演
 次に阿部泰雄弁護士による「冤罪の構造と国家賠償」の講演に移った。阿部泰雄弁護士は遠藤国賠をはじめ仙台の守大助被告の弁護人でもある。また、同弁護士は4年前、国賠ネットワーク大賞を受賞している。講演内容については別掲の講演要約を読んでいただきたい。印象的だったのは守大助被告への取調べは過酷なものであったが、これまで代用監獄(留置場)が冤罪を生む温床として批判されてきたが、この事件では拘置所(仙台)での取調べの方が長時間(朝9時から午後11時、12時、午前1時)に及び過酷なものであった。新たな自白強要の手段として拘置所が利用されてているという実態が報告され、愕然とさせられた。
講演終了後、阿部弁護士との質疑応答に入った。
■質疑応答
いくつかの質問がなされたがそのなかで、「ゴビンナさんを無実を支える会」からの質問では、事実と証拠に迫る効果的な方法はないか、という切実な質問がなされたが、これに対しては、気の遠くなるような話しかもしれないがこれを知ったひとりひとりが語り部となって伝えていくしかないのではないか、短期的な特効薬はないし地道にやっていくしかない、との回答、参加者一同、運動の現実の厳しさを認識せざるを得なかった。
 休憩後、各国賠裁判からの報告があった。
■各国賠裁判
■「イラン人入管暴行死亡事件」国賠
 萱野弁護士が報告。「死んだのは入管職員の暴行が原因」との訴えに対して判決は「負傷は自損行為」として請求を棄却した。判決への厳しい批判が報告された。
■「総監公舎」国賠
 原告の福富氏が報告。土日P国賠(高裁判決)と並んで本集会のメイン。詳細はレジメ参考。国賠ネットのホームページでも詳細を読むことができる。長期間(刑事事件を含めて約30年)、要した裁判闘争に対して、何十万円かの賠償責任を認める裁判所は人権に差別を設けることを認めているに等しい。一連の冤罪国賠裁判判決には差別主義者の人権思想がにじみ出ている。最高裁判決は訴訟記録も読まずに理屈なしの上告棄却であった、と厳しく批判。今後これをどう突破していくか、様々な力を複合させて闘っていくしかない、との悲壮な決意表明があった。
■遠藤国賠
 支援の杉山氏が報告。無実の遠藤さんを有罪にした裁判官を訴えている裁判。検面調書の偽造にかかわった証人への尋問が行われたが、原告請求の筆跡鑑定は却下、十分な審理がなされないまま高裁判決へ。
判決は3月13日、午前9時30分、高裁809号法廷。
■御崎逮捕令状国賠
原告の御崎氏が報告。アリバイがあるにもかかわず15年間、指名手配され続けた。裁判では警視庁の目撃証人によるアリバイ破壊の実態が明らかになった。裁判官の令状発布行為の国賠上の違法性判断として職務行為基準説があるが、この基準説が問題である。
■アレフ「住民票」国賠
原告の広末氏が報告。現在、全国11の自治体に対して17件の国賠を提起、6件が勝訴している。国賠ネットの会員から、訴訟前「あなたたちはやられているのにおとなしすぎる。徹底的に闘うべきだ」との励ましがあった。また、松本サリン事件被害者の河野義行さんともお会いして励みとなった。今後は被害者への賠償もきちんとしながら国賠を闘っていきたい。
■通行人乙国賠
原告の田村氏は、本人訴訟で手探りで裁判を続けている、今後もがんばっていきたい、と報告。
■甲山事件
 大阪からかけつけたくれた石橋氏は、甲山裁判は終了(刑事裁判の無罪確定、国賠の撤回)したが、今後、何ができるか考えていきたい、と報告。
■東住吉冤罪事件
 関西からかけつけた藤沢氏が報告。大阪市内に住む夫婦が保険金目当てに子供を放火殺害したというデッチ上げ事件であるが、甲山裁判支援の経験を生かして闘っていきたい。
■ゴビダンさん冤罪事件
 無実のゴビンダさんを支える会の客野氏が報告。無罪判決後の勾留問題、背景にある外国人差別の問題など、を指摘。この間の裁判経過を厳しく批判。『神様、わたしはやっていない!』を出版、是非読んでいただきたい。
 以上、各国賠裁判の報告があった。現状はかなり厳しいものがあるが力を合わせて闘っていこう、との確認がなされた後、ネットワーク大賞、ネットワーク最悪賞の質疑討論に入った。

■ネットワーク大賞、ネットワーク最悪賞
 松永氏より事務局での選考経過(夏合宿、定例会で議論)の説明があり各賞の推薦があった。ネットワーク大賞は田川和幸弁護士が推薦された。昨年の12回ネットワーク交流集会の講演者である。弁護士として、人として、自らの信念とその姿勢についての評価である。ネットワーーク最悪賞は西村宏一判事(故人)が推薦された、この国の国賠裁判の足枷となっている職務行為基準説の布石を演出した最悪の判事としてどうしても贈りたいというもの。この二つの大賞・最悪賞は集会参加者の挙手と圧倒的拍手によって確認され、授与されることになった。賞は本人に賞状と記念品が授与され、後日(3月13日)記者会見(司法記者クラブ)で発表する。

■筆者より
 集会参加者は51名、久しぶりに50名を突破した。筆者はこの13回の全ての集会に参加しているが、参加者数の増減、参加者メンバーの変遷などについては結構気になるところ。参加者には国賠ネット早見表には名前はあるが、しばらく会ったことがない昔会員の姿も。また、参加者数も久しぶりに50人を突破、大変、意義ある集会でした。とりわけ、判決の近い遠藤国賠から多数の参加者がありました。感謝します。来年の交流会を目指しがんばりましょう。



■■ 交流集会で決定しました! 国賠ネット大賞・最悪賞

                           国賠ネットワーク 事務局

■「ネットワーク大賞・最悪賞」の候補には、「大賞」は昨年の交流集会で講演をいただいた田川和幸弁護士、「最悪賞」は西村宏一元判事が挙がっていました。3月2日の交流集会参加者で討議して、採決・決定(挙手多数決)をした結果、このお二人が受賞と決定しました。
交流集会に初めての参加者も多く、この2件の推薦資料が周知していなかったため、採決では60〜65%程度の賛同・決議となりました。 次回は、もっと中味のいある討論と採決を行いたいと思います。
◆受賞決定となった「大賞」「最悪賞」ともに、受賞の祝辞をご通知するとともに賞状を本人、または所属団体(裁判官の場合などは最高裁人事部)に送ります。また、3月13日にマスコミ(司法記者クラブ)に対して会見をして公表します。 国賠ネットワーク大賞は、これからますます面白くなりそうです。
■今後とも、この両賞の推薦はいつでも受け付けます。国賠に対する貢献、逆に酷いことをした〈人〉〈本〉〈モノ〉、何でも対象です。今からでも、どしどし大賞候補を、むかつく最悪賞候補を、事務局(或いは国賠ネットサイトの電子メール)までお送りください。大賞候補の選考は、ホームページ上での投票も行う予定です。

 【 賞 状 】  第1回 国賠ネットワーク最悪賞   西村 宏一 殿
 国などの人権侵害を裁く国家賠償請求裁判は、今や冬の時代どころか、氷河期とも言えるような状況です。冤罪で無罪となっても、国や裁判所の責任は違法行為としては裁かれることがないということを当然とする判決が目白押しとなっています。このように、国などの違法行為を免罪してしまう大きな根拠となっているのが、いわゆる「職務行為基準説」であることは明らかです。そして、この説の端緒を開いたのがあなたであることも周知の事実です。
 あなたが1963年に発表した「裁判官の職務活動と国家賠償」(判タ150号)における裁判官の過失に対し、その違法性要件を高度に限定するとの論旨は、その後「違法限定説」として拡大され、検察官の職務行為、ひいては公権力行使にあたるすべての公務員に対象を広げ、現在の「公務員の行為が市民の権利を侵害したとしても、それが職務行為の範囲内であるならば違法ではなく、従って賠償責任はない」とする「職務行為基準説」として定着し、「公権力無謬論=国家不賠償」を実現させる結果を招きました。そして、国賠訴訟を闘う多くの人々に多大な苦痛を与え続けています。このような国家賠償裁判史において最悪の貢献をなしたあなたに対し、本年度の国賠ネットワーク最悪賞を贈ります。
  

 【 賞 状 】  第5回 国賠ネットワーク大賞   田川 和幸  様
 今日の裁判所は、裁判官が司法の独立のもとでの法律適合性の判断権者、国の違法行為に対する人権の守り手という立場を忘れ、国策やマスコミなどの状況に迎合して人権をないがしろにするような判決を出して恥じないような有り様です。 しかし、あなたは、このような司法界の中にあって、長年にわたる弁護士として人権を守ってきたという立場を裁判官となられてからも貫き、裁判における人権の守り手として活躍されてきました。
 そして、昨年二月の国賠ネットワーク主催の第一二回交流集会における「裁判官任官経験からみた裁判所」という講演は、聞くものすべてに司法の未来も捨てたものではないとの多大な勇気と希望を与えてくださいました。
 また、こうしたあなたの穏やかで真摯な人権に対する熱い志は、国民に対する国などの違法行為を裁こうとする国家賠償請求裁判を闘うものに、裁判を闘っていくことの意義を改めて確信させるものでした。
 このように国賠訴訟を闘うものに対するあなたの貢献への感謝として本年度の国賠ネットワーク大賞を贈ります。

二〇〇二年三月十三日
国賠ネットワーク


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