2002年4月3日

盗聴法初適用に関する声明

盗聴法の廃止を求める署名実行委員会

 私たちは盗聴法(犯罪捜査のための通信傍受法と)の廃止を求める活動に取り組む市民団体・労働団体・ネットワーカーなどでつくる実行委員会です。私たちのもとに寄せられた「盗聴法の廃止を求める国会請願署名」は、すでに22万人を超えています。

盗聴法の無効性が改めて実証された

 盗聴法は憲法の保障する「通信の秘密」を侵すものであるとして、私たちは法制定前より反対してきましたが、今回の初適用によってその問題点が改めて明らかになりました。
 報道によれば今回、盗聴によって検挙されたのは末端の暴力団員またはその顧客であり、「組織の解明、首謀者の検挙のために盗聴捜査は必要不可欠」とした同法の主旨と反するものです。私たちが以前から指摘してきた通り、盗聴法は犯罪組織の壊滅には何ら役立つものではなく、今回の事態はその無効性を改めて実証するものです。

改悪へ向けたアリバイ的実績づくりを許さない

 規定では、「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるとき」に限り盗聴捜査ができるとされています。本当に他の方法では検挙が不可能であったのか、今回の適用は非常に疑問が残ります。同時に、警察・法務省は2年間にわたり、国会に対して「盗聴ゼロ」の報告を行ってきました。それ自体「緊急の課題」とする政府説明・法の主旨に反するものですが、なぜ今になってこのような末端取引の検挙に適用したのでしょうか。これまで同様の事件は多数発生しているはずであり、2年間の適用ゼロという事実との整合性を欠きます。
 2月7日の国家公安委員会では、運用しやすいよう要件を緩和する改正や令状に基づかない行政盗聴が検討されていたことが、すでに明らかになっています(別紙1)。上記の疑問と考え合わせると、今回の適用は、こうした政府の意向を受けた改悪のための実績づくりとしか考えようがありません。
 私たちは、このようなアリバイ的実績づくりを断じて許すことはできません。

すべての情報を公開し、国民の審判を仰ぐべき

 盗聴法は実行機関である警察に大きな裁量が委ねられています。しかしながら、盗聴法成立以降、溢れ出るように明るみに出た警察の不祥事は、警察に対する国民の信頼を完全に失墜させ、もはや自浄さえ望めないことは誰の目にも明らかです。本当に不正行為がなかったのか、警察が盗聴法施行のために導入した機器を使用して不正な盗聴をしていないのか、市民には検証する手段がありません。警察・法務省は、今回の令状適用について、立ち会い、携帯電話に対する盗聴技術の水準、記録の作成などすべての情報を公開するべきです。同時に、起訴の際には、その公判を傍聴できるよう今回適用した事件を特定できる情報を公開する必要もあります。
 いずれにせよ、盗聴法に対する疑問の声、廃止を求める声はいまだ大きく、成立当時、世論を二分した法律の初適用だけに、情報を公開して国民の判断を仰ぐことは必要不可欠だと考えます。

以上