現代企画室

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HIROSHI HARA : WALLPAPERS
空間概念と様相をめぐる〈写経〉の壁紙

原 広司/著
2014年10月刊行
定価3500円+税
B5並製・264頁
ISBN978-4-7738-1423-1 C0052

空間を構想する方法を追求しつづける建築家・原広司が、
ホメロス、ウパニシャッドからエリオット、宮沢賢治まで、
2500 年間にわたる重要なテキストに向きあい、
〈様相〉〈変わること〉を把握し、表現することを試みる――

市原湖畔美術館「原広司:WALLPAPERS」展(2014 年10 月4 日〜12 月28 日)公式図録

 原広司による〈写経〉とは、半世紀以上におよぶ空間についての思考の過程で原が影響を受けたテキストに向きあうトレーニングであり、自然と呼応して刻々と変化する仮想の建築のファサードの設計行為でもある。2013 年10 月から1 年間に撮影された主に夜明け、夕暮れの空模様などの写真をもとにつくった〈情景図式〉に、トレーシングペーパーを重ね合わせ、〈情景図式〉に合わせて文字の色を変えながらテキストを書写していくのが、〈写経〉の方法である。
 
本書には、原広司による空間概念探究の新たな試み《WALLPAPERS》展での〈写経〉作品の図版に加えて、〈写経〉の方法とその意味、取りあげたテキストについて解説した原広司の論文と、〈様相〉〈変わること〉に着目して構成した原の代表的な建築作品やプロジェクトの図版、さらに原の将来の著作『空間の文法』を準備する2 つの補論を収録。

さらに本書の中心となる〈写経〉図版と解説ページは、作品で実際に使われているトレーシングペーパー(小口袋とじ)を用いるなど、〈写経〉パート、建築図版パート、論説パートのそれぞれに個性をもたせた他に類を見ない造本により、新たなる空間構想の表現を試みる。

【本書の構成】

〔写経〕
ホメロス『オデュッセイア』、ウパニシャッド、アリストテレス『形而上学』『自然学』、法華経、ナーガールジュナ『中論』、『千夜一夜物語』、鴨長明『方丈記』、ライプニッツ『単子論』、『グリム童話集』、リーマン『幾何学の基礎をなす仮説について』、ソシュール『一般言語学講義』、ジョイス『ユリシーズ』、エリオット『荒地』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、大江健三郎『万延元年のフットボール』等々、古今東西におよぶ40 数冊の著作から選んだ重要なテキストの〈写経〉作品と、それぞれのテキストの意義と〈写経〉の意図するところを平明に説いた解説を収録。

〔建築作品〕
〈様相〉〈モードチェインジ〉〈トラヴァーシング〉〈記号場〉など、〈写経〉とも深く関わる原広司の空間概念を表現した建築作品写真。梅田スカイビル、JR 京都駅ビル、札幌ドーム、しもきた克雪ドーム、原邸などの住宅作品、ラテンアメリカの実験住宅、ライディングプロジェクトほか収録。

〔補論〕
絶えず変化する空間の体験を記述するための新たな概念〈微持続〉について解説する「マイクロデュレイション」と、1970 年代の集落調査で得られた〈世界風景〉の概念を深化させ、《WALLPAPERS》の方法と重ね合わせて空間を記述する方法を説いた「情景図式と記号場」の、展覧会を契機に書き下ろされた2 つの補論を収録。これらは、建築理論、空間理論を根底から刷新する原広司の将来の著作『空間の文法』の出発点であり、その重要な一部を成すことになる論文である。

【著者紹介】原 広司(ハラ ヒロシ)

建築家。1936年生まれ。1964年、東京大学大学院博士課程修了。1969 年、東京大学生産技術研究所助教授、1982 年より教授。1997 年、退官、同名誉教授。1970 年よりアトリエ・ファイ建築研究所と設計共同。1999 年より原広司+アトリエ・ファイ建築研究所所属。主な作品:田崎美術館(1986)、ヤマトインターナショナル(1986)、内子町立大瀬中学校(1992)、新梅田シティ(1993)、京都駅ビル(1997)、東京大学生産技術研究所(2001)、札幌ドーム(2001)など。主な著書:『建築に何が可能か』(学芸書林、1967)『空間〈機能から様相へ〉』(岩波現代文庫、2007)『集落への旅』(岩波新書、1987)『集落の教え100』(彰国社、1998)『Discrete City』(TOTO 出版、2004)『住居集合論Ⅰ・Ⅱ』(鹿島出版会、2006)『YET』(TOTO 出版、2009)など。

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