現代企画室

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黒澤明の十字架
戦争と円谷特撮と徴兵忌避

指田 文夫
2013年3月刊行
定価1900円+税
4-6並製・216頁
ISBN978-4-7738-1304-3 C0074

なぜ、黒澤明は、優れた作品を残し、また世界的
な評価を得られたのだろうか。理由は簡単である。
彼の映画の軌跡が、戦中、戦後の日本の歩みその
ものだったからだ。(本書より)

戦争に「行けなかった」黒澤明の孤独な闘い

1949 年の問題作『静かなる決闘』に黒澤明の贖罪意識を読みとった著者は、その正体を突きとめるべく、戦中・戦後の東宝の動き、当時の観客の反応や黒澤周辺の人たちの証言を丹念に調べていく。そこから浮かび上がったのは、戦争と東宝を巡る意外な事実の数々、戦後の黒澤が作品に込めたメッセージ、そして歴史のヴェールに包まれた「航空教育資料製作所」の姿だった。黒澤映画に新たな視点から光を当て、戦後映画史の読み替えを迫る探究の書。

【本書内容̶目次より】
1 悩める三船敏郎/ 2 『静かなる決闘』の謎/ 3 PCL入社まで/ 4 戦争に行かなかった黒澤明/ 5 召集延期の実態/ 6 東宝の複合性/ 7 日本映画各社の状況/ 8 戦意高揚映画は見られていたのか/ 9 軍需企業としての東宝(航空教育資料製作所秘話)/ 10 航空教育資料製作所の意義/ 11 戦時中の黒澤明/ 12 松崎啓次と黒澤明/ 13 『一番美しく』と徴兵延期/ 14 娯楽映画としての黒澤映画/ 15 八月一五日の黒澤明/ 16 『明日を創る人々』から分裂のなかで/ 17 『新日本文学』の黒澤明/ 18 作家主体の確立̶『わが青春に悔いなし』/19 騙されたことにも罪がある/ 20 「来なかったのは軍艦だけ」/ 21 最初の罪の告白̶『静かなる決闘』/ 22 『静かなる決闘』の失敗と小品『肖像』『醜聞』/ 23 『静かなる決闘』から『羅生門』へ/ 24 黒澤明と橋本忍/ 25 懺悔と許し̶『赤ひげ』/ 26 黒澤明の倫理性の行方(一九五〇年代以降の変遷)/ 27 『トラ・トラ・トラ!』の戦場/ 28 壮大なレクイエム̶『乱』『影武者』『夢』/ 29 なぜ告白できなかったのか/ 30 黒澤明の全体像/ 31 作品と実体験

【著者紹介】指田 文夫(さしだ ふみお)

大衆文化評論家。1948 年生。元横浜市職員、「ウォーマッド横浜」など企画。著書に『いじわる批評これでもかっ!』(晩成書房)

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