カテブ・ヤシーヌ(1929〜1989)

アルジェリア東北部のコンスタンティーヌ県に生まれる。父はイスラム教との弁護士、母はアラビア語の詩文に明るい教養人で、幼少期からイスラム教的環境のなかで母語による教育を受けた。高校生のとき、一九四五年五月八日に始まる「コンスタンティーヌの暴動」に参加し、投獄された。母親はそれを知って精神を病み、この悲劇が作家ヤシーヌの原体験として、のちの創作活動の源泉となる。やがてフランスに渡り、肉体労働をしながら文学活動を続ける。アルジェリア独立戦争のさなかの一九五六年、パリのスーユ社から『ネジュマ』(アラビア語で星の意)を出版。他民族の侵略にさらされてきた、失われた祖国を探求するという切実な物語を、象徴的な手法と豊かな詩的言語によって表現した。他に『星形の多角形』『報復の環』などの作品がある。


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