現代企画室

お問い合わせ
  • twitter
  • facebook

セレクトブック

「セレクトブック」のコーナーでは、現代企画室の本をひとつのテーマのもとにジャンルを横断してご紹介します。現在約400タイトルに及ぶ現代企画室の本をさまざまなテーマで結び合わせてみると、新たな世界が見えてくるかもしれません。

第11回 「1960年代・70年代の芸術――粟津潔・中原佑介の仕事から」

昨年来、現代企画室では、粟津潔さん、中原佑介さんといった先達たちの仕事をまとめる機会に恵まれてきました。(『粟津潔、マクリヒロゲル――金沢21世紀美術館コレクション・カタログ』「中原佑介美術批評選集」)

主に1960年代、70年代に多様な展開を示したふたりの仕事をふりかえると、当時の作品や文章がもつ現代的な意義にあらためて気づかされます。アーティストがジャンルの垣根を越えて協働し、社会の動きと密接なところで未知の世界を切り拓こうとしていた戦後の芸術が、70年代をさかいに分業化が進行したと見てとる中原さんは、「ジャンルの異種交配っていうのは、戦後派と言われる、焼け野原の荒野から出発した私たちだけのことであるかもしれない」と述べています(『粟津潔、マクリヒロゲル』収録の講演より)。そうすると「芸術」が自足し、そのなかでの分業が確立している現在の状況は、私たちの社会が達成した「安定」や「繁栄」の結果といえるのかもしれません。しかし、粟津さんが終生告発しつづけた人間の疎外や、中原さんが対峙した物質文明の蹉跌は、束の間の「繁栄」のうちにいかほど軽減したのでしょうか。

昨年の震災と原発事故をへて、21世紀初頭のいま、私たちはふたたび文明の「荒野」に立たされていることを自覚せずにはいられません。粟津さんと中原さんが課題としつづけた「環境」「物質」との関係を新たにむすびなおし、私たち自身の手でこれからの生活や表現を構想していくための数多くの手がかりが、以下に集めた1960年代・70年代の芸術をつぶさに見てきた美術家や批評家たちの言葉から得られるものと思います。

粟津潔、マクリヒロゲル

金沢21世紀美術館 コレクション・カタログ

粟津潔/著
金沢21世紀美術館/企画・編集

定価3000円+税

1960年代の代表選手、奇才・粟津潔の全貌をしめすコレクション・カタログ!戦後の焼け野原にひとりで立ち、そこから人並みはずれたパワーと好奇心でマクリヒロゲられた粟津潔の世界が発する熱は、21世紀の初頭、ふたたび「荒野」をさまよう私たちになにを伝えるだろうか。

詳細を見る

不思議を眼玉に入れて

粟津潔横断的デザインの原点

粟津潔/著

定価1800円+税

日本を代表するデザイナー粟津潔の少年時代の記憶。独学で学んだ粟津にとって、街が教師であり、眼にした不思議やさまざまな出会いが題材であった。

詳細を見る

デザイン巡遊

粟津潔/著

定価2000円+税

粟津デザインの発想はどこから生まれるのか。自筆のエッセイと、高橋悠治、富岡多恵子、寺山修司、ワイダらとの対談から、そのユニークな世界が浮上する。

詳細を見る

ガウディ讃歌

粟津潔/著

定価2000円+税

現代美術・建築・デザインの根源としてのガウディ。人と全自然をひとつのものとしたその魅力を語る入「悶」書。カタルーニャ地方の社会関係年譜を付し、写真も多数掲載。

詳細を見る

前衛のゆくえ

アンデパンダン展の時代とナンセンスの美学

中原佑介/著

定価2500円+税

中原佑介美術批評選集第3巻。1960年代、大きな転換期を迎えた日本の前衛美術。中原の思想の根幹を成す「ナンセンスの美学」についての文章を集め、激動の時代に生きた批評の姿を浮かび上がらせる。

詳細を見る

現代彫刻論

物質文明との対峙

中原佑介/著

定価2500円+税

中原佑介美術批評選集第6巻。世界における「彫刻」の歴史を「物質」の観点から捉え直し、その変貌と矛盾を衝いた名著・『現代彫刻』の復刊に加え、『現代彫刻』以降、60年代後半~80年代に新たに展開された彫刻についての文章を集めた。

詳細を見る

創造のための批評

戦後美術批評の地平

中原佑介/著

定価2400円+税

中原佑介美術批評選集第1巻。鮮烈なデビュー作「創造のための批評」をはじめとする初期美術批評、批評そのものについてのメタ批評、中原の思想が形成された1950年代の時代背景を示す文章を集めた。

詳細を見る

「人間と物質」展の射程

日本初の本格的な国際展

中原 佑介/著

定価2400円+税

中原佑介美術批評選集第5巻。芸術・文化の世界に衝撃をあたえた国際展「人間と物質」を中心に、展覧会の全容、「人間と物質」に至る中原の思考の軌跡、展覧会後の反響への応答を示す文章をそれぞれ集めた。

詳細を見る

大地の芸術祭

越後妻有アートトリエンナーレ2009

NPO法人越後妻有里山協働機構/発行

定価3500円+税

大地の芸術祭の作品に感じられるのは、ある開放感です。美術作品は展示空間+作品という通念をくつがえし、大地の芸術祭は「脱芸術」の方向に向かっている。(中原佑介)

詳細を見る

現代画壇・美術記者の眼

1960-1983

北村由雄/著

定価3000円+税

60年以降の美術の動向を記録した美術記者の事件簿。美術の現場から送られる数々のルポルタージュ、作家論、展覧会評は、万国博をピークにする日本画壇の実情と趨勢をあますところなく伝えている。120余人の人物評、作品写真多数。著者は共同通信美術記者。

詳細を見る

曖昧な水

レオナルド・アリス・ビートルズ

東野芳明/著

定価2800円+税

レオナルドとデュシャンの双児性を発見し、アモルフな水の魅惑に挑発され、ビートルズとアリスの意外な親近生を読みとり、70年代のファッションと風景とを感性のバルブを全開して綴る曖昧な時代へのメッセージ。写真多数。

詳細を見る

夢・現・記

一画家の時代への証言

池田龍雄/著

定価3500円+税

戦後の日本文化の早暁期から生きた画家の半生記。芸術の前衛の一典型を示した池田龍雄の日記をベースに、詳細な注と年譜で戦後美術の状況を再構成する。

詳細を見る

視線はいつもB級センス

脱意味の美術/1979〜1981

谷川晃一/著

定価3000円+税

純粋・高級志向を足蹴にし、多重・他面・B級志向の現代文化論。戦後のアール・ポップから80年代文化の本質をなすイエロー・センスまで、柔軟な感性が捉えた〈現在〉。

詳細を見る

アナキズムの美学

アンドレ・レスレール/著
小倉正史/訳

定価2800円+税

既成の価値観を排し、自らの厳格な倫理観のもと、何ものにも囚われない美の構築に邁進したマラルメ、スーラ、ケージ、デュビュッフェらの表現の可能性を探る。

詳細を見る