G21ワールドフォーラム


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Tamim Ansary: 最近、"アフガニスタンを爆破しろ、石器時代にもどせ"などという言葉をよく耳にす る。

2001 年9月19日

最近、"アフガニスタンを爆破しろ、石器時代にもどせ"などという言葉をよく耳にする。
今日ラジオを聴いているとKTO TalkのホストのRonn Owenが、これは即ち罪のない人々を殺すことになることを概ね認めていた。
「(あの凶行に何の関係もない人々を巻き込んだとしても)これは戦争なのだ。戦争につきものの代価は受入れなければならん。他に何ができると言うのだ?」
また、TVではどこかの博学者が討論していた。
「我々には果たすべきことを行うだけの腹構えがあるのか?」

この論争が特に厳しいものだと感じるのは、僕がアフガニスタン人で、国を離れて3 5年が経った今でも祖国で起こっている現状を見失ったことはないからだ。だから、 僕は聴いてくれる人達に伝えたいと思う。この全ての出来事が僕にはどう映っている かを。

僕はタリバンとウサマ・ビンラディンに反対している者の一人として述べる。New Yorkでの凶行に彼らが関与していることにはなんの疑いもない。この狂人たちに何ら かの処置がくだされなければならないことにも賛成する。

しかし、タリバンとウサマ・ビンラディンはアフガニスタン人ではないのだ。アフガ ニスタン政府を代表する者でもない。タリバンは、1997年にアフガニスタンを乗っ取っ た無知な異常精神者たちのカルト集団であり、ビンラディンは"構想"を抱く犯罪者な のだ。タリバンとは何かを考える時、ナチスを思い起こしてくれれば分かりやすいと 思う。ビンラディンはヒットラーであり、アフガニスタンの民は強制収容所に入れら れたユダヤ人だ。
アフガニスタンの人々と、この極悪非道とは、なんの関係もないばかりか、アフガニ スタンの人々は、これら兇行者達の最初の犠牲者であるのだ。もしだれかがやって来 てタリバンを追い出し、祖国に巣作られたこの国際的犯罪組織の根城を一掃してくれ れば、アフガニスタンの人々は踊りあがって大喜びするであろう。

なぜアフガニスタン人は立ち上がってタリバンを倒そうとしないのか?と言う人もい る。 その答えは、彼らは飢え、疲れ果て、傷つき、苦しんでいるからだ。 数年前の国連の調査では、アフガニスタンには50万人の身障孤児がいると推測され ている。 経済がなく、食べ物もない国なのだ。 夫を亡くした何百万もの未亡人たちは、タリバンによって集団生き埋めされている。 大地には地雷が敷き詰められ、田畑はソビエトによってむちゃくちゃに壊された。 これらは、なぜアフガニスタンの人々がタリバンに抵抗できないのかの理由の一部な のだ。

ここで、アフガニスタンという国を石器時代までに破壊して戻せ、という問題だが、 残念ながらすでにそれは行われている。ソビエトがすでにやってしまったからだ。
アフガニスタン人を苦しめろ?
彼らはすでに苦しんでいる。
アフガニスタンの家屋を叩き潰せ?
すでにやられている。
学校を壊して野石の山にしてしまえ?
それももうやられている。
病院を根絶しろ?
もうなっている。
水道、交通など公共施設を崩壊し、薬や医療を与えるな?
なんと、もう遅いのだ。これらは、全て過去に果たされているのだから。

新しい爆弾を落としたところで、今までの投下被害で荒れたガレキをひっくり返すだけのことだ。
少なくともタリバンはやっつけられるだろう?
そうとはとても考えられない。なぜなら、現在のアフガニスタンで十分に食べ、自由 に動きまわれるのはタリバンだけなのだ。せいぜい、うまく逃れて隠れるのだろう。
その代わりに、体の不自由で車イスもない孤児たちが犠牲になるだろう。
カブールの上空から爆弾投下しても、この残忍な犯罪者たちにとってはあまりダメージのないことなのだ。むしろ、タリバンに公の理由を与え、強奪してきたアフガニスタンという国と人々を再び暴行することになるだけのことだ。

では、他に何ができるというのか?
僕が本当に恐れていることを話そう。
ビンラディンを倒す唯一の手段は、陸から攻めることだろう。"果たされるべきことをするだけの腹構え"を人々が口にするとき、それはできるだけ多くの人々を殺す"腹"のことを言う、罪のない人々を殺すことに対しての良心の呵責一切を超越する"腹"のことを。
…闇の砂の中から我々の頭を戻そう。
実際にこの論争の卓上にあがっているのは、アメリカ人が死にゆく、ということだ。
ビンラディンのアジトへと闘い攻め進めるのに一部のアメリカ人が命を落とすだけで はない。真の問題はもっともっと大きいのだ。

アフガニスタンへ兵を進めるには、まずパキスタンを通らねばならないが、すんなりと通してくれるだろうか? そうはいかないだろう。 まずはパキスタン打破(あるいは征服)が行わなければならないであろう。他のイスラム圏諸国は、それをただ傍観するだろうか?
…もうお分かりだろう。我々は、イスラムと"西側"との間の世界大戦を翻弄しているのだ。
しかも、それはビンラディンの思惑なのだ。まさに彼が望むものなのだ。今回はそのための兇行だったのだ。
彼のスピーチや声明を読んでみるといい。すべて、そこにある。彼は、イスラムが"西"を打ち破ると本当に信じている。
馬鹿げていると思うかもしれないが、彼は世界をイスラムと"西"に両極分割できると考えているのだ。そして、彼は何億万もの兵を有する。
西側がイスラム諸国に虐殺を投じ破滅しようとしても、失うものは何も残っていない何億万の人々だ。そして、それはビンラディンにとってはむしろ、より都合がいいのだ。

ビンラディンは恐らくまちがっている。最後には西側が勝つのだろう、それが何を意味しようとも。しかし、戦いは何年もの間続くであろう。何百万もの人々が犠牲になるであろう、"彼らの"民だけではない、こちら側の人々も。誰かそれだけの腹構えを持っているのか?

ビンラディンは持っている。他に誰かいるだろうか…。

Tamim Ansary
親愛なるゲイリーへ、そしてネットの糸で繋がる人たちへ

Translated by Suga Hori


ピースボート

2001 年9月20日 東京

い世界を築くために−ピースボート声明

<私たちは、同時多発テロを許しません!>
私たちは、2001年9月11日、米国での同時多発テロによって犠牲となった全ての人々に哀悼の意を表します。また、犠牲となった人々のご家族、友人の皆さんに心からお悔やみを申し上げます。そして、私たちピースボートは同じ世界に暮らす市民として被災者とその関係者の人々へのできうる限りの支援を行うことを誓うとともに、国際社会の暖かい人道支援を求めます。
私たちは、米国への同時多発テロを許しません。私たちは、国連が主体となって、国際法に則り、このテロ行為に責任のある者たちを探し出し、拘束し、公正に裁くことを求めます。そして、国連を中心として国際社会が世界中のテロを根絶するための具体的な行動に真剣に取り組むことを求めます。  

<私たちは「新しい戦争」に反対します!>
同時に、私たちは米国政府および日本政府を含むその同盟国政府の報復攻撃に反対します。米国での同時多発テロは、明らかに国家間の戦争ではなく犯罪であり、犯罪は暴力によってではなく法によって裁かれるべきものだからです。このテロを「新しい戦争」と定義し、報復攻撃をすることは、彼らの報復テロをも戦争行為として認めることであり、それは、同様のテロを際限なく繰り返させる引き金を引くことになります。

<テロのない世界を築きます!>
私たちは、何の罪もない市民の当たり前の幸せを一瞬にして奪い去るテロ行為を憎みます。だからこそ、このテロを地球社会から根絶するために、今こそ、テロ行為が生み出される原因を追及し、テロのない世界とはいかなる世界なのかを想像し、具体化しなければなりません。そして、その世界を実現するために、私たち市民は、NGOは、国際社会は 行動を始める必要があります。もちろん非暴力の行動です。そして、そのテロのない世界を築くための行動こそがニューヨークで、そしてワシントンDCで無くなった人々の命に報いる唯一の方法であると信じます。  

<生存と尊厳に関わる問題の解決を!> 
私たち、ピースボートは1983年の設立以来、世界60カ国以上を巡り、平和を創るための直接交流を各地で行ってきました。その活動を通じて、今の世界が抱える矛盾や不正義や不公平を目の当たりにしてきました。それは、飢餓、貧困、戦争、難民問題、地雷問題、環境破壊、人種差別、性差別、人権侵害といった、まさに人間の生存と尊厳に関わる重大な問題の連鎖でした。そこには経済のグローバリゼーションがもたらした数多くの問題もありました。
そして、これらの問題の多くが、米国、西ヨーロッパ、日本を除く国々、いわゆる「南」の国々に極端に偏っており、日々、何の罪もない多くの市民がその犠牲者となっていることを知りました。そして、今日、この偏りはますます激しくなってきており、ますますその犠牲者は増え、「南」の国々に暮らす人々にとって耐え難いところまできています。
私たちピースボートは、世界中の多くの人々に苦しみと悲しみと怒りを強制し続けている、この人間の生存と尊厳に関わる問題の解決なしにテロのない世界をつくることは不可能だと考えます。

<テロをなくす日本国憲法九条の理念>
そして、戦争と軍備の放棄を謳った日本国憲法九条の理念は、テロのない世界をつくる上で重要な役割を果たしうると考えます。ゆえに日本政府が報復攻撃に加わらず非暴力の国際協力のみに徹することは非常に重要です。

<十項目のアピール>
私たちはテロのない世界を築くために世界の市民、NGO、各国政府、国連のそれぞれが以下の目的を実現するため、最大限の努力をすることを呼びかけます。

1. 国連中心に各国協力による米国同時多発テロ実行犯の捜査及び逮捕と公正なる審判
2. 米国政府及びその同盟国政府の報復攻撃、いわゆる「新しい戦争」の回避
3. テロによる犠牲者、難民、戦争避難民など紛争によるあらゆる犠牲者対する十分な人道的援助と人権の確実な保護
4. あらゆる紛争及び難民問題、特にパレスチナ問題の早期解決
5. 経済のグローバリゼーションがもたらす南北の経済格差の是正
6. あらゆる人種差別、民族差別、性差別の撤廃
7. 平和教育、直接交流、相互理解、信頼醸造、共通の歴史認識の構築による安全保障の構築
8. 地雷および核兵器廃絶および不使用と軍備撤廃を目標とした包括的軍縮の推進
9. 戦争と軍備の放棄という日本国憲法九条理念の各国での受け入れと実現
10. 地球環境保護の徹底と持続可能な社会の構築  

私たちは、暴力ではなく対話を、新しい戦争ではなく新しい世界を求めます。
賛同いただける方はこのフォームより署名をお願いします。



その1アフガニスタンの国連職員 千田悦子さんの手記

2001 年9月12日

アフガニスタンからの手紙です。
一人でも多くの方に読んでいただきたいとのことですので、紹介します。

国連難民高等弁務官カンダハール事務所で働いていらした方千田悦子(ちだ・えつこ)さんという方の手記。
千田さんは、国連難民高等弁務官カンダハール事務所で仕事をしていましたが、オサマ・ビン・ラディン氏をかくまっているとされるタリバンの本拠地へのアメリカの軍事行動などの危険性が出てくる中、一時的に勤務先をパキスタンに移転するという措置で、「避難」をしていますが、その緊急避難の最中にしたためた手記です。

以下、千田さんの手記です。

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報道機関の煽る危機感

9月12日(水)の夜11時、カンダハールの国連のゲストハウスでアフガニ スタ ンの人々と同じく眠れない夜を過ごしている。私のこの拙文を読んで、一 人でも多くの人が アフガニスタンの人々が、(ごく普通の一人一人のアフガン 人達が)、どん なに不安な気持ちで9月11日(昨日)に起きたアメリカの4 件同時の飛行機ハイ ジャック襲撃事件を受け止めているか 少しでも考えてい ただきたいと思う。テレビのBBCニュースを見ていて心底感じるのは 今回の事 件の報道の仕方自体が 政治的駆け引きであるということである。特にBBCやCNN の報道の仕方自体が根拠のない不安を世界中にあおっている。 事件の発生直後(世界貿易センターに飛行機が2機突っ込んだ時点で)BBCは早
くも、未確認の情報源よりパレスチナのテログループが犯行声明を行ったと、テ レビで 発表した。それ以後 事件の全貌が明らかになるにつれて オサマ.ビ ン.ラデンのグループの犯行を示唆する報道が急増する。その時点でカンダハー ルにいる我々はアメリカがいつ根拠のない報復襲撃を また始めるかと不安にお びえ、明らかに不必要に捏造された治安の危機にさらされる。何の捜査もしない うちから、一体何を根拠にこんなにも簡単に パレスチナやオサマ・ビン・ラビ ンの名前を大々的に報道できるのだろうか。そしてこの軽率な報道がアフガンの 国内に生活を営む大多数のアフガンの普通市民、人道援助に来ているNGO(非政 治組織)NPOや国連職員の生命を脅かしていることを全く考慮していない。

1998年8月にケニヤとタンザニアの米国大使館爆破事件があった時、私 は奇しくも ケニヤのダダブの難民キャンプで同じくフィールドオフィサーとし て働いており、ブッシュネル米国在ケニヤ大使が爆破事件の2日前ダダブのキャ ンプを訪問していたという奇遇であった。その時も物的確証も無いまま オサ マ・ビン・ラデンの事件関与の疑いが濃厚という理由だけでアメリカ(クリント ン政権)はスーダンとアフガニスタンにミサイルを発射した。スーダンの場合 は、製薬会社、アフガンの場合は遊牧民や通りがかりの人々など 大部分のミサ イルがもともとのターゲットと離れた場所に落ち、罪の無い人々が生命を落とし たのは周知の事実である。まして 標的であった軍部訓練所付近に落ちたミサイ ルも肝心のオサマ・ビン・ラデンに関与するグループの被害はほぼ皆無だった。 タリバンやこうした組織的グループのメンバーは発達した情報網を携えているの で、いち早く脱出しているからだ。前回のミサイル報復でも 結局 犠牲者の多 くは 子供や女性だったと言う。

我々国連職員の大部分は 今日緊急避難される筈だったが天候上の理由として  国連機がカンダハールに来なかった。ところがテレビの報道では「国連職員は アフガニスタンから避難した。」と既に報道している。 報道のたびに「アメリカはミサイルを既に発射したのではないか。」という不安 が募る。アフガニスタンに住む全市民は 毎夜この爆撃の不安の中で日々を過ご していかなくてはいけないのだ。更に、現ブッシュ大統領の父、前ブッシュ大統 領は 1993年の6月に 同年4月にイラクが同大統領の暗殺計画を企てた、 というだけで 同国へのミサイル空爆を行っている。世界史上初めて、「計画」 (実際には何の行動も伴わなかった?)に対して実際に武力行使の報復を行った 大統領である。現ブッシュ大統領も今年(2001年)1月に就任後 ほぼ最初 に行ったのが イラクへのミサイル攻撃だった。これが単なる偶然でないことは 明確だ。

更にCNNやBBCは はじめからオサマ・ビン・ラデンの名を引き合いに出してい るが米国内でこれだけ高度に飛行システムを操りテロリスト事件を起こせるとい うのは大変な技術である。なぜ アメリカ国内の勢力や、日本やヨーロッパのテ ロリストのグループ名は一切あがらないのだろうか。他の団体の策略政策だとい う可能性は無いのか?
国防長官は早々と 戦争宣言をした。アメリカが短絡な行動に走らないことを ただ祈るのみである。
それでも 逃げる場所があり 明日避難の見通しの立っている我々外国人は良 い。今回の移動は 正式には 避難(Evacuation)と呼ばずに 暫定的勤務地変 更(Temporary Relocation)と呼ばれて言る。ところがアフガンの人々は一体 どこに逃げられるというのだろうか? アメリカは隣国のパキスタンも名指しの 上、イランにも矛先を向けるかもしれない。前回のミサイル攻撃の時は オサ マ・ビン・ラデンが明確なターゲットであったが 今回の報道はオサマ・ビン・ ラデンを擁護しているタリバンそのものも槍玉にあげている。
タリバンの本拠地カンダハールはもちろん、アフガニスタン全体が標的になる ことはありえないのか? アフガニスタンの人々も タリバンに多少不満があっ ても 20年来の戦争に比べれば平和だと思って積極的にタリバンを支持できな いが 特に反対もしないという中間派が多いのだ。

世界が喪に服している今、思いだしてほしい。世界貿易センターやハイジャッ ク機、ペンタゴンの中で亡くなった人々の家族が心から死を悼み 無念の想いを やり場の無い怒りと共に抱いているように、アフガニスタンにも たくさんの一 般市民が今回の事件に心を砕きながら住んでいる。アフガンの人々にも嘆き悲し む家族の人々がいる。
世界中で ただテロの“疑惑”があるという理由だけで、嫌疑があるというだ けで、ミサイル攻撃を行っているのは アメリカだけだ。世界はなぜ こんな横 暴を黙認し続けるのか。このままでは テロリスト撲滅と言う正当化のもとに  アメリカが全
世界の“テロリスト”地域と称する国に攻撃を開始することも可能ではない か。
この無差別攻撃や ミサイル攻撃後に 一体何が残るというのか。又 新たな 報復、そして 第2,第3のオサマ・ビン・ラデンが続出するだけで何の解決に もならないのではないか。オサマ・ビン・ラデンがテロリストだからと言って、 無垢な市民まで巻き込む無差別なミサイル攻撃を 国際社会は何故 過去に黙認 しつづけていたのか。これ以上 世界が 危険な方向に暴走しないように、我々 も もう少し 声を大にしたほうが良いのではないか。

アフガンから脱出できる我々国連職員はラッキーだ。不運続きのアフガンの 人々のことを考えると 心が本当に痛む。どうか これ以上災難が続かないよう に 今はただ祈っている。そしてこうして募る不満をただ紙にぶつけている。

千田悦子    
2001年9月13日 筆


ニューヨークから、サティシュ・クマルより

2001年9月20日付 Utne Reader より 戦争の恐怖 J.ウォルジャスパー

http://www.alternet.org/story.html?StoryID=11550

我々の政治的指導者、そして国際社会の権力構造の心理的力学ということを考える と、戦争はおそらく避けがたい。ただ、テロに対し、より多くの血を流すという方法 でもって応えるのは、我々自身を危険にさらすだけだということを認識するのは重要 に思える。暴力をエスカレートさせるたび、更なる暴力がはね返ってくる。平和につ いて議論するということは非愛国的ではない。我々の強さを示し、殺された人々に敬 意を払うため、そして国家安全保障を実現するためには、戦争を行い、莫大な資金を 軍隊に注ぎ込むことよりよい方法がある。このような考えは現時点でアメリカ国民に とって賛成しがたいものであるかもしれない。しかし人々の復讐心が鎮まれば、その 多くは、持続的な真の平和こそがテロに対する最善の防御法であることに気付くだろ う。

サティシュ・クマルは −ガンジーのように1960年代、核武装解除を訴えて世界各地 を巡行していたが− 事件当時、私の友人ロンとグリニッジ・ヴィレッジにいた。 ニュースを聞いて外に飛び出し、7番街の歩道から2機目がワールドトレードセン ターに追突するのを目撃したのだった。雑誌『Resurgence(復活)』の編集者である サティシュは『Mother Earth ニュースサービス』に寄稿し、次のように述べた。 「政府は市民の安全を保障し、保護しなければならない。しかしそれと平行して、新 しい国際的な平和を構築すべきである。平和こそが究極の安全保障であり、いかなる 政府や軍隊の安全保障もこれを凌ぐことはできない。我々は多くの資金を軍隊と武器 に費やしている。もしその資金の半分でも平和的に紛争を解決するのに使われたのな ら、我々がつい経験した恐ろしい出来事のなかにも希望を見出せたかもしれないの に。」

この暗い時代に私は、その、かすかな希望を抱いている。世界がかつて見たことのな いほど強力な軍事力として、戦争の技術を完璧にすることよりも、結局平和がもたら すもののほうが大きいのを我々は次第に理解するようになるだろう。この教訓を世界 に示すことこそがアメリカの卓越というものの表れではないだろうか。


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